後輪駆動ベースのプラットフォームを新開発
マツダは、2022年初秋に発売を予定している、新世代ラージ商品群第一弾となる新型SUV「マツダCX-60(マツダ シーエックス シックスティー)」の日本仕様を初公開した。
新世代ラージとは、新開発された縦置きパワーユニットに対応するプラットフォーム(車台)「SKYACTIVマルチソリューションスケーラブルアーキテクチャー」を採用したモデルを示す。いわゆるFR(後輪駆動)をベースにしたプラットフォームだ。従来マツダのSUVは、すべてFF(前輪駆動)をベースだったので、まったく新しい価値をもつSUVということになる。ラージと言っても全長は4,740mmとミドルクラスのSUV。ただ、全幅は1,890mmとかなりワイドな設定になっている。
FFかFR、どちらが良いのか? という問いへの答えは難しい。それぞれメリットやデメリットが存在する。ただし、走りの質はどちらが良いか? という点に絞ると、やはりFRという答えになる。走行性能を追求した高級セダンや高級スポーツカーなどを見ても、ほとんどがFRかFRベースの4WDという選択をしていることからも分かるはずだ。
ただ、逆にスペース効率や生産性やコストという点でみると、今度はFFの大きなメリットになる。マツダもロードスターを除き、すべてFF車がベースだ。
商売上手とは言えないマツダ? しかし、その想いはアツイ!!
そんなマツダがなぜFRベースのSUVを開発するのか? それは、マツダのクルマへの想いだ。
マツダは、クルマを単なる移動の道具としてとらえていない。「走る歓び」を追求と「人間中心」がマツダの考え方た。クルマを意のままに操ることで得られる愉しさ。走るたびに、もっと運転がしたくなり、心と体が元気になる。そんな“ものづくり”を目指している。
今時、かなりアツイ想いだ。その熱量の大きさが、今回のFRベースのプラットフォームを生み出した。やはり、「走る歓び」を追求していくとFRベースになる。
ただ、これは危険なチャレンジでもある。マーケットは、FRだからとか、走りがよいから、といった部分に重きを置いていないからだ。
そのため、日本メーカーで、ラダーフレームを使ったオフローダー以外、FRベースのSUVは、高級ブランドのレクサスでさえ用意されていない。こうしたミドルクラスでFRベースのSUVを用意しているのは、メルセデス・ベンツやBMWといった欧州プレミアムブランドが中心になる。
こうした選択をしたマツダは、正直、商売上手とは言えない。だが、マツダの想いをより具現化しチャレンジしていく姿勢は、非常に高く評価できる。このマツダのアツイ想いが顧客にうまく伝わりクルマが売れれば、マツダは世界でも屈指のユニークなメーカーになれるはずだ。
また、今回の縦置き用プラットフォームがあれば、FRのクーペやセダン、そしてスポーツカーへの発展も十分にある。クルマ好き、運転が好きという人なら、かなりワクワクしてくるだろう。
最大トルク550N・m! 新開発直6 3.3Lディーゼル登場
今回登場した新型マツダCX-60には、プラットフォームだけではなく、パワーユニットも新しく用意された。用意されたパワーユニットは、普通の2.5Lガソリン、2.5LのPHEV、直6 3.3Lディーゼル、直6 3.3Lディーゼル+48Vマイルドハイブリッドの4タイプ。
最もパワフルなのは、直6 3.3Lディーゼル+48Vマイルドハイブリッドの組み合わされたパワーユニット。なんと、550N・mという大トルクを発揮する。自然吸気ガソリンエンジン換算すると、約5.5L級になる。(他のスペックは下記を参照)。ミッションは、新開発の8速ATが用意された。
意外だったのが、普通の2.5Lガソリンエンジンが用意されたこと。「カーボンニュートラル」が叫ばれているのに、普通のガソリンエンジンの設定は少々微妙。
また、いずれ出てくるとは思うが、EVが無かったのも残念な部分だ。マツダは、マルチソリューションだとしているが、電動化時代に3.3Lディーゼルも含め純化石燃料車の設定は必要は無いはずだ。
