日産スカイライン長期評価レポート Vol.3 最速ハイブリッドと次世代ターボ、どちらを選ぶ? スカイライン購入ガイド [CORISM]

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2015/01/08

スカイラインブランドは健在! 販売目標の約5倍も売れる人気車となった

日産スカイライン
 日本を代表するGTカー日産スカイライン は、成長に成長を重ねた結果、今や日本よりもアメリカや中国のインフィニティ チャンネルで販売されるQ50をメインに開発されるクルマになった。日本用のスカイラインがメインでなくなったのは、日本人として残念なところだが、市場規模や販売規模が違うのだから、止むを得ないことでもある。

 日本では、このクラスの高級スポーツ セダン の市場はあまり大きくはない。そのため、スカイラインの発売当初の販売目標台数は思い切り控えめな月販200台に設定されていた。しかし、スカイライン発表後の初期受注は、ひと桁多い台数になってスカイラインブランドのバリューの高さが改めて証明した。

 発売当初はハイブリッド車 だけだったが、後に2.0Lターボも加わった結果、2014年の1~11月までの販売台数は、12,000台に届こうという勢いで、販売目標台数から見れば約5倍という売れ行きになっている。

 スカイラインは、ハイブリッドと次世代ダウンサイジングターボという大きく異なるふたつのパワートレーンを持つようになった。どちらも個性的なだけに、けっこう悩みどころだ。

 価格を見ると、大雑把に言ってハイブリッドが500万円前後の価格帯となるのに対し、ターボは400万円前後とざっと100万円くらい安い。予算が優先される人もいるだろうが、それ以外の走行性能などの要素も含め検証してみよう。

日産スカイライン

圧倒的で豪快! 世界最速のハイブリッドは嘘じゃない!

日産スカイライン

364psというシステム出力を誇るハイブリッドシステム

 まず、350GTハイブリッド系の走りだ。スカイラインに搭載されるハイブリッドシステムは、V型6気筒3.5Lエンジンに電気モーターを加えた1モーター2クラッチ方式で、基本的にはフーガ用と同じ。ただ、スカイラインへの搭載に合わせて改良が加えられた。燃費志向のハイブリッドから、パフォーマンス志向のハイブリッドに変わったといっても良い。

 そのため、スカイライン ハイブリッドの走行性能はもの凄い。停止状態から発進加速を試すと、想像を超えるほどの豪快な加速を示す。日産 が世界最速のハイブリッドと自らアピールしているが、正にその通りといった感じの印象を受けた。

 高速クルージングでは、十分な余裕を感じさせた。7速ギアを使えば、時速80kmで1200回転ほど、時速100kmでも1500回転くらいである。これは、意識して高いギアを選択したときのことだ。ATの自動変速に任せていると、Dレンジの時速80kmは5速ギアを使って1600回転くらいで走っている。より燃費を良くするには、積極的に高いギアを選択する必要がある。

 クルージング中にアクセルを抜くと、すぐにエンジンが停止してモーター走行に入る。フーガ よりもモーター走行に入りやすくなった感じがある。クルージングから急な加速が必要になって、アクセルを踏み込んだときのショックなどもうまく抑えられている。ハイブリッドシステムの洗練度は格段に高められた。

 スカイラインには、多くの先進技術が投入されており、そのひとつが世界初となるDAS(ダイレクトアダプティブステアリング)だ。ステアリングとタイヤは機械的につながっておらず、ステアリングの動きを電気信号に置き換え、ステアリングアングルアクチュエーターを作動させてタイヤを操舵する。その結果、応答遅れのないシャープなハンドリングと、路面の凹凸による進路の乱れや不快なキックバックを伝えないというメリットがある。まずは、こうした技術をいち早く採用した意欲を買いたい。将来的にクルマがこの方向に進むのは間違いなく、スカイラインがその第一歩を踏み出したことになる。これは評価されるべきだ。

 ただ、DASの操舵感覚は、これまでのギア式ステアリングの自然なフィールとは違い、完成度の面では無条件でべた誉めとはいかない。微小な操舵に対して、敏感に反応しすぎる感じあったり、あるいはコーナーから立ち上がるときの直進状態への戻り方に違和感があったからだ。ある意味、ドライバーが慣れてしまえばいいことだが、システムの熟成が進められ、違和感のない自然なフィールに仕上げられることを期待しておきたい。

