他のEVとは違うオリジナリティあるホンダe
ホンダは、新型電気自動車(EV)のホンダe(ホンダ イー)を10月30日に発売すると発表した。
ホンダeは、昨年の東京モーターショーにコンセプトモデルを出品していた電気自動車を市販化したもの。新しい要素をいろいろと盛り込んだクルマであると同時に、最近の電気自動車にしてはやや控えめな性能であるなど、ユニークな部分もあるクルマだ。
電気自動車に対しては、アメリカや欧州、さらには中国などで積極的に推進しようという動きがある。アメリカでは州によって排気ガスを出さないZEVを一定の比率で販売することを義務付ける動きがある。欧州では、2030年代にはガソリンやディーゼルなどの内燃機関を禁止するなどという話もある。中国でも環境汚染への対応として、電気自動車を推進している。
欧米中のそれぞれの地域で、電気自動車の推進に対して一定の揺り戻しがあるなど、必ずしも電気自動車一辺倒ということでもないのだが、自動車メーカーも当面は一定程度に電気自動車を販売する必要がある。
ホンダeも欧米の規制への対応として発売されたものだ。欧米で販売するなら日本でも販売しようということで発売された。ただ、年間の販売計画台数が1000台というのだから、てんで腰が引けている。日本では、実際にはほとんど売る気がないクルマと言っても良いくらいだ。
しかし、ユニークなクルマであることや、こうしたモデルを好むアーリーアダプター、ホンダ車ファンなどが殺到。すでに、注文受付数が第一期の販売予定台数に達し、現在、注文を一時停止している。
あっさり、クリーンで愛着がわく外観デザイン
コンパクトな2BOXカーとして作られたホンダeの外観デザインは、とてもあっさりした感じのシンプルでクリーンなものだ。
円を基調としたキャラクターとすることで、新しい時代になじむシンプルでモダンなデザインを目指したという。丸形ヘッドライトとテールランプがファニーな雰囲気を演出していて、見るからに可愛らしいデザインである。
見せる要素と隠す要素を明確化したのも特徴で、その結果としてよりアイコニックな要素であるフロントグリルなどを際立たせている。
見せる要素としては、中央に配置された充電/給電ポートが代表。毎日使うものだからこそ、最も目立つところに置き、リッドは触り心地がよく美しい全面ガラスとし、シンプルで美しいデザインとした。またフロントグリルやリヤパネルなども明確に見せている部分である。
逆に、黒いエリアに隠して見えないようにしたのは、ハイマウントストップランプ、テール ゲートハンドル、リアワイパー、マルチビューカメラなど。カウルトップパネルやワイパー、キーシリンダーなども見えない位置に隠されている。
また、隠されてはいないものの、最小化して目立たなくされたのは、フロントの冷却開口部、フォグランプ、ドアミラー(サイドカメラミラーシステム)、リアリフレクターなどだ。
デザイン的なノイズを抑えるため、 フロントピラーの段差をなくし、センターピラーガーニッシュをフラッシュサーフェス化し、アウターハンドルを格納式にするなど、面一(ツライチ)のボディを作っている。
さらに、ライセンスガーニッシュ、ルーフモール、ドアサッシュ、ルーフアンテナなどは廃止されている。
キャビン全体を黒く艶やかなデザインにするため、ルーフは全面ガラスとされた。
さらに、ルーフの内側にスライド式のサンシェードを設定し、前席の乗員頭上でルーフの幅いっぱいに開口させて明るさと開放感をもたらすスカイルーフを採用。
リビングのサンルームのような心地よさを実現している。また、前後・左右のウインドウを含め、全周UV+IRカットガラスで車内の快適性を高めるとともに、エアコンの効率向上にも貢献させている。
世界初! 5つのスクリーンを水平配置するワイドビジョン
ホンダeのインテリアデザインは、移動している時はもちろん、止まっている時の心地よさも重視。先進装備を搭載しながらも、シンプルで心安らぐリビングのような空間を目指した。
リビングテーブルのようなぬくもりを感じる自然な風合いのウッド調パネルを採用し、スイッチ類を極限まで減らすことでシンプルなデザインと人にやさしい操作性を実現。また、シートとドアの表面のメランジ調のファブリック、ブラウンのシートベルトやダウンライト式のLEDルームライトにより、上質でモダンなリビング空間が演出されている。
ホンダeのインパネは、世界初となる5つのスクリーンを水平配置するワイドビジョンインストルメントパネルを採用。これは、見るからに画期的な印象を与えるものだ。中央に12.3インチのスクリーンを2画面並べた「ワイドスクリーン Honda CONNECT ディスプレー」を配置し、運転席や助手席でそれぞれ表示機能を選択したり、左右のアプリを入れかえたりなど自在な操作性を実現している。
また、スマートフォンとの接続によって音楽アプリやエンターテイメントアプリを表示するなど、これまでのクルマでは体験したことのない、楽しみながら新たな使い勝手を創造できるディスプレーとしている。
コンパクトなボディながら、ドランビングポジションの余裕は十分。後席は広いとはいえないが、必要十分な空間が確保されている。シートは、アコードのフレームを使用することで、サイズの余裕と快適な座り心地を実現。大人4人が快適に過ごせる空間としている。乗車定員は4名だ。
先進機能満載で、まさに未来のクルマ?
