出来の悪い右ハンドル車も存在する
安全面から考えると、日本では左ハンドル車はダメで、右ハンドル車が良いのですが、右ハンドル車なら良いというものではないのが難しいところです。
自動車メーカーがある先進国で右ハンドルなのはで実質的に日本だけで、ほとんどの自動車メーカーは左ハンドル国にあります。このため、ドイツにしてもフランスにしても、そうした左ハンドル国で作られる右ハンドル車の多くは、真剣に右ハンドル車のことを考えて作られていないのが実情です。
そもそもプラットホームの段階から、右ハンドル車のことを十分に考えていないため、2WD車ならそのまま右ハンドル車にできるのに4WD車を作ろうとすると構造的に左ハンドル車にしかできないというような例があります。また、左ハンドル車ならAT車にもエアコンを付けられるが右ハンドル車では両立しないなんて例も過去にありました。
ほかにも、右ハンドル車はそもそもペダルレイアウトが苦しくなりがちで、大きなクルマならともかく小さなクルマほどその傾向が強くなります。アクセルを踏んだつもりが右のタイヤのホイールハウスを踏んでいたなどというのは良いほうで、車種によっては体を半分横に向けるような座り方をしないと運転できないクルマがあったりします。これくらいになると、運転がしにくいので、安全面から考えてこの右ハンドル車はどうよ、ってな感じにもなります。
またブレーキの倍力装置が左ハンドル用のまま左側に配置されているため、ペダルを踏んでもロッド(棒)を介して倍力措置に伝わるまでに微妙なタイムラグがあり、ブレーキのフィールが悪いというか、急ブレーキのときの遅れ感につながるような例もありました。
倍力装置の問題はロッドの剛性を上げたり、ブレーキがペダルの踏力に頼るものから電気信号によるバイワイヤに変わったりすることでほとんどが解決されましたが、過去にはブレーキに難のある外国製の右ハンドル車も存在しました。
さらに左ハンドル車用のワイパーがそのまま使われていて運転席側のほうが助手席側よりも払拭面積が小さい右ハンドル車なんてのはかわいいほうだし、AT車のシフトゲートの表示がレバーの向こう側にあって運転席から見えにくいなんてのも同様です。ボンネットフードのリリースレバーが左側に付いている右ハンドル車も使い勝手が悪いものです。
これらの問題点は見つけるたびに原稿に書いて指摘しますし、インポーターや機会があれば外国の技術者にも伝えて真っ当な右ハンドル車が作られる方向に進むようにと思っていますが、左ハンドル国の外国メーカーの技術者は右ハンドル車のことをきちんと理解していないことも多く、十分に配慮するようにはなかなかなりません。まあ指摘し続けるしかないと思っています。
もちろん、日本の自動車メーカーが左ハンドル車用の仕様をそのまま右ハンドル車に採用していたりしたら、これにしもしっかり文句を言います。
いずれにしても、右ハンドル車のデキが良くないという問題は真っ当な右ハンドル車を作らない外国のメーカーが悪いわけで、右ハンドル車のデキが良くないからといって日本人が日本で危険な左ハンドル車を選択することはないし、乗りにくい右ハンドル車に黙って乗っていることもないと思います。
欲しいのは真っ当な右ハンドル車
ハンドル位置の話からは少し離れますが、外国メーカーのクルマはほとんどが左ハンドル用のオーディオをそのまま平気で装着しています。こうした点も含めて、真っ当な日本市場向けのクルマを作って欲しいものです。
日本のメーカーは左ハンドル国でクルマを売りたいと思ったので、左ハンドル国で受け入れられる左ハンドル車を作り、結果として世界中でたくさん売れてきました。外国メーカーも日本やほかの右ハンドル国でしっかり商売したいなら、真っ当な右ハンドル車を作れば良いだけのことだと思います。
10年か20年くらい前だったか、トヨタの技術者と話していたら、当時は右ハンドル国はイギリスが過去に植民地にしていた各国やタイなどけっこう多くあって、世界中であまねくクルマを販売しようと思ったら生産台数は左右が半々くらいになるとのことでした。だから右ハンドル車も左ハンドル車も基本的に同じように力を入れて作っていると言ってました。
