マツダCX-80試乗記・評価 すべてに大人の余裕を感じた国内フラッグシップ3列SUV

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【マツダ】2024/10/26

 

マツダCX80 フロントスタイル

 

とにかくデカい! ホイールベースは、楽々3m超!

 

マツダCX-80、スポーツ強めのラグジュアリーSUVだった。

国内マツダのフラッグシップSUVで、3列シートをもつ新型マツダCX-80が、ついにデビュー。CX-80の価格は、390万円台からとはいえ、最上級グレードのPHEVになると710万円オーバー。価格幅の広いモデルだ。

今回試乗コースとして設定されたのは、徳島空港から淡路島を経由して神戸でゴールというもの。ジックリとロングツーリングをしながら、CX-80の実力を感じてほしいというものだ。

徳島空港で用意されていたのは、CX-80PHEVのプレミアムモダンと呼ばれるグレード。駐車してあるCX-80PHEVプレミアムモダンをひと目見るなり、思わず「デカっ!」っとつぶやいてしまった。それもそのはずCX-80のボディサイズは、全長4990×全幅1890×全高1710mmとかなり大柄だからだ。

ちなみに、全長は5m未満に抑えているものの、ホイールベースは3m越えの3120mmもある。このホイールベースの長さは、Lクラスミニバンであるトヨタ アルファード/ヴェルファイアより長い。

マツダCX80 フロントスタイル

マツダCX80 リヤスタイル

マツダCX80 リヤスタイル

 

 

上質な威厳を感じさせるデザイン

 

CX-80は、ラージと呼ばれる後輪駆動ベースのプラットフォームを採用している。すでに、5人乗りのCX-60が発売済みだが、CX-80は基本的にCX-60のロングホイールベース化したモデルだ。そのため、ロングノーズが特徴とはいえ、CX-80はキャビンの存在感が大きくなっている。

このロングホイールベース化されたボディサイドのデザイン処理が難しかったという。デザイン本部主査の玉谷さんは、「ただCX-60のホイールベースを伸ばしただけのデザインにはしたくなかった」と語る。

そこで、大きくなったボディサイドには、あえて分かりやすいキャラクターを入れなかった。マツダデザインの「引き算の美学」を追求。3列目シートをもつ優雅なSUVらしさを重視した。

リヤまで伸びやかに流れるサイドウィンドウのブライトモールディングは、D ピラー部分において、太く直線的に構成。3列目の乗員空間の豊かさを強調。その結果、個人的にはCX-60より優雅でカッコよく見える。高級感も漂っていて、上質な威厳を感じさせるデザインとなっている。

マツダCX80 フロントフェイス

マツダCX80 リヤアップ

 

CX-80 PHEV、注目の乗り心地は?

 

グルっとひと回りCX-80PHEVプレミアムモダンを眺めた後に、運転は同行者にお任せし、早速座ったが2列目シート。このCX-80の試乗で、最も気になっていたのが乗り心地だ。3列シートをもつラグジュアリーSUVなので、2列目シートが特等席だと思ったからだ。

乗り心地が気になったのは、CX-60の乗り心地問題があったから。デビュー時、後席に乗った時に、リヤサスの突き上げなどにより「これは苦行か?」と思ったほどだったからだ。そんなCX-60から、CX-80はどんな乗り心地になったのか、とても気になっていた。

CX-80PHEVに乗り、街中を走ってすぐに感じた乗り心地は「やっぱり硬め」。ただ、CX-60に比べると格段に乗り心地は向上。やや硬めだが、路面からのショックは角が取れていて不快感は無い。むしろ、マツダ車らしいスポーティさを感じる。

CX-60で感じた強りリヤサスペンションの突き上げや、揺れが収まらないなどの動きはかなり改善されていた。2列目や3列目でも快適に移動できる。

室内スペースは、2列目、3列目共に頭上のスペースがやや少ない。スポーティなデザインなので仕方がない部分ではある。3列目シートは足元のスペースを含め、少し窮屈な感じは否めない。

CX-80のインパネデザインは、ほぼCX-60と共通。試乗車のグレードであるプレミアムモダンには、ホワイトのナッパレザーシートを装備。インパネ周りの質感や色味などは、高いレベルで、まさにラグジュアリーな空間に仕上がっていた。この空間に身を委ねているだけで、なんとなく落ち着いた気分になる。シートには、ベンチレーション機能もあり快適さも抜群によい。

