アウディが、道を拓いた先に行き着いた一つの完成形!
私が免許を取った頃はバブル真っ盛り。クルマは大きければ大きいほどよく、エンジンは気筒数が多く排気量が大きいほどエライ、といった状況でした。
ただし、その頃のアウディは、そのあこがれの条件に合致したクルマをあまり作っていませんでした。日本に入ってきていたトップグレードのアウディ100/200は2.3Lの5気筒エンジン。
ベンツやBMWが6気筒や∨8エンジンを売りにしていたのと比べるとやや物足りなく、アウディは直列5気筒エンジンを縦置きにしてFFベースのクルマを作る少し変わった技術志向のメーカー、といった感じでした。
ただ、そんなアウディを高性能な車として一般の人に認識させる、とても画期的なCMが登場しました。ご存じの方も多いと思いますが、アウディ100のクワトロ(4WD)モデルでスキーのジャンプ台を下から上まで上がっていく、4WDの運動性能の高さが一目でわかるCMです。
CMのキャッチコピーは「道を拓くのは、いつもアウディ」。まさにそのことを実感させる、当時の車好きにはとても衝撃的なCMでした。
4.2リッターV8 DOHC 372馬力の元の血筋は・・・
今回試乗させていただいたのは、4.2LのV8DOHCエンジンを積む「4.2FSIクワトロ」。その名の通り駆動方式はクワトロ(4WD)で、FSIは直噴エンジンであることを表します。
4.2リッターのV8エンジン、というだけでもうワクワクしてしまうのですが、このエンジンにはもう一つ驚きの事実が!なんと、アウディが誇るスーパーカー、R8に積まれているエンジンとベースは一緒だというのです。
エンジン型式等は違うのでまったく同じというわけではないのですが、確かにボア×ストロークは同一。スーパーカーの血を引くエンジンなんてちょっとクラクラきませんか?
もちろん、A8はスーパーカーではなくアウディが誇る最高級サルーンですので、このV8エンジンもあくまでジェントルにしつけられています。とは言え、どう猛さを押さえているだけでパワフルなポテンシャルはそのまま生かされ、273kW(372馬力)の最高出力を誇ります。
都内でも山岳路でも変わらない力強さ、軽やかな身のこなし
そしてもう一つ、とても感心したのがその身のこなしの軽やかさ。運転のしやすさ、と言ったほうがより適切かもしれません。
実はお借りした時、この車は全長が5.1m以上あると聞いて「取り回しが大変そうだな」と思い、緊張して公道に出たのですが、その心配はまったく杞憂でした。
たとえば、都内の交通量の多い幹線道路で素早く車線変更しなければいけない時に、運転操作と同時にスッと車が動いてくれます。その反応が非常にナチュラルでドライバーの意図通りなのです。
一昔前の大排気量のビッグ・サルーンにあったような、操作に対してよっこらせと車が反応し、その後は大重量による慣性でおっとっと、となるといったことはまったくありません。身構えるような重々しさはみじんも感じさせず、実に素直に軽やかに動いてくれるのはこの車の大きな美点だと感じました。
どんな道でも安定して走れそうなクワトロの安心感、身のこなしの軽やかさ、パワフルなV8エンジンの血筋の良さ・・・、前回に引き続き例えて言うなら、涼しい顔をしてどんな仕事も難なくこなす良家出身のビジネスウーマン、といった感じでしょうか(なんのこっちゃ?vol.2)。
一つだけ残念だったのは後部座席の乗り心地を試すことができなかったこと。次回は誰かに運転してもらって素敵なインテリアの後部座席でくつろぐぞー!と思った今回のあこがれ試乗だったのでした。
コメント
CORISM公式アカウントをフォローし、最新記事をチェック!