脱ゴーンの象徴となるのか? 日産の国内販売を支える基幹車種が3代目新型ノート
日産は、Bセグメントのコンパクトカーであるノートをフルモデルチェンジし、発売を開始した。
今回の新型日産ノートは3代目で、2代目ノートがデビューしたのは2012年だから、実に8年振りのフルモデルチェンジとなる。この間、2016年にe-POWERを追加したことがモデル寿命を長期化された理由でもある。だが、同時に前会長カルロス・ゴーン体制の下で、国内市場に対してあまり熱心ではなかったことも、モデルサイクルの長期化の理由のひとつでもある。そういう意味で、ノートは脱ゴーンのシンボルとなるべくモデルといえるだろう。
日産の国内販売は、2020年に登場したキックス、ノートの後は2021年にアリアなどの登場も予定されているから、日産もだんだんと本気で国内市場に向き合うようになってきたといえる。これは喜ばしいことである。自動車メーカーは、ホームグラウンドでしっかり売ることができなければ、世界でも通用するメーカーになれないからだ。
また、2代目ノートはe-POWERの人気もあって2018年に登録車の販売ランキングの首位に立った。
これは、日産には他に売るクルマがないのでノートに専念するしかなく、トヨタにはいろいろな車種があって販売が分散したことも理由だが、日産の国内販売を支える重要な車種であったのは間違いない。そのノートが、満を持してフルモデルチェンジされたわけだ。
今回の3代目新型ノートは「常識を超える、先進コンパクトカー」をコンセプトに開発が進められ、それを実現するために、プラットフォーム(車台)を新設計。新世代のCMF-Bと呼ばれるプラットフォームが採用されている。さらに、システムを大幅に刷新しパワーアップした第2世代のe-POWERを搭載。また、日産の新しいブランドロゴが採用されたのも特徴だ。
日本の伝統工芸「組子」からインスパイアされたフロントグリル
3代目新型日産ノートの外観デザインは、2020年7月に概要が発表され、デザインがお披露目されたEVのアリアと共通性を持つ。新世代の日産デザインを象徴するモデルとなった。日産は、先にブランドロゴを刷新しているが、この新ロゴを採用した最初のクルマになったのが3代目新型ノートだ。
日産車に共通するフロントのVモーショングリルは、3代目新型ノートでも採用されている。その中央に位置する日産のエンブレムに、新ロゴが採用されている。Vモーションはクロームで縁取られ、グリルと一体化された薄型のヘッドランプが組み合わされている。
フロントグリルには、日本の伝統工芸である組子からインスパイアされたパターンがあしらわれ、「日本の風景に溶け込むデザイン」を意識している。スリークで先進的なヘッドランプは、オプションで4連LEDプロジェクターの設定もある。
ボディサイドには、フロントからリアまで一本の線でつながる明確なキャラクターラインが設けられ、その下にはクリーンな面が広がっている。この面には抑揚が設けられ、見る角度によって豊かにうつろう張りのある面としているのが特徴だ。
リヤには、水平に広がる横一文字のシェイプをもつ特徴的なシグネチャーのリアコンビランプが、ワイド感を表現している。
全体に日産の新しいデザインランゲージが採用されており、先進的でクリーンかつダイナミックなデザインである。コンパクトカーでありながらもひときわ際立つ存在感を持つクルマとしてデザインされている。
オプション設定の16インチのアルミホイールには、日本の刀からインスパイアされたシャープで洗練されたデザインが施され、eパワーの走りのパフォーマンスを連想させるものになっている。
ボディカラーは、2種類の2トーンを含む、全13色の幅広いバリエーションを用意。男性でも女性でもユーザーの好みに合わせて自由に選べるラインアップとした。先進的で、躍動感のある「ビビッドブルー」や、新型「ノート」向けに開発された新色であるクールトーンの「オペラモーブ」は、洗練された大人に似合うカラーだという。
デジタルメーターなど、大幅に質感を高めたインテリア
3代目新型ノートのインテリアは、コンパクトカーの常識を覆す先進的で快適な空間を目指したデザインが採用された。外に向かって広がるようなインストルメントパネルに、センターディスプレイと一体化したメーターが装備され、電動化に相応しい先進感と使い易さを兼ね備え、日産の新たなインテリアデザインの思想を体現したという。メーターは7インチデジタルと、贅沢な仕様となっている。
小型の電制シフトレバーが乗るブリッジ型のセンターコンソールには、大型の収納スペースやロングリーチのアームレストを装備したことで、革新的なデザインと共に、快適なドライビングが楽しめる。アームレストに肘を乗せたままで容易に操作できるシフトレバーだ。