運転席に移ると、乗り心地の評価が若干変わる。こうした3列目シート車は、2列目シートの乗り心地を重視する傾向がある。だが、CX-80PHEVは、2列目シートより、1列目の乗り心地の方がより快適。突き上げ感や振動も2列目より少ない印象だ。CX80PHEVは、あくまでドライバーズカーということだと理解した。

高速道路の走行では、少し気になったことがあった。大きなうねりなどを通過すると、ややボディの上下動が収まりにくい。これは、CX-80PHEVの車重が2210㎏もあることが要因かもしれない。もうちょっと、上下動の収束が早いと、さらに快適さが増し高速クルージングが楽しくなりそうだ。

マツダCX80 インパネ

マツダCX80 メーター

マツダCX80 PHEVエンジンルーム

 

 

デカいのに軽快!?

 

山道では、デカいのに軽快。全長4990×全幅1890×全高1710mmもあるボディサイズなのだが、大きさを感じさせないキビキビ感がある。CX-60ほどグイグイシャープに曲がるタイプではない。CX-60より、ちょっとダルなハンドリングは車格に相応しく、優雅な走りが可能だ。ビュンビュンと走り抜けると言うよりは、ゆったり流して走る。そんな走り方が最も気持ちよかった。

こうした優雅な走りを支えていたのが、2.5LPHEVシステムだ。直4 2.5Lガソリンエンジン(最高出力:188㎰、最大トルク:250Nm)+高出力MS型モーター(最高出力:175㎰、最大トルク:270Nm)の組み合わせだ。通常走行では、ほとんどEV走行で、静粛性が高く滑らかな走りが魅力。

アクセルを積極的に踏み込むとエンジンが始動し、エンジン出力がプラスされる。ドライブモードを選択できる「Mi-Drive」を使いスポーツモードを選択すると、500Nmという大トルクをフルに使い切ることができる。

スポーツモードにしなくても、CX-80PHEVは余裕ある力強さを見せた。やはり、モータードライブ車は気持ちよい。アクセル操作に対して、瞬時にモーターが反応。このレスポンスは、純内燃機関車にはない。そこに、やや遅れてエンジンの出力やトルクが加わり、回転数が高まるほどに力強さが増していく。レヴリミットまで、気持ちよく伸びていく感じはモーターには無い魅力だ。PHEVは、まさにエンジンとモーターの良いとこ取りなので、気持ち良さも倍増する。

さらに、PHEVは、フロアに大きく重い駆動用リチウムイオンバッテリーを搭載している。そのため、重心高が下がっていて、他のエンジンを搭載したモデルと比べるとカーブでは安定感がある。PHEV化でボディ剛性も上がっているのか、しっかり感も最も高かく感じた。

今後、深化を期待したいのがブレーキ。とくに、急勾配の下り坂では、少し物足りなさを感じた。絶対的な制動力というよりフィーリング。CX-80は、大きく重いボディなので、ブレーキを踏んだ初期の制動力がもう少し欲しい。その方が安心感があるように感じた。

マツダCX80 フロントシート

マツダCX80 2列目シート

マツダCX80 3列目シート

 

 

EV航続距離67㎞は短い? 長い?

 

CX-80PHEVには、17kWhの駆動用リチウムイオンバッテリーが搭載されている。通常は、この電力を使いEV走行。充電電力使用時走行距離は67㎞(WLTCモード)だ。最近のトレンドでは、100㎞超の走行距離なので、数字的には少々見劣りするかもしれない。

しかし、搭載バッテリーの容量を多くすれば、より長距離を走れるようになるのだが、その分、車両重量はドンドン増加。ハイブリッド走行時には、重りを積んで走っているようなもので、燃費は悪化する。

単純にバッテリー容量を増やして、充電電力使用時走行距離を伸ばせばいいというものでもない。このあたりが難しい。CX-80PHEVの67㎞という充電電力使用時走行距離が、多いか少ないかは、ユーザーの使い方次第になる。

日常の通勤や送迎、買い物程度がメインであれば、十分な充電電力使用時走行距離といえるだろう。逆に、日々の生活で長距離走行が多いというのであれば、PHEV以外の選択がよい。CX-80には、3つのパワーユニットが用意されており、3.3Lディーゼル+マイルドハイブリッドの組み合わせがお勧めだ。

