BMW 3シリーズ(G20型)長期評価レポート vol.8 優れた走る楽しさと環境性能を両立したPHEV 330eを試す!
積極的に電動化技術を投入しているBMW
電動化に積極的に取り組んでいるBMWは、先代のF30系3シリーズにハイブリッド車のアクティブハイブリッド3を設定した。
これは、3.0Lの直列6気筒DOHCターボに電気モーターを組み合わせた高性能ハイブリッド車だ。アクティブハイブリッド3で、モーターによる気持ちいい走りを強くアピールしたBMWは、後期モデルになると2.0Lの直列4気筒DOHCターボにモーターを組み合わせたPHEV(プラグインハイブリッド)車、330eを投入。地球に優しいプレミアムカーの世界を大きく広げている。
そして2019年、BMW3シリーズはモデルチェンジしてG30系となった。新型3シリーズのなかで、日本専用モデルとして送り出した320iとともに注目を集めているのが、PHEV車の330eだ。
日本には内外装をグレードアップし、サスペンションなどをファインチューニングしたスポーティかつ上質なMスポーツが輸入されている。
より扱いやすくパワフルになったハイブリッドシステム
BMW330eのパワートレインは、今までと同じ1998ccの直列4気筒DOHCターボに、瞬発力の鋭い電気モーターの組み合わせだ。エンジンの最高出力は135kW(184ps)/5000rpmと、まったく変わっていない。だが、最大トルクを270N・m(27.5kg-m)から300N・m(30.6kg-m)に増強させ、さらに扱いやすくしている。
しかも、モーターの出力を高めるとともに、リチウムイオンバッテリーの容量も従来モデルから、80%もアップし10.3kWhへとし、EV走行の領域を広げた。
モーター出力は、先代の330eが64kw(88ps)/250N・mだったのに対し、新型330eは83kW(113ps)/265N・mだ。また、エクストラブーストが追加され、この機能を使えばシステム出力は215kW(292ps)/420N・m(42.7kg-m)になる。
ヨーロッパ仕様はNEDC測定値で59kmの航続距離を達成し、CO2排出量は39g/kmとした。充電機能を持たないハイブリッド車よりはるかにクリーンだ。
EV領域がより広がり、滑らかさに磨きがかかった新型330e
第2世代の330eは、アクセルを踏み込むと気持ちよくクルマが前に出た。EVモードでのスタートが基本で、アクセルを強く踏み込むとパワーとトルクが一気に盛り上がる。モーターならではの鋭いレスポンスと低回転からの力強い加速、そして滑らかな加速フィールは大きな魅力だ。
エンジンがかかってからも力強いダッシュを披露した。1000回転台から湧きだす豊かなトルクを実感でき、応答レスポンスも鋭い。エンジン音もBMWらしい耳に心地よい音色だった。
スポーツモードを選ぶと、エンジンにモーターアシストの組み合わせが高回転を好む味付けになり、10秒間は高い過給を続けるエクストラブースト機能も働く。このモードでは40psの上乗せになるから、加速は4.0Lクラスのガソリンエンジンを凌ぐほどの俊足だ。330iよりパワフルだと感じられ、パンチの利いた刺激的な加速フィールを満喫できる。
車重は1800kgを超えるが、クルマが軽くなったのでは、と感じるほど加速は豪快だ。アクセルペダルを強めに踏むと、首を後ろに持っていかれ、身体がシートに押さえつけられた。ちなみに停止から100km/hまでの加速タイムは、わずか5.9秒だ。スポーツカー並みの速さを秘めている。
毎日、短距離移動ならEVでOK。優れた環境性能と経済性
街中の走りでは、モーター主体の上質な走行フィールだ。モーターを組み込んだ8速オートマチックのステップトロニックとの相性は抜群にいい。
低速でもトルク感たっぷりの走りを見せ、混んだ渋滞路でもフレキシブルな走りを披露した。エンジンがかかっても遮音が行き届いているから静粛性は高い。4気筒エンジンだが、不快な振動も上手に抑え込まれ、快適だった。
EVモードなら地球温暖化の元凶となるCO2を排出しない飛び切りマナーのいいゼロエミッションの走りも可能だ。しかも、バッテリーにたっぷり電気が溜まっていれば、120km/hまで快適なEV走行を楽しめる。
気になる330eの実燃費は、ハイブリッド状態で高速道路上なら、15km/L前後だ。仮に満充電で50kmをEV走行し、50kmをガソリンを使いハイブリッド走行し、100km走行したとしよう。この時の総合燃費は、約30km/Lになる。移動中に充電できれば、さらにEV走行の割合が大きくなるので、燃費は向上する。