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ハイブリッド車のインパネ

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ハイブリッドのメーター。タコメーター下にエネルギー回生のメーターが付く

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ハイブリッド車は、リチウムイオン電池を積むためトランクはやや小さめながら400Lの容量を確保

ターボ復活! 軽快なハンドリング性能で刺激的な走りが楽しめる

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わずか1250回転で350Nmという大トルクを発生する直噴2.0L直4ターボエンジン

 もう一方で、200GT-t系のターボ車は、スカイラインとしては久々のターボである。歴史を振り返ると1980年のジャパン時代にターボを追加設定し、その後R34型スカイライン時代までターボはスカイラインを象徴するモデルに搭載されていた。

 2001年に発売されたV35型スカイラインでV型6気筒エンジンを搭載するようになってからは、ターボの設定がなくなっていたが、スカイラインといえばターボという記憶は40代以上のユーザーにはしっかり刻まれていると思う。

 今回のターボは、エンジンとトランスミッションをダイムラー(メルセデス・ベンツ)から供給を受けている。直列4気筒2.0Lの直噴ターボ仕様エンジンは、155kW/350N・mのパワー&トルクを発生し、ハイブリッドほどではないが、軽快で良く走るクルマに仕上げられている。タウンユースから高速クルージングまで日常的な使い方をする範囲では、動力性能に物足りなさを感じることはない。

 268kWのシステム出力を発生するハイブリッドには及ばないものの、ターボエンジンの搭載車も相当な走りの実力を持つ。ターボラグを感じさせないスムーズな加速フィールや、低回転域から発生する十分なトルクなどが、ターボの良さを感じさせる部分だ。

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ターボ車のインパネ

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ターボ車のメーター。タコメーター下は、水温計となっている

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ターボ車のトランク容量は500L。9インチのゴルフバッグ4つ収納可能

軽快なターボ、重厚なハイブリッド、どちらを選ぶ?

 スカイライン ハイブリッドの加速フィールは、ガソリン車とは明確に違いスムースさが光る。対してターボ車は、ガソリンエンジンらしさを感じさせる力強さをが魅力だ。

 こうした走りの違いを受けて、どちらを選ぶかだ。ハイブリッド車は、スムースで速く、それでいて低燃費性能にも優れていて、安全装備も高いレベルにある。予算さえ許せば、多くの人が十分に満足できる。ターボ車と比べると、ハイスピードでハイウェイクルージングを得意とするタイプだろう。また、ハイブリッドには4WD の設定があるが、ターボには4WDの設定がない。雪国のユーザーなど4WDを必要とするユーザーは、必然的にハイブリッドを選ぶことになる。

 ターボ車は、ハイブリッド車に比べると車重が100㎏前後軽い。そのため、ハンドリング性能を含めた軽快感ではハイブリッド車を上回る。低速から大トルクを発揮するターボエンジンなので、アクセル操作によるレスポンスにも優れ、非常に刺激的な走りが楽しめる。ターボとはいえ、ゆったりとクルージングしていると、想像以上に燃費もいいのも特徴だ。週末は、峠道などで思い切りドライビングを楽しみたいクルマ好きにお勧めしたい。

スカイラインのグレード選びは、タイプPがお勧め!

日産スカイライン

車線(白線)に対する車両の向きをカメラが検知。路面などの影響に対するクルマの直進性が高まり、修正操舵が減少し疲労感の軽減や安心感のあるドライビングをサポートするアクティブレーンコントロール

 次は、ハイブリッドとターボ車、それぞれのグレード選びだ。ハイブリッドのグレードは3グレードあって、40万円ずつの価格差が設定されている。ベースグレードの350GTハイブリッドだとさすがに装備が貧弱になり、インテリジェント・クルーズコントロールや車線逸脱警報や防止支援、エマージェンシーブレーキなど、最新の安全装備も設定されない。こうなると、一般的には、350GTハイブリッドタイプP以上を選んだ方が満足度は高くなる。実際の人気グレードもタイプPとなっている。

 最上級グレードの350GTハイブリッドタイプSPになると、19インチのアルミホイールやスポーツチューンド・ブレーキ、マグネシウム製パドル、本アルミフィニッシャーなどが装備されるものの、40万円の価格差を考えるとタイプPで良いなという印象にもなる。こうした装備は好みの問題でもある。