マツダCX80 荷室

マツダCX80 荷室

 

 

パワー&燃費、抜群バランスのXD ハイブリッド

 

徳島空港→淡路島→神戸の帰路では、T3-VPTH型3.3Lディーゼル+マイルドハイブリッドを搭載したCX-80 XDハイブリッド エクスクルーシブモダンに試乗した。

このエンジンは、3.3Lディーゼルターボエンジン(最高出力:254㎰、最大トルク550Nm)に、MR型モーター(最高出力:16.3㎰、最大トルク153Nm)を組み合わせたものだ。

このパワーユニットも、CX-60と共通で、なかなか秀逸。わずかなターボラグもモーターがアシストし、絶妙なアクセルレスポンスで走る楽しさを感じた。街中なら、エンジンの回転数が2,000回転も回せば十分すぎる加速をしてくれる。エンジン回転数が上がらないから、結果的に燃費も良くなる。CX-80 XDハイブリッド エクスクルーシブモダンのカタログ燃費値は19.2㎞/L(WLTCモード)と優秀だ。

マツダCX80 センターコンソール

 

 

国内フラッグシップSUVらしい特別感が必要?

 

ただ、CX-80が国内マツダのフラッグシップSUVなのであれば、ちょっとだけでもいいから差別化してほしかった。制御の変更などで、もう少しパワーとトルクをアップし「格の違い」を見せつけて欲しいのだ。

さらに言えば、乗り心地やハンドリング面でも、最上級グレードに減衰力可変ダンパーやエアサスなど、フラッグシップSUVに相応しい上質な走りが可能となるサスペンションシステムも欲しいところだ。

今更、クルマにヒエラルキーは必要なのか? なんて議論もあるかもしれない。それでも、やはりフラッグシップSUVならではの特別感が必要だと思う。

マツダCX80 シフトノブ

 

ギクシャク感が無くなったトルコンレス8速AT

 

さて、山道でのCX-80 XDハイブリッド エクスクルーシブモダンの走りは、基本的にPHEVと同じような動きをみせるが、車重が150kgも軽いので当然、軽快感がある。サスペンションも、やや引き締められている印象だ。ただ、PHEVほど低重心化されていないので、カーブではややロールしながら走る。

トルコンレス8速ATは、ギクシャク感があったCX-60から比べると、かなり洗練されていた。ストップ&ゴーを繰り返す渋滞路では、稀にギクシャクする動きを見せたが、ほとんどのシーンでダイレクト感あるスムースな変速だった。

高速道路では、フラットな姿勢で快適に走り抜けたが、もう少しドッシリとした直進安定性が欲しいところだ。

運転支援機能の全車速追従式クルーズコントロールは、より人間に近い制御で違和感なく一定の車間を保ちながらのクルージングが可能となっている。

マツダCX80 

 

 

CX-80に乗ると穏やか気分になる?

 

おもしろかったのが「気分」の変化。CX-80  XDハイブリッド やPHEV共にあり余る出力とトルクがあるので、かなり高い速度でのクルージングが可能。CX-60の試乗では、ついついアクセルをグイグイ踏み込む時間が多く、心が「アグレッシブな気分」になった。

ところが、なぜかCX-80 では、心が「穏やかな気分」になる。内に秘めた強力なパワーとトルクは、大人の余裕。最も左側の車線でのんびりクルージングとなった。

そして、のんびりクルージング後半。なぜか、鳴門海峡の海の青が妙に染みる。「仕事じゃなかったらなぁ・・・」。CX-80、心穏やかになるラグジュアリーSUVだった。

マツダCX80 

 

CX80を買って後悔・失敗したと思わないためのお勧めグレードは?