乗り方や、充電環境によって燃費は大きく変わるのがPHEVだ。300kmの高速道路でのロングドライブを想定し、約50kmをEV走行。250kmをハイブリッドで走行するとしよう。15km/Lのハイブリッド燃費なら、約18km/Lの総合燃費になる。100km走行時の燃費からは、大きく落ちてしまう。
330eのガソリンタンクの容量は、40Lとガソリン車やディーゼル車の59Lより小さい。そのため、初回の充電だけでは航続距離はそれほど延ばせない。
ただ、ロングドライブ時の立ち寄り先などで、200Vの充電設備があれば、より航続距離は長くなり燃費も向上する。
330eが逆に得意とするのは、毎日の通勤や送迎で短距離移動を繰り返す場合だ。この場合、ほとんどEVで走れるので、ガソリンはほとんど減らない。ゼロエミッションなので、環境にも優しく、電気料金はガソリン代に比べれば大幅に安く経済的でもある。こうした使い方なら、330eは非常に魅力的だ。
とにかく給油しないで走りたいというロングドライブ派には、4WDとの組み合わせになるが、59Lタンクを積んだディーゼルターボの320dがいいだろう。
高速道路で法定速度内なら、燃費は20km/Lを下回ることはほとんどないだろう。これなら、1回の給油で約1200km走れる計算になる。
Mスポーツでも、乗り心地は良好
ハンドリングもスポーティな味わいだ。Mスポーツは引き締められたスポーツサスペンションにインチアップしたタイヤの組み合わせだ。これは、330eであっても変わらない。
サスペンションはフロントがダブルジョイントスプリングによるストラット、リアは5リンクとしている。タイヤはミシュラン製のパイロットスポーツ4の18インチで、前後異サイズだった。
Mスポーツは、引き締まった乗り心地になることが多いが、330eは車重が重いことがいい方向に奏功しているのだろう。プレミアムカーらしい、しっとりとした上質な乗り心地を身につけている。高速道路は得意だ。どっしりとした安定志向にしつけていて、足の動きもいいなど、気持ちいい走りを披露した。
だが、ガソリン車と比べると違いもある。ワインディングロードでは、リアの重さをやや感じさせる。ガソリン車は、スッキリとした操舵フィールで、狙ったラインに乗せやすいが、330eは軽快感がやや薄い。
渋滞時のハンズオフ機能は、疲労軽減に効果大!
鳴り物入りで採用された3眼カメラとミリ波レーダーを組み合わせた先進運転支援システムも標準装備されている。先行車両や車線などの認識能力は驚くほど高く、レーンキープ能力も違和感のない秀逸なものだった。
ステアリングから手を離して走行するハンズオフ機能も使ってみたが、思いのほか使えるシーンは多い。
一定時間を超えてドライバーがよそ見したときなどは警告を発して機能をキャンセルするが、うまく使えば疲労軽減に大きな効果を生むはずだ。
330eの価値は、環境性能と走行性能
PHEVの330eは魅力的なセダンだが、いくつか制約がある。そのひとつは、充電に数時間を必要とすることだ。もうひとつは、リチウムイオン電池を搭載している影響でトランク容量が375Lと、2シリーズ並みの広さにとどまっていることだ。
また、価格も650万円を超える。他のライバル車より、安価な価格設定でPHEVを普及させたいというBMWの想いを強く感じさせる。とはいえ、価格だけを見れば、かなりの高額車である。ひとクラス上である5シリーズのガソリン車という選択肢など、他の選択肢も考えられる。
ただ、ユーザーの多くは、EV機能より出来のいいハイブリッドシステムに魅せられているようだ。モーターをターボのようなパワーアップアイテムとしての魅力ととらえているのであれば、あえて330eという選択も価値あるもにになる。
今年は暖冬で、地球温暖化を明確に感じた人も多いだろう。環境問題も含め、地球に少しでも優しい上質なセダンであることは必須。しかし、そうは言っても、走る楽しさも捨てられない。環境問題と走る楽しさの両立できるクルマとして、BMW 330eはとても魅力的な1台だ。
<レポート:片岡英明>
BMW 3シリーズセダン価格
・320i 5,330,000円
・320i M Sport 5,940,000円
・320d xDrive 5,890,000円
・320d xDrive M Sport 6,410,000円
・330i M Sport 6,440,000円
・330e M Sport 6,670,000円
・M340i xDrive 9,800,000円
BMW 3シリーズ ツーリング価格
・320i ツーリング 5,670,000円
