英国からの挑戦状ZENOSとはなんだ!?
ZENOSとは、英国発の新興コーチビルダーであり元々はケータ―ハムを辞めた技術者やそうした方々が集まり出来上がった新しいスポーツカーメーカーです。このメーカーは、チョッと異色の企業といえるかもしれません。と、いうのもスポーツカーメーカーでありながら、実は英国政府も関心を寄せているということなのです。今回は、ちょっとそんなお話にお付き合いいただきたいと思います。
今年のニューイヤーミーティング(以下NYM)に、この車は展示をされていました。そして、それがこの国でのZENOSというクルマの初めての一般へのお披露目した。この日、インポーターであるアートインターナショナルの武蔵野氏は、あえてオートサロンではなく、このNYMに持ってきましたと話されていました。実は、そのときにお話を伺うと同時に連絡先をお渡ししておいたのですが、先月よもやのご連絡をいただき筆者他数名のライターでこの試乗に挑んでまいりました。
このZENOS E10の車体重量は、700㎏と非常に軽いのです。もちろん、他にももっと軽量化された車体はあるのは承知していますが、リッターカーでも1tを超えるのが普通です。このご時世では、十分すぎるほど軽いのです。
初めて見る車体に皆恐る恐る乗り込みますが、この車体には屋根はもちろんですがドアもありません。したがって、乗り込むにはこの車体の黒い部分(この黒い塗装の部分がカーボンでできています)をまたいで乗り込むことになります。普段運動不足の筆者は、上がらない足を必死に上げて乗り込むのですが、車体自体がもともと低いので頭で考えるよりはすんなりまたげます。
グループMの甲斐氏には「シートに乗ってしまって構わないですよ」といわれたのですが、あえてそこは普通に乗り込むことをしてみました。室内は想像しているよりも、ずっと広く足元にはかなりの余裕がありました。実際パッセンジャーシートは、足元に余裕がありすぎて、足を踏ん張れるフットレストのようなプレートが必要ではないかという話が出るくらいに余裕があります。
シートはホールド性が良く、しっかりとサポートしステアリングとシートのポジションも良好に思えます。実際、筆者は身長のある方ではないので、過去英国車に乗ると寝そべるようであったり、ステアリングにしがみつくようになったりとしたものです。しかしZENOSは、スポーツドライブに相応しいポジションがしっかりと取れるように調整幅がありました。調整もシートスライドだけではなく、実はABCペダルも3段階の前後調整ができるという実に細かい微調整もできるとのことです。もっとも、この日はシートの調整だけでも十分でした。
シートに潜り込んで(これはフロントスクリーンとサイドとの関係からイメージ的にはそんな感じで)小径のステアリングに手を置くと、何とも笑みがこぼれます。当たり前といえばそうなのかもしれませんが、この車には基本アシストデバイスはありません。パワステもなければ、当然ですがMTのみです。ただ驚いたのがブレーキにさえアシストがないのに、クラッチは驚くほど軽いです。これは、その気さえあればどなたでもスポーツドライブを楽しめるようにクラッチはあえて扱いやすくしてあるとのことです。ですから、非常にクラッチはつなぎやすく、おそらくは車重も相まって軽自動車のMTと変わらないくらいスッと違和感なくクラッチ操作ができました。ただし、注意してほしいのは、他は一切の補助が無いので甘く見ると大変なことになります。
英国の政府も行方を見守る新規事業
カーボンなど今更そこいらじゅうのメーカーやアフターパーツでも使われているじゃないか。そう思われるのも無理はありません、それでも、これが最大の特徴といえるのは、このカーボンパネル、実は再生カーボンなのです。そう聞けば見方が変わってくると思います。実際にNYMの日に武蔵野氏に「再生パーツというものは往々にして強度が落ちやすいものではないのですか?」とお尋ねしたのですが、それについては全く問題なくむしろ強度的には上がっているというお話を伺いました。なるほど、英国政府が注目をするわけは、このあたりなのかな(日本ではまずスポーツカーメーカーに補助金なんて国から出ません)と筆者も納得をいたしました。
そして、もう一つの特徴がプッシュロッドによるインボードサスペンション。プッシュロッド式というのは過去にKTMのクロスボゥというクルマがありましたが、こちらはフォーミュラーカーと同様の縦置き式ですので、よりセンターに重量が寄り、またロッドのストロークからも走りに影響をもたらしているのであろうと思われます。
各部のパーツは、コーチビルダーらしく随所に他メーカーからのパーツが使われています。エンジンは、フォードの2LでこちらはフォーカスRSに使われているものをミッドシップに搭載。リアのランプ周りなどはおそらくアルファの4Cからのモノではないかと思われます。そのほか、ウィンカーレバーやそうした細かい部分を観察すると見覚えがある見つけられると思います。そのほかにも、タイヤはエイボンを用意するなどいかにも英国らしいチョイスではないでしょうか。
販売チャンネル グループM甲斐氏がその構想を語る
ZENOS E10は、元々ニッチ層にしか受け入れられない車体なのははっきりしています。この際、徹底的にそうしたニーズにこたえられるようにと下地を作ろうと思ったそうです。そのため、顧客には購入前に一度、特に地方からの方には、それこそ観光がてらお越しいただき、ご本人に合わせてシートやペダルの配置や仕様を正確にオーダーメイドできるようにして決めていただいたそうです。また、工場はどういう設備と技術で整備を行っているのかも確認してもらったそうです。ZENOS E10は、1台1台完全なオーダー製で届けたいと考えています。
また、国内の仕様に向けて、細かな要望に対してメーカーに応えてもらうためにも、そうしたことが必要なんですと話されていました。実際、社内でもそうした細やかな仕様変更を常に続け、メーカーにも提案し続けています。筆者をはじめとするライター陣に乗らせたのも、そうした不具合を潰していくのが目的の一つです。だから、この先はもっと乗りやすく楽しいクルマにもなっていけますと話す。
発注の際にもZENOS E10は、スクリーンのないものもチョイスできるのですが、すべてスクリーン付きで輸入されます。「外すのは思っているほどむずかしくはありません。むしろスクリーン無しで届いたときにいざ付け直したいとなった時の方が大変でした。だったら、こちらで外した仕様にした方がいつでも直せる」ということでした。たしかに、その時には必要な穴も空いていないワイパーなどのモーターも別に送ってもらわないといけないなど、マイナス面の方が大きいのです。「やってくれることは向こうに頼み、あちらでできるかわからないものや、この方がいいというものもある」という。提案もこちらからが必要なら、部品を実際に作ってでも行います。それがいい関係を築くことにもなるとか。なるほど、ドイツを中心に海外のメーカーと交渉をされてきた甲斐氏のビジョンはとても明快に思えました。
ボディ&シャーシ ハイブリッドカーボン/アルミモノコック スチールロールバー&サイドインパクトプロテクション
全長3800㎜ 全福1870㎜ 全高1130㎜ ホイルベース2300㎜ トレッドF/1560mm R/1600mm 重量700㎏
エンジン フォード2.0GDI 排気量1999㏄ ボア×ストローク 87.5㎜×83.1㎜
出力/トルク 200馬力(147.1kw)/6800rpm 21.4㎏(210Nm)/6100rpm 最高速216㎞
ギアボックス 5速マニュアル(6速マニュアル)トランスミッション 燃料タンク容量35L
タイヤサイズ F195/50 R16 R225/45 R17 Avon ZZS ホイール F7.5J×16 R8.0J×17
販売価格 ¥6.480.000-(予価)
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