日産スカイライン長期評価レポート Vol.12 スカイライン史上最強の405ps! 刺激的な走りを得た400R

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2019/12/15

日産スカイライン400R

 

売れないセダンマーケットに、魅力的なモデルが登場した!

日産スカイライン400R「日本ではセダンの人気が低い」。そんなフレーズを随分と長く耳にしてきたが、いま日本で売れている乗用車をみると、ハッチバックやミニバン、SUVに軽のスーパーハイトワゴンなど、カジュアルなボディタイプが圧倒的な人気を得ている。対して、セダンは折り目正しい正統派のイメージで、品格を纏う上では、この上なく魅力的に映るポテンシャルを備えていることは間違いない。

品格のあるセダンなのだが、購入層の平均年齢が高い。それゆえに、オジサンのクルマとして見られがちだ。そんなオジサンに向けたクルマづくりであれば、少ないなりにある程度の販売台数は見込める。だが、それだけでは胸のすく走りとともに、カッコ良くクルマを乗りこなしたいというコダワリ層の気持ちを捉えるのは難しい。

ところが、ここに来て興味をそそられる国産セダンが登場したのだ。そのクルマこそ、今回ご紹介する「日産スカイライン 400R」だ。

日産スカイライン400R

 

 

開発陣のスカイライン愛を感じる外観デザイン

日産スカイライン400R 藤島知子
自動車ジャーナリストの藤島知子。レース活動も積極的に行っていて、走行性能にもこだわる数少ない女性ジャーナリスト。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員でもある。2019-2020日本カー・オブ・ザ・イヤーでは、スカイラインハイブリッドのプロパイロット2.0も高く評価した。

スカイラインといえば、13代目となる現行型が2014年に登場して、はや5年が経過している。そんなスカイラインが、2019年9月にビッグマイナーチェンジを実施。

マイナーチェンジの大きなトピックは3つ。1つめは、外観の変更。2つめは、ハイブリッド車のみに設定されている「プロパイロット2.0」の初採用。3つめは、ガソリンエンジンが刷新されたことだ。

まずは、1つめのデザインから。2014年にデビューした際、スカイラインがインフィニティバッヂを付けて登場したことに驚かされた。低く構えたフロントグリル、精緻に組み上げられたボディのディテールが全体を美しく仕立ていて、大人のスポーツセダンを思わせる風貌だった。

多くの最新技術をいち早く採り入れる点では、スカイラインらしかったが、デザインの面では、ハイテクでカッコいいセダンではあるが、どこか冷たい印象を受けた。

ところが、今回ビッグマイナーチェンジされたスカイラインは「日産らしさ」と「スカイラインらしさ」を同時に手にして戻ってきたのだ。フロントフェイスは、Vモーショングリルを中心とした日産車共通イメージの顔に変更。グリル中央には、インフィニティではなく、日産エンブレムが誇らしげに輝いている。低く構えたグリルは、全体を低重心に見せている。インテリな大人のイメージを備えながら、どこかワルなイメージも残されている。

リヤ周りを見てみると、テールランプは丸目4灯が浮かび上がっているではないか。「これぞ、スカイライン!」ともいえる変貌ぶりは、ファンにとっては待ち望んでいたスカイラインの姿といえるだろう。しみじみと眺めていたら、作り手である開発陣の“スカイライン愛”が滲み出ているように思えてきた。

 

 

高速道でストレスフリーの移動が楽しめる

日産スカイライン
プロパイロット2.0には、フロント3つのカメラを含めカメラが7個、レーダーは5個、音波ソナーは12個も装備。こうしたセンサーが、周囲の車両、白線、道路標識などを検知。3D高精度地図データなども加わり、ハンズオフでの走行が可能となっている。

2つめのプロパイロットは、高速道路を走行中、全車速で前走車に追従走行。車線の中央付近を維持して走る操舵支援も行う。渋滞時での発進・停止も繰り返すことが可能で、ドライバーの疲労を大幅に軽減してくれる非常に便利な機能だ。

プロパイロット2.0として進化したポイントは、まずはカーナビで目的を地設定。高速道路上に入り、プロパイロットを設定すると、一定の条件を満たした時にドライバーがハンドルから完全に手を離した状態で操舵支援を行う「ハンズオフ」機能が国産車として初めて搭載された。ハンズオフできるからといって、よそ見などをしていいというわけではない。ドライバーは前方を注視して、すぐに自ら運転できる状況にしていなければならない。