 ターボ車は、走りの実感を得たい人にお勧めできるモデルだ。スカイラインハイブリッドは、プリウスなどのハイブリッドと違って、優れた走りのパフォーマンスを持つが、それでもガソリン車を走らせるのとは少し違った感覚がある。まぁ、そうした部分が新時代のプレミアム・スポーツセダン らしさでもある。

 良い意味で古典的な走りの実感という点では、ターボ車のほうが優位に立つ。走りの実感が欲しいというユーザーは、200GT-t系のグレードを選んだら良い。

 200GT-t系のモデルもベースグレードに加えて、タイプPとタイプSPが設定され、それぞれ40万円弱の価格差が設けられている。グレード間の装備の違いはハイブリッド車とほぼ同じなので、ターボ車でもお勧めは200GT-tタイプP以上ということになる。

 350GTハイブリッド、200GT-tともにお勧めオプションは、アクティブAFSと自動防眩ルームミラーのセット(6万4800円)、BOSEサウンドシステム(14万5800円)などで、好みによってサンルーフ(11万8800円)を装着したら良い。200Gt-tには、ダイレクトアダプティブステアリング&アクティブレーンコントロール(32万4000円)が設定されいる。好みがあるので、350GTハイブリッドでフィーリングを確認してから選ぶといいだろう。

 ディーラーオプションでお勧めしたいのは、5YEARS COATという5年持つコーティング。価格は6万5340円で設定されている。スカイラインは、プレミアムセダンへと舵を切ったため、塗装などの品質が一段と向上している。そんな上質さをアピールするためにもコーディングは必要だろう。ディーラー系以外のコーティングでも、上質なものを選択するとこれくらいの価格はする。新車時からコーティングすれば、効果も高いし手間も省ける。

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ダイレクトアダプティブステアリング システム構成

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タイヤとステアリングが機械的に直接つながっていないため、路面からの不快なキックバックやわだちでステアリングが取られるなどが無くなり直進性が高まり、疲労軽減にも役立つダイレクトアダプティブステアリング

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高級車に相応しい原音に忠実な再生にこだわった14スピーカーで構成されるBoseサウンドシステム

日産スカイライン価格、燃費、スペックなど

日産スカイライン
■新型日産スカイライン350GTハイブリッド価格
●2WD
・350GT HYBRID  4,624,560円
・350GT HYBRID Type P 5,002,560円
・350GT HYBRID Type SP 5,415,120円
●4WD
350GT FOUR HYBRID 4,905,360円
350GT FOUR HYBRID Type P 5,283,360円
350GT FOUR HYBRID Type SP 5,695,920円

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代表グレード 日産スカイライン 350GT HYBRID Type SP
ボディサイズ[mm](全長×全幅×全高) 4,800×1,820×1,440mm
ホイールベース[mm] 2,850mm
トレッド前/後[mm] 1,535/1,560mm
車両重量[kg] 1,800㎏
総排気量[cc] 3,498cc
エンジン最高出力[kw(ps)/rpm] 225〈306〉/6,800
エンジン最大トルク[N・m(kg-m)/rpm] 350〈35.7〉/5,000
モーター最大出力[kw(ps)] 50〈68〉
モーター最大トルク[N・m(kg-m)] 290〈29.6〉
ミッション 7AT
タイヤサイズ 245/40RF19
JC08モード燃費 17.8km/L
定員[人] 5人
税込価格[円] 5,415,120円
発表日 2013年11月11日
レポート 松下 宏
写真 編集部

■新型日産スカイライン200GT-t価格
・200GT-t 3,834,000円
・200GT-t Type P 4,212,000円
・200GT-t Type SP 4,568,400円

代表グレード 日産スカイライン 200GT-t Type SP
ボディサイズ[mm](全長×全幅×全高) 4,800×1,820×1,450mm
ホイールベース[mm] 2,850mm
トレッド前/後[mm] 1,535/1,555mm
車両重量[kg] 1,680㎏
総排気量[cc] 1,991cc
エンジン最高出力[kw(ps)/rpm] 155kW(211PS)/5500rpm
エンジン最大トルク[N・m(kg-m)/rpm] 350N・m(35.7kg-m)/1250-3500rpm
ミッション 7AT
タイヤサイズ 245/40RF19
JC08モード燃費 13.0km/L
定員[人] 5人
税込価格[円] 4,568,400円
発売日 2014年6月5日
レポート 松下 宏
写真 編集部

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