スズキの救世主的存在だった初代ハスラー
スズキはハスラーをフルモデルチェンジし、発売を開始した。このフルモデルチェンジで、ハスラーは2代目となった。
初代ハスラーは軽自動車のワゴンタイプのボディを基本に、SUV感覚の外観や機能などを融合させたクロスオーバーモデルとして一定の人気を集めてきたモデル。初代モデルが発売されたのは、2014年1月だから6年振りのフルモデルチェンジである。
初代スズキ ハスラーは、2013年10月の東京モーターショーでワールドプレミア。このモーターショーでは、非常に話題となった1台だった。2014年度の販売台数は、約11.4万台を販売。軽自動車販売台数ランキング9位となった。当時、すでに人気の中心は、ホンダN-BOXなどのスーパーハイト系。ハスラーの属するハイト系は、大きく販売台数を落としていた時期だっただけに、ハスラーはより注目されていった。
このハスラーは、基本骨格やエンジンをワゴンRと共用する派生モデルという側面ももっていた。ワゴンRとは異なる車名になっていたこともあり、販売台数ランキングでは別々にカウントされ9位になった。だが、姉妹車としてワゴンRの販売台数と合算すると、なんと約27万台を販売。この年度でナンバー1となったダイハツ タントの販売台数21万台を大きく上回る結果となっている。ワゴンRの販売不振に悩んでいたスズキにとって、ハスラーは救世主といえるモデルだったのだ。
初代ハスラーのキープコンセプトとしたデザイン
2代目となった新型スズキ ハスラーは、「もっと遊べる! もっとワクワク!! もっとアクティブな軽クロスオーバー」をコンセプトに開発された。
最新のトレンドやユーザーのライフスタイルの変化に対応しながら、新しい楽しさ、ワクワクを提案し、ユーザーの想像力や行動力をかき立てる新たなハスラーを目指している。
2代目スズキ ハスラーの外観デザインは、キープコンセプトだ。ひと目でハスラーと分かるデザインとするとともに、タフで力強いSUV感覚を取り入れたエクステリアとしている。丸型ヘッドランプとスクエア基調のグリルは、従来のハスラーで採用していたもので、これを特徴的なアイコンとして踏襲し、さらにフード高を高めに設定することで、厚みのある顔周りを表現した。
立てたフロントピラーとロングルーフによるスクエア型の大きなキャビンが室内の広さをイメージして、ピラーをボディ同色としてピラーの存在をしっかり見せることで、力強く、頑丈なイメージを与えている。
ボディ色に斬新な2トーンカラーを採用したのは、クロスカントリー4WDなどに見られる幌やハードトップなどから発想したもの。今となっては、ほとんどの軽自動車に作用され人気のボディカラーとなっている。
また、クロスオーバーモデルらしい遊び心あるモデルにはピッタリだ。ボディカラーは、ガンメタリックの2トーンが3色、ホワイトの2トーンが2色、モノトーンが5色の計11色の豊富なカラーバリエーションを持つ。
超コッテリ系? ユニークなインテリアデザインとなった2代目ハスラー
2代目ハスラーのインテリアは、タフで機能的なものとすると同時に、遊び心を刺激する先進的でワクワクするデザインを目指している。
インパネは、タフな世界観を演出する3連のインパネカラーガーニッシュを採用。上下のバーでガーニッシュを挟んで力強い骨格を表現した。4.2インチのカラー液晶メーターを採用し、視認性やアニメーションにもこだわって、日々の運転を楽しくサポートするものとした。
インパネとドアトリムには、車体色に対応した3色(バーミリオンオレンジ、デニムブルー、グレーイッシュホワイト)のカラーパネルを採用した。シートは縞鋼板柄のシート表皮に、車体色に対応した3色(バーミリオンオレンジ、デニムブルー、グレーイッシュホワイト)のカラーアクセントを採用している。
室内スペースの拡大&悪路走破性が向上
新型ハスラーは軽自動車規格の中で、一段と快適で広い室内空間を作っている。スズキの新世代のボディ設計技術である「HEARTECT(ハーテクト)」を採用し、先代モデルに比べてホイールベースを35mm延長することで、後席乗員の足元空間を確保した。前席は左右乗員間距離を30mm拡大することで快適で広い室内空間を実現。
ラゲッジスペースは荷室側からも操作可能なスライド用ストラップを後席背面に採用し、シーンにあわせてラゲッジスペースの荷室容量の調整が可能とした。
後席の背面やラゲッジフロアは汚れを拭き取りやすい素材を採用したのを始め、荷室下には防汚タイプのラゲッジアンダーボックスを採用した。ボックスは取り出して洗うことができ、汚れたものの収納にも便利なものとした。またラゲッジボードを外せば荷室高が拡大し、背の高い荷物を収納することができる。
