国内外で大人気だったシビック
ホンダは、5ドアハッチバックのシビックをフルモデルチェンジし発売を開始した。
新型ホンダ シビックは、これで11代目となる。初代シビックは、1972年にベーシックカーとして誕生。このモデルは、画期的でホンダ独自の排ガスクリーン技術CVCCを搭載。このエンジンは、当時世界一厳しい米国マスキー法(排出ガス規制法)を世界で最初にクリアした。ホンダが北米で再び躍進するきっかけにもなったモデルだ。
日本でもシビックの人気は高く、3代目となる通称ワンダーシビックは、DOHC16バルブエンジンを搭載。パワフルで高回転までスムースに回り、モータースポーツでも脚光を浴び、人気モデルとなった。
また、このモデルは、ホンダ初となる1983-1984日本カー・オブ・ザ・イヤーを受賞。しばらくシビック人気が続く。
諦めが早いホンダ
しかし、様子がおかしくなってきたのは7代目シビックから。販売は低迷。そして、8代目シビックはミドルサイズへボディサイズをアップしたことが要因で、さらに存在感を消していった。
その後、一部特殊な車種を除き日本マーケットから撤退。そして、2017年に10代目シビックのセダンと5ドアハッチバックが7年振りに日本マーケットに投入された。
このモデルを再び日本マーケットに投入したのには訳がある。ホンダの新車販売は、軽自動車とコンパクトカーが中心。頼みの綱であったステップワゴン、オデッセイも不調。Cセグメント以上のモデルがほとんど売れない状態。高額車のほとんどが、トヨタに流れてている状況。そのため、シビックの販売台数は少しでも、高額車種の顧客を少しでも増やし、しっかりと守っていかなければ、営業面で未来が見えない状況になるからだ。
しかし、セダン離れは厳しく2020年にシビックセダンが早くも撤退。セダンは売れないとの判断は早く、11代目シビックもセダンは導入されず5ドアハッチバックのみとなった。他社のCセグメントセダンでは、マツダ3やカローラ、インプレッサG4などは継続販売しており、ホンダは少し諦めが早い。
さらに大きくなった新型シビック
11代目となった新型ホンダ シビックの開発コンセプトは「爽快シビック」。“人の気持ちよさや楽しさ”を徹底追求しながら開発を推進。ホンダのクルマづくりの根幹である「人中心」の開発思想をより深く掘り下げたという。
そんな新型シビックのボディサイズは、全長4550×全幅×1800×全高1415mmとなった。
ボディサイズは、先代比で全長が+30mm、全高が-20mmとなった。ホンダは、新型シビックがCセグメントというが、全長のサイズ的には1クラス上のサイズ感だ。Cセグメントの5ドアハッチバックとなると、国内のライバル車は、カローラやマツダ3、インプレッサなどになる。
プラットフォームは、先代からのキャリーオーバー。だが、細部に渡り変更が加えられている。そのため、ホイールベースも伸び+35mmとなった。これにより、後席の居住性がアップしている。
より流麗さが強調されたデザイン
新型シビックのデザインは、全高が下げられたことや、ルーフ高さのピークを先代モデルに対し前方に設けた。さらに、後方に向かってスムーズに傾斜させたことで、よりクーペルックのサイドビューをもつ。
さらに、フロンフードの左右後端は先代モデルに対し25mm低く設定。こうした手法により、よりワイド&ローでスタイリッシュなフォルムになっている。
先代シビックのリヤビューは、縦型のリヤコンビネーションランプが車体の高い位置に設置されていたので、やや腰高感のあるデザインだった。
しかし、新型シビックでは、サイドまで回り込む横方向の薄型デザインを採用。これにテールゲート一体型のリップスポイラーを採用することで、よりワイドでスタイリッシュなリヤビューとなっている。
ついに、ツライチにこだわり出したホンダデザイン
また、ホンダのデザインは、タイヤが車体の内側に入り、フェンダーとタイヤの隙間がガバガバなデザインが多かった。ホンダファンの一部からは「クルマがシャコタンにしてくれ」と叫んでいるようだとの声もある。こだわり派の多くがローダウンしてホイールをインチアップするのは、そのためだ。
ホンダのデザイナーでも、そうした意識をもつ人も多い。そこで、新型シビックでは、リアホイールアーチに、端末を180度折り曲げて接合するヘミング処理を採用した。この処理により、タイヤを片側5mm外側に張り出させることが可能になり、リアトレッドを10mm拡大している。少し、フェンダーとのツライチが出て、ボディとの一体感があるワイド&ローなデザインとなっている。
「Fine Morning Interior」デザインって何だ?
