新投入されたエクリプスクロスPHEV
三菱は、コンパクトSUVのエクリプスクロスをマイナーチェンジし、2020年12月に販売する予定だ。今回のマイナーチェンジでは、デザインを大幅変更。そして、最大の注目点はPHEV(Plug-in Hybrid Electric Vehicle)が新たに投入されることだ。今回、新モデルとなるエクリプスクロスPHEVに、サーキットで試乗することができた。
デザイン変更されたエクリプスクロスPHEVは、さらに厳つく大きくなった。フロントフェイスは、「ダイナミックシールド」をさらに進化。させ、各種ランプレイアウトを変更している。また、バンパー下部にアンダーガード風ガーニッシュを採用。よりSUVらしい、ワイルドさをプラスした。
とくに、大きな変貌を遂げたのがリヤまわりのデザインだ。マイナーチェンジ前のエクリプスクロスは、上下2分割されたダブルガラスが印象的だった。ところが、今回は一般的なシングルガラスに変更。コンビネーションランプはL型となった。ちょっと、ボルボXC60っぽい。
マイナーチェンジ前のエクリプスクロスは、元々もアウトランダーと同じプラットフォームを使いながら、前後のオーバーハングを切り詰め全長4,405mmというCセグメントのSUVとしていた。
しかし、今回は切り詰めた前後のオーバーハングを140mmも延長した。これにより、ルーフも長くなりCピラーの傾斜も強くなり、より流麗で伸びやかなサイドビューになっている。
激安? エクリプスクロスPHEVの価格は約385万円から?
前後のオーバーハングをアウトランダーよりも切り詰めたことで、より高い運動性能を得ていたエクリプスクロスだが、なぜ、運動性能を犠牲にしてまでオーバーハングを延長したのか?
基本的にエクリプスクロスPHEVは、アウトランダーPHEVと同じシステムを使う。そのため、公式見解はないが、恐らくPHEV化するにあたって、充電口の設置やその他の部品が入り切らなかったのだろう。まぁ、結果的に荷室は広がるなどのメリットがある。インテリアに大きな違いはない。
ただ、全長が4,545mmとなり、アウトランダーPHEVの全長4,695mmと近くなった。PHEVシステムもほぼ同じであると、販売面では、カニバリ(共食い)が発生する可能性が高くなる。
しかし、三菱もそれは織り込み済み。エクリプスクロスPHEVの価格を約385万円~約450万円とし、アウトランダーPHEVの4,364,800~5,294,300円と差を付け差別化した。とはいえ、少し苦肉の策でもある。
とにかく、重心が低いエクリプスクロスPHEV
さて、試乗。試乗場所は、富士スピードウェイのショートコース。多くの人は、SUVでサーキット? と、疑問に思うだろう。思い起こしてみれば、エクリプスクロスのデビュー時も、クローズドの駐車場を使った特設コースで試乗だった。
こうしたコースでの試乗は、当然、クルマの限界まで試すことになり、粗も感じやすい。つまり、サーキットでの試乗を設定するということは、それだけ走行性能に自信があるということの表れでもあるのだ。
まぁ、ガソリン車の試乗でもエクリプスクロスのハンドリング&4WD性能は、クラストップレベルであることを実感していた。なので、PHEVも走りがウリなのか? 他にウリは無いのか? と、ちょっと食傷気味な気分でもあった。
しかし、いざコースに出ていくつかのカーブを曲がると、さっきまで食傷気味だったのに、むしろ周回を重ねるほどに、ドンドンと楽しさが増してくる。サーキット走行は、少々テンションが高くなる分を差し引いても、エクリプスクロスPHEVの走りは、抜群といえるものだった。
もはや、背の高いSUVに乗っているとは思えないほどの操縦安定性がピカイチだったのだ。とにかく、重心高が低い。それは、大きく重いリチウムイオンバッテリーをフロア下に装着されているからだ。
アウトランダーPHEVも重心高の低さを感じたが、エクリプスクロスPHEVは、全高が低いこともあり、さらに重心高が低くなっていて、操縦安定性が高い。重心が高いことから起こるボディの揺さぶり感は、ほとんど感じない。この重心高の低さが、エクリプスクロスPHEV最大の美点だと思う。
しかも、ボディ剛性もフロント周りを中心に構造用接着剤を使うなど高剛性化されたこともあり、ステアリング操作に対して、クルマが忠実に反応する。ステアリング操作の反応速度も、クイック過ぎずダル過ぎずいい塩梅。ゆっくり走っていても楽しい。
どんな路面にも対応する、計5つのAWDモードを設定
この重心高の低さをさらに生かしているのが、前後にそれぞれモーターを設置したツインモーターAWDと、三菱独自のAWD制御であるS-AWC(SUPER ALL WHEEL CONTROL)制御だ。S-AWCは、意のままの操縦性と卓越した安定性をコンセプトとしている。
