外板パネルは先代と同じ! 個性的なデザインを守り抜いたモデルチェンジ
軽自動車の新しい価値観を提案した個性派がホンダのN-ONEだ。2012年に登場した初代モデルは、一斉を風靡したN360を思わせるキュートなルックスと気持ちいい走りがウケ、8年もの間、第一線で活躍した。
そして2021年を前に、第2世代の新型N-ONEがベールを脱いだ。日本の生活と時間を見つめ、日々の生活に寄り添いながら長く使えて飽きがこない、末永く愛せるクルマを目指して開発されたのが2代目の新型N-ONEである。デザインは、先代と同じように「丸、四角、台形」を「きほんのカタチ」と定め、これに現代の技術を加えた。
先代と同じように立体駐車場を使える2BOXデザインの台形フォルムは、驚いたことに初代と瓜二つだ。それもそのはず、ボディパネルの多くは初代モデルと同じなのである。数少ない変更点の1つがフロントマスク。似ているが、フルLEDデイタイムランニングとしたヘッドライトや逆台形のグリルなどの採用により、表情がちょっと変わった。
リアコンビネーションランプも似ているが、四角いWリングが特徴的なフルLEDとなる。初代N-ONEのデザインを気に入っているファンにとってはうれしい進化だろう。
機能的なデザインとなったインパネ
2代目新型N-ONEのインテリアは、大胆に変えられた。テーマは「ミニマル」デザインだ。楽しさとくつろぎを表現している。インパネはN-WGNと似た水平基調の広がりを感じさせるデザインで、必要なものだけを機能的にレイアウトした。
視覚的な広さを強く感じさせ、運転席からの見晴らしもいい。前席はベンチシートからセパレートシートになり、スポーティ感覚を強めている。
メーターもアナログ表示のスポーツ心にあふれるデザインだ。大径のスピードメーターは6時の位置から指針が立ち上がり、その左側に水平指針のタコメーターを配した。
前席はしっかりと身体を支えられる形状で、フィット感を向上させるとともにステッチ加工を施したから、見栄えも良くなっている。着座位置はちょっと高めだが、大柄な人でも最適なドライビングポジションを取ることが可能だ。後席を含め、乗降性も優れている。
充電機能をはじめとするユーティリティが充実したのもうれしい進化だ。5:5分割可倒式の後席は思いのほか広く、大人でも快適に座れる。前倒しのほか、チップアップもできるなど、シートアレンジも魅力的に感じられた。
不満のない動力性能
2代目新型N-ONEのパワーユニットは、N-WGNと同じ658ccのS07B型直列3気筒DOHC・i-VTECを搭載する。可変バルブタイミング機構を組み合わせ、プレミアムツアラーとRSはターボ仕様だ。
自然吸気エンジンは最高出力43kW(58ps)/7300rpm、最大トルク65N・m(6.6kg-m)/4800rpmを発生する。車両重量は900kg以下だから、平坦路で2 名乗車までなら動力性能に不満はなかった。
トルクコンバーターを内蔵した無段変速のCVTは、低回転から不満のないトルクを引き出してくれる。速度とエンジン回転数のバランスも取れているなど、優れたドライバビリティを見せ、3気筒特有の振動とノイズも上手に抑え込んでいた。高速クルージングでも快適性は高い。
この上質感に気持ちよさを加えたのがターボ車だ。こちらは47kW(64ps)/6000rpm、104N・m(10.6kg-m)/2600rpmのスペックだからパンチのある加速を楽しめ、力強さの領域もかなり広げられている。
CVTの洗練度も高められているから、運転しやすかった。瞬時に変速したいときはパドルシフトが重宝する。しかも、ターボ車にもアイドリングストップ機能が付いているから、ゴーストップの多い街中の走りでも快適だ。実用燃費だって悪くない。
扱いやすさが際立つ6速MT
スポーティグレードのRSには、6速MTを設定している。S660のものをベースに開発され、シフトノブはS2000のデザインをモチーフにした。
シフトノブの握り心地はいいし、ショートストロークの変速フィールも秀逸だ。低回転でもトルクが太く、1速から3速までは操作力を軽くしている。クラッチの踏力も軽いので、MTビギナーにも扱いやすいだろう。
また、ブレーキホールドアシストも装備するので、坂道発進も苦手としなかった。
その気になれば、7000回転のレッドゾーンまで引っ張ることが可能だ。本領を発揮するのは3000回転から上で、リズミカルにスピードを乗せていく。3速ギアで100km/hに達し、巡航は3000回転を少し超えたところにある。ギア比が適切なこともあるが、といもフレキシブルだ。
ターボの恩恵で2速発進やギア飛ばしをしても気持ちいい走りを楽しむことができた。また、4速ギアの守備範囲が広いのも魅力でもある。
新世代プラットフォームにより、走行性能は飛躍的に向上
2代目新型N-ONEのハンドリングも軽やかだ。エクステリアは初代と似ているが、新世代プラットフォームを採用し、走りのポテンシャルを飛躍的に高めている。
FF(前輪駆動)車のサスペンションは、ストラットにトーションビームの組み合わせだ。FF車はリアにもスタビライザーを装着し、グレードにかかわらずフロントにベンチレーテッドディスクをおごっている。ターボ車はタイヤ幅を10㎜広げ、1インチアップの165/55R15サイズのタイヤを履く。4WDは電子制御式だ。
2代目新型N-ONEは、先代よりサスペンションのバネレートを15%ほど下げ、ロール剛性は40%ほど高めた。プラットフォームの一新による高い剛性としなやかに動くサスペンションによって優れた路面追従性と優れた直進安定性を披露する。
速いスピードでのコーナリングでも足はしっかりと接地し、上屋のロールも上手に抑え込んでいた。ピッチングとロールバランスがいいし、操舵フィールもスッキリとしている。
接地フィールと接地バランスがよく、ステアリング操作に対するクルマの応答性も素直だ。リアの追従性がいいし、無駄な動きを巧みに抑え込んでいるから狙ったラインに乗せやすかった。
後席でも快適な乗り心地
2代目新型N-ONEの新プラットフォームは、乗り心地のよさにも貢献している。後席に座っても快適だ。さすがにターボ車はちょっと硬目と感じる。だが、飛ばし気味の走りになると気にならない。高速直進安定性も良好で、ビシッと直進性を保つし、横風に対しても強いように感じた。
先進の安全運転支援システム、ホンダセンシングも全車に標準装備している。6速MT車でもACCと車線維持支援システムを盛り込んだ。走りの洗練度と快適性を高めただけでなく安全性能を大きく高めたのが第2世代のN-ONEである。
上級モデルはちょっと価格が張る。だが、ライバルと比べて満足度はかなり高いはずだ。
<レポート:片岡英明>
ホンダN-ONE価格
・Original FF 1,599,400円/4WD 1,732,500円
・Premium FF 1,779,800円/4WD 1,912,900円
・Premium Tourer FF 1,889,800円/4WD 2,022,900円
・RS FF(6MT、CVT) 1,999,800円
ホンダN-ONE、ボディサイズ、燃費などスペック
代表グレード:N-ONE Premium Tourer FF
ボディサイズ:全長3,395×全幅1,475×全高1,545mm
ホイールベース:2,520mm
車両車重:860kg
駆動方式:FF
エンジン:S07B型 直3 DOHC 12バルブ
排気量:658㏄
最高出力:64PS(47kW)/6,000rpm
最大トルク:104N・m(10.6kgf・m)/26, 00rpm
燃費:21.8㎞/L(WLTCモード)
燃料タンク容量:27L
採用回転半径:4.8m
タイヤサイズ: 165/55R15
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