日産スカイライン長期評価レポート Vol.11 「走る楽しさと最先端のインテリジェント ドライビングが融合」
60年を超える歴史をもつスポーツセダンが日産スカイライン
日本を代表するスポーツセダンが日産スカイラインだ。誕生したのは1957年4月だから、60年を超える長い歴史を持っている。生み出したのは富士精密工業(後のプリンス自動車、現・日産自動車)だ。母体は飛行機メーカーだから、性能面だけでなく安全性にも強いこだわりを持っていた。
スカイラインは、2代目のときに「GT」を設定。これ以降、卓越したパフォーマンスと革新的なメカニズムを設計に織り込み、日本のスポーツモデル市場を牽引し続けている。
常に挑戦の姿勢を貫いてきたスカイラインは、その時代の最先端技術を積極的に採用してきた。だから、スカイラインは「技術の日産」の象徴となっている。
日本初登場! V6 3.0Lツインターボを搭載
21世紀の2001年6月に誕生した11代目のV35型スカイラインからは、時代が求める新しいパワートレインと新しいパッケージングを採用し、世界に通用する大人のプレミアムスポーツセダンへと成長を遂げた。
その最新作が13代目のV37型スカイラインだ。2019年夏に大掛かりな商品改良を行い、先進技術のスカイラインを一段と鮮明にしている。エクステリアでは、フロントにVモーショングリルを採用したことがニュースだ。また、リアコンビネーションランプも、スカイラインのアイコンである丸型4灯式に変更している。インテリアは質感を高めた。
パワートレインは、3.0LのV型6気筒DOHCツインターボ2機種と3.5LのV型6気筒エンジンにモーターを加えたハイブリッドを用意している。日本初お目見えのVR30DDTT型DOHCツインターボを積むターボ系は、224kW/400N・m(304ps/40.8kg-m)、ハイパフォーマンスバージョンの「400R」は298kW/475N・m(405ps/48.4kg-m)の性能だ。トランスミッションは、電子制御7速ATを組み合わせた。
日産独自の1モーター2クラッチ式のインテリジェントデュアルクラッチコントロールを採用したハイブリッド車は、225kW/350N・m(306ps/35.7kg-m)を発生する6気筒エンジンに50kW/290N・m(68ps/29.6kg-m)を発生するモーターの組み合わせだ。
ハイブリッド車、ガソリン車ともにステアリングシステムをバイワイヤ式のDAS(ダイレクトアダプティブステアリング)を装備。ガソリン車には、セミアクティブ式の電子制御サスペンション、IDS(インテリジェント・ダイナミック・サスペンション)を設定。400Rには、このIDSを標準装備している。
360°センシングと高精度3Dマップにより可能となったハンズオフ走行
また、最も注目すべきは、ハイブリッド車に搭載された「プロパイロット2.0」だ。プロパイロット2.0は、運転支援技術レベル2。レベル2は、アクセルとブレーキの両方の操作を電子制御し、前を走っているクルマに追従して走行できることに加え、車線をはみ出さないようにアシストしたり、レーンチェンジのステアリング操作を自動で行う。
プロパイロット2.0は、ナビゲーションシステムで目的地を設定し、高速道路の本線に合流すると、ナビと連動して「ルート走行中の車線変更と分岐」、「追い越し時の車線変更」をアシストする。
ドライバーが確実にステアリング操作できると判断すると、同一車線内でのハンズオフ機能を使った手離し運転が可能だ。また、手を添える必要はあるが、先行車の追い越しやルートの分岐についてもアシストを行ってくれる。
プロパイロット2.0を搭載したスカイラインは、前方を認識するカメラとレーダー、ソナー、そしてGPSを使っている。大きく違うのは、三次元の高精度の3D電子道路地図データを併用していることだ。カメラも遠中近の3つの位置を把握できる3眼を含め、前後に計7つを配した。また、レーダーは5個、ソナーは12個あり、全方位360度のセンシングを可能にしている。
現在までの主流となっている走行ライン制御、レーンキープアシストでも道路環境が整っていれば、車線内をはみ出すことなく走行することができた。だが、プロパイロット2.0は、制御精度の次元が違う。
車線内だけでなく、cm単位で自車の走行地点を把握しているのである。ルート情報に加え、道路の形や傾斜、車線本数などの道路情報も得て、自車位置を正確に把握しているのだ。カメラではチェックしきれない前方の情報までを加え、絶妙に制御しているから、ステアリングから手を離しても安全に走行を続けることができる。
簡単操作で起動するプロパイロット2.0
プロパイロット2.0の設定は簡単だ。高速道路の本線に入ったら、ステアリングのスポーク部の右側にあるメインスイッチで起動させ、クルーズコントロールの速度設定をすれば完了だ。
ステアリングの支援が始まるとディスプレイの表示がグリーンになり、前走車を設定した速度で等間隔を保ったまま追従してくれる。
これに続き、表示がブルーに変わればハンズオフでの走行が可能だ。プロパイロット2.0の運転支援機能を使えるのは高速道路の制限速度内。そのため、設定できる速度も制限速度からプラス10km/hの領域までとした。ハンズオフ機能を使わないのなら、プラス10㎞/h以上の設定も可能。車線維持や前走車追従機能なども行ってくれる。
もちろん、プロパイロット2.0は、すべてにおいて万能ではない。3D地図データがない区間やGPSの信号が届かない長いトンネルではハンズオフ機能は作動しない。
クルマが車線変更を提案する?