当時も、ほとんど自国内で商売していたアメリカの自動車メーカーはもちろんのこと、ドイツやフランスのメーカーも、右ハンドル国での販売比率がさほど多くなかったため、右ハンドル車作りにあまり力が入っていませんでした。日本のメーカーほどには、ハンドル位置の違いによる差を少なくしようという努力をしていなかったのです。
しかも、現在では左ハンドル国の中国が世界最大の自動車市場に成長してきました。今後は右ハンドル車がますます少数派になっていきます。これまで以上に右ハンドル車をないがしろにしたクルマ作りが進むことになりはしないかと危惧しています。そうでなくても、大きな自動車市場であるアメリカや中国を意識してか、クルマのサイズが大きくなる一方といった弊害がすでに生じています。
右ハンドル国のユーザーとしては、外国のメーカーだけでなく、日本の自動車メーカーに対しても、真っ当な右ハンドル車を、と言い続けるしかないと思っています。
コメント
> 左ハンドル車ならAT車にもエアコンを付けられるが右ハンドル車では両立しないなんて例も過去にありました。
まさにそれ、愛用してました。英国仕様は右ハンドル(エアコンの設定なし)なのに、日本仕様は左のみだったんですよね。でも、その1点を除けば本当にいい車でした。
> 右ハンドル国のユーザーとしては、外国のメーカーだけでなく、日本の自動車メーカーに対しても、真っ当な右ハンドル車を、と言い続けるしかないと思っています。
言い続けても、海外メーカーは無理ですよ、たぶん。営利企業に対して利益を望めないことを要求するのは、無茶だと思います。
左右いずれのハンドルも選べる車種を私が買う場合、変な右よりは迷わず左を選ぶでしょう。
(受容できる出来栄えの右が用意されていれば、もちろん、そっちにしますよ)
というワケで、左ハンドル車の排除には反対です。(結局そこか)
インドが今後、自動車市場として大きくなれば右ハンドル車の重要性も増すのでしょうか。この点、日本メーカーが有利かと思いきや、GMやフォードもすでに着手していますね。抜け目がないと思います。
車自体の出来に関しては、ドイツ車に関しては、かなり満足できる右ハンドルがそろってきたように思えます。フォルクスワーゲンあたりは、オーディオ自体を日本専用品にしています。まぁ、オーディオのスイッチ程度ならどのような設計でも慣れの範囲であるように思えます。そもそも日本市場では、高機能なナビが必須という点で、オーディオどころではない苦労があるように思えます。
個人的には、右ハンドルの出来を判断するにあたって、ステアリングとペダルの位置関係やペダル配置をもっとも重視します。私が去年購入したBMW MINIクラブマン・クーパー(MT)は、まさにパーフェクトです。ボンネットリリースが左に残ったままですが、これは些末なことだと思います(笑)
そもそも、このあたりの操作系は左右関係なく重要で、左ハンドル車だからと言ってOKということもありません。かつて試乗した車には、左のほうがペダル位置に違和感があると言う車種もありました。あるいは左右共に違和感がある、など。FRのセダンでは、センターコンソールが張り出すため左ハンドルだと右足が窮屈、というのもあるように思えます。
ともかく、最近の自動車インプレッションでは、あまりこのあたりの操作系を詳しく書いてくださる方が少ないようにも思えます。もとより問題無しなのか、使い勝手やデザインへの言及で字数がつきてしまうのか。
父が新車から愛用している初代ゴルフGLDは、まさに出来の悪い右ハンドル車です…
ブレーキペダルの位置とアクセルの位置が接近し過ぎていて、ブレーキを掛けようとしてギョっとしました。
初心者の僕がそんなのに乗ろうと思ったのが間違いかも知れないですけど、これが噂に聞く
昔の右ハンドルの外車ってやつか…と感慨深くなりました。
配管やワイヤーの取り回し、ブレーキやステアリングコラムの移設に伴う障害を言及する評論家は
多いですが、オーディオについて指摘してくれる人はあまり見たことがないです。
自分もかねてからストレスを感じていたもので、嬉しく思います。
でも外車は左ハンドル派ですねぇ。
20年を超えると部品供給が段違いなんですもん。
内装しかり、機能部品しかり。
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