5代目レクサスLSがマイナーチェンジ
レクサスは、フラッグシップセダンのLSをマイナーチェンジし発売を開始した。初代レクサスLSは、日本では1989年にセルシオとして発売された。その後、3代目まではセルシオとして販売されてきた。
しかし、2006年の4代目からは、日本でもレクサス店がスタートしたこともあり、セルシオは絶版になってレクサス店でLSが販売されるようになった。4代目が10年以上も販売された後、2017年に登場したのが現行モデルの5代目LSだ。デザインは、セダンでありながら斬新なクーペシルエットを持つほか、エモーショナルな走りを実現したモデルとなった。今回は、そのマイナーチェンジである。
まるで本物の金属感ある輝きをもつ新色「銀影(ぎんえい)ラスター」
レクサスLSのデザインは、それほど大きな変更は加えられていない。これは、LSの基本的なデザインがマーケットで一定の評価を受けているということだ。マイナーチェンジなどで、大幅なデザイン変更が行われた場合は、逆にマーケットから不評であることが多い。
ただ、よりデザインの完成度を高めるために、随所に変更が加えられている。まず、フロントバンパーコーナー部に縦基調のキャラクターラインを配置し、オーバーハングが短く見える意匠とした。フロントバンパー下端のメッキモールがサイドまで回り込む造形とすることで、伸びやかさを表現した。
新デザインの小型3眼ランプユニットとL字を際立たせたクリアランスランプの下に、ブレードスキャンAHSを搭載した厚みのあるヘッドランプ形状は、風格を際立たせるものとなった。その下部には、スクエア形状のサブラジエーターグリルが配置され、スタンスの良さを感じさせている。
スピンドルグリルのメッシュカラーは、ダークメタリックに変更され、フォーマルなシーンに一段と似合う雰囲気が演出されている。
リヤコンビネーションランプ内のメッキモールは、ピアノブラックに変更。厚みを感じるランプ形状とし、ヘッドランプと調和させていて、走り去っていくときの存在感を際立たせている。
スポーティグレードの“F SPORT”は、サブラジエーターグリルのガーニッシュをサイドまで回り込ませることで、一段とワイドなスタンスを強調。また、専用色のスピンドルグリル、20インチホイールなどのアイテムを採用し、“F SPORT”らしいスポーティなデザインとしている。
ボディカラーでは、銀影(ぎんえい)ラスターと呼ぶ、新しいシルバーを開発した。シルバーは色を質感として感じ取りやすいため、レクサスが長年開発に力を注いできたという。今回の銀影(ぎんえい)ラスターは、レクサス最新のシルバーとして、光輝材(アルミフレーク)を含んだ塗料の体積を凝縮させる「ソニック工法」を応用し、蒸着アルミを高密度で敷き詰める最新の塗装技術を採用した。鏡面のように粒子感をほとんど感じさせない滑らかな質感で、周囲の僅かな光も繊細にとらえ、時の移ろいや変化に呼応し、様々な表情を見せる特別なシルバーとしている。実際に見ると、本物のアルミ材のような金属感ある塗装となっている。
よりLSらしい快適な乗り心地を目指し、シートに新開発低反発ウレタンパッド採用
レクサスLSのインテリアは、ハンドルとセンターコンソールのスイッチ類を黒で統一し、視認性を向上させるとともに端正な印象とした。また、使用頻度の高いシートヒーターとステアリングヒーターの操作画面を表示させるスイッチをセンターコンソールに追加することで、操作性を高めている。
マルチメディアシステムは、新たにタッチディスプレイを採用。走行中は、視線移動の少ないリモートタッチで安全に操作し、停車時はより利便性の高いタッチディスプレイで操作できるようになり、かなり便利になった。ただ、相変わらずリモートタッチは節度感がなく、やや扱いにくい。
スマートデバイスリンクやアップルカープレイ、アンドロイドオートに対応。スマートフォンを12.3インチタッチワイドディスプレイに連携することで、画面操作や音声操作を可能とするなど、操作性・利便性を大きく向上させている。
シートは、シート表皮の縫い位置をより深い位置に変更。新たに開発した低反発ウレタンパッドを採用した。振動吸収と柔らかな座り心地により、さらに快適性を向上させている。
進化した予防安全性能
新型レクサスLSの安全装備面では、レクサスセーフティシステム+Aを全車に標準設定。各機能を拡充/進化させている。
このレクサスセーフティシステム+Aには、自車線内の歩行者やガードレールのような連続した構造物にブレーキ制御だけでは衝突の可能性が高い、かつ操舵制御によって衝突を回避できるとシステムが判断した場合、警報とブレーキ制御に加え、アクティブ操舵回避支援が作動し、衝突回避または衝突被害軽減を支援する。この操舵回避支援は、LSのみに用意された高機能な安全装備だった。しかし、そのLSでもエントリーグレードには装備されておらず、同じLSでも安全性能面では大きな違いがあったのだ。今回のレクサスセーフティシステム+Aが全車標準装備化されたことで、LSはどのブレード選んでも安心して乗れるモデルとなった。
