国内ホンダにとって、もう負けられない車種が新型ステップワゴン
ホンダは、2022年春に発売予定の新型ステップワゴンを公開した。6代目となる新型ステップワゴンは、シンプルで親しみを感じるデザインのステップ ワゴン エアーと精悍さやスタイリッシュさを感じるデザインのステップ ワゴン スパーダの2タイプを設定した。
ホンダにとって、この6代目新型ステップワゴンは、まさに背水の陣で臨むモデルといえる。ステップワゴンは、本来、人気5ナンバーミニバンの一角を担うモデル。しかし、現行の5代目ステップワゴンは、完全に沈黙してしまった残念なモデルとなってしまった。逆に、4代目ステップワゴンは、2010年に単一車名登録車ミニバン販売台数ナンバー1に輝いたほどだ。
2021年上期の5代目ステップワゴンの販売台数は16,877台で、5ナンバーミニバンの中で4台中4位となった。1位はトヨタ ヴォクシーで31,065台。2位は日産セレナで27,531台。3位はトヨタ ノアで20,578台だ。最下位であるのと同時に、1位のヴォクシーに対して倍近い差を付けられてしまっている。セレナに対しても1万台以上の差が付いてしまった。
店舗数も大きく異なるトヨタに対して大きな差になるのは、ある意味仕方がないこと。だが、さすがに店舗数が近い日産に大差を付けられてしまったのは、ホンダとしては非常に厳しい結果となった。
しかも、国内ホンダの主力車種はフィットとヴェゼル、N-BOX、フリードとコンパクトカーと軽自動車で、やや、片寄った保有状況になっている。
このように、高額車種であるステップワゴンが売れない状況は、より片寄った保有状況を加速させ、収益的なインパクトも大きなっていく。
とくに、ステップワゴンは国内専用車。国内販売の不振は、ダイレクトにステップワゴン単体の赤字化にも直結。これも、ホンダにとっても大きな悩みでもある。
5代目ステップワゴンが残念な結果となった訳とは?
5代目ホンダ ステップワゴンの不振は、主にデザインと言われている。また、当初ホンダはハイブリッド車が高価になり売れない、と予想。デビュー時には、ハイブリッド車が用意されなかった。しかし、マーケットはハイブリッド車を望んでおり、約2年後にハイブリッド車を投入することになる。
その間、日産はマイルドハイブリッド車ながら「ハイブリッド」という記号性を強力にアピール。トヨタは、2014年にストロングハイブリッド車を投入済み。圧倒的な販売台数を誇っていた。スタートから、5代目ステップワゴンはつまずいたような印象だ。
2017年のマイナーチェンジでは、スパーダのフロントフェイスデザインを刷新。ハイブリッド車の投入で、一旦、息を吹き返したように見えた。しかし、一度失った人気が戻ってくることはなかった。
残念な結果となった5代目ステップワゴンのハイブリッド車だが、5ナンバーミニバンの中で動力性能や燃費、安全装備、使い勝手などトップレベルの高い実力を誇っていた。しかも、価格も安くコストパフォーマンスに優れていた。それなのに、なぜ売れない? ホンダ国内営業にとっても非常に悩ましい問題だった。
原点回帰? ボクシーでスッキリ系デザインとなった新型ステップワゴン
こうした経験を生かしたモデルが6代目新型ステップワゴンになる。
6代目新型ステップワゴンのグランドコンセプト「#素敵な暮らし」。家族のためにしてあげたいことや自分のためにしたいことなど、さまざまな目的に応えることで、使う人に「素敵な暮らし」を提供できる存在となることを目指して開発された。
重要な外観デザインは、初代と2代目、4代目ステップワゴンのシルエットに似たAピーラーを立てたボクシーなシルエットとなった。ボンネットフードも路面に対してほぼ平行なラインとし、できるだけ顔を大きくできる手法を採用。
