過酷過ぎる? 「生きて帰ってこれるクルマ」がコンセプト
トヨタは、本格派オフロードであるランドクルーザーを14年振りにフルモデルチェンジし発売を開始した。先代ランドクルーザーは、200系と呼ばれていたが、今回登場した新型ランドクルーザーは300系となる。
新型トヨタ ランドクルーザーは、非常に歴史のあるモデル。1951年、強力なエンジンを備えた4WD車、トヨタBJ型として誕生。以降70年にわたり、生産し続けられている。
ランドクルーザーは「どこへでも行き、生きて帰ってこられること」という開発コンセプトがある。日本に住んでいると「生きて帰ってこれること」とは、かなり大げさに聞こえてくる。
ところが、砂漠や山岳、道なき道を進み、雨が降れば川になり道が無くなるよう過酷な環境下でも使われているモデルだけに、「生きて帰ってこれること」という開発コンセプトもうなずける。
そんな環境下でクルマを使うユーザーから「信頼性・耐久性・悪路走破性」で高く評価され続けてきたのが、歴代ランドクルーザーなのだ。だからこそ、累計約1,060万台、年間30万台以上のランドクルーザーが、世界170の国と地域で売れている。
新型トヨタ ランドクルーザーも従来のコンセプトを受け継いだ。その上で、世界中のどんな道でも運転しやすく、疲れにくい走りを目指し開発されている。
新開発のGA-Fプラットフォームを採用し200㎏ダイエット
新型トヨタ ランドクルーザーは、まずプラットフォーム(車台)を刷新。新開発のGA-Fプラットフォームが採用された。
新プラットフォームのポイントは、大幅な軽量化だ。伝統のラダーフレームを刷新し、最新の溶接技術の活用等により、高剛性(従来型比+20%)かつ軽量なフレームとした。
ボディも、高張力鋼板の採用拡大やボンネット、ルーフ、全ドアパネルをアルミニウム化。また、パワートレーンの搭載位置を車両後方に70mm、下方に28mm移動した。
これらにより、なんと約200kgの大幅な軽量化に成功。さらに、低重心化、前後重量配分の改善も果たしている。軽量化は、走行性能はもちろん、燃費にも大きく貢献。環境性能を大幅にアップしている。
サスペンションも新設計
新型ランドクルーザーでは、サスペンションも新設計された。フロント、ハイマウント・ダブルウィッシュボーン式、リヤ、トレーリングリンク車軸式と方式に変更はない。
リヤサスペンションについては、ショックアブソーバーの配置を最適化。乗り心地と操縦安定性を向上した。
また、サスペンションアームの配置を変更。ブレーキング時の車両姿勢の安定化や、悪路でのホイールアーティキュレーション(タイヤの浮きづらさ)も向上させた。
そして、路面状況や運転操作に応じ、ショックアブソーバーの減衰力を4輪独立で制御するAVS(Adaptive Variable Suspension)も用意。新たにリニアソレノイドタイプを採用したことで、操縦安定性と乗り心地の両立も図っている。
また、時代の流れに合わせ、操舵アクチュエーター付パワーステアリングが装備された。油圧式パワーステアリングに、電動式の操舵アクチュエーターを組み合わせたことで、操舵支援機能であるレーントレーシングアシストなどが装備可能となった。
また、低速時の優れた取り回しや悪路走行時のショック(キックバック)を低減、よりすっきりしたステアリングフィールなども実現している。
同様に、電子制御ブレーキシステムも装備。ブレーキペダルの操作量をセンサーで検出。最適な制動力を油圧ブレーキで創出することで、よりリニアな制動特性を得た。
そして、オフローダーに重要なトラクションを確保するために、リヤトルセンLSDが用意された。旋回加速時には、後左右輪の荷重に応じて駆動力を最適に配分。優れたコントロール性を実現している。
6つの走行モードを持つマルチテレインセレクト
新型ランドクルーザーのオフロード走行をサポートする機能として、従来モデルから継続してマルチテレインセレクトが装備されている。この機能は、路面状況に応じで6つのモード(AUTO/DIRT/SAND/MUD/DEEP SNOW/ROCK)から選択。選択したモードにごとに駆動力、サスペンション、ブレーキ油圧を自動で統合制御し、優れた走破性を確保するもの。
今回は、動作範囲をハイレンジ(H4)にも拡大。より広い範囲のオフロード走行に使用できる機能とした。AUTOモードでは、ドライバー自らモード切替えをすることなく、走行シーンに応じた走破性能を引き出すことが可能だ。つまり、色々選択肢はあるがAUTOモードを選択しておけば、いちいちモードを選択することなく、ほとんどの悪路を走破可能ということになる。
