三菱アウトランダーPHEV試乗記・評価の目次
- 国内PHEVのパイオニア的存在がアウトランダーPHEV
- マイナーチェンジで新開発バッテリーを投入!
- マイナーチェンジによるデザイン変更は、少々分かりにくい・・・
- 驚愕の音質? ヤマハ製オーディオとは?
- マイナーチェンジで静粛性がさらに高まったアウトランダーPHEV
- マイナーチェンジで伸びのあるパワフルな加速力を手に入れた!
- 車体が大きくて重いのによく曲がる!
- フラットで快適な乗り心地!
- 納得の価格アップ?
- 新型アウトランダーPHEVのお勧めグレードは? 高リセールバリューの期待大!
- 三菱アウトランダーPHEV(GN0W型)グレード別新車価格
- 三菱アウトランダーPHEV(GN0W型)燃費、ボディサイズなどスペック
国内PHEVのパイオニア的存在がアウトランダーPHEV
初代アウトランダーPHEV(GG2W/GG3W型)は、世界初となるSUVタイプのPHEVとして2013年1月にデビューした。ツインモーター4WDなど、当時の先進技術を数多く搭載しており、PHEVのパイオニアとしてマーケットをリードしてきた。
その高い技術力が評価され2013-2014日本カー・オブ・ザ・イヤー イノベーション部門賞を受賞している。
2代目アウトランダーPHEV(GN0W型)は2021年12月に登場。このモデルは、日産とのアライアンスがより色濃く反映されている。プラットフォームは、日産エクストレイルと共通のCMF C/Dを採用。さらに、エクストレイルのリヤモーターとアウトランダーPHEVのリヤモーターも共通化されている。プラットフォームやモーターを共用しているものの、両車まったく異なるクルマに仕上がっている。
マイナーチェンジで新開発バッテリーを投入!
2代目アウトランダーPHEV(GN0W型)のマイナーチェンジは、もはやマイナーチェンジレベルを超えたと感じるほどの大幅改良が施されていた。
大改良のポイントとなるのが、駆動用リチウムイオンバッテリーだ。マイナーチェンジで新開発リチウムイオンバッテリーを搭載するのは異例と言える。
高コストな部品なので、なるべく大量に生産し、長く使うことでコストを下げたいと考えるのが通常だ。こうした重要パーツをマイナーチェンジで変更するほど、三菱のアウトランダーPHEVへのこだわりは強い。
新開発バッテリーの変更ポイントは、以下の通りとなった。
- 従来のパウチ型からボックス型に変更
- バッテリー容量:20kWhから22.7kWhに(約10%アップ)
- EV航続距離:85~87kmから102~106kmに
- トータルシステム出力:約20%アップ
- 駆動バッテリー出力:約60%アップ
- 急速充電時間(約8割まで):約38分から約32分に
- 内部抵抗:約30%減
- 冷却性能:約50%アップ
上記のように、バッテリーの性能は、飛躍的に向上していることが分かる。これだけ違うと、もはやパワーユニットは別モノと言って良いほどだ。
これほどのこだわりを見せたのは、PHEVのパイオニアとしてのプライドだろう。欧州プレミアムブランドに負けない上質さと、感性的質感の向上を重視した。
マイナーチェンジによるデザイン変更は、少々分かりにくい・・・
アウトランダーPHEVのマイナーチェンジでは、外観デザインも変更されている。だが、その変更点はマイナーチェンジ前のオーナーでも、すべて見つけることができないのでは? と、思えるほどのわずかな違いとなった。
デザインを分かりやすく大きく変えるというのも、ひとつの方法だ。しかし、元の外観デザインの評価が高かったこともあり、三菱はあえてわずかな違いで勝負することを選択したのだ。細部を磨き上げ、上質・洗練さを強化し「良いモノ」を感じる造形を目指した。
マイナーチェンジによるアウトランダーPHEVのデザインの変更点が比較的分かりやすい部分が、リヤのコンビネーションランプだ。スモークタイプとし、Tシェイプのテールランプを際立たせた。また、ターンランプ、バックランプをLED化している。その他、グリルやフロント/リヤバンパー、スキッドプレート、ホイールなどが変更された。
インテリアは、最上級仕様セミアニリンレザーシートのデザインを変更している。シートやインストメントパネルなどに新色の「ブリックブラウン」を採用し、モダンでラグジュアリーかつ、落ち着きのある室内空間とした。
装備類は、より充実している。スマートフォン連携ナビゲーションでは、モニターサイズを従来の9インチから12.3インチに大型化。運転席、助手席には、シートベンチレーションや、デジタルルームミラー(フレームレス)などを採用している。
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驚愕の音質? ヤマハ製オーディオとは?