また、前席のセンターコンソールには、スマートフォンのワイヤレス充電器などの利便性の高い機能を装備(オプション設定)している。
後席のシートにはリクライニング機能が備えられ、これによってニールーム、ヘッドルームともに余裕のスペースを確保したという。ただ、新プラットフォームを採用したことで、 ホイールベースがやや短くなり、これによって従来のモデルに比べてニールームはやや狭くなっている。
荷室空間は、広い開口部と十分な荷室幅を確保することで、ストレスなく荷物を収納することを可能とした。
インテリアのカラー&マテリアルは、グレードに合わせて3種類のバリエーションが用意されている。最上級グレードのXにはグラデーションストライプのジャージーシートと合皮レザーアームレストのコンビネーションが設定され、インストルメントパネルにはカーボン調の加飾が配されている。水平に広がる長いマットクロームのフィニッシャーが特徴的な、すっきりとモダンなカラーコーディネーションである。
3代目新型ノートのインテリは、かなり質感が向上した。これは、先代ノートのインテリアの質感が低かったことから、重要な改善点のひとつにあげられていたからだ。
純ガソリン車、早くも廃止へ!? e-POWERのみの設定となった2代目新型ノート
3代目新型ノートのパワートレーンには、ガソリンエンジンのみで走るガソリン車の設定はない。エンジンで発電してモーターで走るシリーズハイブリッドの第2世代のe-PWERだけの設定になった。
ライバル車となるトヨタ ヤリスやホンダ フィットも2020年にフルモデルチェンジしているが、価格志向の顧客用に安価なガソリン車を残している。2代目ノートの販売面では、e-POWERが中心だったとはいえ、かなり大胆な設定だ。これは、EV化を推進する日産ブランドとしてのこだわりともいえるものだ。
第2世代に進化したe-POWERは、モーターとインバーターが刷新されている。搭載エンジンは、1.2LのHR12DE型で従来と変わらないが、モーターはEM47型になり、先代モデルに比べてトルクを10%、出力を6%向上させている。
モーター最高出力85kW(116ps)/2900~10341rpm、最大トルク280N・m/0-2900rpmの実力で、よりパワフルで気持ちの良い発進加速と、中高速からの追い越し時の力強い加速感を実現している。インバーターは、第1世代よりも40%の小型化が図られるとともに、30%軽量化されている。
直列3気筒1.2LのHR12DE型エンジンは、最高出力60kW(82ps)/6000rpm、最大トルク103N・m/4800rpmの実力で、燃焼効率や発電効率を向上させたことが、モーターによる加速性能だけでなく同時に燃費の向上にもつながった。
また、システムの制御の高度化によってエンジンの作動頻度を低減させたことや、車体の遮音性能向上などにより、コンパクトカーでありながら、ひとクラス上の静粛性を実現したという。
これに加え、路面状態によってロードノイズが大きいと判断した場合には、積極的に発電を行う制御システムを世界で初めて開発。より静粛性を高めている。ロードノイズが大きいときに優先的にエンジンを稼働させ、発電を進めることで、通常時のエンジン稼働が少ない静かなクルマを実現したわけだ。
パワートレーンの制御は、ほかにもいろいろと行われ、ハードウェアとその制御を刷新することで、より力強く上質な走りと効率化を高い次元で両立させている。さらに、スムースで思い通りの「加速」や、滑らかな「減速」の制御、電動パワートレーンならではの抜群の「静粛性」などを格段に向上させたという。特に減速制御を滑らかにしたことは、減速時のドライバーの姿勢変化(前かがみになる)を抑制することにつながっている。
優れた走行性能に期待! リヤに大出力モーターを装備した4WD車
3代目新型ノートe-POWERの駆動方式は従来通り、FF(前輪駆動)と4WDの設定になっている。従来の4WDは、後輪に最高出力3.5kWという小さなモーターを搭載。出力が小さいこともあり滑りやすい路面で、少しアシストしれくれるといった4WDだった。
ところが、3代目新型ノートe-POWERのリヤモーターは、なんと最高出力50kWのパワーという大出力モーターが搭載された。フロントモーターの最高出力がが85kWなので、いかに大出力なのか分かる。
このリヤに搭載した大出力モーターが搭載されたことにより、前後モーターの出力を瞬時に調整。悪路での走破性はもちろん、路面状況に合わせた優れた操縦安定性を提供してくれる。
より進化した予防安全技術プロパイロットを装備
3代目新型ノートには、自動運転につながる日産の運転支援技術であるプロパイロットが搭載された。360°セーフティサポートを実現する先進安全技術だ。
