慶應義塾大学発のベンチャー企業『SIM-Drive(シムドライブ)』にガリバー・ベネッセなどが出資 ~電気自動車の急速普及を目指し、イン ホイール モーターのノウハウをオープンソースで公開!~ [CORISM]

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【その他】2009/08/24

株式会社 SIM-Drive(シムドライブ) 創業メンバーが同社のロゴマークを囲む
[左から(株)ナノオプトニクス・エナジー 藤原 洋 代表取締役社長、清水 浩 慶應義塾大学 環境情報学部 教授、株式会社ベネッセコーポレーション 福武 總一郎 代表取締役会長兼CEO、株式会社ガリバーインターナショナル 羽鳥 兼市 代表取締役会長]

産学連携で立ち上がったEVのベンチャー企業

清水 浩 慶應義塾大学 環境情報学部 教授

清水 浩 慶應義塾大学 環境情報学部 教授

 慶應義塾大学 清水 浩 教授は、自ら開発したイン ホイール モーター型電気自動車の技術を基に、株式会社シムドライブを8月20日に立ち上げた。慶應義塾大学のほか、教育産業大手のベネッセコーポレーションや中古車大手のガリバーインターナショナルなどが出資する、産学連携のベンチャー企業だ。この新会社設立について、8月24日に都内で報道記者会見が行われた。
 シムドライブ社は、既存の自動車メーカーとは全く異なるアプローチで電気自動車(EV)の普及を目指すという。それは一体どういった手法を採るのか。シムドライブ社の新たな取り組みについて、速報でお届けする。

市販車ベースEVに対し、航続距離は倍!

電気自動車「Eliica(エリーカ)」のホイール奥に見えるのがインホイールモーター
 SIM-Drive(シムドライブ)とは、イン ホイール モーターをコア技術とする電気自動車およびそのコンポーネントの総称である。
 一般的な電気自動車(EV)は、ガソリンエンジンの市販モデルをベースに、モーターやバッテリーを積み換えたものが主流だが、これに対しSIM-Driveのインホイールモーター型電気自動車は、その名の通り駆動輪のホイールにモーターをセット。インバータやバッテリーなどのコンポーネントはフレーム内にビルドインする、シンプルなプラットフォーム構成となっている。全くの専用設計ゆえ、市販車ベースの電気自動車に比べ、同等のバッテリーを積んでも倍の航続距離が見込めるという。4輪車・2輪駆動から4輪車・4輪駆動、果ては「Ellica(エリーカ)」のような8輪車・8輪駆動まで、小型車から大型バス・トラックまで柔軟に対応出来る。もちろん新規設計のみならず、既存のエンジン車をベースに、駆動系をSIM-Drive化することも可能だ。
 しかし株式会社シムドライブは、電気自動車の製造・販売会社ではない。電気自動車やその技術などを電気自動車製造・販売を希望する様々な企業と提携し、SIM-Driveの技術を提供するのだという。しかも技術・ノウハウ・特許をオープンソースとした。まるでコンピュータOSのように、ノウハウのカタマリであるSIM-Drive型電気自動車(EV)の技術情報を開示。提携先へ安価に提供することを目指す。これにより電気自動車(EV)を一気に世界へ普及させ、環境問題に役立てようというのがシムドライブ社の狙いである。
インホイールモーターを採用した「Ellica(エリーカ)」[2004年]

インホイールモーターを採用し04年に製造された「Ellica(エリーカ)」。8輪全てが駆動輪となっている。

「Ellica(エリーカ)」[2004年]のインテリア

「Ellica(エリーカ)」の後席はガルウィングで開閉する。乗車定員は4名だ。

「Ellica(エリーカ)」[2004年]のインパネ周り

0-100km/h加速は4.1秒。最高速は実に370km/h! もちろん電気自動車では世界最速の記録だ。

21世紀、電気自動車の時代はイッキにやってくる!?

SIM-Driveでは、2013年に車両本体150万円以下の車両量産を目指す

SIM-Driveでは、2013年に車両本体150万円以下の車両量産を目指す

 シムドライブ社では、まず第1フェーズとしてこのSIM-Drive搭載の電気自動車技術の検討、調査やテストマーケティングを実施。第2フェーズではSIM-Driveの標準化と先行車開発へと進める。また参画する自動車メーカーやモーター製造メーカー、プラットフォーム製造メーカーなどを募り共同開発を行う。
 その成果を基に、第3フェーズでは標準化されたSIM-Driveの製造について、製造メーカーへの総合的なサポートと、技術やノウハウなどについての教育事業を行ってゆく。また販売の実績に基づいたロイヤリティーも設定する。
 記者会見では、SIM-Driveを搭載した電気自動車を、2013年には大量生産を開始することを目的とすると発表した。その間わずか4年後である!
 とはいえ、日産自動車が2010年より電気自動車の量販を表明しており、その後も数年の間にトヨタやホンダ、GMなど世界の強豪メーカーから続々と電気自動車の登場が控えている。これに対しシムドライブ社では、日米に加え中国やインドといった新興国や、欧州などの自動車メーカーなどとの提携も視野に入れている模様だ。
 100年以上続いた内燃機関の自動車。これに対し、遠い未来の乗り物だと思っていた電気自動車だが、その普及は、実はほんの目の前まで迫ってきている。時代は一気に動いている。20世紀の概念に縛られていては覇権争いには乗り遅れるのかもしれない。新しい概念を基にしたシムドライブ社の挑戦は始まったばかりだが、その戦いには大いに注目して良いだろう。もちろんCORISMでも、シムドライブ社の動向については逐一報告してゆく予定だから、ぜひ期待していて欲しい。

SIM-Driveでは、2013年に車両本体150万円以下の車両量産を目指す

世界最速370km/hを記録したインホイールモーター型電気自動車「Eliica(エリーカ)」と、株式会社 SIM-Drive 清水 浩 代表取締役社長

世界最速370km/hを記録したインホイールモーター型電気自動車「Eliica(エリーカ)」と、株式会社 SIM-Drive 清水 浩 代表取締役社長

(Photo&レポート:CORISM編集部)

(レポート:CORISM編集部

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