よりラグジュアリー感をアップするために、新たにヤマハと共同で開発したオーディオシステムが「Dynamic Sound Yamaha Ultimate(ダイナミック サウンド ヤマハ アルティメット:以下「アルティメット」)」と、「Dynamic Sound Yamaha Premium(ダイナミック サウンド ヤマハ プレミアム:以下「プレミアム」)」だ。
最上級グレード「P Executive Package」には、上級のアルティメットを標準装備した。PとGグレードには、オプション設定だ。プレミアムはP、G、Mに標準装備されている。
この共同開発したヤマハ製カーオーディオのサウンドは凄かった。プレミアムは8スピーカー仕様だ。クリアでバランスのよい音質で、マイナーチェンジ前のプレミアムオーディオをやや上回る印象。このオーディオシステムが、最上級グレード「P Executive Package」を除き、標準装備されているので、どのグレードでも質の高い音楽を楽しめる。
しかし、上級で12スピーカー仕様のアルティメットのサウンドは、想像をはるかに超えるものだった。とにかく、ライブ会場にいるような臨場感があり原音に忠実なのだ。このサウンドなら、音にこだわるオーディオマニアや音楽好きも納得するレベルのように思えた。
こうした上質なサウンドを実現するために、車両側ではドアパネルの剛性を約1.5倍とすることで、大出力に対応した。補強材や制振材を追加、作業穴をふさぐなど、車体が発するノイズなどを徹底的に遮断している。さらに、騒音の周波数帯や、空調や雨音に対する補正も行っているため、走行中も「いい音」が車内に響く。
最近車内で聞いたオーディオの中ではアルティメットが最も優れているように感じた。このアルティメットは、プレミアムから約20万円アップで装備が可能(Mグレードを除く)。聴き比べるとその差が歴然なので、積極的にグレードアップすることをお勧めしたい。
マイナーチェンジで静粛性がさらに高まったアウトランダーPHEV
試乗したのは、アウトランダーPHEVの最上級グレード「P Executive Package」だ。EV走行を始めてすぐに感じたのが静粛性の高さである。「P Executive Package」は、ヤマハ製上級スピーカーであるアルティメットが標準装備されているため、車体が発するノイズなどを徹底的に遮断している。静粛性は、マイナーチェンジ前よりさらに高まっていた。
また、新開発バッテリーの恩恵で、エンジンを使用するシーンが少なくなった。制限速度70km/hのバイパスを走行中でも、ほとんどEV走行するのだ。アクセル開度を50%以上にしないとエンジンは始動しない印象だった。電動モデルでのアクセル開度50%は結構な急加速なので、恐らく一般道やバイパス程度ではエンジンが始動することはないだろう。
三菱によると、システム出力が約20%アップしたことなどにより、低速域ではマイナーチェンジ前のモデルより少しエンジンが始動しにくい程度だが、中・高速域では大幅にエンジンが始動しにくくなったという。
また、今回のマイナーチェンジでは、エンジンにジェネレーターカバーを取り付けたことで、キーンというような高周波の音も効率よくカットしている。エンジン音も意識していないと聴き取れないくらい静粛性が高い。エンジンの存在感が無く、まるでBEV(バッテリー電気自動車)のようだった。
マイナーチェンジで伸びのあるパワフルな加速力を手に入れた!