悪路走破性に影響するアプローチアングルを従来に比べて1度拡大。デパーチャーアングルを4度拡大することで、優れた悪路走破性をさらに進化させた。ホイールベースを延長しながらも、最小回転半径は4.6mに抑えていて、取り回しの良さはしっかり継承されている。
性能が向上した予防安全装備パッケージだが・・・
今や標準装備化が当然といえる、歩行者検知式自動ブレーキを含む予防安全装備パッケージは、性能が向上するなど充実している。
衝突被害軽減ブレーキを夜間の歩行者も検知するステレオカメラ方式の「デュアルカメラブレーキサポート」とし、誤発進抑制機能、車線逸脱警報機能、ふらつき警報機能、先行車発進お知らせ機能などを採用した。
ヘッドランプのハイビーム /ロービームを自動で切り替えるハイビームアシストや一時停止標識の認識を追加した標識認識機能を採用している。
リヤバンパーに内蔵した4つの超音波センサーで後方の障害物を検知する「後退時ブレーキサポート」を採用。さらに後方誤発進抑制機能、リヤパーキングセンサーも備えている。
スズキの軽自動車としては初の採用となる「アダプティブクルーズコントロール(ACC、全車速追従機能付き)をターボ車に設定。全車速での追従機能は、便利なものだ。また、車線逸脱抑制機能もスズキの軽自動車として初の採用である。
フロント、リヤ、サイド(左右)の計4か所に設置したカメラの映像を合成・処理し、自車周辺を真上から俯瞰的に見たような映像をモニターに映し出す全方位モニターに、周囲を立体的に360°確認できる「3Dビュー」を採用した。
自車の前方および後方で左右から人や物が自車に近づいてくることをお知らせする「左右確認サポート機能」も搭載する。
シフトレバーをバックからドライブに切り替えた際、カメラ映像がフロントビューに自動で切り替わる「フロントビュー自動表示機能(切り返し時)」を採用し、サポート機能を充実させている。
メーカーオプションの全方位モニター付きメモリーナビゲーションは、カメラ映像のデジタル伝送化に対応し、カメラ映像の鮮明な表示が可能になった。
充実した予防安全装備パッケージだが、残念なのは全車標準車化されていないこと。いずれ、こうした装備は義務化される。安価であることを優先し、義務化されるまで、安全ではないグレードを設定し販売することは、交通安全という社会的な責任から逃げていることにもなる。社会的責任を果たすためにも、全車標準装備化すべきだ。
新技術が惜しみなく投入された新型ハスラーのパワーユニット
2代目新型ハスラーには、 日常使いから高速道路まで、幅広い速度域で優れた燃費性能を実現する新開発の自然吸気仕様エンジンを採用し、低速から中高速までの実用速度域で優れた燃費性能と軽快な走りを両立させた。自然吸気エンジンの搭載車もターボ車も全車がマイルドハイブリッドという設定だ。
このエンジンにはスズキの軽自動車として初のデュアルインジェクションシステムを採用。1気筒あたり2つのインジェクターを装着して燃料を微粒子化することで、燃料と空気の混合気を均質化し、燃焼効率を高めて費も走りも向上させている。
また、スズキの軽自動車として初のクールドEGR(排気ガス再循環装置)を採用し、燃焼温度を抑制することでノッキングの発生を抑え、最適なタイミングでの燃焼を実現した。なお、ターボ車はゆとりの動力性能を備えるR06A型エンジンを採用している。
燃費と走りの両立には、軽量化と高効率化を追及した新開発のCVTも貢献している。低中速域でのスムーズな走りを得るとともに、高速域ではハイギヤード化により燃費性能と静粛性に貢献する。
その結果、2代目新型ハスラーの燃費は、自然吸気エンジン車が25.0㎞/L(WLTCモード)、ターボ車が22.6㎞/Lとなっている。クラストップレベルの燃費値だ。
より軽く強いボディを目指した
基本プラットホームは、スズキの新世代技術に基づく軽量で高剛性の新プラットフォーム「HEARTECT(ハーテクト)」を採用した。超高張力鋼板や高張力鋼板を効果的に使うことで、ボディの軽量化と高剛性を両立させるものだ。
バックドア、センターピラー、サイドドアでそれぞれ「環状骨格構造」を形成することで、ボディー全体で剛性を高めている。
ボディのスポット溶接部に「構造用接着剤」をスズキとして初採用し、部品間のわずかな隙間を埋めることで接合を強化。ボディ全体の剛性を向上させ、優れた操縦安定性、乗り心地を実現した。
また、こもり音や雨音を低減する「高減衰マスチックシーラー」を軽自動車で初めて採用し、静粛性の高い室内空間を実現した。さらに、防音材や遮音材を最適に配置することで一段と静かな室内空間を作っている。
ステアリングは操作性を高め、振動を徹底的に抑えた設計とし、ドライバーが意図した通りにクルマが動くリニアな操舵感を実現。専用チューニングを施したサスペンションは優れた乗り心地を実現している。