これは、現段階ではあくまでも事故の責任はドライバーにあるもので、完全な自動運転ではなく、運転をサポートする機能だからだ。従来のプロパイロットでも十分にドライブのストレスを減らしてくれたが、プロパイロット2.0はさらにその上を行き、ストレスフリーに近い高速移動を提供してくれる。

また、前方の遅いクルマに追いついた場合、クルマ側から車線変更の提案がある。車線変更する場合、ステアリングに手を添えて承認スイッチを押せば、自動でウインカーが点滅し、後方の安全を確認後車線変更を行う。追い抜き完了後は、同様の操作で走行車線に戻ることができるのだ。クルマの動きも非常に安定していて、想像以上に安定感があった。今のところ、このプロパイロット2.0はスカイライン ハイブリッド車のみの装備。順次、多くの車種に展開されていくとのことだ。

こうした優れた技術が高く評価され、スカイラインは2019-2020日本カー・オブ・ザ・イヤー イノベーション賞を受賞した。

日産スカイライン400R

 

 

ハイパフォーマンスなスカイランの復活をイメージさせる400R

日産スカイライン400R
スカイライン史上最強と呼ばれる400R用VR30DDTT型V6 3.0Lツインターボエンジンは、405ps&475N・mを発揮する。400R用のエンジンには、専用のターボ回転センサーが装着され、より緻密な制御を行う。これにより、ベースエンジンよりプラス100ps以上ものパワーを得た。

そして、個人的に最も注目しているのは、3つめのガソリンエンジン車に搭載されるパワーユニットが刷新されたことだ。スカイラインには、以前はダイムラー製の2.0L直4 ターボが搭載されていた。マイナーチェンジでは、そのエンジンと差し替える形で、新たに3.0L V6ターボエンジン(VR30DDTT)を搭載してきた。V6ターボは2タイプの設定があり、通常モデルは304ps&400Nmの出力を発揮する。

その3.0L V6エンジンをさらに405ps&475Nmまでパワーアップしたエンジンを搭載したモデルが、その名も「400R」だ。

未来は、環境問題を考慮して電動化することを免れない状況になっていく。そんな中、100%ピュアエンジンの走りを楽しむ上で、これが最後のチャンスなのかもしれない。

また、時代が小気筒数化、小排気量化しているのを横目に、従来の2.0Lターボよりもパワフルなエンジンを搭載してみせたというのも、根底には赤い血が流れるスカイラインらしさなのだろう。400Rは、あえてこうした時代に対するアンチテーゼを唱えてきたのかもしれない。

また、GT-Rが雲の上の存在としてスーパースポーツ化してしまった今、スカイラインにハイスペックな仕様を熱望するファンは少なくなかったハズだ。そんな路頭に迷っていた日産ファンの心を掴むモデルとして、400Rは大注目の存在。まさに、今回のスカイラインが単なるマイチェンの領域を超えて話題となっているのも、このモデルの復活にあるといっても過言ではない。

実際、初期のスカイラインの販売状況は400Rが約36%も占め、通常のターボモデルを合わせると、全体の約63%がターボモデルだという。スカイラインのマイナーチェンジは、プロパイロット2.0で先進技術を求める日産ファン、400Rはスカイラインに速さを求める日産ファン、それぞれのハートをガッチリと掴んだ。

 

 

背中がヒリヒリする刺激を与えてくれるスカイライン400R

日産スカイライン400Rさて、肝心な400Rの走りだが、今回は高速道路とワインディングで走行する機会を得た。優しく流す段階では、堂々とした振る舞いでゆったりと静かにクルージングしていくことができる。そのあたりは知的な大人のセダンとしての一面が顔を覗かせる。

ところが、アクセルペダルを深く踏み込んでいくと、エンジン回転の高まりとともにターボの過給が始まり、後輪がホイールスピンを起こすギリギリ手前のところまで力強いトラクションを掛けながら車体を前に押し出していこうとするのだ。

