ホンダ クラリティ(CLARITY)PHEV新車情報・購入ガイド 技術は進化したが、消極的な販売目標
アコードの進化版がクラリティPHEV
ホンダは、PHEVセダンとなる新型クラリティ(CLARITY)PHEVの発売を開始した。
ホンダは、2030年をめどに4輪車グローバル販売台数の3分の2を電動化することを目指している。新型ホンダ クラリティPHEVは、そうしたホンダの方向性を示すモデルだ。
クラリティという車名は、すでに発売されているFCVであるクラリティFUEL CELLがある。このモデルの先進性は飛びぬけており、水素を燃料として走る。排出されるのは水のみで、究極のエコカーとも呼ばれている。クラリティPHEVは、そうしたクラリティFUEL CELLの内外装をベースにパワーユニットをPHEVに変更したモデルだ。
ホンダは、2013年にすでにアコードPHEVを発売していた。このモデルは、アコードハイブリッドをPHEV化したもので、37.6㎞のEV走行を可能としていた。なかなか魅力的なモデルだったのだが、販売に関してかなり慎重だった。デビューからしばらくは、法人リースのみ。その後、個人でも乗れるようになったが、リースのみの販売となる。アコードPHEVへの自信の無さを感じさせた。その後、アコードPHEVは、ひっそりと2016年に販売を終了している。
新型ホンダ クラリティPHEVは、そんなアコードPHEVとは異なるパワーユニットを搭載して登場した。2モーターハイブリッドシステム「SPORT HYBRID i-MMD」をベースにしていることに変更はないが、エンジンやバッテリーの高容量化やコンバーターの高出力化などは、大幅な進化を遂げている。
まず、搭載されるエンジンはアコードPHEVの2.0Lエンジンから、1.5Lへとダウンサイジングされた。この1.5Lエンジンは、世界トップレベルとなる最大熱効率40.5%を達成。出力は105ps&134Nmとなった。
搭載される駆動用モーターは、184ps&315Nmという高出力タイプを装備。アコードハイブリッドと同様の出力。アコードPHEVのモーターは169ps&307Nmなので、かなりパワフルなモーターになった。
PHEVとしては、異例に長い航続距離114.6㎞を達成!
クラリティPHEVの要ともいえる駆動用バッテリーは、17.0kWhの高容量・高出力を誇る。この大容量バッテリーを搭載したことにより、クラリティPHEVのEV航続距離は114.6kmを達成している。
114.6㎞もの距離をEVで走れるとなると、日々の通勤や送迎、買い物といった使い方なら、ガソリンを使わない生活が可能となる。遠出でもEV航続距離が長いので、急速充電などを上手く活用すれば、あまりガソリンを使用せずに長距離ドライブが楽しめる。ハイブリッド時の燃費は、JC08モードで28.0㎞/Lとなかなか優秀だ。
EVよりも現実的な選択しとなるPHEVだが、ホンダディーラーの充電網整備が物足りない
また、電力を使いきってもガソリンで走れることがPHEVの魅力のひとつ。電欠の心配がないし、充電ポイントが混雑して待ち時間が長いような時でには、ガソリンを使って走ればいいのでストレスも少ない。実用面を考えると、PHEVはEVよりも現実的な選択肢ともいえる。
クラリティPHEVの充電時間は、急速充電30分で80%程度。200V普通充電だと、約6時間で満充電となる。
日産に対して、ホンダの充電環境はまだ整っていない。ホンダディーラーには、ほとんど急速充電器が設置されていない状況。ホンダは、NCSネットワークの充電器約20,800基が利用できるホンダ独自の充電カードサービス「Honda Charging Service(ホンダ チャージング サービス)」を用意する。また、全国のディーラーへの急速充電器配備を進め、電動車の本格的な普及に向けて取り組んでいくとしている。つまり、クラリティPHEVを買っても、しばらくの間、ホンダディーラーでは充電ができない状況が続くということになる。
3つのドライブモードで走るクラリティPHEV
このPHEVシステムは、高圧デバイスを一体化したインテリジェントパワーユニット(IPU)を薄型化して床下に配置。ハーネスや12V DC-DCコンバーターをセンタートンネル部に格納することで、広い室内空間と低全高セダンフォルムを実現。
また、バッテリーの冷却には水冷方式を採用。EVの多くは、高出力状態が長く続くとバッテリーが発熱。それを抑えるため、出力制限がかかるというデメリットもある。また、バッテリーの高い発熱は、耐久性にも影響を与えるので、なるべく一定の温度を保つことが重要だ。そこで、クラリティPHEVでは、バッテリーをコンパクトなレイアウトで効率的に冷却することで、小型化とバッテリーの耐久性向上を実現している。
クラリティPHEVは、EV走行を中心に高効率な走行を実現する3つのドライブモードが設定された。「EVドライブ」は、徹底してEVで走るモード。
