激戦のBセグメントに投入された新型スズキ バレーノ
スズキ は、新型のコンパクト ハッチバック である新型スズキ バレーノ(baleno) の発売を開始した。
このスズキ バレーノのボディサイズは、全長3,995×1,745×1,470mmとなっている。全長4m前後のボディサイズは、欧州などでBセグメントと呼ばれるコンパクトカークラス。輸入車では、フォルクスワーゲン ポロ やプジョー208 など。国産車では、トヨタ アクア やマツダ デミオ 、日産ノート 、ホンダ フィット といった人気車がライバルとなる。このライバル車の顔ぶれから見ても、いかに熾烈な販売戦争が行われているクラスであることが分かる。
さらに、国産Bセグメント車は非常に選択肢も豊富だ。まず、エンジンは一般的な自然吸気のガソリン車にハイブリッド車、ミラーサイクルのターボ車、クリーンディーゼル車から選ぶことができる。さらに、多くの車種で4WD が選べる。しのぎを削る争いが繰り広げられているため、燃費性能も高い。多様なパワーユニットが用意されているが、どのタイプもクラストップレベルの低燃費を誇り、ほとんど差がない状態。それほど、高いレベルでの争いが繰り広げられているということになる。
こうしたクルマ燃費だけでなく、自動ブレーキなどを含む安全装備に居住性や乗り心地、静粛性など高い総合性能を求められる。それでいて、価格も安くないと売れないという状況。こうした厳しい状況下に置かれたBセグメント車は、ある意味各自動車メーカーの技術の見せ所が凝縮されているといってもいいだろう。
デザインはコンサバ感強し! 女性に好まれるかどうかが勝敗を分ける?
新型スズキ バレーノは、こうした激戦クラスに本格的に参戦するモデルとなる。すでに、スズキにはスイフト があったが、スイフトは全長3,850㎜とやや短い。日本においては、日産マーチ やトヨタ パッソ といったクラスに属するからだ。
多くのライバル車があるBセグメント車の中で、顧客の買い物リストに載せるためにはデザインが重要だ。とくに、このクラスは女性比率が高く、女性にも好かれるデザインでなくてはならない。新型バレーノデザインは、かなりコンサバな印象が強い。V字型のグリルからヘッドライトに流れるようなキャラクターラインが新型バレーノのフロントスタイルの特徴。全体的に、好き嫌いが明確に分かれないカタイデザインと言える。最近のアルトやハスラー、イグニスといったモデルとは少々違う傾向だ。
新型バレーノは、スズキのグローバルカーとしての立ち位置がある。インドの関連会社であるマルチ・スズキ・インディアで生産され、日本を始め世界各国へ送られる。それだけに、失敗は許されないということなのだろう。以前、バレーノより大きなキザシというモデルを出したスズキだったが、やはりこうしたコンサバなスタイルだった。クルマそのものの実力は高かったものの、日本では売れなかったモデル。新型バレーノには、失敗を恐れるあまりコンサバになり過ぎた、そんな雰囲気を少し感じる。
1.0L直3ターボが新登場! 1.6L車並みの動力性能と軽量ボディの組み合わせによる、高い走行パフォーマンスに期待!
新型スズキ バレーノに搭載されているエンジンは2タイプ。XTグレードに搭載されたのは、初登場のK10C型直3 1.0Lターボエンジン。111ps&160Nmというスペックをもち、1.6L自然吸気エンジン並みの最大トルクを発揮する。このエンジンを搭載したXTは、やや発売が遅れて5月13日からとなる。このターボエンジンは、6ATと組み合わされている。ガソリン車トップレベルの動力性能と軽量ボディの組み合わせは、走行性能面で期待したいポイントのひとつだ。
そして、スイフトなどにも搭載されている1.2L直4エンジンがXGグレードに搭載されている。スイフトの1.2L直4エンジンの型式はK12B型。新型バレーノでは、K12C型となっていて圧縮比が12.0から12.5へ変更されている。エンジンの出力には変更が無く、91ps&118Nmとなっている。こちらは、CVTとの組み合わせ。ギヤ比などはスイフトと同じだ。
この2タイプのエンジンが搭載されるボディは、スズキの軽量化技術により大幅に軽量化が施されている。XTで950㎏、XGで910㎏となっている。ザックリこのクラスのライバルと比較すると50~100㎏軽い。こうした軽量化は、低燃費性能だけでなく走行性能にも影響する。軽自動車で磨かれたスズキの軽量化技術は、コンパクトカーにも生かされている。
その結果、燃費は1.0LターボのXTが20.0㎞/L、1.2L自然吸気エンジンのXGが24.6㎞/Lとなっている。XTの燃費は、プジョー208が18.2㎞/Lなので、排気量が1.0Lということもあり、このクラスの輸入車と比べるとると良い数値になっている。ただ、ひとクラス上のオーリス に搭載されている1.2Lターボは、1,300㎏の車重に対して19.4㎞/Lという同等のレベルの燃費値を出しているだけに、もう一声欲しいところではある。
また、日本のメーカーなのに、欧州仕様向けのエンジンをそのまま日本に持ち込み、顧客により高いガソリン代を負担させている状態なのは微妙な点だ。1.0Lターボは、チューニングをレギュラー仕様にするくらいの仕様変更をする必要がある。当たり前だが、コンパクトカーなので燃費性能だけでなく燃料費の経済性も重要だ。日産ノートは、ミラーサイクルを使い直3 1.2Lスーパーチャージャーで26.2㎞/Lを達成している。単にダウンサイジングターボというのでは、少々厳しい印象だ。
1.2L自然吸気エンジンの燃費は24.6㎞/Lだが、これは少々物足りない。1.3Lのデミオが同じく24.6㎞/L。フィットの1.3Lが24.2~26.0㎞/L。排気量が少なく、ボディも軽量なのに燃費で1.3Lで重いライバルに負けている。
また、サイドエアバッグが無い! 価格もインド生産の割に安くない!?
