トヨタ ミライ(MIRAI)長期評価レポートVol.6 ついに納車! ミライから始まる水素社会への第1歩を踏み出した!
納車時は、水素満タン! これから、実生活で使った上で分かる「ミライの本当の姿」をレポートしていく!
トヨタ ミライ が納車になった。納車前に、水素が満タン状態で納車なのかどうかと心配していた。と、言うのも土曜日に納車されても、近隣の水素ステーションはすべて休業日。そうなると、土日はどこへも行けないし、月曜朝早くからの取材にも対応できないからだ。
そこで、東京トヨペットに引き取りに行く前に確認すると、水素は満タンの状態で出荷されるとのこと。ちょっと、ホッとした。ガソリン車やディーゼル車は、燃料がほぼ空の状態で引き渡されるから、クルマを引き取ったらすぐにガソリンスタンドに向かわなければならないが、ミライはその必要がなかった。そのあたりも、トヨタも気を使っている。水素の充填インフラが十分ではないので、しばらくはこの方式が採用されるのだろう。
納車に当たっては手続きがいろいろあって、カーナビ&Tコネクト関係の暗証番号の設定など、私としては初めて経験することがいろいろあった。クルマを買うってけっこう面倒なことになっているのだなと。ほかにも細々とした手続きがあって、簡単にクルマを引き取って帰るということではなかった。
ともかく、世界初の量販FCVであるミライが、早くも納車されたことは感無量。これから、ミライを実際に使いながら、体験しないと分からない徐々に進み始めた水素社会やミライの本当の姿をレポートしていく。
法人、官公庁のリースではなく、個人への「販売」ができたことがミライの凄さ!
ミライを手に入れて感じるのは、やはり走ることで環境を悪化させないことに対する誇りだ。これは電気自動車でも同じことが言えるが、電気自動車は航続距離が短く普通のクルマのようには使えない。タウンユース限定の使い方になるので、1台で遠出から街乗りまで間に合わせるのは難しい。それに比べるとミライは水素充填インフラの制約こそあるものの、電気自動車に比べると航続距離がずっと長いので1台で間に合うのだ。
また、個人的な条件でいえば、集合住宅に住んでいる私には、駐車場に充電設備を設けられないので、電気自動車は買えない。自宅以外での急速充電だけで、電気自動車に乗るのはちょっと無理が大きい。電気自動車を買えるのは事実上、戸建て住宅に住んでいる人に限られる。こうした理由もあり、私はトヨタ ミライを選んだ。
ミライに話を戻すと、究極の環境性能車に乗るのは、それ自体が大きな喜びでもある。これまで世界中の自動車メーカーが開発を競っていた燃料電池車が、ミライという形で具現化され、それをいち早く手に入れたのはとてもうれしい。
世界的に見ると、ヒュンダイ自動車が少し前から燃料電池車を走らせているから、ミライが世界初とはいえないのだが、日本ではミライが初の燃料電池車である。
ダイムラー やGM などは、トヨタ よりも早くから燃料電池車の開発に取り組んできたが、市販できたのはトヨタが最初である。これは日本人として誇りに思うべきことで、その意味でも最初に市販された燃料電池車に乗れるのはうれしい。初物好きとか、そんなレベルではないうれしさだ。
しかも、過去の燃料電池車がFCHVアドバンスにしてもFCXクラリティにしても、リース方式での供給で販売ではなかった。リースは、短い期間内に貸し出しているというもので、一定の期間が終わると車両は回収される。
ところが、今回のミライは完全に売り切りの販売である。ミライは買ったユーザーが煮て食おうが焼いて食おうが、好きにできる。もちろん煮ることも焼くこともできないが、リースではなく販売したことはトヨタの自信の表れと見ることができる。
初ロングドライブでは、航続距離約350㎞?
納車後、一度だけ長距離を走った。自宅から箱根の マツダ ターンパイクを往復した。長距離というほどの距離ではない。ただ、この距離がミライにとっては、けっこうな長距離であることが分かった。
箱根往復以外にも少々走ったが、今回はターンパイクの急な登りでけっこう電気を使った。東京まで戻ってトリップメーターが260kmほど走った時点で、燃料残量警告灯が点灯した。この時点で残りの水素による航続可能距離は80kmを切っていたから、今回は満タンで350km以下しか走れない計算になった。ちょっと足が短いなという印象である。まぁ、3人乗車で高速&勾配のキツイルートということもあり、ややミライにとっては不利な条件でもある。もう少し、平坦な道であれば航続距離は伸びると感じた。
水素供給インフラで、東京23区内で今のところ商業利用が可能なのは4か所だ。そのうち2か所が自宅から比較的近くになる。ひとつ目が芝公園で7kmほどの距離。そして、2つ目が三番町で5kmほどの距離にある。一番近いのが三番町なのだが、営業時間が短いので芝公園のほうが使いやすそうだ。
水素ステーションは、数が少ないだけの問題ではない。土日休みで営業時間は9:00~17:00、場合によっては更に営業時間が短いなど、使い勝手の悪さもまだまだ改善しなくてはならない点だ。
ミライで初の水素充填。1㎞当りの走行コストは14.8円!
今回は、箱根から戻る途中で六本木に立ち寄ったこともあり、芝公園で充填した。最初に納車前の段階ですでに30kmほど走っていた。その後、私が走らせた感じだが、トリップメーターが261kmの表示で充填できたのが3.26kg。水素1kg当り80.1kmの走行だった。水素代は3872円だったので、1km当たり14.8円ほどの走行コストだったことになる。
ミライを購入する前に乗っていたBMW320dが、ディーゼル といこともあり満タンにすると軽く1000km走れる航続距離があった。軽油なので、燃料代も安かった。それと比べると、航続距離は3分の1くらいに、また燃費費は倍くらいになったイメージである。まあ取り敢えず1回目の充填なので、今後充填を重ねることでデータが平均化され、ミライの本当の姿が見えてくるはずだ。
トヨタ ミライ価格、航続距離、スペックなど
■トヨタ ミライ価格:7,236,000円
代表グレード | トヨタ ミライ(TOYOTA MIRAI) |
---|---|
ボディサイズ[mm](全長×全幅×全高) | 4,890×1,815×1,535mm |
ホイールベース[mm] | 2,780mm |
トレッド前/後[mm] | 1,535/1,545mm |
車両重量[kg] | 1,850㎏ |
最小回転半径[m] | 5.7m |
FCスタック型式 | FCA110 |
FCスタック最高出力[kw(ps)] | 114(155)kw(ps) |
高圧水素タンク容量[L](2本) | 122.4L(前方60.0L/後方62.4L) |
モーター最大出力[kw(ps)] | 113(154)kw(ps) |
モーター最大トルク[N・m(kg-m)] | 335(34.2)N・m(kg-m) |
駆動用バッテリー | ニッケル水素電池 |
容量[Ah] | 6.5Ah |
サスペンション(フロント/リヤ) | ストラット式コイルスプリング/トーションビーム式コイルスプリング |
最高速度(㎞/h) | 175㎞/h |
一充電走行距離距離[㎞] | 約650㎞(JC08モード走行パターンによるトヨタ測定値) |
定員[人] | 4人 |
税込価格[円] | 7,236,000円 |
発表日 | 2014年11月18日 |
レポート | 松下 宏 |
写真 | トヨタ/編集部 |
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