そして、マルチテレインモニターは、車両周囲の状況確認を4つのカメラでサポート。カメラスイッチで切り替えることで、ドライバーの死角になりやすい車両周辺の路面状況を確認することができる。悪路でいちいちクルマから降りて、路面を確認する必要が少なくなる便利な機能だ。
さらに、車両を透過し、後輪周辺をクローズアップして大きく表示できる新ビューを追加した。タイヤ付近の状況や障害物との距離感を把握でき、スタックや行き止まりからの脱出に力を発揮する。
パワーユニットは、3.3Lディーゼルと3.5Lガソリンの2タイプ
新型ランドクルーザーに用意されたパワーユニットは2タイプ。3.5L V6ツインターボ ガソリンエンジンと、3.3L V6ツインターボ ディーゼルエンジンだ。
V35A-FTSと呼ばれる新開発3.5L V6ツインターボガソリンエンジンは、305kW(415PS)&最大トルク650N・mを発揮。マルチホール直噴インジェクタ付D-4STの採用やロングストローク化、バルブ挟角の最適配置による高速燃焼を実現。高効率ツインターボによる力強い低速トルクと、優れた過給レスポンスをアピールする。燃費は、7.9~8.0㎞/L(WLTCモード)となった。
オフロードは、強力な低速トルクが武器となる。強大なトルクを発揮する3.3L V6ツインターボディーゼルエンジン、F33A-FTVも用意。ピストン燃焼室、吸気ポート、インジェクタといったエンジン各部の構造を最適化し、最高出力227kW(309PS)、最大トルク700N・mのをアウトプットする。燃費は9.7㎞/L(WLTCモード)となった。
これらのパワーユニットと組み合わされるミッションは、10速ATの「Direct Shift-10AT」だ。先代ランドクルーザーは6速ATだったので、4速も増えたことになる。これにより、よりスムースで快適な走行が期待できる。
また、高効率さとドライバビリティの向上にもこだわった。発進時を除くほぼ全域でロックアップを作動させ、ダイレクトなフィーリングを実現。高速燃費の向上や、発進加速・オフロード性能の向上も果たしている。
押出し感と強面デザインで、さらに、売れる顔へと進化
新型ランドクルーザーのデザインは、オフローダーとしての機能も優先される。新型ランドクルーザーのアプローチアングルは32度。デパーチャーアングルは26度。ランプブレークアングルは25度。最大渡河性能は700mm。先代ランドクルーザー並みを確保している。
その上で、新型ランドクルーザーの外観デザインは、歴代ランドクルーザー(ステーションワゴン型)のヘリテージを追求。キャビンを後ろ寄りに配置する、キャビンバックワードプロポーションとした。
フロントフェイスのデザインにも機能性が含まれている。ラジエーターグリルをヘッドランプと共に高い位置に配置。前後バンパーの下部も障害物をいなすような造形とするなど、オフロード走行時の機能性を重視したデザインとしてる。
その上で、SUVで流行りの押出し感と迫力重視のデザインをプラス。豪快に前方に張り出すフロントグリルと、薄型のヘッドランプを組み合わせ、睨みの効いた強面デザインとした。一度見たら忘れられないくらい、強烈な個性を放っているのがフロントフェイスだ。
リヤビューは、とにかく高さを感じさせ、より大きく見える。先代ランドクルーザーの全高は1,880mmだったが、新型ランドクルーザーでは+45mmも高くなり1,925mmとなった。ほぼ、2トントラック並みの全高だ。
車両姿勢をつかみやすいインパネデザイン
インテリアは、オフロードにおける機能性を追求したインパネデザインやスイッチ配置にこだわった。
インパネ上部のデザインは、スッキリとした水平基調とした。前方の視界がよい。これは、過酷な路面変化の中でも、車両姿勢を把握しやすくするための配慮だ。
メーター類は、スピード・エンジン回転・燃料・水温・油圧・電圧が直感的に視認できる、6針式のメーターを採用。これも、過酷な運転状況下で瞬時に両状況が把握しやすくするためだ。
センターコンソールは、とにかく太く力強いデザインとなった。SUVなどでは、定番な手法だが、なかなかシンプルにまとめられていて、質感も高く高級感もある。
また、各種制御系スイッチ類は、ドライブモードセレクト、マルチテレインセレクト、ダウンヒルアシストコントロール、クロールコントロールのモードセレクトを1つのダイヤルに統合。モニターを見ながら操作できる最適な位置に配置した。
3列目シートは、電動床下収納式!