ツインモーターAWDのメリットは、まず伝達効率が高くレスポンスがよい。ガソリン車などと違いエンジンの出力が上がるまでの時間や、機械的なロスがない。電気を使ったモーターなので、瞬時にモーターが反応するので、抜群のレスポンスを誇る。同様に、モーターなので、前後の駆動トルク配分や応答性などをコントロールする自由度が高いので、より緻密な制御が可能となっているのだ。
このツインモーターAWDのメリットを生かし、S-AWCが前後間のトルク配分や左右輪間のトルクベクタリング、4輪ブレーキ制御を行い、どんな路面でも操作通りにクルマが動くようになっている。
こうした制御により、エクリプスクロスPHEVのAWDは、ノーマル、エコ、スノー、グラベル、ターマックと5つのモードが与えられている。アウトランダーPHEVは、ノーマル、ロック、スノー、スポーツの4モードなので、1モード設定が増えた。
とりあえず、ステアリングを切っとけば、勝手に曲げてくれるオートマチックなAWD
試乗時の路面は、ヘビーウェット。ある意味、三菱のAWDを試すにはピッタリのシチュエーション。各モードを試してみるとノーマル、スノー、エコの3モードは、ピンとこなかった。
これらのモードは、基本的に安定感重視。クルマが滑りドキッとするようなことにはならない。ならないというか、クルマが滑り出す前にクルS-AWC制御によって、常に安定させている。
とくに、スノーモードはアクセル操作に対してのレスポンスが悪くなるが、多少、オーバースピード気味でカーブに進入しても、なんとか曲がってくれるイメージだ。滑りやすい路面での安定感は、さすがスノーモードといったところ。
グラベルやターマックモードも、ASC(横滑り防止装置)がオンの時は、当たり前だがスピンするようなことはなく、安定感重視であることは変わりない。両モードとも、クルマがほんの少し滑り出すくらいまで我慢してくれるが、ある程度滑るとグゴグゴというような音を立てブレーキ制御などが入り、とにかくクルマを曲げようとする。
極端な言い方をすれば、かなりのオーバースピードでなければ、ステアリングを切っていれば、勝手に曲がってくれるオートマチックなクルマともいえる。
PHEVなのに、豪快な走りも可能な訳は?
ところが、とくにターマックモードでASCをオフにして走ると、キャラが一転。オートマチック感は無くなり、テクニックさえあればアクセル&ブレーキ、ステアリング操作でクルマを自在に滑らせて走ることも可能。
ドリフトしながら走ることもできる。低重心化されているので、意外とコントローラブルな印象だった。
こうしたアグレッシブな走りが可能なのは、リヤモーターの出力が大きいことが理由のひとつといえる。アウトランダーPHEVと同じシステムならば、エクリプスクロスPHEVは、フロントに82ps&137Nm、リヤに95ps&195Nmのモーターを搭載する。
単純比較できないが、RAV4 PHVはフロントが 182ps&270Nm、リヤが54ps&121Nmというモーター出力。この数値から分かる通り、エクリプスクロスPHEVは、リヤへより多くのトルク配分が可能となっていることから、前後トラクションの自由度が大きい。
単純に速さという面では、RAV4が勝る印象だが、トラクション面ではエクリプスクロスPHEVが勝り、より豪快な走りが楽しめると感じた。相変わらず、三菱のAWDはおもしろい。
ハイブリッド車に近い価格に。豪快な走りと優れた環境性能を手に入れろ!
さて、気になる三菱エクリプスクロスPHEVのEV航続距離は、WLTCモードで57.3㎞。ハイブリッドモード燃費は16.4㎞/L(WLTCモード)となった。
そして、エクリプスクロスPHEVは、これほどのパフォーマンスをもちながら、価格は約385万円~約450万円という設定。
ややクラスは異なるが、日産エクストレイルハイブリッド20Xiが約330万円、RAV4ハイブリッドXが約360万円なので、かなりハイブリッド車に近い価格帯になってきている。ハイブリッドとPHEVの価格差がかなり小さくなってきていることを考えると、エクリプスクロスPHEVのコストパフォーマンスは、かなり優れているといえる。
この価格帯のハイブリッド車を購入したいと考えているのなら、やや高価だがエクリプスクロスPHEVを積極的に選択しに入れてみてもいいだろう。ハイブリッドを超えた近未来の楽しい走りと、優れた環境性能を手に入れることができる。
<レポート:大岡智彦>
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