無論、現代のクルマだけに、電子制御で挙動の乱れが起こったとしても、コントロールしてみせるが、いつの間にか平穏無事なクルマが増えたこの時代に、ちょっと背中がヒリヒリするような刺激性を与えるあたりは確信犯ともいえる部分。ジェントルマンが、突然、スポーツマンに変身したようなイメージだ。

この強烈な加速力は、スカイライン史上最強の400馬力超というその数字に相応しいインパクトを受けた。ハイブリッド車の走りは安定性を得てクルージングしていくイメージだが、400Rは軽快さという魅力も感じる。最近、こうした国産セダンがないこともあり、とても新鮮で刺激的な感覚になる。

 

 

クルマとの一体感があるスカイライン400R

日産スカイライン400R
スカイライン400Rのシートは、ダイヤキルティング/レッドステッチの本革スポーツシートが装着されている。高級車らしい質感と体をしっかりと支えてくれる機能性を両立。

カーブを駆け抜けるシーンでは、車体の挙動変化を感じながら、クルマが求める操作を行い、自らの意思を伝えていく。クルマと心を一つにして走る感覚は、まさにスポーツセダンを操る醍醐味だと思えた。

スカイラインに装備されたユニークな技術であるDAS(ダイレクト・アダプティブ・ステアリング)も、随分洗練された。DASは、ステアリングと前輪が物理的につながっていないバイワイヤ技術。

デビュー時は、ややクセのある感覚だったが、マイナーチェンジ後のモデルでは、かなり洗練されて自然なフィーリングになった。DASのメリットは、わだちなどで、ステアリングが取られるようなこともなく、直進性が強くクルマが安定していること。そして、V6 ターボ車のDASは、専用チューニングが施され、レスポンスの良いハンドリングが楽しめた。

日産スカイライン400R一般的に、ステアリング操作に対するレスポンスを高めると、直進安定性が悪くなりフラフラする傾向になるのだが、スカイラインはビシっとした優れた直進安定性をもっている。これが、DASの効果でもある。

また、400Rにはインテリジェント ダイナミックサスペンションが標準装備されている。車両挙動データを瞬時に解析して、4輪それぞれの減衰力を最適制御を行うサスペンションだ。

走りを楽しむときには、フラットな車体姿勢を積極的に確保。少し大きなボディのスカイラインだけど、意外なほどスイスイと右へ左へと自在に向きを変えてくれるので、とても気持ちよい走りが楽しめた。また、ドライブモードセレクターで減衰力特性を自ら選択することもできる。新技術と優れた走りへのあくなき挑戦を続けていたスカイラインのDNAを感じるモデルだった。

 

 

若い世代も注目? 400Rがアピールする新たなスポーツセダン像

日産スカイライン400R先日、スカイラインの開発者と立ち話をしていたところ、嬉しいことに今回のモデルは400Rの人気も高く、20代や30代の若者も購入している傾向が見られるという。

スカイラインの輝かしいストーリーを人づてに聞いて育った若い世代にも、このクルマの魅力が伝承されていると考えれば、「日本のセダンも、まだまだ捨てたものじゃない」と、何だか嬉しい気持ちになった。

<レポート:藤島知子>

 

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日産スカイライン価格

■ハイブリッド車

日産スカイライン400RGT Type SP  6,160,000円

GT Type P 5,816,800円

GT 5,575,900円

■V6ターボ車

GT Type SP 4,908,200円

GT Type P 4,638,700円

GT 4,353,800円

400R 5,625,400円

 

 

日産スカイライン 400R 燃費、ボディサイズなどスペック

■代表グレード 日産スカイライン 400R

日産スカイライン400Rボディサイズ[mm](全長×全幅×全高) 4,810×1,820×1,440

ホイールベース[mm] 2,850

トレッド前/後[mm] 1,530/1,560

車両重量[kg] 1,760

エンジン型式 VR30DDTT

総排気量[cc] 2,997

最高出力 kW [PS] /rpm 298 [405] /6400

最大トルク N・m [kgf・m] /rpm 475 [48.4] /1600-5200

ミッション 7速AT

サスペンション(前:後) ダブルウィッシュボーン:マルチリンク

タイヤサイズ前後  245/40RF19

WLTCモード燃費  10.0km/L

定員[人] 5

発表日 2019年7月16日

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