人とクルマとのシームレスな関係も画期的な先進機能といえのが、専用アプリをダウンロードすることでスマートフォンをデジタルキーとして使用できる機能。国産車で初めて、パワーオンまで行える仕組みとしている。
乗り降りにおいては、シームレスさを追求するためスマートキーを持って近づくと自動でフラッシュアウターハンドルがポップアップし、ドアハンドルに触れるだけでドアロックが解除される。
さらに、クルマへ乗り込んでドアを閉めると、乗車したことを検知して自動でパワーがオンとなり、ドライバーはシートベルト着用後にDレンジボタンを押すだけで走行可能な状態になる。
降車時も、クルマから降りてドアを閉めると自動的にパワーオフとなるなど、限りなくシームレスな乗り降りを可能としている。
また、ホンダeには、クラウドAIによる音声認識と情報提供を行う「ホンダパーソナルアシスタント」を搭載。「OK, ホンダ」と呼びかけることで、音声認識により最新かつリアルタイムの情報がオンデマンドに提供される。
語りかけに対しキャラクターが7つの表情で反応したりするなど、よりクルマへの愛着を感じられるような設定にしている。ホンダ車専用の車載通信モジュール「ホンダコネクト」を搭載し、コネクテッドサービスの「ホンダ トータルケア プレミアム」によって安心なカーライフを実現する。
ホンダeは、量産車として世界初の標準装備となるサイド/センターカメラミラーシステムも注目される先進機能だ。昼夜天候を問わず安心な視界を確保できるよう、170万画素の高精細カメラが採用された。
また、カメラで捉えた映像はインストルメントパネル左右に配置した6インチモニターに映し出され、従来のドアミラーと比べても違和感が少なく運転が可能な見やすい映像を表示する。
雨天時でも雨が付着したサイドウインドウを通さず、モニターで鮮明な映像を確認することができるので、安全運転に貢献するシステムだ。
航続距離283㎞! 意外と長距離ドライブでも使える?
ホンダeのボディサイズは、全長3895mm×全幅1750×全高1510mm。全長が4mを切るコンパクトなハッチバックボディだ。ホイールベースはボディサイズの割にやや長めの2530mmとされている。基本プラットホームはEV専用に新開発されたもので、リヤに搭載したモーターで後輪を駆動するRRの駆動方式を採用する。
RR方式を採用しながらも、重量の重いリチウムイオン電池を床下に効率良く搭載することで、低重心化と最適な前後重量配分を実現している。リヤに搭載されるモーターは、グレードによって仕様が異なり、ベースグレードでは100kW仕様、アドバンスでは113kW仕様とされている。トルクはいずれも315N・mで、なかなか強力なモーターである。
ホンダeに搭載されるリチウムイオン電池は、35.5kWと最近の電気自動車としてはかなり少なめ。都市部でのセカンドカー的な使い方を想定した搭載量である。満充電時の走行可能距離は、モーターの違いによって異なり、ベースグレードはWLTCモードで283km、JC08モードで308kmとのこと。パワフルなアドバンスはWLTCモードで259km、JC08モードで274kmと短くなる。
基本、ホンダeは短距離移動がベースとなるものの、急速充電器のインフラが進んでいる国内であれば、充電場所を休憩地にするなどのドライブプランを立てれば、長距離ドライブも可能な仕様だ。
この大トルクモーターによる力強い加速をベースに、高いボディ剛性と路面の凹凸を吸収する四輪独立懸架サスペンションを採用することで、上質な乗り心地ときびきびとした安定感のある走りを実現する。
RRレイアウトにより、スポーティな走りに期待
ホンダeは、RR(リヤエンジン・リヤドライブ)方式を採用。ホンダにとって、登録車としてはスポーツカーのS2000以来、乗用軽自動車を含めばS660以来、久しぶりの後輪駆動車になる。それだけに、走行性能への期待は高まるばかり。
しかも、ホンダeは電気自動車なので、フロア下に大きく重いリチウムイオン電池を搭載する。そのため、クルマの重心高は低くなり、運動性能は格段に向上する。しかも、RRなので加速時などでは、大トルクを誇るモーターの力をしっかりと路面に伝えることが可能。