新型シビックのインテリアデザインコンセプトは「Fine Morning Interior」。なんとも抽象的なコンセプトで、今ひとつ理解に苦しむが、視覚的ノイズを最小限に抑えたクリーンインテリアということらしい。
インパネデザインは、スッキリしていながら高級感があり好印象。さらに、フロントピラーの下端を先代モデルに対し、50mm後方に設定することで水平視野角を拡大。そのため、前方の視界は開けていて良好だ。
また、エアコンのアウトレットは、薄くワイドな開口とし、表面にハニカムパターンのパンチングメタルパネルとした。あまり見たことのないオリジナリティあるデザイン。スッキリとしたインパネデザインとのマッチングもよく、高級感もある。
デザインだけでなく、新開発のフィン構造により、従来エアアウトレットに対し配風角度を上下ともに拡大。冷風が顔に直接当たらないよう頭上に配風
したり、温風を膝上に直接配風したりすることも可能だ。
インパネ上部には、9インチのホンダコネクトディスプレーが設置されている。Honda Total Care プレミアムに加入すると、スマートフォンがクルマのキーになるデジタルキーやリモート操作、車内Wi-Fi、事故時に適切なサポートが受けられる緊急サポートセンターなどのサービスが受けられる。
ただ、タッチパネル式なので操作がしにくいのが難点。多くの人は右利きなので、左手での操作は難しい。基本的な操作は、ダイヤル式などが望ましい。
今時、ガソリン車のみって・・・
新型シビックに搭載されるパワーユニットは、1.5L直4直噴ターボのみ。182ps&240Nmをアウトプットする。20Nm先代よりトルクが増強。エンジン型式はL15Cと同じだが、俊敏な応答性をもたらす斜流ターボチャージャー&低損失配管、4in2 エキゾーストポート、燃焼効率をさらに高めるエキゾースト側VTECなどが加えられ進化した。
さらに、クランクシャフトや、それを保持するシリンダーブロックの周辺部品
を高剛性化。エンジン振動を低減することで、静粛性も高めている。
燃費性能は、WLTCモードで16.3㎞/Lと良好。ただし、燃料がハイオクガソリン仕様なので、燃料費が高めになるのが難点。
また、先代シビックが売れない理由のひとつが、ハイブリッドが無いこと。EUは2035年にハイブリッド車を含むガソリン車の新車販売を禁止する方針を出している中、e:HEVをアピールするホンダが今更純ガソリン車のみを日本に投入と言うのは少々疑問が残る。
日本のハイブリッド車普及率は、世界でもトップレベル。北米色の強いモデルをそのまま日本に持ち込んでも、売れないのは当然のことだろう。トヨタは、北米で人気のカムリに関しては、ガソリン車は入れず、ハイブリッド車のみにしているくらいだ。
洗練されたCVTと6MT
この1.5L直噴ターボエンジンに組み合わされるミッションは、CVTと6速MTとなる。CVTは、一定以上強くブレーキを踏み込んだ際、レシオを低く制御しエンジン回転数を高く保ちながら段階的にシフトダウンするブレーキ操作ステップダウンシフト制御を採用した。
6速MTも進化。エンジンのトルク変動を効果的に吸収するデュアルマ
スフライホイールに加え、進化させたシンクロナイザー機構を採用。シフト操作時の荷重変動を従来以上に低減している。
また、アルミ製ブラケットを採用。シフトレバーの支持剛性を高めたほか、各部のクリアランスを短縮。操作時のダイレクト感を向上している。さらに、シフトストロークを5mm、セレクトストレロークを3mmそれぞれ短縮。手首の動きで小気味よくシフトチェンジができるスポーティーな操作フィールを実現している。
軽量化と高剛性化がテーマのボディ
新型シビックのプラットフォームは、先代モデルのものを改良してい使用。軽量化と高剛性化がテーマだ。
ボディ剛性は、各部に改良が施され、ねじり剛性で先代モデルに対し19%向上した。構造用接着剤の使用範囲は、先代モデルに比べ9.5倍に拡大している。