また、「プリクラッシュセーフティ」の対応領域を拡大し、交差点右折時に前方から来る対向直進車や、右左折時に前方から来る横断歩行者も検知可能とした。加えて低速時の衝突回避または被害軽減をサポートする低速時加速抑制などの機能が追加されている。実際に多い交通事故状況に対応することで、より安全なクルマに進化した。
そして、カメラで主要な道路標識を読み取り、メーター内に表示する「ロードサインアシスト(RSA)は最新の速度規制に対応して、最高速度を120km/hまで表示するものとした。
レクサスチームメイトは、人とクルマが気持ちの通った仲間のようにお互いを高め合い、共に走るというトヨタ独自の自動運転の考え方「モビリティ チームメイト コンセプト」に基づいて開発された高度運転支援技術だ。
乗員に安心感を与える運転支援を実現する上で必要不可欠な車両の高い基本性能を徹底的に磨き上げるとともに、ディープラーニングを中心としたAI技術も取り入れ、運転中に遭遇しうるさまざまな状況を予測。それに対応することを支援する。
レクサスチームメイトはさらに、ソフトウェアのアップデートを活用して、ユーザーの手に渡った後も機能の追加、性能向上を続け、ユーザーニーズに応え続けることで、愛車になっていくことを目指している。ドライバーとクルマが対話の中でお互いの状態を確認し補い合うことで、安全な運転、快適な移動につなげていくという。
ハンズオフ機能がプラスされ、半自動運転が可能になる「アドバンスドライブ」を搭載
2021年に発売される予定の「アドバンスドライブ」では、前述の「モビリティ チームメイト コンセプト」に基づいた最新の高度運転支援技術により、高速道路などの自動車専用道路での運転において、ドライバー監視のもと、実際の交通状況に応じて車載システムが適切に認知、判断、操作を支援し、車線・車間維持、分岐、レーンチェンジ、追い越しなどを実現する。
クルマに運転操作を安心して任せられるように基本性能を磨き上げ、常に安全を最優先に判断することでドライバーに信頼される運転操作を追求。ドライバーはアクセル、ブレーキそしてハンドル操作からも解放されることで、長時間の運転における疲労の軽減が可能となり、より周辺に注意を払った安全な運転を実現できる。
アドバンスパークは、最新の高度運転支援技術により、駐車場での操作において、ドライバー監視のもと、カメラと超音波センサーを融合し全周囲を監視することで、適切に認知、判断、操作を支援する。ハンドル操作、アクセル、ブレーキ、シフトチェンジの全操作を車両が支援するとともに、俯瞰映像に車両周辺の死角や目標駐車位置などを常に表示し、安全/安心でスムーズな駐車を実現した。
具体的には、以下のような機能を備えて駐車時の運転支援を高度化している。
・操作支援の拡大
ハンドル操作、アクセル、ブレーキ、シフトチェンジの全操作を車両が支援することで、ドライバー負担を軽減する。これにより、ドライバーは周辺の安全確認に集中することができる。
・直感的なシステム操作
駐車区画横に停車すると自動的に駐車枠を認識し、スイッチを押すだけでアドバンスパークが起動する。また複数の駐車区画を認識した場合は、ディスプレイに候補すべてを表示するとともに、最適な区画を提案し、ドライバーが選択をする仕組みとしている。
・360°センシング
カメラと超音波センサーを融合し全周囲を監視し、障害物の位置をディスプレイのカメラ映像上に表示することで、ドライバーに周辺状況をわかりやすく伝える。障害物に接触する可能性がある場合は、警告するとともにブレーキ制御で接触回避を支援する。
・ドライバーとの協調
駐車支援制御中にアクセル操作があった際は、踏み間違いの可能性があると判断し、制御を一旦中断し、ドライバーの意思を確認する。ただしブレーキを踏んだ場合は、減速の意図をくみ取り、制御は継続する。
・スムーズな駐車
市場におけるさまざまな駐車パターンデータを収集・分析し制御に反映することで、乗員に安心感を与える無駄のない経路とメリハリのある速度コントロールを実現したスムーズな駐車を追求したという。
・使用環境を広げるメモリ機能
駐車区画(白線)がない場所でも、カメラで捉えた画像情報をもとに駐車したい位置を事前にシステムに記憶させ、駐車支援を実行することが可能なメモリ機能を採用した。自宅や職場など、使用頻度の高い駐車場での利便性を向上させるものだ。
電動化が加速する時代に、3.5L V6ターボは必要か?