電気自動車というと、どうしてもエコカー的なイメージが強く、スポーツカー的走りがイメージしにく。しかし、ホンダeはRR方式を採用したことで、スポーツカーとしての能力も十分に感じさせる。
また、RR方式にしたことで、前輪の切れ角が大きくとれるようになり、最小回転半径を4.3mと小さくすることもできた。これは、道幅が約6mの片側1車線の道路でもUターンできる小回り性能である。都市での扱いやすさも追求されている。
走行モードはノーマルとスポーツの2種類が設定され、EVならではのシングルペダルコントロールなど、ドライバーの好みやシーンに合わせた走りの設定を可能とした。
ホンダeの充電は、3.2kWまでのAC充電で9.6時間以上、6.0kWまでのAC充電で5.2時間以上。CHAdeMO規格の急速充電器を用いれば30分で80%の走行可能距離を回復できる。建物/家屋に給電するV2H(Vehicle to Home)や、機器などの電源となるV2L(Vehicle to Load)にも対応しており、日常利用だけでなく停電など万一の際の安心も確保している。
ホンダセンシングを全車標準装備
ホンダeは、コンパクトEVのパッケージと優れた全方位衝突安全性能を実現するボディ骨格技術を開発して衝突時の生存空間をしっかり確保するとともに、先進の安全運転支援システムであるホンダセンシングの最新仕様を標準搭載した。
■ホンダセンシングの機能一覧(サポカーS<ワイド>)に該当
1)衝突軽減ブレーキ<CMBS>
2)誤発進抑制機能
3)後方誤発進抑制機能
5)歩行者事故低減ステアリング
6)路外逸脱抑制機能
7)渋滞追従機能付アダプティブ・クルーズ・コントロール<ACC>
8)車線維持支援システム<LKAS>
9)先行車発進お知らせ機能
10)標識認識機能
11)オートハイビーム
ホンダeのグレード選び
ホンダeの価格は、画期的な先進装備がてんこ盛りなので、けっこう高い。ベースグレードで451万円、パワフルなモーターを搭載したアドバンスは495万円だ。
アドバンスではモーターの違いのほかに、マルチビューカメラシステム、プレミアムサウンドシステム(8スピーカー)、パーキングパイロット、100V AC電源(1500w)、センターカメラミラーシステム、フロントガラスディアイサー、17インチアルミホイールが標準となる。
ホンダeを買うならアドバンスがお勧めだ。だが、500万円という価格設定はあまりにも高い。電気自動車はリチウムイオン電池代がコストに直結しているが、それにしても高い。
同じ電気自動車である日産リーフも高価だが、それと比べても高い。リーフは40kWh仕様のモデルでも330万円台からの設定で、60kWh仕様でも440万円台からの設定だ。また最近ではさらに安いプジョーe-208も存在する。これらの電気自動車と比べると、ホンダeならではの先進技術を使った装備や仕様があるにしても、割高感は否めない。
また、欧州などで発売されている価格は、国内販売価格より安価な設定というのも微妙だ。
ホンダe価格
・Honda e 4,510,000円
・Honda e Advance 4,950,000円
ホンダe航続距離、ボディサイズなどスペック
代表グレード:Honda e Advance
全長(m) / 全幅(m) / 全高(m) 3.895 / 1.750 / 1.510
ホイールベース(m) 2.530
トレッド(m) 前 / 後 1.510 / 1.505
最低地上高(m) 0.145
車両重量(kg) 1,540
乗車定員(名) 4
種類 交流同期電動機
定格出力(kW) 60
最高出力(kW[PS] / rpm) 113[154] / 3,497 -10,000
最大トルク(N・m[kgf・m] / rpm) 315[32.1] / 0 -2,000
一充電走行距離(国土交通省審査値)WLTCモードKm 259
動力用主電池 種類 / 個数 / 電圧(V) / 容量(Ah) リチウムイオン電池 / 192 / 3.7 / 50.0
タイヤ 前・後 205 / 45ZR17 88Y ・ 225 / 45ZR17 94Y
サスペンション方式 前 / 後 マクファーソン式
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