プロパイロット2.0を使い高速道路を走行して驚かされたのは、車線を認識する精度がケタ違いに高く、直進安定性も優れていたことだ。ドライバーの視界の先を正確に読み取っているから、車線の中央をふらつくことなく走り続けた。勾配のついたカーブでも蛇行することなく、上手に中央付近にとどまっている。制限速度が100km/hから80km/hに下がったときは、カメラが標識を認識し自動的に減速を行うなど、快適なクルージングを楽しめた。
また、前方に遅いトラックなどがいれば、追い越しを提案してくれるのも新しい発見だ。ドライバーが追い越したいと判断し、ステアリングに手を添えてスイッチを操作すれば、ウインカーランプを点滅させながら右車線に出て追い越しも行ってくれる。追い越しを終了し、走行車線に戻るときも同様な提案がされ、追い越し時と同様の手順で走行車線に戻ることができる。分岐点でも車線変更を提案し、安全だと判断すれば車線変更を行う。
週末の渋滞シーンでも停止から30秒以内に先行車が動き出せば、自動的に発進するなど、疲労軽減に大きく役立つ機能を満載した。ディスプレイも見やすい。操作も簡単だから、すぐに使いこなせるだろう。
スカイライン ハイブリッドのステアリングを握る前は、この手の運転支援技術の実用化については半信半疑だった。だが、プロパイロット2.0の実力は予想した以上に高く、ステアリングから手を離して安心してクルージングできる快感だけでなく、ロングドライブでの疲労軽減にも大きな効果を発揮する。
走る楽しさとストレスフリーを両立したプロパイロット2.0
操る楽しさにこだわるスカイラインのオーナーやファンは、自動運転の未来を好まないかもしれない。だが、いつでも自らが積極的に運転したいという状態ではないときもあるだろう。
例えば、仕事帰りやレジャーの後など、体が疲れているときや、交通量が多くストレスが溜まる状況などでは、クルマの運転を楽しむ余裕などないはずだ。
そんな時には、プロパイロット2.0を使いリラックスして安全に移動。運転を楽しみたいときは、プロパイロット2.0のスイッチをオフにして、スカイラインハイブリッドの気持ちいい走りを満喫すればいいのだ。ドライバーの都合に合わせて、自由に選択できるのは大きな魅力といえる。
レスポンスが良く異次元の加速が楽しめるスカイライン ハイブリッド
最後に、スカイラインハイブリッドの走りの実力について述べておこう。質の高いドライビングプレジャーは、最新のスカイラインにも受け継がれている。試乗したハイブリッドGTタイプSは、モーターの後押しによって瞬時にパワーとトルクが湧き上がり、異次元の加速を楽しむことができた。EV走行の領域が広いから静粛性や快適性も優れている。
6気筒エンジンならではの上質なパワーフィーリングも魅力だ。新設定の3.0Lツインターボもパンチがあり、軽やかに回るからエキサイティングな走りを存分に楽しむことができた。
ハンドリングは、プレミアムカーらしい上質な味わいのなかに、スカイラインらしいキレのよさがある。DASは、洗練度を大幅に高めた。
ステアリングを切ると、意のままに、狙った通りにクルマが向きを変える。また、路面に吸い付いたかのような安定感のある走りも自慢ひとつだ。それでいて、後席でも快適である。最新のスカイラインは、運転が上手くなったと感じさせる上質なアスリートセダンに成長するとともに、プロパイロット2.0を搭載することによってインテリジェントな走りまでも手に入れた。
<レポート:片岡英明>
日産スカイライン価格
GT Type SP 6,160,000円
GT Type P 5,816,800円
GT 5,575,900円
■V6ターボ車
GT Type SP 4,908,200円
GT Type P 4,638,700円
GT 4,353,800円
400R 5,625,400円
日産スカイライン 燃費、ボディサイズなどスペック
■代表グレード 日産スカイライン 350GT HYBRID Type SP
ボディサイズ[mm](全長×全幅×全高) 4,800×1,820×1,440
ホイールベース[mm] 2,850
トレッド前/後[mm] 1,535/1,560
車両重量[kg] 1,840
エンジン型式 VQ35HR
総排気量[cc] 3,498
エンジン最高出力[kw(ps)/rpm] 225〈306〉/6,800エンジン最大トルク[N・m(kg-m)/rpm] 350〈35.7〉/5,000
モーター最大出力[kw(ps)] 50〈68〉
モーター最大トルク[N・m(kg-m)] 290〈29.6〉
ミッション 7速AT
サスペンション(前:後) ダブルウィッシュボーン:マルチリンク
タイヤサイズ前後 245/40RF19
JC08モード燃費 14.4km/L
定員[人] 5
発表日 2019年7月16日
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