BSMバラードスポーツミーティング(聖地巡礼の旅)レポート [CORISM]

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2015/11/23

あえてCRーXとは言わないバラードのミーティング

 最近、巷では聖地巡礼という言葉がよく使われています。昔から言われる聖地巡礼はメッカを目指す旅のことですが、昨今の日本国内の聖地巡礼はマンガやドラマの舞台やロケ地を訪れることを指すものになっております。では、クルマはどうなのか? 本社工場やサーキットを訪れることを指しているようです。

 今回は、そんなイベントのお話しです。以前にもデルソルのミーティングでも開催地になったのですが、今回のバラードスポーツのイベントでもそのような扱いで集合のようです。”バラードスポーツ”主催者曰くあえてCR-Xの名は使わない。そういうイベントであります。

バラードスポーツ CR-X

聖地に勢ぞろいしたバラードスポーツ

ツインリンク茂木

主催者のあいさつ。「あえてCR-Xの名は使わずにバラードスポーツとしました」この言葉が印象的でした。

CR-XPRO

一見してわかる特徴的なフェンダーの張り出しとフロントのエアロ。それがCR-XPROだ。


CR-X

後期型のSi。ライト周りが大きな変更点であり半目のリトラクタブルではなく埋め込み式となっている。

CR-X

当時のイメージカラーの一つ赤銀ツートン

バラード

参加車両中唯一の最初期型ナンバーもおそらくは当時のままの2ケタナンバーだ。

FFでありながらクイックなハンドリング、1.5L800㎏という当時で考えても十分にライトウェイトな車体を持つまさしくFFスポーツの名にふさわしいモデル。もともとは、シビックの兄弟車バラードからの派生モデルであり、その意味からも今回のイベントではあえてバラードスポーツの名を強調したかったと主催者の言葉でした。

とてもいい時代に生まれたクルマは愛されている

 参加した車両は総数にしておそらくは30台弱。普通に考えれば、それほど多い数ではないかもしれない。それでも、この車の年式やその背景を考えれば少なくはないだろう。もちろん、会場が茂木という決して関西方面からアクセスするには近いと言い難い場所であることも考えれば、そちらからのエントリーは少ないかもしれない。それでも、北は北海道、南は島根から参加した熱心なオーナーがいた。

 コレクションホールでは、設計者である繁氏のバラードスポーツのアイコンともいえるヘッドライト周りの話から中心に話していただき、後半の川田氏はエンジン回りで、当時行われたバルブ設計の話をスライドで紹介。スイングアームバルブからのちのVTECに至るお話を伺いました。

 当時、川田氏はレース車両も手掛けており、その時に今だからこそ話せるシティのレースが中止にならざる得なかった理由(実はとんでもなく危険なことが判明)等笑いをまじえながら話していただきました。余談ですが、この頃のシビックのレーサーはナンバーがつかない代わりに非常に破格で販売されており年間100台は売れていたそうです。

 繁氏も、このときのさまざまな車両の設計を手掛けたという話をされ、実際にその手がけた車両の一覧からもその多さが見て取ることができました。現在は、多くの場合で1台のシャーシあるいはプラットホームで数台の車両が作られ、あるいはバッジエンジニアリングといった外装の一部を変更したものが多数見受けられます。

 しかし、この当時はほとんどの場合は1車種1設計といった状態であったようです。実際に、このバラード=シビックに関しては5バリエーションのそのすべてが別設計であったそうです。そうした時代背景の下、生まれたバラードスポーツ。その前身は、もともと低燃費構想の空力優先の車両コンセプトから生まれたようです。開発の途中で、その素性の良さから、これはもうスポーツカーのものではないかという方向性に変わりバラードスポーツとして世に送り出されたのです。かくして生まれたバラードスポーツ。時とともにその数は少なくなったとはいえ、愛好者やオーナーはこうしていまも走らせ続けているのです。

BSM バラードミーティング

バラードの特徴である半目のライト。本当にわずかだがこれが上下するしないで問題になるのでエマージェンシー用のクラッチがちゃんと付く。

川田恵一

エンジン担当をされていた川田氏。横道にそれたワンメイクシティの話やシビックのレーシングの話をしていただいた。当時の話は面白い。

繁 浩太郎

もう一人の開発者繁氏。現在は、自動車ジャーナリストでもあります。


しんむらけーいちろー CR-Xマンガ

3人目のゲスト漫画家しんむらけーいちろー氏。このバラードスポーツをモデルにした漫画をはじめ、バイククルマの漫画を手掛ける

しんむらけーいちろー

そのしんむら氏からの参加者プレゼントがこの色紙

ホンダCR-X

細部にわたるまで作りこまれた車体

ホンダCR-X

Bピラー部から曲面を描いて後方に伸びるサイドウィンドウ。そのBピラーにはエアアウトレットが見える。細かい作りこみが伺える。

当時としても、かなりのお金をかけて作ることができたというバラードスポーツ、じっくり見ると非常によく作りこまれていることがわかります。フロントの樹脂部分はもちろんのこと、ライト部分もパネルは樹脂ですが、そのままだと歪んでしまうため、その下にはわざわざ金属の板を入れて留めてあるのです。

 そしてBピラーの後ろからスローブを描くサイドウィンドウは、一見平面のようですが実はBピラーの中へ巻き込むような形に局面を描いて中へ入っています。繁氏の解説によれば、当時バラードは3ドアハッチ、セダン、5ドアハッチ、シャトル、そしてスポーツと5種類のラインナップがあり、そのどれもが別設計。別シャーシ!というものでした。現在、クルマの車体のほとんどが、同じシャーシやプラットフォームをベースにラインナップが構成されていますが(一部を除く)、同系列の車種がすべて別設計というのは、いかに贅沢な作りであったかといえるのではないでしょうか。

ホンダCR-X

CR-XPROのリアフェンダーにある給油口。お気づきの方もいるかと思われるが、この部分は本来むきだしである。オーナーがヒンジ部分こそ流用パーツを使ったもののパネル部分は自作をされている。仕上がりはまるで、それが当たり前のようにキレイにまとめられている。

ホンダCR-X
いいクルマや貴重なクルマは、大事にされ世の中に残りやすくなる可能性が高いようです。それでも、年々減り続けるのが現実。今回のバラードミーティングは、第2回と銘打ってありました。その最初の1回は数年前に開催され、この次は5年後くらいには開催したいと、しめくくりではいわれていました。その時までみなさん頑張ってこの車たちを維持してください。好きでいてください。と、主催者の方が語られています。聖地巡礼、それは自分たちがそのクルマをそのメーカーを愛しているその表現であり証なのかもしれません。
筆者もまた、その時にこのHONDAの聖地に足を運ぶことができればと思いつつ絵描きの旅を続けます。

イラストなどのお問い合わせは、こちらからhttp://www.d5.dion.ne.jp/~take-abe/

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