本来、こうしたデザインは空気抵抗が増え、燃費も悪くなるので合理的ではない。5代目の初期モデルもこうした合理性とオリジナリティを求めたが、残念な結果となった。その反省から、5代目後期は同様なデザイン手法として、顔が大きく見えるデザインが採用されている。
日本マーケットでは、スタイリッシュ性や機能的合理性を求めたデザインは好まれない。重要なのは、立派に大きく見えることだ。それを実践して売れているのが、ヴォクシーや1クラス上のアルファードだ。
そういう点で、6代目新型ステップワゴンのデザインは売れるデザインになったといえる。さらに、ベルトラインの高さ上げた。これにより、ボディーの分厚さを表現し、重厚感や立派に見える工夫を施した。
また、新設定されたステップ ワゴン エアーは、クリーンでシンプルなデザインに細いメッキモールをさりげなく使用。立派に見えるシルエットに、上質感をプラスした。
売れ筋のステップ ワゴン スパーダは、リヤに向けて伸びやかな流れをイメージできる造形とした。重要なフロントフェイスは、ワイドかつ重厚なフロントグリルと、ボディー下端全周にダーククロムメッキモールを配置。より力強く迫力あるフェイスとした。
トヨタと同じは嫌!? ホンダらしいこだわりのデザイン
ただ、画像を見る限りだと、エアーとスパーダの差が小さく感じる。デザインとしては、上品でまとまり感があるものの、スパーダは、もっとギラギラ迫力系にしてもよいのではないだろうか?
マーケットで求められているのは、新型ヴォクシーやアルファードのようなギラギ迫力超インパクト系。ホンダは、まだトヨタのように上品さを捨てきれていないようにも見える。
逆に言えば、トヨタのようなデザインは嫌、というメッセージなのだろうか? 他メーカーのマネはしない、いかにもホンダらしいこだわりでもある。6代目新型ステップワゴンのクリーンで品のあるデザインが、マーケットでどう評価されるか注目だ。
使い勝手や居心地の良さを重視したインテリア
6代目新型ステップワゴンのインテリアは、歴代モデルで築いてきた「家族のための大空間」を進化。自分の家にいるような居心地の良さと、新たな使い方が見つかる自由な空間を実現した。
新型ステップ ワゴン エアーは、温かみのあるカラーを用いた明るい室内を演出。新型ステップ ワゴン スパーダは、スタイリッシュな印象を与えるダークトーンのカラーで上質な室内空間に仕上げた。
さらに、ミニバンの新たな価値として、乗り物酔いしにくいクルマを目指した。水平基調でノイズレスなデザインを採用することで、乗る人の視野を安定させている。こうすることで、乗り物酔いしにくくする工夫が施された。また、シート表皮には撥水撥油加工を採用。小さな子供の食べこぼし、アウトドアスポーツなど濡れ衣類など、掃除がしやすい素材が使われている。
左右にもスライドする2列目シート。わくわくゲートは廃止?
6代目新型ステップワゴンのパッケージングは、多彩なシートアレンジが採用された。2列目シートは、前後へのロングスライドだけでなく左右にもスライド可能。より柔軟で自由な使い方ができる。
そして、3列目シートは、従来通り床下収納タイプとした。また、着座位置を高くし前方のシート、ヘッドレストの形状を変更。開放的な視界を実現している。さらに、シートクッションの厚みも増すことで、3列目シートであっても快適な座り心地を実現した。
ホンダの資料と画像から、5代目ステップワゴンに採用されていたリヤゲートを分割開閉できるわくわくゲートは採用されていないようだ。わくわくゲートは、デザイン的に分割線が出るなど微妙な部分もあったが、使い勝手もよくホンダらしい技術だった。
搭載されるパワーユニットや燃費、ボディサイズなどのスペックは、今のところ非公表。恐らく、5代目ステップワゴンと同じ2.0Lハイブリッドのe:HEVがメインだろう。
セレナ e-Power vs ステップワゴン スパーダ ハイブリッド
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