トヨタ ミライ(MIRAI)長期評価レポートVol.8 往復約700㎞! ロングドライブで分かったミライの本当の燃費と実力!!(往路編) [CORISM]
ミライの航続距離650㎞というのは本当か? ミライの燃費は、水素1kgで何キロ走れるかが「㎞/㎏」で表示される
トヨタ ミライは、JC08モードでの航続距離が650kmとされている。ただ、カタログ上のデータと実際の航続距離の間に大きな違いがあるのはガソリン車やハイブリッド 車、電気自動車 と同じで、ミライも実際に650kmもの距離を走れるわけではない。なので、どれくらいの距離を走れるのか、今回はそれを試してみた。
参考までに改めて書いておくと、ミライの水素タンクには約5kgの水素を充填できる。5kgの水素で650kmの走行が可能ということは、JC08モード走行をすると1kg当たり130kmほどの距離を走れる計算だ。もちろん走り方によって水素1kg当たりの走行距離は変わる。いずれにしても燃料電池車の燃費は、km/kgという単位で示される。
一般にガソリン車やハイブリッド車はカタログに表示される燃費のざっと70%くらいが実際の燃費である。電気自動車ではざっと50%から良くて60%程度の航続距離になるのが普通だ。
ミライも水素を満充填にしたときに表示される航続距離は、400kmから440km程度であるのが普通だから、JC08モードの数値から見るとざっと65%程度である。
長距離ドライブといっても、水素ステーションが少なすぎるため、目的地は「水素ステーションがあるところ!」という訳で、ミライを生産している元町工場に決定!
東名高速を使い東京から名古屋市内までは、340kmから360km程度の距離がある。なので名古屋を目指しても良かったのだが、東京から330km先の豊田IC水素ステーションを目指すことにした。これなら間違いなくたどりつけるだろうし、帰りも大丈夫だろうという計算だ。豊田IC近くには、ミライの生産工場である元町工場がある。里帰り感もあり、元町工場にも寄ってみた。
登りでは10%ほど燃費ダウン!
宮前平駅近くの東名川崎ICから、まずは海老名SAまでの区間を走らせた。速度は100㎞/hを上限として走行。あまりアップダウンのない区間である海老名SAまでは、72.2kmを走り燃費は106.2km/kgだった。
問題は、海老名SAから足柄SAまでの区間。急な登り坂の多い区間である。燃費値は期待できない区間だ。その48.6kmの距離を平均車速84km/hで走行。この区間の燃費は、94.7km/kgとやや悪化した。登りでは10%ほど燃費が悪化する傾向だ。
ミライの燃費計の上限は200.0㎞/㎏であることが判明! 長い下り坂に強いミライ146.9km/㎏を叩き出す!
そのまま数字がまったく変わらなくなったので、ミライの平均燃費の表示の上限が200.0km/kgであることが分かった。この区間では100km/hでのクルージングを続けていてこの数値に張りついたので、実際にはこれ以上の燃費が出ていたことになる。発進直後には、わずかな距離ながらもっと燃費の悪い状態で走ったのに、平均燃費が上限に張りついたということは、それを上回る燃費性能だったからこの数値になったわけだ。
これほどの良い燃費がずっと続くなら、東京から大阪をはるかに超えて広島よりも先まで行ける計算になるが、世の中はそんなに甘くはない。200.0km/kgの燃費表示を見ながら、心の中ではむしろ不安が頭をもたげていた。
往路の下り坂でこれだけ良い燃費が得られるということは、同じコースを戻れば登り坂になる復路では、大幅に燃費が悪化して東京までたどりつけないのではないかという不安だ。これには、全く根拠がないわけではない。箱根ターンパイクを登ったとき、大幅に燃費が悪化したからだ。
東京から小田原まで極端なアップダウンがないコースを走ったときには、走行距離が1km伸びると、航続可能距離が1km減る。そんなリニアな感じで表示が変わっていた。ところがターンパイクの急坂を登り始めると状況が大きく変わった。走行距離が1km伸びると、航続可能距離が2km減る、イメージ的にはそんな感じで表示が変化していったからだ。
なので、今回のテストドライブでも、足柄SAから静岡SAまでの長い下り坂で稼いだ分は、帰りの登り坂でしっかりツケを払わうことになるのではないか、そんな不安を感じたのだ。
足柄SAから静岡SAまで、84.4kmを平均車速86km/hで走った結果の燃費は146.9km/kg。下り坂とはいえ相当に良い燃費であり、当たり前だが走行条件の良いときには良い燃費が出ることが分かった。
比較的平坦な高速道なら、航続距離は500㎞超の実力。ただし、この実力を生かすも殺すも水素ステーション次第?