トヨタのように販売台数が多いメーカーがマルチソリューションを語るのは理解できるが、マツダの販売台数規模であれば、もっと電動化方向へ先鋭化してもよいはずだ。
多くの新技術を搭載した新型CX-60
サスペンションは、フロントにダブルウィッシュボーン、リヤにマルチリンクを採用。このクラスで、フロントにより高性能なダブルウィッシュボーン式を使うモデルは少ない、
また、制御系では、KPC(キネマティック・ ポスチャー ・コントロール)を採用。ロードスターに初採用された技術で、高Gがかかかるカーブなどでは、リヤ内輪側に軽くブレーキをかけ車体のロールを抑制。ピタッと路面に張り付くような安定した姿勢でカーブを駆け抜けることができる。
そして、走りにこだわるマツダはドライビングポジションを重要視する。今回新型CX-60には、ドライバー・パーソナライゼーション・システムを投入。ドライバーの目の位置を検出するカメラを使い、ドライバーは身長を入力すると、ドライバーの体格を推定し、最適なドライビングポジションを提供する。
新型CX-60の安全装備では、DEA(ドライバー・エマージェンシー・アシスト)を用意。ドライバーが病気などで運転できない状況下にあることを検知すると、高速道路などでは可能な限り路肩に寄せゆっくりと減速停止。一般道では、同一車線内に停止する。停車後は、ヘルプネットに自動接続。救命要請を行ってくれる。高齢化が進む日本において、頼りになる機能だ。
後輪駆動車らしさあふれるシルエット
新型CX-60のデザインは、マツダのデザイン哲学である魂動デザインをベースに、深化とステップアップを体現した。デザインコンセプトは「Toughness Noble」。 これは堂々とした骨格やインテリア空間のタフさのなかに魂動デザインの知性やエレガンスを織り込み両立させるというもの。
縦置きプラットフォーム車らしいロングノーズと分厚いフロントフェイスは、他のマツダSUVとは異なるシルエットをもつ。
インテリアは、水平基調のインパネデザイン。全幅1,890mmというワイドさを生かし、より広々とした空間にまとめている。そして、太く力強いセンターコンソールが、SUVらしいタフネスさを演出。スイッチ類は、スッキリとシンプルにまとめられている。相変わらず、質感と色の使い方は絶妙。上質でラグジュアリーなインテリアに仕上げられた。
新型CX-60の価格は500万円オーバー確実?
そんな新型マツダCX-60の発売は、2022年初秋。価格は未定。ボディサイズ的には、CX-5とCX-8の間といったところ。
新型CX-60の価格も、CX-5とCX-8の間にはならないだろう。FRベースであれば、やはりコスト高になる。普通の2.5Lガソリンエンジン車で、CX-8の2.2Lディーゼルの上級グレードと同等程度の価格と予想。3.3Lディーゼルでも500万円超となり、PHEVは600万円近い価格になるのではないだろうか。
マツダCX-60ボディサイズ、などスペック
・ボディサイズ 全長 4,740×1,890×1,685mm
・ホイールベース 2,870mm
・トレッド(前/後) 1,640/1,645mm
・最低地上高 180mm
・ミッション 8速AT
・サスペンション(前/後) ダブルウィッシュボーン/マルチリンク
マツダCX-60パワーユニットスペック
・直4 2.5Lガソリン 188ps/6,000rpm 250N・m/3,000rpm
・直4 2.5L PHEV(e-SKYACTIV PHEV) 323ps/6,000rpm 500N・m/4,000rpm
・直6 3.3Lディーゼル+48Vマイルドハイブリッドシステム(e-SKYACTIV D) 254ps/3,750rpm 550N・m/1,500~2,400rpm
・直6 3.3Lディーゼル 231ps/4,000~4,200rpm 500N・m/1,500~3,000rpm
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