・320i ツーリング M Sport 6,190,000円
・320d xDrive ツーリング 6,140,000円
・320d xDrive ツーリング M Sport 6,660,000円
・330i ツーリング M Sport 6,690,000円
・M340i xDrive ツーリング 10,050,000円
BMW 330e、ボディサイズ、燃費などスペック
全長x全幅x全高(mm) 4,715x1,825x1,450
ホイールベース(mm) 2,850
トレッド F:1,585 R:1,570
車両重量(kg) 1,830
最小回転半径(m) 5.4
トランク・ルーム容量(L) 375
定員(名) 5
エンジン型式 B48B20B 直列4気筒DOHCターボ
総排気量(cc) 1,998
エンジン最高出力(kW 〔ps〕 / rpm (EEC)) 135〔184〕/5,000
エンジン最大トルク(Nm 〔kgm〕 / rpm (EEC) 300〔30.6〕/1,350-4,000
モーター最高出力 kW〔ps〕/rpm 83〔113〕/3,170
モーター最大トルク Nm〔kgm〕/rpm 250〔25.5〕/3,170
システム・トータル最高出力:215kW〔292ps〕
システム・トータル最大トルク:420Nm〔42.8kgm〕
燃料消費率JC08モード(国土交通省審査値)(km/ℓ) 15.4
燃料消費率WLTCモード(国土交通省審査値)(km/ℓ) 13.1
トランスミッション 8速AT
タイヤ F:225/45R18 R:255/40R18
サスペンション F:ダブル・ジョイント・スプリング・ストラット式 R:5リンク式
【関連記事】
- BMW 3シリーズ&ツーリング新車情報・購入ガイド アレが無くなった! カーブド・ディスプレイ装備で近未来感大幅アップ!【BMW】
- BMW M340i xDrive動画・評価 いいトコ取りのスポーツセダン【BLOG】
- BMW 3シリーズ(G20型)長期評価レポート vol.10 「アクセル踏んだらドーン!」初めてのPHEV、330e体験レポート【BLOG】
- BMW 3シリーズ(G20型)長期評価レポート vol.9 走りたい欲求を超刺激!「320d xDrive ツーリング M Sport」【BLOG】
- トヨタRAV4、今年のナンバー1に決定! 2019-2020 日本カー・オブ・ザ・イヤー【イベント情報】
- 軽自動車3台がランクイン! 2019-2020 日本カー・オブ・ザ・イヤー10 ベストカー決定 !!【イベント情報】
- BMW 3シリーズ試乗記・評価 期待を裏切らないスポーツセダン【BMW】
- BMW 3シリーズ新車情報・購入ガイド クラス最強のスポーツセダンへ! 買い得感もあり【BMW】
- BMW3シリーズ新車情報・購入ガイド 新世代クリーンディーゼルを搭載! 迫力のブラック キドニーグリルを装備した限定車「Celebration Edition “Style Edge”」を発売! [CORISM]【BMW】
- BMW3シリーズ新車情報・購入ガイド 自信の表れ? 新世代エンジンに変更されたものの、外観デザイン変更は微小となったマイナーチェンジ [CORISM]【BMW】
【オススメ記事】
- ホンダWR-V試乗記・評価 大満足か後悔か? 成功か失敗か? 見極め重要なコンパクトSUV【ホンダ】
- 日産エクストレイル(T33型)vs トヨタ ハリアーハイブリッド(80系)徹底比較!【対決】
- 日産フェアレディZ新車情報・購入ガイド 2025年モデルが登場! 納期は? 転売ヤー対策は?【日産】
- BMW M2クーペ(G87)試乗記・評価 「サーキットで乗ってみたい!」クルマ好き女子が試乗!【BMW】
- 2024-2025日本カー・オブ・ザ・イヤー、栄えある10ベストカーが決定! 今年のナンバー1は、どのクルマに!?【イベント】
- 2024-2025日本カー・オブ・ザ・イヤー、ノミネート車31台が決定!【イベント】
- マツダCX-80試乗記・評価 すべてに大人の余裕を感じた国内フラッグシップ3列SUV【マツダ】
- 三菱 アウトランダーPHEV新車情報・購入ガイド 大幅改良&値上げ。それでも、コスパ高し!!【三菱】
- スズキ フロンクス試乗記・評価 価格、燃費値を追加。欧州プレミアムコンパクトに近い上質感【スズキ】
- 日産セレナAUTECH SPORTS SPEC新車情報・購入ガイド 走りの質感を大幅向上した特別なモデル【日産】
CORISM公式アカウントをフォローし、最新記事をチェック!