静岡SAから、ここまでの距離は139.9kmで、この区間の燃費は124.8km/kgだった。ほぼ全区間が高速道路で基本的に90km/hから100km/h以下で走っていたから、これくらいの数字は当然といえば当然だが、高速道路だけを走るならJC08モード燃費に近い数字が出せることが分かった。
東京を出発してから豊田インターチェンジ水素ステーションまでの走行距離は345.3kmだった。豊田水素ステーションで充填した水素は3.02kgだったから、燃費は114.3km/kgということになる。わずかな一般道区間も含めた合計ながら、まずまずの結果だったといえる。水素の料金は1,080円/㎏だったので、3,262円だった。
豊田IC水素ステーションに到着した時点で、残りの航続距離は107kmと表示されていた。走行距離を足すと452kmの走行が可能ということになる。これが概ねミライの実力値と考えていいだろう。
静岡SA-豊田IC間の燃費だけで見れば、540kmくらいの航続距離を持つことになるが、この区間はほとんど高速道路だけの走りであることを考えたら割り引いて考える必要がある。また、436kmでも540kmでも、いずれにしても水素ステーションの配置を前提にしなければならない。自由に540kmを走れるわけではない。現実には、水素ステーションの配置を考えながら、400kmくらいをメドにした使い方をすることになるだろう。
豊田IC水素ステーション
水素ステーションは、イワタニの芝公園のように単独のものもあるが、ガソリンスタンドに併設する形のほうが多いようだ。石油会社が接地する水素ステーションは大半がこの方式になっている。立地の問題などを解消するのが容易だからだ。
豊田IC水素ステーションでは、法人客が大半になることを前提に、会員制度なども設けているとのことだった。
ちなみに水素代は、イワタニが1kg当たり1100円+消費税で1188円なのに対し、豊田インターチェンジ水素ステーションは100g当たり税込みで108円と表示されていた。水素の本体価格は1kg当たり100円安い1000円になる計算である。
トヨタ ミライ価格、航続距離、スペックなど
代表グレード | トヨタ ミライ(TOYOTA MIRAI) |
---|---|
ボディサイズ[mm](全長×全幅×全高) | 4,890×1,815×1,535mm |
ホイールベース[mm] | 2,780mm |
トレッド前/後[mm] | 1,535/1,545mm |
車両重量[kg] | 1,850㎏ |
最小回転半径[m] | 5.7m |
FCスタック型式 | FCA110 |
FCスタック最高出力[kw(ps)] | 114(155)kw(ps) |
高圧水素タンク容量[L](2本) | 122.4L(前方60.0L/後方62.4L) |
モーター最大出力[kw(ps)] | 113(154)kw(ps) |
モーター最大トルク[N・m(kg-m)] | 335(34.2)N・m(kg-m) |
駆動用バッテリー | ニッケル水素電池 |
容量[Ah] | 6.5Ah |
サスペンション(フロント/リヤ) | ストラット式コイルスプリング/トーションビーム式コイルスプリング |
最高速度(㎞/h) | 175㎞/h |
一充電走行距離距離[㎞] | 約650㎞(JC08モード走行パターンによるトヨタ測定値) |
定員[人] | 4人 |
税込価格[円] | 7,236,000円 |
発表日 | 2014年11月18日 |
レポート | 松下 宏 |
写真 | トヨタ/編集部 |
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