軽量化では、高張力鋼板を採用。フロントフードをアルミ製とすることで、スチール製に対し約43%、テールゲートハッチは樹脂製とすることでスチール製に対し約20%、それぞれ軽量化している。
新型シビックのサスペンションは、フロントがストラット、リヤがマルチリンクと先代モデルと共通。しかし、フロントサスペンションとステアリングまわりのフリクション低減。ステアリング制御の進化を加え、リニアなライントレース性を獲得した。
リヤサスペンションは、コンプライアンスブッシュの入力方向適正化と大容量化により乗心地と静粛性を向上している。
充実した予防安全装備
そして、重要な安全装備は「ホンダセンシング」を全車標準装備。自動ブレーキは、歩行者と自転車に対応する。また、誤発進・誤後退抑制機能など、多くの機能がホンダセンシングにはパッケージ化されていて、十分な予防安全性能を誇る。
また、運転支援機能として、高速道などの渋滞時に車線を維持しながら先行車に追従走行するトラフィックジャムアシストも装備されている。
さらに、車線変更時に後側方から接近する車両を検知し警報を発するブラインドスポットインフォメーション、後退時に後方から接近する車両を検知し警報を発する後退出庫サポートも標準装備。頻繁に役立つ機能も標準装備化され、運転が苦手なひとでも安心して運転ができる。
新型ホンダ シビックのグレード選び
新型ホンダ シビックのグレード選びは簡単。エンジンは1タイプ、グレードはLXとEXの2つしかない。後は、欲しい装備の有無で選択が決まる。
グレードの間の装備差は、LEDフォグライトにLEDアクティブコーナリングライト、パワーシート、BOSEプレミアムサウンドシステム、プラズマクラスターエアコン、リアベンチレーション、ワイヤレス充電器、EX専用インテリア、10.2インチ デジタルグラフィックメーターなどだ。この装備差で、価格差は約35万円となる。
装備差は、少し微妙でシンプルになるならLXでも十分だろう。ただ、やはりパワーシートや10.2インチ デジタルグラフィックメーターなど、気のなる装備が1つでも欲しいということになると、必然的にEXになる。約35万円高価でも、EXを選んだ方が無難で満足度も高くなるだろう。
さて、新型シビックの値引きだが、新型車なのでしばらくは値引きゼロベース。だが、すぐに値引き枠は拡大されると思われる。先代シビックもあまり売れなかったので、ライバル車と競合すれば、値引き対応してでも売るしかないからだ。
商談時により大きな値引きを引き出すには、カローラやマツダ3との競合は必須。やや価格は高くなるが、フォルクスワーゲン ゴルフと競合させるのもよい。
先代シビックのリセールバリューは、意外なほど高い傾向が続いているので、新型シビックも同じ傾向になるなら、新車で大幅値引きして買えば、お得な買い物になりそうだ。
一般的に、新車であまり売れなかったクルマは、リセールバリューが低くなるケースが多いが、先代シビックはかなり中古車流通量が少ないためか、中古車価格は高値維持。リセールバリューも高くなっている。
■ホンダ シビック価格
・LX FF CVT/6速MT 3,190,000円
・EX FF CVT/6速MT 3,539,800円
■ホンダ シビック燃費、ボディサイズなどスペック
ボディーサイズ:全長4550×全幅×1800×全高1415mm
ホイールベース:2735mm
トレッド前/後:1535/1565
車重:1370kg
エンジン型式:L15C型 1.5L直4 DOHC 16バルブ直噴ターボ
排気量:1496
最高出力:182PS(134kW)/6000rpm
最大トルク:240N・m(24.5kgf・m)/1700-4500rpm
燃費(WLTCモード):16.3㎞/L
燃料:無鉛プレミアム
サスペンション前/後:マクファーソン式/マルチリンク式
タイヤ前後:235/40R18
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