X3をベースにEV化したiX3
BMWは、プレミアム・ミドル・クラスSAV(スポーツ・アクティビティ・ヴィークル)「BMW X3 (エックス・スリー)」のラインアップに、電気自動車「BMW iX3(アイ・エックス・スリー)」を追加した。
BMW X3は、オフロードの走破性を極めたSUVの機能に、スポーツモデルに引けを取らない、俊敏なスポーツ走行性を持たせたクロスオーバーSUVだ。
今回、ラインアップに加わるBMW iX3は、1回の充電で長距離走行を可能とした純電気自動車であり、フル充電で約508km(WLTCモード)の走行が可能である。
また、安全機能・運転支援システムでも、BMW最新世代の機能を詰め込みハンズ・オフ機能付き渋滞運転支援機能を標準装備した。
新型BMW iX3は、プラットフォームなども含め、既存のX3をベースに電気自動車化している。そのため、外観デザインもX3とほぼ共通。随所に電気自動車であることを主張するデザインをプラス採用している。まったく新しいデザインをもち、EV専用車として生まれたiXとは、やや異なる。
フロントフードのBMWロゴ、キドニーグリル、リヤスポイラー、インストルメントパネルのスタート/ストップボタン、シフトノブのまわり等にブルーの差し色でクリーンなイメージを演出。キドニーグリルのスリットは大幅に閉じられていて、通常のBMW X3とは異なる存在であることを目立たず大胆に主張している。
新型BMW iX3の航続距離は508km
新型BMW iX3は、最高出力286ps(210kW)、最大トルク400Nmを発揮する電気モーターで後輪を駆動する。SUVだが4WDではなくFR(後輪駆動)だ。
0-100㎞/h加速は、ヨーロッパ仕様で6.8秒。大きなボディで車重は2.2トンという超重量級ボディながら、ちょっとしたスポーツカー並の加速力を誇る。
搭載するリチウムイオン電池容量は80kWhのバッテリーで、508km(WLTCモード)の走行を可能としている。
カテゴリーは異なるが、メルセデス・ベンツEQAは、66.5kWhのバッテリー容量で航続距離は最大422km(WLTCモード)。 kwhあたりの走行距離は両車共に約6.3kmと同等レベルで、これだけの航続距離があれば、長距離走行でもそれほど困ることはないだろう。
急がれる高圧急速充電器の普及
新型BMW iX3の充電は、最新のテクノロジーを採用する。対応している急速充電器(最大80kW)の場合、70分以内で約80%までの充電が可能で、およそ10分の充電で約80km走行距離を伸ばすことが出来る。ちょっとした買い物や高速道路の充電設備が混雑している時には嬉しい。
また自宅や公共の普通充電設備(最大9.6kW)では、一晩(約8時間)で0から100%の状態まで充電できるから、通勤などの日常的な使い方では十分といえる。
メルセデス・ベンツEQAの場合、フル充電にかかる時間は、急速充電設備(CHAdeMO(90kW))で約45分、自宅に設置する専用の充電ウォールユニット(30A)で約11時間なので、新型BMW iX3の急速・普通充電は共に効率が良いと言える。
最近では、高速道路以外の充電スポットも比較的多く設置されてきているが、その多くはEVリーフを販売する日産ディーラーが多いように感じる。
BMWは、日本において早くから電気自動車のi3を投入済み。そのため、日産や三菱を除く他のディーラーに比べれば、わずかだが急速充電器が設置されている。
ただ、iX3だけでなくiXやi4といった電気自動車が続々と投入されているので、すくなくともすべてのBMWディーラーに急速充電器の設置が望まれる。
BMWのディーラー店舗数は国産メーカーに比べると非常に少ないので、ある意味仕方がないのだが、新型BMW iX3のユーザーがメーカーの異なる日産ディーラーで充電というのも、気が引けるので少々ハードルも高い。
日産や三菱ディーラーでの充電は気が引ける、そんな人は長距離移動するときには、事前にある程度急速充電器の設置場所を下調べを行う必要がある。
高速道路には急速充電器の設置数も増えているが、土日などは特に充電待ちが散見される(PHEVの充電も比較的多く目に付くが)ので、特に時間の余裕を持った計画が必要だろう。
第5世代eDriveユニットとアダプティブ・サスペンションの調和
新型BMW iX3のeDriveユニットは、電気モーター、トランスミッション、パワーエレクトロニクスをアルミニウムのハウジング(箱)に格納してユニット化(一体化)し、省スペースと軽量化を実現している。