インテリアの装備も充実した。快適温熱シートとシートベンチレーションをフロントシートに加え、セカンドシートにもグレードにより装備。極寒、極暑という過酷な環境下を快適に移動するためには、やはりこうした装備は必須とえいる。
また、3列目シートは、従来の左右跳ね上げ式からフロア格納式へ変更された。これにより、荷物の積載性も向上。格納・復帰も電動で行えるのも便利だ。
そして、定番機能だが、スマートキーを携帯していれば、リヤバンパーの下に足を出し入れするだけで、バックドアが自動開閉するハンズフリーバックドアも採用された。
新盗難防止システムで、脱・盗難車ランキングナンバー1へ
装備関連では、期待度が高まる新機能が追加された。その機能は「指紋認証スタートスイッチ」。つまり、盗難防止システムだ。こうした盗難防止システムを装備したのには訳がある。それは、ランドクルーザーが盗難されたクルマ、ナンバー1の常連となっているからだ。
これは、ランドクルーザーが盗まれやすいということではなく、世界中で人気が高いオフローダーだから狙われているのだ。日本では、盗難車を簡単に転売、輸出ということは難しい。
そこで、多くの盗難車は、バラバラに分解されて部品として輸出されるケースが多いという。ランドクルーザーは、世界中で人気が高いクルマなので、部品も高値で取引されるという。
こうした状況を打破するために「指紋認証スタートスイッチ」が開発され、トヨタ車初装備となる。
この機能は、スタートスイッチ中央に指紋センサーを設置。スマートキーを携帯し、ブレーキを踏みながらスタートスイッチ上の指紋センサーにタッチすると、車両に登録された指紋情報と照合。指紋が一致しなければエンジンが始動しない。
つまり、スマートキーだけではエンジンが始動しないということ。インターネット上でよく行われている2段階認証のようなものだ。
これは、新型ランドクルーザーユーザーにとって、とても頼りになる機能だ。ただ、こうした優れた装備を全車標準装備化しないところが、いかにもトヨタらしいところ。GXグレードは、オプション設定なので必ず装備したい。
最新のトヨタセーフティセンスを標準装備
新型ランドクルーザーの予防安全装備「トヨタセーフティセンス」は、フルモデルチェンジでイッキに進化した。重要な歩行者検知式自動ブレーキは、昼夜の歩行者と自転車運転者(昼)に対応。
さらに、交差点での対向直進車や右左折時に前方から来る横断歩行者の検知機能も追加された。交差点での事故は、とても多いだけに、非常に効果的な機能と言える。こうした機能を備える予防安全装備は、まだ数少ない。車体が大きく重い新型ランドクルーザーなので、もし衝突すれば大きな事故になりやすいだけに頼りになる機能だ。
また、後側方車両接近警報であるBSMやアクセルとブレーキの踏み間違え防止機能などをもつパーキングサポートブレーキなども標準装備されているので、どのグレードも安心して運転できる。
さらに、一部グレードには「ドライバー異常時対応システム」を標準装備。この機能は、体調急変などドライバーの無操作状態が継続している場合、徐々に車両を減速させ自車線内に停車。早期救命救急をサポートする。
世界一過酷なダカールラリーのノウハウを凝縮した新グレード「GR SPORT」
そして、新型ランドクルーザーには、新たなグレードとしてGR SPORTが設定された。このモデルは、世界一過酷なダカールラリーで鍛え、創り上げられた車両のノウハウや参戦ドライバーからの改善要望を車両開発に直接反映したモデル。過酷な運転環境でも安心して運転しやすく、疲れないクルマを目指し改善に結び付けているという。
その新型ランドクルーザーGR SPORTには、電子制御でスタビライザー効果を変化させるE-KDSS(Electronic-Kinetic Dynamic Suspension System)を世界初搭載。
このE-KDSSは、市街地での走行安定性とオフロードの走破性を高次元で両立させるサスペンション制御システム。前後のスタビライザーを独立して自動で電子制御。路面状況や前後輪それぞれの状況に応じてより細かくスタビライザー効果を変化させる。
なお、E-KDSSと合わせてばね定数やAVSも最適化。サスペンションストロークを大きく伸ばした。ランドクルーザー史上、悪路で重要視される最長のホイールアーティキュレーションを実現した。
そして、新型ランドクルーザーGR SPORTには、リヤに加えフロントにも電動デフロックが装備され、より優れた走破性を得ている。
新型ランドクルーザーGR SPORT専用装備(エクステリア)
①専用ラジエーターグリル
②専用フロントバンパー
③専用リヤバンパー
④専用ホイールアーチモール(ブラック)
⑤リヤトヨタエンブレム(アクリル+ブラック)
⑥専用リヤマッドガード
⑦18インチアルミホイール(マットグレー塗装)
⑧専用エンブレム(フロント・サイド・リヤ)
