ついに始まった燃料電池車の販売とクルマの未来
先月12月15日に、トヨタ から燃料電池車(FCV) のミライ(MIRAI)が販売されました。それに先駆けることおよそひと月前、筆者は水素を燃料とするクルマが展示されているエコカーのイベント「海老名エコ&ドライブフェスタ」にお邪魔してましりました。
基本的に、燃料電池車がガソリン車とは何が違うのかといえば、誰にでも分かる部分はガソリンでなく水素を燃料(爆発ではなく反応なので燃料と言ってよいかは置いておきますが)としていることです。動力はエンジンではなく、水素と酸素の化学反応で発電。発電した電力でモーターを駆動させるということです。
ある意味、自ら発電して走るEV でもあります。では、今まで売られていたEVとどう違うのでしょうか。まず、燃料となる水素の充填が約3分程度と言われています。現在、EVは急速充電を使い80%充電でも約30分と長く、EVと比べてFCVは燃料供給が圧倒的に早いのです。さらに、EVの短い航続距離に対して、燃料電池車の航続距離は、ガソリン車と比べて見劣りしないものとなっています。
今回はそんな燃料電池車を中心に、海老名に集まったエコカーのお話をしていきたいと思います。
エコカーって、いろいろありますよ
海老名エコ&ドライブフェスタ会場には、様々なメーカーのエコカーが集まっていましたが、やはり注目は燃料電池車です。例えば、ホンダの燃料電池車クラリティです。ですが、ホンダから出展されているのではなく、神奈川県がホンダからリースされている車体だそうです。すでに、次期型も発表されていますね。
こうした車両は、公道実験的な意味もあります。隣のB-COMやi-miveと共に県の宣伝を一役買っているようです。ホンダ からも来年2月には、新型の燃料電池車料が発売予定だそうです。
早速、クラリティを見せていただきました。なんと、エコなのは動力だけではありません。環境を考えてシートなども天然素材やリサイクル素材で作られています。
同じく展示してあったマツダプレマシー ですが、こちらは同じ水素でもエンジンの燃焼に使って発電をするレンジエクステンダーEV。室内はダッシュボードやトランク内のタンクのカバーなども植物性の原料によるバイオプラスチック素材を用いて随所に環境を考えた素材が使われています。
クリーンディーゼルだけが、マツダじゃない!
実は、今日ここにイベントがあることを教えてくださったのがマツダブースのI氏、以前EVのレースでお世話になった方です。呼んでいただいたのは、こちらのプレマシーを見せていただくのが目的でした。見た目には前モデルのただのプレマシーに見えます。水素ロータリーエンジンをレンジエクステンダーとしたEVです。
マツダは、水素を燃料とした研究はかなり昔から行われていました。研究の一環で使われているので、車体は旧型ですが詰め込まれているのは最新の研究技術だということに変わりはありません。(ちなみ2009年から自治体やエネルギー関連企業にリース販売はされています)
ご承知の方もいらっしゃるとは思いますが、こちらの車にはエンジンがあります。ただし、動力そのものではなく、レンジエクステンド、つまり航続距離延長装置として発電用に搭載されているのです。マツダは、水素を燃焼爆発させてガソリン同様に使用する研究が長年されてきました。その一環から、こちらの方式で発電、モーターを駆動させています。
従って電池も搭載されているので、現在のEV同様に外部からの充電も可能です。当然充電カプラーもあります。エンジンは13Bロータリーを搭載し、ここにもマツダらしさがきちんとあります。航続距離はこれから出てくるトヨタ ミライ ほどではありませんが、発電効率の関係ともう一つは充填タンクにその理由があります。
まだまだ始まったばかりの水素燃料
実は水素には充填圧というものがりあり、その圧力が国内の車用のものには35Mpaと70Mpaの2種類があります(表記にはkg/㎥の場合とMpaで表記する場合があります。現在はMpaが主流のようですが350kgと700kgと表記する方が人によってはわかりやすいかもしれません)。
これが、航続距離に密接に関係しており、容量が同じで充填圧が高ければ、その分たくさん入っていると考えてください。水素は基本的には気体、ガソリンのように入れるには圧力をかけてタンク内に入れないとたくさん入りません。たくさん充填できないと、長距離走行できないからです。
身近にはスプレー缶などがあると思いますが、あれと同じに考えればわかるかと思います。噴霧すれば気体になります。水素タンクには、圧力が何kg掛かっているかでタンクの大きさがあまり変わらなくとも航続距離が変わるのです。
先ほど述べてように、2種類ありますが70Mpaのタンクに35Mpaの圧力をかけた水素を充填することはできますが、35Mpaのタンクには70Mpaの圧力をかけた水素は充填できません。簡単に言えば、35Mpaタンクでは、70Mpaの圧力に耐えるように出来ていないかからです。
それでは、間違えたら大変なことに? そうした間違いがないように、ノズルがそれぞれ違っています。そのため、スタンドもつまり2種類現在あるということです。おそらくはこの先は70Mpaのタンクが主流になりますからスタンドの対応もいずれはそうなっていくかと思います。
使い方はいろいろ。EVは、いろんな用途にも発展しています!
I-miev の横に展示されていたインバーター。こちらは、家庭用電源100Vへの変換装置で概ね1日分の電源がこの車両のバッテリーでまかなえるということです(アウトランダーは内蔵しています)。使い方は、様々で家電やPCのデモを行っていました。実際に走行距離がまだ短いという声もあるのですが、シティコミューターとしての使い勝手は良いと思います。
その代表格がB-COM。セブンイレブンの片隅で見かけた方も少なくはないでしょう。ちょっとした距離なら、気軽に充電して出かけられます。展示車両にはもちろんありませんが、クラシックカーもEVへのコンバートが試みられている昨今、関係者もこのスタイルで走らせることに意味が有る、いまのところ距離はそれほどでなくても100km前後走れればという話も聞こえています。
EVはこの先どうなるのか?
現在も販売されているEV、PHV などの車は、燃料電池車の登場で、この先なくなるのか? 政府としても、この先は水素を中心に進めていくとの方針を打ち出しているようですが、はたしてそうなっていくのでしょうか?
確かに、国内だけで見れば、かつてハイブリット車が増えていった時のように徐々に主体になっていくということも考えられます。しかし、現在の状況では、まだなんとも言い切れない状況のようです。というのも、北米にはシェールガスによる天然ガスへの転換が見られています。
こちらは、旧来の車体や現行の車両へのタンクの変更が容易でしかも経費もそれほどかからないのでアメリカでは徐々に浸透している様子。ただし、環境負荷は近年になって、やはり少なくないこともわかって来ています。
また、電池の技術も近年上がっているので2分で7割近く充電できるリチウムイオンバッテリー開発など、容量も寿命も性能が上がっている背景を考えるとまだ一考の余地はあるように考えられます。現在も実は急務とされている通常充電の施設なども、コンビニエンスチェーンのファミリーマートなどが設置に積極的に行っている背景などを考えれば筆者は伸び代がないとも思えません。
また、同時にモラルの問題も出始めています。充電設備の独占や充電待ちのトラブル、施設利用者用のサービスとして充電設備が用意されているのにもかかわらず、近隣の無関係の方が充電のみの目的で利用されるなど指摘されている部分があります。
充電設備の完全有料化をしていないからということも理由に上げられますが、燃料も安い方へ流れるのは当たり前ですので、そうしたい気持ちもわからなくはありません。あくまでもモラルの範疇で、適切な行動が問われる時代だと思います。
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