あこがれのV8エンジン、あこがれのベンツ・・・
むかしむかし、「大きい~ことはいいことだ~♪」というテレビCMがありましたが、私が免許を取ったバブル時代のころのクルマ業界もまさにそう。
おりしも日米貿易摩擦によるアメリカからのクレームのおかげで、バブル時代前は3ナンバー車(=5ナンバーの小型車より大きなボディの車)というだけでいきなり自動車税が倍近く高く(8万円くらいに)なっていたのが、エンジンの排気量を基準に税額が段階的に上がっていく方式に変更されました。
それまで国産乗用車というとほとんどが5ナンバー車でしたが(そして当時3ナンバー車に乗っていると「金持ち~!」と羨望の目で見られたものです)、それ以降はバブルの雰囲気とも相まって、国産車のボディもエンジンもどんどん大きく、2リッター越え、3ナンバーボディ化は当たり前になっていきました。
そしてもう一つ、バブル時代前、羨望の眼差しを受ける要素だったのが多気筒エンジン。2リッター以下の車がほとんどだった時代は、エンジン型式もまたほとんどの国産車が直列4気筒でした。6気筒はイコール高級車。逆に今流行りの3気筒や2気筒エンジンなどだと、「なにそれ、バイク?」とバカにされたものです。
4.3リッターV8 SOHC 279馬力
そして8気筒、12気筒エンジンなんて夢のまた夢。子供のころスーパーカーブームの洗礼を受けた我々バブル世代は、国産車にはほとんど設定がない(バブル時代前にあったのはセンチュリーとプレジデントくらいでしょうか)8気筒や12気筒のエンジンを、フェラーリとかのスーパーカーしか積めないスーパーなエンジンだと思い込んでいました。
残念ながら、国産車はバブル時代以降も気筒数のほうは排気量のようにどんどん増えるということにはならず、6気筒がほぼ上限。したがって、6より気筒数の多いエンジンは依然として憧れであり続けました。
そんな中スーパーカーでもないのに、日本にV8やV12エンジン搭載車をバンバン送り込んでいたのがベンツやBMWなどのドイツ勢。スーパーカーはラスベガスで一攫千金でもしなければ無理ですが、ドイツ製セダンなら人生の転び方によってはひょっとすると買える時が来るかも。
BMWは「シルキーシックス」と呼ばれる6気筒に乗らなきゃ、みたいな風潮もあったので、自然とV8のベンツ、それも手が届く可能性が最も高そうなEクラスが憧れの対象となり時が過ぎていったのです。
かろやかな回転感、さりげない高級感
しかし、残念ながら「ひょっとすると」はいつまでも「ひょっとすると」のままでした・・・。
そんな中、今回お会いすることのできたW210型のE430。2002年式、10万km走行とのことですが、そんなことは微塵も感じさせないほどしっかり、すっきり、爽快に走ります。
そして、特に驚いたのはV8エンジンの軽快感。4.3リッターV8 SOHCとのことでもっとドロドロ回る重々しいエンジンを想像していたのですが、いきなりどっかん!とパワーを出すのではなく、アクセルの動きにスッと反応して必要なパワーをさり気なく提供してくれる、極めてリニアでストレスフリーなエンジンでした。
低回転域からアクセルの踏み込み量に応じて素直にかろやかに回るエンジンのため、逆に特別なエンジンの車に乗っているという感じがしないほど。しかも、エンジン回転数が上がっていくに連れてパワーも自然に増えていっている感じのため、コントロールしやすく運転もとってもスムーズ。あまりにスムーズのため、気がついたら思った以上の高速で走っていた、ということもしばしば。
とにかく、気持よく乗り回せる道具として最高な高級車、例えて言うなら家事もとっても上手にこなすモデル系美人(なんのこっちゃ?)、といった感じでしょうか。
今回試乗することで、高速道路で涼しい顔で抜いていくベンツが多い理由と、憧れを選ぶ自分の審美眼も意外とやるもんだな、ということがわかったのでした。
コメント
210後期、次、行ってしまいそうで実に危ない一台です!!
(すみません。一度コメントの途中で送信してしまいました)
いつもコメント有難うございます。
バブル世代としては「V8」というだけでグッときたのですが、おっしゃるとおり実はボディーカラーもとっても素敵で、それがまた特別な感じをかもし出していました。
中込様の言うとおり、こういう車を大事に乗っている人は人と競ってベンツに乗っているのではなく、本当にその車の価値がわかって乗っている人でしょうね。中込様のご意見、全面的に賛同です!
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