⑨専用バックドア下端デカール
⑩専用ロッカーモール(ブラック)
⑪専用車名エンブレム(ブラック塗装)
⑫アウトサイドドアハンドル(ブラック塗装)
⑬ドアミラー(ブラック塗装)
新型ランドクルーザーGR SPORT専用装備(インテリア)
①専用本革巻きステアリングホイール(切削カーボン調加飾・GRエンブレム付)
②専用オープニング画面(T-Connectナビ装着時)
③専用フロントシート(GRエンブレム付)
④インテリア加飾(切削カーボン調パネル)
⑤内装色 : GR専用ブラック/GR専用ブラック&ダークレッド
⑥専用スマートキー(GRエンブレム付)
ディーゼル車は、7人乗りが選べない! 新型トヨタ ランドクルーザーのグレード選び
新型ランドクルーザーのグレードは、V6 3.5Lターボのガソリン車がGX、AX、VX、GR SPORT、ZXの計5グレード設定。GXのみ5人乗りで、その他は7人乗りとなる。
V6 3.3Lディーゼルターボ車は、GR SPORTとZXの2グレード設定。両グレード共に5人乗りだ。
この設定は、なかなか悩ましい。7人乗りであることが条件になると、ディーゼル車が選べないからだ。オフローダーであることを考えると、やはりディーゼル車の人気は高まるのは確実。しかも、昨今のようにガソリン価格が高騰すると、安価な軽油を使い燃費のよいディーゼル車は、燃料費が大幅に安くなる。
しかも、ガソリン車はハイオク仕様。軽油とのハイオクガソリンの価格差は、約30円/L以上。燃費差に加え、これだけ燃料費が異なると、やはりディーゼル車を選びたくなる。
ガソリン車とディーゼル車の価格差は、30万円。ディーゼル車は、さらにエコカー減税[100%] + 環境性能割[3%]となり、GR SPORTで約24万円の減税が受けられる。ガソリン車は、約4~6万円の減税。この差は含めれば、ガソリン車とディーゼル車の価格差は、燃料費差であっという間に回収できる。
こうした経済性に加え、CO2減が叫ばれる中、あえてガソリン車という選択は、なかなか難しい。お勧めはやはり、ディーゼル車だ。7人乗り設定がないのは残念なポイントといえる。
お勧めはディーゼルのGR SPORT
ディーゼル車は、2グレードしかない。GR SPORTとZXの価格差は、40万円。この差で、世界初となるE-KDSSやフロント電動デフロック、非常に魅力的な専用内外装を含めると、GR SPORTはお買い得といえるレベル。
ZXにありGR SPORTにない大きな装備差は、20インチアルミホイール、LEDコーナーリングランプくらいだ。
元々、ランドクルーザーのリセールバリューは、非常に高い。その中でも、GR SPORTのようなグレードは、さらにリセールバリューが高くなる可能性が極めて高い。そうなると、40万円高価でもGR SPORTを選んだ方がメリットがあるだろう。
7人乗りにこだわらなければ、新型ランドクルーザーのお勧めはGR SPORTのディーゼル車一択と言える。
値引きはゼロベース。しかも、納期は1年以上!
さて、気になるのは新型ランドクルーザーの値引き。新型ランドクルーザーの値引きは、これから2~3年の間は値引きゼロベースと考えた方がよい。
世界中で人気のオフローダーということもあり、現在、新型ランドクルーザーの納期は1年以上と、トヨタHPに掲載されているほどだ。
それに加え、新型ランドクルーザーとライバル車関係にあるモデルがない。こうなると、もはや値引きする理由がないからだ。
■トヨタ ランドクルーザー価格
<3.5Lターボガソリン車>
・AX 7人乗り 5,500.000円
・VX 7人乗り 6.300,000円
・GR SPORT 7人乗り 7,700,000円
・ZX 7人乗り 7,300,000円
<3.3Lディーゼルターボ>
・GR SPORT 5人乗り 8,000,000円
・ZX 5人乗り 7,600,000円
トヨタ ランドクルーザー、ボディサイズ、燃費などスペック
代表グレード ランドクルーザーGR SPORT (5人乗り 3.3Lディーゼルターボ)
ボディサイズ[mm](全長×全幅×全高) 4,965×1,990×1,925mm
ホイールベース[mm] 2,850mm
トレッド前/後[mm] 1,665/1,665
最低地上高[mm] 225
車両重量[kg] 2,560
総排気量[cc] 3,345
最高出力[kw(ps)/rpm] 227(309)/4,000rpm
最大トルク[N・m(kg-m)/rpm] 700(71.4)/1,600~2,600rpm
トランスミッション 10速AT
WLTCモード燃費[km/L] 9.7km/L
サスペンション前/後 ダブルウィッシュボーン/トレーリングリンク
定員[人] 5人
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