マツダCX-80の選び方。購入後、後悔・失敗したと思わないためにも、グレード選びは重要。まず、CX-80で最初に選択したいのがエンジン。お勧めは3.3Lディーゼルマイルドハイブリッドか2.5LPHEVになる。

CX-80には、マイルドハイブリッドシステム無しのエンジンも設定されている。ただし、乗ってみるとその差は大きい。MR型モーター(最高出力:16.3㎰、最大トルク153Nm)が、いい仕事をしていて、走り出す瞬間のアシストや、アクセルレスポンスなど、走る楽しさやスムースさは大幅にマイルドハイブリッド車が大幅に上回る。なので、まずは3.3Lディーゼルマイルドハイブリッドエンジンを中心に選ぶとよい。多くの人に合うパワーユニットといえる。

PHEVも魅力的だが、車両価格が高い点が悩みどころ。通勤や送迎、買い物など、毎日のように短距離移動を繰り返す人にとっては、ほとんどガソリンを使わないで済む。こうした人は、PHEVがお勧めだ。または、予算に余裕があって電動車に興味があるのなら、積極的に選んでもよい。

CX-80のグレード選びでは、やはりラグジュアリーSUVであることを考えると、エクスクルーシブモダンかプレミアムモダンがお勧め。高級ナッパレザーシートなど贅沢で上質なインテリアとなる。エクスクルーシブモダンとプレミアムモダンの装備差は、プレミアムモダンにパノラマサンルーフが標準装備されているくらい。その他の差は、プレミアムモダンの方がインテリアのマテリアルがより豪華になっている。

モダン系のホワイト内装だと、汚れが気になるというのであれば、エクスクルーシブスポーツかプレミアムスポーツという選択になる。エクスクルーシブスポーツは、ブラック系内装。プレミアムスポーツ系はタンカラー系内装となる。

マツダCX80 PHEV充電口

 

 

リセール重視なら、ボディカラー選びを慎重に

 

CX-80でリセールバリューを気にするのであれば、ボディカラーに注意したい。マツダ車といえば、ソウルレッドのイメージが強いが、リセールバリュー面ではリスクが大きい。ラグジュアリーSUVのCX-80では、敬遠されること多いからだ。CX-8でも赤系のボディカラーだとリセールはやや低めだった。基本的に、白・黒・シルバーのモノトーン系が無難だ。

あくまで予想だが、CX80のリセールバリューでは、ジェットブラックマイカのボディ色が人気を集めそうだ。迫力と高級感を併せ持ち、独特の存在感をアピールする人気色になるのではないだろうか。

 

<レポート:大岡智彦

 

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マツダCX-80新車価格

■3.3Lディーゼルターボエンジン

・XD(7人乗り) 2WD 3,943,500円/4WD 4,180,000円

・ XD S Package(7人乗り) 2WD 4,383,500円/4WD 4,620,000円

・XD L Package(6人乗り) 2WD 4,779,500円/4WD 5,016,000円

・XD Exclusive Mode(7人乗り)2WD 5,071,000円/(6人乗り)2WD 5,214,000円

・XD Exclusive Mode (7人乗り)4WD 5,307,500円/(6人乗り)4WD 5,450,500円

■3.3Lディーゼルターボマイルドハイブリッド

・XD HYBRID Exclusive Sports(7人乗り) 4WD  5,824,500円/(6人乗り) 4WD 5,967,500円

・XD HYBRID Exclusive Modern(6人乗り) 4WD 5,967,500円

・XD HYBRID Premium Sports(6人乗り) 4WD 6,325,000円

・XD HYBRID Premium Modern(6人乗り) 4WD 6,325,000円

■2.5LガソリンPHEV

・PHEV L Package(6人乗り) 4WD 6,391,000円

・PHEV Premium Sports(6人乗り) 4WD 7,122,500円

・PHEV Premium Modern(6人乗り) 4WD 7,122,500円

 

マツダCX-80燃費、ボディサイズなどスペック

代表グレード CX-80 PHEV Premium Modern

ボディサイズ:全長4990×全幅1890×全高1710mm

ホイールベース:3120mm

車両重量:2210kg

駆動方式:4WD

最小回転半径:5.8m

エンジン型式:PY-VPH型 直4 DOHC 16バルブ

排気量:2488㏄

エンジン最高出力:188PS(138kW)/6000rpm

エンジン最大トルク:250N・m(25.5kgf・m)/4000rpm

モーター型式:MS型

モーター最高出力:175PS(129kW)/5500rpm

モーター最大トルク:270N・m(27.5kgf・m)/400rpm

WLTCモード燃費:12.9㎞/L

充電電力使用時走行距離: 67㎞

動力用主電池種類: リチウムイオン電池

動力用主電池総電力量: 17.8kWh

サスペンション前/後:ダブルウィッシュボーンス/マルチリンク

タイヤサイズ前後:235/50R20

 

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