クルマの走行性で重要となる重量の軽減と、ユニット化することで駆動伝達ロスが減少。アクセルに対する発進・加速性が直線的になり、ダイレクトな操作感が得られる。
サスペンションを任意に調整可能なアダプティブ・サスペンションとの組み合わせで、BMWらしいしっかりとした走行性を熟成させている。
最新の安全機能・運転支援システム「ドライビング・アシスト・プロフェッショナル」を標準装備
新型BMW iX3にも、他のBMWに同じ高性能3眼カメラ&レーダー、および高性能プロセッサーを搭載し最新の高い解析能力を持った。より精度と正確性を向上させた、最先端の運転支援システムを標準装備としている。
「アクティブ・クルーズ・コントロール(ストップ&ゴー機能付)」
ミリ波レーダーやカメラが絶えず前走車や道路の車線を検知、前方のクルマとの車間距離を維持しながら自動で加減速を行う。低速走行時には車両停止までの制御をおこなう。
「レーン・チェンジ・ウォーニング(車線変更警告システム)」
リヤ・バンパーに組み込まれたセンサーが、ドライバーから死角になる左右後方のクルマや、追い越し車線上を急接近してくるクルマを認識して、ドアミラーに組み込まれたインジケータランプを点滅させる。
「レーン・ディパーチャー・ウォーニング(車線逸脱警告システム)」
フロントウィンドーのカメラで車線表示を検知、60km/h以上での走行時に車線からクルマが逸脱しそうになると、ハンドルを軽く振動させてドライバーに警告する。
「ステアリング&レーン・コントロール・アシスト」
フロントウィンドーに設置されたステレオ・カメラが車線と前方車両を検知、車線の中央付近を走行するようにハンドルを自動でアシストする運転支援システム。
「アクティブ・サイド・コリジョン・プロテクション」
ボディ側面の前後左右に装備された4つのセンサーが車両側面の交通状況を監視、側面衝突の危険性が高まると、避ける方向でハンドル操作に介入する。
走行中に、他のクルマとの衝突が避けられないタイミングまでドライバーによる回避操作が無い場合、システムが自動的にブレーキをかけて衝突を回避・被害の軽減を図る。
「クロス・トラフィック・ウォーニング」
駐車スペースからクルマを動かす場合や、視界の悪いT字道路を進む場合など、横切るクルマや歩行者を、バンパーに内蔵されたセンサーにより認識して、コントロール・ディスプレイに警告を表示する。
「ペダル踏み間違い急発進抑制機能」
クルマが停止中、ギアが“D”(ドライブ)または“R”(リバース)を選択時に、車両前後のセンサーが約1mの範囲内で障害物を検出した場合、ドライバーがアクセルペダルを大きく、かつ素早く踏んだり、踏み続けるとトルクの出方を制御して、車速を3km/h以内に制限する。
「パーキング・アシスタント」
クルマが直前に前進した最大50mまでのルートを記憶、同じルートをバックで安全に正確に復帰する、リバース・アシスト機能も標準装備として採用。
このように、ユーザー優先と言える装備が標準で用意されるのに加えて、今回BMW社が国内認可取得モデルとして、初めて導入したハンズ・オフ機能も搭載されている。
「ハンズ・オフ機能付き渋滞運転支援機能」とは、高速道路での渋滞時に、ドライバーが絶えず前方に注意して、周囲の道路交通状況や車両の状況に応じて、直ちにハンドルを操作することができる状態であれば、ハンドルから手を離して走行が出来る運転支援システムで、ドライバーの運転負荷が大きく軽減される機能だ。
*SAE International(Society of Automotive Engineers)が定めるレベル2の段階であり、自動運転ではなく、前方注視が必要となるなど、ある一定の条件が必要。あくまで、運転支援だ。
拡張されたコネクテッド・ドライブ
新型BMW iX3にも、他のミドルクラス同様にBMWコネクテッド・ドライブが搭載されている。車載通信モジュールによりドライバー、クルマ、そして取り巻く情報をITネットワークでつなぎ、「もしもの時に備える万全の安全性」、「カーライフを進化させる革新の利便性」、「充実の情報と最新のエンターテインメント」が提供される。
総合テレマティクス・サービスは2013年に輸入車として初めてBMWは導入している。その後スマートフォン向けアプリ導入で、車両情報やニュース等へのアクセスを可能にして、顧客の利便性を向上させるサービスを提供。
さらに、2021年には、より操作性・利便性を高めた新しいスマートフォン向けアプリ「My BMW」を導入し、クルマとユーザー、情報をシームレスに繋げ、快適でスマートなモビリティ・ライフをサポートしている。
