トヨタ ミライ(MIRAI)長期レポートVol.1 「自ら水素社会への第1歩を踏み出したい!」自動車評論家 松下 宏、ミライを購入! 実生活の中で、燃料電池車ミライを評価する [CORISM]
インフラの制約はあるものの、全く新しい価値をもつトヨタ ミライを自ら試さずにはいられない?
それは、トヨタ ミライが既存のクルマとは異なる全く新しいクルマであり、究極のクルマともいえる存在だからだ。全く新しいパワートレーンを持つクルマなので、それをしっかり試したいというのが購入の最大の動機である。ミライは燃料電池車という名前の電気自動車で、電気自動車と考えたらこれまでにも三菱 i-MiEV や日産 リーフ などがあるわけだが、自ら発電しながら走るという点でミライは決定的に違っている。
i-MiEVやリーフのときにも購入を考えないではなかったが、航続距離が短すぎて実用的な使い勝手の面で無理があるほか、自宅に充電設備を設ける必要があることも大きなハードルになった。集合住宅に住んでいると、自分用の充電設備を勝手に設けることができないから、事実上電気自動車 やプラグインハイブリッド を買うには非常に難しい状況になっているからだ。
トヨタ ミライは、i-MiEVやリーフなどの既存の電気自動車と比較すると、航続距離が長いのがまず良い点だ。JC08モードで650kmを走れるとされている。実際に使うと走行条件によって500kmを切るだろうし、それよりもずっと手前で水素を充填することを考えると、実質的な航続距離は400kmかそれ以下だと考える必要があるが、それでもリーフよりずっと長い航続距離である。
また、トヨタ ミライは自宅に専用の充電設備を必要としないのも良い点だ。電気自動車を買えない環境にいる人でも燃料電池車なら買える。実際には水素ステーションのインフラが課題になるので、買える人は当面は四大都市圏に住む人に限られるのだが、東京に住んでいれば取り敢えず何とか充填できる環境がある。
そうしたことを踏まえ、私にとってトヨタ ミライは電気自動車に比べたら格段にリアリティのあるクルマだった。水素ステーションの制約はあるが、それを含めて新しいパワートレーンの使い勝手を試したいという気持ちである。
炭素時代は、もう終わり! 水素時代へ自ら進むための第1歩がミライの購入だ!
現在、世界は石油や天然ガスなどの炭素系エネルギーを使う炭素社会だが、炭素を燃やしたときに発生する二酸化炭素が地球温暖化につながるものと懸念されている。温暖化を防ぐ観点からも、炭素社会から将来的に水素をエネルギーとした水素社会に変わっていくというのが、長期的な展望とされている。水素社会は必然性のある未来像として考えられている。
その水素社会に向かう第一歩ともいえるのが燃料電池車のミライだ。水素社会へのファーストステップを自分の足で進めたいと考えた。こうした想いでミライを購入するという人も多いのではないだろうか。
水素社会に対しては、いろいろな考え方があるのは事実。現状では石油や天然ガス、石炭などの炭化水素から水素を取り出すような方法が考えられている。それでは、脱炭素にならないじゃないかとの指摘がある。あるいは水素を液化、圧縮、輸送することなどを考えると、コストや効率が悪いのではないかという指摘もある。
でも、多くの燃料電池車が走り出し、たくさんの人々が脱炭素時代を目指せば、そうした課題がひとつずつ解決されていくはずだ。島国ゆえに、常にエネルギー問題を抱える日本において、トヨタを始め、日本の多くの企業が脱炭素時代を目指し技術開発すれば、世界をリードする水素社会が誕生すると思っている。そのためにも、まずミライに乗り、水素社会へのスタートを切りたいと思う。
普段の生活に入れてこそ、ミライの本当の実力が分かる! 長期に渡り、トヨタ ミライを評価していく
単に、新し物好きというより、自動車評論家として全く新しい機構を備えたクルマを試すのは一種の義務でもある。
単に試乗車を借りて数日乗り、すべてが分かるほどミライは単純なクルマではないと思う。初代プリウスに比べたらはるかに高価で、水素ステーションというインフラ面のハードルもあるミライは試し理解するのは簡単ではない。だからこそ、自分のクルマとして乗って、普段の生活の中で試したいと考えている。
燃料電池車トヨタ ミライを実生活の中で感じたこと、良かった点、悪かった点などを今後長期でレポートしていく。世界初となる市販燃料電池車の魅力や、これから向かっていく水素時代への一助になれば幸いだ。
トヨタ ミライ価格、航続距離、スペックなど
代表グレード | トヨタ ミライ(TOYOTA MIRAI) |
---|---|
ボディサイズ[mm](全長×全幅×全高) | 4,890×1,815×1,535mm |
ホイールベース[mm] | 2,780mm |
トレッド前/後[mm] | 1,535/1,545mm |
車両重量[kg] | 1,850㎏ |
最小回転半径[m] | 5.7m |
FCスタック型式 | FCA110 |
FCスタック最高出力[kw(ps)] | 114(155)kw(ps) |
高圧水素タンク容量[L](2本) | 122.4L(前方60.0L/後方62.4L) |
モーター最大出力[kw(ps)] | 113(154)kw(ps) |
モーター最大トルク[N・m(kg-m)] | 335(34.2)N・m(kg-m) |
駆動用バッテリー | ニッケル水素電池 |
容量[Ah] | 6.5Ah |
サスペンション(フロント/リヤ) | ストラット式コイルスプリング/トーションビーム式コイルスプリング |
最高速度(㎞/h) | 175㎞/h |
一充電走行距離距離[㎞] | 約650㎞(JC08モード走行パターンによるトヨタ測定値) |
定員[人] | 4人 |
税込価格[円] | 7,236,000円 |
発表日 | 2014年11月18日 |
レポート | 松下 宏 |
写真 | トヨタ/編集部 |
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