安全装備面では、軽自動車 のスペーシア に搭載されている歩行者検知式自動ブレーキ「デュアルカメラブレーキサポート」は装備されておらず、歩行者検知式ではなくミリ波レーダーを使ったレーダーブレーキサポートIIが標準装備されている。標準装備されているのは評価できるが、相変わらずスズキはサイドエアバッグが嫌いなようで、オプションでも装備できない状況だ。サイドエアバッグの装着は、衝突安全性能面で重要。国交省が「ポール側面衝突時の乗員保護に係る協定規則」を新設。日本でも今後JNCAPの試験に入る予定だ。この試験方法は、狭い部分に大きなエネルギーが集中するため、サイドエアバッグ無しでは、高得点を出すのは難しくなる。
新型スズキ バレーノ価格。1.0LターボのXTは1,617,840円。1.2LのXGは1,414,800円となっている。どちらもミリ波レーダーのレーダーブレーキサポートIIが装備されていたり、キーレスエントリーや運転席シートヒーターが標準装備されているなど、装備面は一定水準以上といえる。XTはさらに、16インチアルミホイールも装備される。
ターボのXTは、その走行パフォーマンスに期待したいところだが、現在のエコカー減税に対応していない。そうしたことも含め、価格的には、やや高めな印象が強い。まず、コスト競争力を重視して日本ではなくインドで生産されているのに、国内で生産されているコンパクトカーと比べて大きな差がないからだ。
日産や三菱も同様に、タイで生産したモデルを日本に導入しているものの、コストパフォーマンスに優れている訳でもなく、結果的に売れていない。インドで生産しているという以上、ひと目分かる価格インパクトが欲しい。日本人の感覚的に言えば、わずかな価格差なら品質が高い日本生産モデルを選びたくなる。
こうしたこともあり、スズキもあまり売る気がない。販売目標は年間6,000台。多くのライバルが年間70,000台以上売る中で、10分の1以下という販売目標になっている。とりあえず、欧州&アジア向けのクルマだが、日本にも入れておけば少しは売れそう、そんなスズキの思惑を感じてしまう。ハンガリーで生産され日本に導入さていたスプラッシュも、いいクルマだったが、そんなスズキの姿勢もありほとんど売れない状況のまま販売が終了した。くしくもスプラッシュ の時も年間販売目標は年間6,000台。新型バレーノもスプラッシュの轍を踏まないことを期待したいところだ。
スズキ バレーノ(baleno)価格
・XG 1.2L CVT 1,414,800円
・XT 1.0L 6AT 1,617,840円
スズキ バレーノ(baleno)燃費、スペックなど
代表グレード | スズキ バレーノXT |
---|---|
ボディサイズ[mm](全長×全幅×全高) | 3,995×1,745×1,470mm |
ホイールベース[mm] | 2,520mm |
トレッド前/後[mm] | 1,520/1,520mm |
車両重量[kg] | 950kg |
総排気量[cc] | 996cc |
エンジン最高出力[kw(ps)/rpm] | 82(111)/5,500 |
エンジン最大トルク[N・m(kg-m)/rpm] | 160(16.3kg・m)/1,500-4,000 |
JC08モード燃費[km/l] | 20.0㎞/L |
ミッション | 6速AT |
タイヤサイズ | 185/55R16 |
定員[人] | 5人 |
税込価格[円] | 1,617,840 |
レポート | 編集部 |
写真 | スズキ |
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