これまでは、上級車から順次搭載を進めてきたが、コンパクトカーに搭載されるのは初めてだ。同時に、日産車としては初となるナビリンク機能も備えている。
これは、高速道路同一車線走行時の運転操作をサポートするプロパイロットに、ナビゲーションシステムとの連携機能を加えることで、制限速度の変化に伴う設定速度の切り替えや、カーブの大きさに応じた減速をシステムが支援し、ドライバーの操作頻度を軽減するものだ。安心かつ快適なドライブを実現する機能といえる。
このほか、新プラットフォームをベースにした車体骨格には、日産車として初の1470MPa級の超ハイテン材(冷間プレス用超高張力鋼板)を使用し、軽量化と衝突安全性を高い次元で両立させている。
日産ノートe-POWERのグレード選び
3代目新型ノートの価格は、ガソリン車の設定がないため、エントリーグレードの価格は、やや高く見える。もはや、このクラスのハイブリッド車は、200万円を超える価格が当り前になってきている。
ただ、ベースグレードがFで中間グレードがSという設定なのに、価格はFのほうが高いというのも分かりにくい設定である。
これはフロントドアの窓ガラスの違いによるものだ。FにはIRカット&スーパーUVカット断熱グリーンガラスが装備されるのに、SではUVカット断熱グリーンガラスになるからだ。逆にFになくてSにある装備はリヤ間欠ワイパーだけだ。
ほかに、Sには安全装備や快適装備などさまざまなオプションが設定されているが、Fではそれが設定されていないものが多いので、Fは選択から除外して考えていい。
FとXの装備の違いは、IRカット&スーパーUVカット断熱グリーンガラスがフロントウインドーとフロントドアに採用されるほか、Sでは通常の電動格納式カラードアミラーが標準なのに、Xにはサイドターンランプ付き電動格納式リモコンカラードドアミラー(ドアロック連動格納機能付き)が標準となる。
また、ステアリングスイッチにオーディオとハンズフリーフォンのスイッチが追加され、インテリジェントキー(これが大きい)が設定されることなどだ。これで15万円以上高くなるのはやや微妙だが、満足度というてんでは最上級グレードを選んでおきたい。
3代目新型ノートでは、最新の運転支援装備やカーナビ&オーディオなど、さまざまな装備がオプション設定となっている。このため、Xを基準にオプションをプラス装着すると、車両価格だけで200万円台後半になってくる。こうなると、支払い総額では300万円前後になる。
3代目新型日産ノートe-POWERの値引き術
2020年は、新型ノートe-POWERのライバル車となるトヨタ ヤリスやホンダ フィットもフルモデルチェンジしている珍しい年だ。まさに、Bセグメントコンパクトカーの販売戦争は、熾烈を極める状況になっている。
さらに、コロナ禍ということもあり、新車販売は低迷中。各社、少ない顧客の奪い合いとなっている。こうなると、買い手が有利。フルモデルチェンジしたばかりのモデルは、通常「値引きゼロ」がベース。しかし、それでは顧客を逃がすことにつながるので、新型車とはいえ一定の値引き額が引き出せるだろう。
ただ、何もしなければ値引きゼロベースになる。3代目新型ノートが欲しいのであれば、新型ノートの商談の前に、まずヤリスとフィットの見積りを取ることから始めたい。
その上で、新型ノートはついでに見に来た程度で商談をスタートしよう。ライバル車の見積りを先に取るのは、日産の営業マンに本命はヤリスかフィット? と、思わせることだ。こうすることで、顧客の奪い合い合戦が始まり、徐々に値引き額をアップしていくはずだ。営業マンには「新型ノートでもよいが、やはりコロナ禍なので、支払金額は少ない方がよい」など、支払総額が重要というような姿勢で商談するとよいだろう。
日産ノート価格
・F 2,054,800円
・S 2,029,500円
・X 2,186,800円
日産ノートe-POWER、ボディサイズ、燃費などスペック
ボディサイズ:全長4045×全幅1695×全高1520mm
ホイールベース:2580mm
車両重量:1220kg
駆動方式:FF
最小回転半径:4.9m
エンジン型式:HR12DE型 直3 DOHC 12バルブ
排気量:1.198L
エンジン最大トルク:103N・m(10.5kgf・m)/4800rpm
モーター型式:EM47
モーター最高出力:116PS(85kW)/2900-10341rpm
モーター最大トルク:280N・m(28.6kgf・m)/0-2900rpm
WLTCモード燃費:28.4km/L
JC08モード燃費:34.8㎞/L
動力用主電池種類: リチウムイオン電池
サスペンション前/後:ストラット/トーションビーム
タイヤ前後:185/60R16
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