4WDシステムには、雪道やアイスバーンでのスムーズな発進をサポートする「スノーモード」を新たに採用。ぬかるみや滑りやすい路面で発進をサポートする「グリップコントロール」、急な下り坂で車速を約7km/hで維持する「ヒルディセントコントロール」と合わせて4WD車に標準装備した。
スマフォアプリが使える9インチディスプレイを用意
カーナビは高画質で大型の9インチHDディスプレーを採用したナビゲーションをスズキとして初めてメーカーオプション(スズキ・セーフティ・サポート非装着車を除く全車にメーカーオプション)に設定した。斜めからの視認性も良く、運転席と助手席の両方から高い視認性と操作性を実現した。
アメリカのGPSに加え、日本のみちびき、ロシアのGLONASS(グロナス)による測位を可能とし、ビル街や山間部など測位が難しいエリアでも自車位置を安定して測位し、高い精度で表示する。
走行距離や平均燃費などの走行に関するリアルタイムな情報や、半ドア状態やシートベルト未装着などの警告情報など、さまざまな情報も表示可能だ。
車内でも安心、安全にスマートフォンアプリの機能を使用できるスマートデバイスリンクに対応し、スマートフォン連携機能が充実。カメラ映像のデジタル伝送化により、鮮明な映像を大画面に表示する全方位モニターを採用した。
スズキ ハスラー、グレードの選び方
2代目新型ハスラーのバリエーションはシンプルなもので、自然吸気エンジンの搭載車がGとXの2グレード、ターボ仕様エンジンの搭載車がGターボとXターボの2グレードの設定だ。この4グレードのすべてにFFの2WDと4WDの設定があるから、全部で8種類のバリエーションとなる。
価格は別掲の通りでGの2WD車が1,365,100円からで、最上級グレードとなるXターボが1,746,800円である。自然吸気とターボの価格差は10万円弱。一般道の街乗り中心で使うなら自然吸気エンジンの搭載車で良いが、予算に余裕があるならターボ車を選ぶと走りの余裕が大きくなる。
GとX、GターボとXターボの価格差は15万円ほど。ベースグレードには、スズキ・セーフティ・サポート非装着車の設定もあるが、これは絶対に選んではダメ。安全はお金には代えられないからだ。
X系に装備されてG系には装備されないのは、LEDヘッドランプ&LEDポジションランプ、本革巻きステアリングホイールシフトノブ、インテリア回りの各種加飾、プレミアムUV&IRカットガラス(フロントドア)、IRカット機能付きフロントガラス、運転席シートバックポケット、15インチアルミホイールなど。
女性であれば、プレミアムUV&IRカットガラスが絶対条件になってX系を選ぶことになるだろう。後はインテリア回りの加飾の違いを見て、どちらが好きかを判断したら良いが、満足度を考えたらX系のほうがお勧め度が高い。
2WDと4WDは雪道走行の機会がどれくらいあるかを基準にして判断したら良い。積雪地のユーザーなら4WDが絶対だが、関東以西の太平洋側に住むユーザーなら2WDで十分だ。
スズキ ハスラー価格
・HYBRID G 2WD 1,365,100円/4WD 1,499,300円
・HYBRID Gターボ 2WD 1,459,700円/4WD 1,593,900円
・HYBRID X 2WD 1,518,000円/4WD 1,652,200円
・HYBRID Xターボ 2WD 1,612,600円/4WD 1,746,800円
スズキ ハスラー燃費、ボディサイズなどスペック
■代表グレード ハスラーX HYBRID FF(前輪駆動)
全長(mm) 3,395 全幅(mm) 1,475 全高(mm)1,680
ホイールベース(mm) 2,460
トレッド(mm) 前 1,285 後 1,300
最低地上高(mm) 180
車両重量(kg) 820
乗車定員(名) 4
性能 燃料消費率(km/L) 25.0(WLTCモード) 30.4(JC08モード)
最小回転半径(m) 4.6
エンジン 型式 R06D型 直列3気筒 DOHC12バルブ
総排気量(L) 0.657
最高出力(kW/rpm) 36<49PS>/6,500
最大トルク(N・m/rpm) 58<5.9kg・m>/5,000
使用燃料 無鉛レギュラーガソリン
モーター 型式 WA04C
最高出力(kW/rpm) 1.9<2.6PS>/1,500
最大トルク(N・m/rpm) 40<4.1kg・m>/100
サスペンション方式 前:マクファーソンストラット 後:トーションビーム
タイヤサイズ 165/60R15
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