「ハイブリッドドライブ」は、エンジンの高効率領域を使って発電。その電力で走行用モーターを駆動して走行する。
「エンジンドライブ」は、バッテリー残量が少なく高速走行時にモーター駆動で走るよりもエンジンで走行した方が効率がよい場合に、エンジン直結クラッチを締結。エンジンの出力で直接走行する。
クラリティPHEVは、この3つのドライブモードをバッテリーの充電状態や走行の状況に応じて、常に最適なモードを自動的に選択しシームレスに切り替え走行する。
また、積極的にEV走行ができるように、EV走行の上限が直感的に分かるペダルクリック機構を搭載。アクセルペダルを一定量踏み込んだ位置に、スイッチを押すようなクリック感(反力)が生じるポイントを設定。エンジンの始動を抑え、EV走行をより長く持続する。
日本で使うにはやや大きなボディ。そして、予防安全装備ホンダセンシングのバージョンアップに期待
新型ホンダ クラリティPHEVのボディサイズは、全長4.915×全幅1875×全高1480㎜となった。日本で使うには、全幅が広く扱いにくいサイズ。最小回転半径も5.7mと大きめだ。
クラリティPHEVのデザインは、1875㎜という全幅もありワイド&ローが強調された。クラリティPHEVは、セダンなのだがかなりクーペのように傾斜したAピラーとCピラーをもつ。これは、空気抵抗を下げるためでもある。
そして、クラリティPHEVのフロントフェイスは、かなりユニーク。トヨタ ミライ同様、未来感を意識し過ぎて奇をてらった感が強い。
対してインテリアは、クリーンでシンプルなデザインとなった。精緻感の中に未来感も表現されており、落ち着いた空間に仕上がった。パッケージングは、セダンとしての上質さと5名乗車が可能な居住空間を備えた。
また、人とクルマが通信でつながる機能もプラスされた。スマートフォンで専用アプリケーション「Honda Remote App」を使用することにより、航続可能距離や高電圧バッテリー残量、車内温度の車両情報をスマートフォンで取得可能。
さらに、タイマー充電設定や充電用リッドのオープン、エアコンのオン/オフ操作や出発時間に合わせたタイマー設定が遠隔で可能だ。またBluetooth通信を採用し、施錠・ドアなどの閉め忘れ通知や、広い駐車場で車を見つける「カーファインダー」などの機能も使用できる。
安全装備面では、歩行者検知式自動ブレーキを含む予防安全装備ホンダセンシングが装着されている。渋滞追従機能付ACC(アダプティブ・クルーズ・コントロール)も機能に含まれるので、渋滞時の疲労軽減にも効果がある。ただ、トヨタはすでに夜間の歩行者検知と昼間の自転車検知ができる第2世代トヨタセーフティセンスの装着を進めている。こうした機能のないホンダセンシングは、そろそろバージョンアップが必要な時期に来ている。
売る気がある? ない? 年間1,000台という販売目標
新型ホンダ クラリティPHEVの価格は5,880,600円となった。アコードPHEVの価格が約514万円。アコードハイブリッドの価格が約410万円。クラリティFUEL CELLの価格が約762万円だ。アコードハイブリッドと比べると、180万円弱も高価な価格となった。
クラリティPHEVは、新型のPHEVとはいえ、やや割高感がある。ホンダは、このクラリティPHEVの販売目標を年間1,000台としている。平均月間販売台数目標に置き換えると、なんとわずか約83台となる。もはや、売る気があるのかないのか分からない目標設定だ。アコードPHEVのように放置状態にしてしまうのか? 高額車を売るのが苦手なホンダの国内営業が、どういう手法を駆使してクラリティPHEVを売っていくのか注目だ。
ホンダ クラリティPHEV価格
・クラリティPHEV 5,880,600円
ホンダ クラリティPHEV航続距離、燃費、ボディサイズなどスペック
ホイールベース 2750mm
乗車定員 5人
車両重量(車重) 1850kg
エンジン LEB型 1.5LアトキンソンサイクルDOHC
排気量 1496cc
エンジン最高出力 105ps(77kW)/5500rpm
エンジン最大トルク 13.7kgf-m(134N・m)/5000rpm
モーター最高出力 184ps(135kW)5000-6000rpm
モーター最大トルク 32.1kgf-m(315N・m)0-2000rpm
ハイブリッド燃料消費率JC08モード 28.0㎞/L
ハイブリッド燃料消費率WLTC燃費 24.2㎞/L
充電電力使用時走行距離JC08モード 114.6㎞/L
充電電力使用時走行距離WLTCモード 101.0㎞/L
サスペンション方式前/後 マクファーソン式/マルチリンク(ウイッシュボーン)式
タイヤサイズ 235/45R18
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