新型LSでは、LSの原点である上質な走りを追求するにあたり、人の感性を大切に、タイヤの内部構造からシートに座った際の質感、日常走行領域での加速レスポンスなど、静粛性や乗り心地をはじめとする走行性能に関係するパーツや制御を細部まで徹底的に作り込んでいる。
LSにはV型6気筒3.5Lの8GR-FXS型エンジンに電気モーターを組み合わせたハイブリッドのLS500hと、V型6気筒3.5Lツインターボ仕様のV35A-FTS型エンジンを搭載したLS500の2タイプを設定。それぞれに、FRの2WDとAWDの設定があるほか、さらに4グレードの設定があるため、合計16種類のバリエーションとなる。
このうち3.5LのV型6気筒ツインターボエンジンでは、使用頻度の多い走行領域でのエンジントルクの立ち上がりを向上させ、余裕のある力強い走りを実現した。電動駆動方式で過給圧を制御するウェイストゲートバルブのバルブ開度を緻密に制御。アクセル操作に対して発生するエンジントルクの精度を高め、車両の加速レスポンスを向上させた。
また、シフトスケジュールを変更し、ギヤ段を維持したまま加速できる領域を拡げることで、シフトダウン頻度を低減している。
これに加え、3.5LのV型6気筒ツインターボエンジンは、燃焼室形状の最適化により燃焼効率を向上。出力、燃費性能、静粛性を向上させている。さらに、コンロッド形状の最適化やクランクシャフトのクランクピン径を拡大することで軽量化と、剛性向上による優れた静粛性を両立した。
また、可変バルブタイミング機構(VVT)を油圧制御化し軽量化を図るとともに、オイルコントロールバルブをVVT内部に配置する構造とすることで、応答性の向上も図っている。
大きな変更が加えられたV6 3.5Lターボエンジンだが、出力は422ps&600Nmとスペックは変更されていない。
ハイブリッドシステムの改善は行われていないようだが、3.5L V6ターボエンジンは、かなり改良が加えられ洗練さを増している。本来ならば、高く評価すべきなのだが、純ガソリン車はいずれ姿を消す存在。国内ではハイブリッド車が主流であることを考えると、早々に純ガソリンエンジンの販売をやめるか、むしろ、ハイブリッドシステムのさらなる進化を望みたいところだ。
課題だった乗り心地も改善方向に
現行レクサスLSは、ランフラットタイヤを採用していることもあり、デビュー直後の乗り心地は少々粗さを感じた。ラグジュアリーセダンであるLSにとって、乗り心地と静粛性は重要な要素。今回のマイナーチェンジでは、この部分もかなり手が入れられた。
減衰力可変ダンパーのAVSは、新たに設計した油圧制御用ソレノイドのオイル流量制御バルブの流路を拡大。これにより減衰力を低減し、上質な乗り心地を実現している。また、減衰力の可変幅を拡大し、優れた操舵応答性と安定性に寄与させている。
大きな課題のひとつであったランフラットタイヤは縦バネ剛性を少し落とし、乗り心地重視とした。同様に、スタビライザーバーのばね定数、バウンドストッパーの先端剛性などを最適化。
また、エンジンマウント内のオリフィスを変更することで減衰特性の変更を行い、室内に伝わる振動や衝撃を低減するなどし、乗り心地を向上させている。
さらに、2WD車のフロントサスペンションを高強度アルミ鍛造アームに変更したことや、タイヤの質量低減により、ばね下質量を約3.5kg軽量化させた。路面からの入力をボディへ伝わりにくくすることで乗り心地を向上させている。
レクサスLS価格
■LS500h 2WD (FR)
“EXECUTIVE” 16,870,000円
“version L” 14,930,000円
“F SPORT” 13,510,000円
“I package” 12,190,000円
■LS500h AWD
“EXECUTIVE” 17,280,000円
“version L” 15,340,000円
“F SPORT” 13,920,000円
“I package” 12,600,000円
■LS500 2WD (FR)
“EXECUTIVE” 15,390,000円
“version L” 13,450,000円
“F SPORT” 12,340,000円
“I package” 10,730,000円
■LS500 AWD
“EXECUTIVE” 15,800,000円
“version L” 13,860,000円
“F SPORT” 12,440,000円
“I package” 11,140,000円
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