走行距離は短くなるが、普及に弾みをつける低価格を実現
三菱の命運を握っているともいえる電気自動車がアイ・ミーブだ。日産リーフよりも早くマーケットに登場したものの、量産化やITを駆使した使いやすさ、価格など大きく差を広げられていた。今回は、一充電走行距離の拡大や、タイマー充電・プレ空調機能をもつ「MiEVリモートシステム」の設定など機能・装備を充実させた上級グレード「G」の他に、あえて電池容量を小さくし、装備もシンプルとした「M」を用意。このグレードの価格は、軽自動車サイズのアイ・ミーブをイッキに普及への弾みとなりそうな補助金使用で188万円という魅力的な価格となっていると評価したい。
アイ・ミーブのMは、これでようやく日産リーフの呪縛から解かれ明確に差別化がされた。今回、電池の容量を今までの約65%と割り切ってきた。これは、軽自動車としての使い方として特化したことを表している。JC08モード電費は120km。これだけの距離があれば、シティコミューターとして、地方の軽自動車が日々の足として1日で走る距離としては十分ということだ。日産リーフのように、これからのガソリン車に替わる電気自動車としての位置付けとは、まったく違った立ち位置になったのだ。これなら、日産リーフと比べられることもなく、軽自動車を日々の足として使うユーザーの購入リストにも載る可能性が高まったと評価できる。
クルマとして以外の価値も。シティコミューターとして選ぶなら断然に「M」がいい
試乗すると、180Nmという最大トルクは変わらないものの、47kW[64PS]から30kW[41PS]へパワーが落ちているのがハッキリと感じる。スピートがそれなりに上がったときに、ちょっとスピードの伸びが違う。ただ、これはハイパワーのGと比べた時のこと。もともとアクセルを踏んだ時から180Nmという1.8Lガソリン車並のトルクを発生するので、遅いわけがない。GとMの差は、街中というよりは、高速道路の合流などで差がつく程度だろう。日々の足として街中でしかほとんど使わないというのなら、フットワークやハンドリングにも差がないので、Gを選ぶ理由が分からないくらいだ。
実際、男二人で箱根のアップダウンの多い道を走ったのだが、パワー不足を感じることもなく、ガソリン車の軽自動車よりキビキビと走れた。また、電池がボディの中心にあり、低重心化されているので、スポーティな走りも楽しめた。また、軽自動車には珍しく横滑り防止装置ASCが標準装備されているのは、頼もしい。滑りやすい路面や、もしものときに役に立つ機能だ。
さらに、今回のモデルから、ブレーキペダル連動回生ブレーキ(ブレーキペダルを踏み込むと回生ブレーキが強くなる制御)を全車に採用した。ブレーキを踏むと同時に回生ブレーキの効き方が強くなり、減速エネルギーを電気に変えて回収する。協調回生ブレーキとまではいかないものの、ローコストで電費を稼ぐシステム。実際の走行では、とくに、ブレーキに違和感もなく、まったく普通のクルマとして乗れる。このシステムのおかけで、20%ほど走行可能距離が伸びた。
電池が小さいので、急速充電時も15分で80%できる。しかし、残念がらMには急速充電コネクターがオプション。急速充電コネクターまで、取り外し低価格化しているとは意外だった。まぁ、200V普通充電で4.5時間で満充電できるので、必要無いといえばそれまでだが、急速充電器がソコソコ普及したときに、ちょっと念のため的充電ができないのが、不便さを感じるかもしれない。
三菱アイ・ミーブMを、安グレードと見るのは間違いで、軽自動車としての使われ方を突き詰めれば、これほど面白いクルマはないと思う。軽自動車のターボ車や最上級グレード車以上の走りの質をもっているし、送迎や移動時はEVなのでとても静かだ。その上、これから先は、ミーブにためられた電力を家庭用の電気として供給できるオプションも用意されるという。毎日の足としてのクルマだけではない価値もある。補助金ありきの話だが、188万円という価格は十分に買い物リスト入りするのではないだろうか。
<三菱アイ・ミーブ価格>
M 2,600,000
G 3,800,000
2011 年度は「M」で72 万円(メーカーオプションの急速充電機能を装着した場合は 74 万円)、「G」で 96 万円を上限として補助金交付が受けられる。
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