BMWインテリジェント・パーソナル・アシスタントは、AI技術を活用して、音声の会話だけで車両の操作、情報へのアクセスが出来るBMW最新の機能だ。今までの音声入力とは違って、より自然な会話に近い言葉でドライバーの指示や質問を理解し、適切な機能やサービスを起動させるほか、ドライバーの好みを学習し、長く乗り続けるほど便利になる。
そして、BMWのインテリジェント・パーソナル・アシスタントの最大の特徴は、システムに「名前」を自由に付けること出来る。例えば、システムを起動する際、「OK, BMW」だけでなく、「iX3」と、呼びかける言葉を任意に設定することでより身近な存在となる。
新型BMW iX3では、ユーザーのスマートフォン上アプリ「My BMW」を使用して、Alexaと連携させることもできる。自宅さながらにクルマでAlexaの様々なサービスや機能がいつでも利用できる。
また、Apple CarPlayへの対応、BMWコネクテッド・ドライブ標準装備により、スマートフォンの活用幅が広くなり、事前に検索した目的地を車両に送信する等、ネット環境への拡張が大きな利便性をもたらしている。
車両のキーを持たなくても、iPhoneをドア・ハンドルにかざすことで、車両のロック解除/施錠、さらには、エンジンの始動も可能にしている。このデジタルキーは、最大5名まで共有することが可能。
メインとなるキーの所有者は、他のキー利用者が運転する際に駆動力や速度を制限出来る機能を持っている。
主要メインテナンスが無償。安心のBMWサービス・インクルーシブ・プラス
新型BMW iX3には、3年間の主要メインテナンスが無償提供される。タイヤやキーの破損や紛失の際の費用サポート等が含まれる「BMWサービス・インクルーシブ・プラス」が全車に付帯。
この「BMWサービス・インクルーシブ・プラス」は、2016年よりBMW全モデルに標準装備された新しいメインテナンス・パッケージで、ユーザーに対してより安心なドライブを提供する嬉しいサービスだ。
ガソリン車か? PHEV? それともEVか? 豊富な選択肢をもつX3シリーズ
同グレードのエンジン+モーターによるPHEVのX3 xDrive30e M Sportの価格は 8,570,000円。それに対して、iX3の価格は 8,620,000円と電気自動車としては、お買い得感のある価格といえる。しかも、補助金は今のところ40万円も出るので、さらに買い得感が増す。現在のように、ガソリン価格の高騰が続いている状態であれば、さらにiX3は魅力的だ。
とはいえ、iX3は2WDでありSUVなら、やはり4WDが欲しくなる。また、自宅の充電設備を設置するなどの費用がかかり少々面倒。
こうなると、サクッと乗れ100万円程価格の安いxDrive20d M Sportも魅力的だ。ただ、これだけの高額車に乗るに、あまり未来を感じさせない既存のガソリン車というのも微妙な選択。
4WD機能が絶対に必要という降雪地域の人を除けば、やはりiX3という選択がベストと言えそうだ。
また、同時に発表されたiXのスタイリングやインテリアを観ると、キドニーグリルを含めて斬新。iX3は、あくまでX3ベースのEVなので仕方のない部分もあるが、iX3もiXのように未来的なデザインで次世代電気自動車をアピールして欲しかった。
レポート:河野達也
BMW iX3価格
BMW iX3 M Sport 8,620,000円
*参考価格
BMW X3 xDrive30e M Sport 8,570,000円
BMW X3 xDrive20d M Sport 7,660,000円
BMW iX3電費、ボディサイズなどスペック
全長 x 全幅 x 全高(mm) 4,740 x 1,890 x 1,670
ホイルベース(mm) 2,865
車両重量(kg) 2,200
最低地上高(mm) 179
定員(名) 5
トランクルーム(Litter) 510 後席折畳み時1,560
駆動方式 後輪駆動(RWD)
電動機型式 HA0001N0
蓄電池種類 リチウムイオン電池
容量(Ah) 116
総電圧(V) 345
総電力量(バッテリー容量)kWh 80.0
最高出力(kw[ps]/rpm(EEC)) 210 [286]/6,000
最大トルク(Nm[kgm]/rpm(EEC)) 400 [40.8]/0-4,500
一充電走行距離 WLTCモード国土交通省審査値(km) 508
最小回転半径(m) 5.7
タイヤサイズ フロント:245/45R20 、リア:275/40R20
0-100㎞/h加速*ヨーロッパ仕様(秒) 6.8
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