日産 は、10月6日に開業する大型商業施設「ららぽーと湘南平塚」 （神奈川県平塚市天沼10-1）に、初となるテナントイン型の販売店舗を出店する。ららぽーと湘南平塚は、いつでも気軽に誰とでも訪れたくなる「ひらつかリビング ～My Third Place～」をコンセプトに、かつて車両を生産していた日産車体湘南工場第1地区の跡地に建設された大型商業施設。

　一般的な自動車販売店といえば、交通量の多いロードサイド型。こうした店舗パターンは、何十年も続い
ていて、ほとんど進化していない。しかし、最近、クルマの売る方が変わってきている。

　クルマがオーナーのステータスを表現ツールや、憧れの商品では無くなってから随分経つ。もはや生活の道具として、家電製品と同等ともいえる道具になった。クルマに興味が無くなった顧客は、情報が溢れる社会でも自らクルマの情報を手に入れることもない。とはいえ、クルマは必需品でいつかはクルマを買う。しかし、いつクルマを買うのか？ そのタイミングが分からない。

　一般的に既納先と呼ばれる自社のクルマを使う顧客とは、営業マンが定期的にコンタクトを取ることができる。車検のタイミングなども把握できているので、ある程度買い替えのタイミングが読める。そのため、自社の製品に乗り替えてもらうことは、それほど難しい話ではない。

　しかし、各メーカー共、さらなるシェア拡大を考えると、どうしても見納先と呼ばれる他社のクルマを使っている顧客を奪わなくてはならない。随分昔の営業スタイルでは、街を歩き回り、他社のクルマを使う顧客の家にいきなり訪問するという営業手法が取られていた。しかし、ライフスタイルの変化もあり、突然訪問した営業マンに会ってくれることはなくなった。

　自動車販売店において、こうした見納先と接点を取るには、チラシやCMなどのプロモーション活動の上で顧客が自ら店舗に足を運んでくれるのを待つしかないのだ。この集客コストがドンドンと上がっているのだ。トヨタ のように、潤沢な宣伝費でCMを流し続けることができるメーカーはほとんどない。

　そこで注目されているのが、こうしたショッピングモール内への出店。クルマを見に来てくれないのなら、人がたくさん集まるところへ行き無理やり見せる作戦だ。この方法なら、他社のクルマに乗る顧客へのリーチも容易に可能。集客はショッピングモール側が行うので、集客コストも下げることができる。

　そして、顧客のクルマ購入マインドが高まったときに、よく行くショッピングモールにあるクルマのお店であることが重要。わざわざ販売店へ行くのとは違い、買い物のついでに気軽に立ち寄れるというメリットもある。「買い物ついでに、クルマも買う」感覚だ。地方のショッピングモールは、ほとんどの顧客が車で訪れる。顧客が他の買い物をしている間に、下取り車の査定や見積りの作成も可能で、顧客側も長い間店舗内に拘束されることもない。クルマという商品そのものに興味がない顧客ほど、こうした手法は有効。

　こうしたショッピングモールへの出店は、中古車大手のガリバーが積極的。イオンモールなど、全国に数店舗をオープンし各店舗とも好調な販売台数を記録しているという。また、トヨタはディーラー各社をテナントとしたショッピングモールを自ら造り、2007年にトレッサ横浜としてオープンさせている。輸入車メーカーは、メルセデス・ベンツが羽田空港にブランドイメージを訴求するメルセデス ミー東京羽田をオープン。また、BMWとメルセデス・ベンツはイオンモール和歌山に出展するなど、新規顧客との接点づくりに積極的だ。

　日産の国内事業を担当する専務執行役員 星野朝子さんによると「ショッピングモールでの展示は今までも行ってきて、一定の手応えは感じている。この新店舗では、テスト店として成功パターンを探したい」と語る。この新店舗での成果次第では、今後、こうしたショッピングモールへの出店を加速させる可能性も高い。

　クルマの価値が大きく変化。消費の傾向がモノからコトへ移るなど、自動車販売はいつまでも旧体制のままでは立ち行かない状態になっていることは確実。日産の新しいチャレンジに注目だ。

＜店舗概要＞
名称：日産サティオ湘南　ららぽーと湘南平塚店
住所：神奈川県平塚市天沼10-1ららぽーと湘南平塚1F
オープン：2016年10月6日（木）
営業時間： 10:00～21:00 （年中無休）
ホームページ： http://map2.nissan.co.jp/c/h/TENPO/0...