驚いたのが、新型アウトランダーPHEVの加速性能だ。停止時から一瞬の加速は、マイナーチェンジ前のモデルとそれほど大きな差を感じなかった。
ところが、ある程度加速してからの伸びは全く違う。マイナーチェンジ前のモデルは、ある程度の速度があると、加速が鈍っていた。だが、新型アウトランダーPHEVは、加速の鈍化が穏やかなのだ。マイナーチェンジ前のモデルと比べると、高い速度でも伸びのある加速だと感じた。
中速域でのクルージングから一気に加速するようなシーンは、大きな変化を感じた。三菱のよると、新型アウトランダーPHEVの0-100km/h加速タイムは、2.0秒も短縮したという。新開発バッテリーなどの採用により、トータルシステム出力が約20%もアップしたからだ。
車体が大きくて重いのによく曲がる!
マイナーチェンジによってトータルシステム出力が大幅に向上したことで、三菱独自の制御技術であるS-AWC(スーパーオールホイールコントロール)も再セットアップされた。
S-AWCには、計7つもの走行モードが用意されている。普通に走っている限り、このS-AWCの存在に気が付かないほど自然だ。だが、モニターを見ていると、頻繁に駆動力を変えているのがよく分かる。
このS-AWCの効果を実感できたのが、中高速のカーブが連続する箱根ターンパイクでの走行だ。新型アウトランダーPHEVの車重は、2,180kgもある。この大きく重いボディが、ヒラヒラと軽快に向きを変えるのだ。
大きく重い駆動用リチウムイオンバッテリーを床下に設置し、かなり低重心化されているとはいえ、軽快感が際立っている。マイナーチェンジ前のモデルと比較しても軽快感と安定感も増した。SUVとしては、かなりスポーティで気持ち良く走れる点は高評価だ。
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フラットで快適な乗り心地!
マイナーチェンジ後の新型アウトランダーPHEVの乗り心地は少し硬めだ。路面の継ぎ目などの凹凸をしっかりと伝えてくる。ただ、サスペンションのストロークが十分あるからなのか、あまり不快には感じない。
マイナーチェンジ前のモデルだと、大きなうねりのある路面を中高速域で走ると、車体の揺れの収まりがやや気になった。重い車重が影響しているのだろう。
ところが、新型アウトランダーPHEVは、大きなうねりがある道でも、車体の揺れの収まりが改善されていて、よりフラットな姿勢で走り抜けられた。直進安定性もアップしており、ロングドライブの疲労も少ない。スプリングレートなどの足回りや電動パワステの再チューニングや、サマータイヤへの変更の効果は大きい。
納得の価格アップ?
新型アウトランダーPHEVは、マイナーチェンジとは思えないほどの改良が施された。マイナーチェンジ前のユーザーが乗れば、即座に買い替えたくなるくらいの大幅な進化を遂げている。見た目はほぼ同じだが、走りの質は大きく異なる。魅力的なPHEVに仕上がった。
大幅に進化した分、新車価格も大幅に上がっている。新型アウトランダーPHEV Pグレードの新車価格は、マイナーチェンジ前のモデルに比べ約38万円もの価格アップとなった。この価格差は、新開発バッテリーやヤマハ製オーディオなどの進化を踏まえると、むしろ安価にも思える。
新型アウトランダーPHEVのお勧めグレードは? 高リセールバリューの期待大!
新型アウトランダーPHEVのお勧めグレードは、最上級グレードの「P Executive Package」。ラグジュアリーSUVに相応しいセミアニリンレザーや、ヤマハ製上級スピーカーであるアルティメットが標準装備されるなど、充実した装備が魅力だ。
「そこまで豪華装備は必要ない」というのであれば、Pグレードでも十分。レザーシートやシートベンチレーションなども標準装備されており、約28万円安価だ。
また、新型アウトランダーPHEVのリセールバリューは期待できそうだ。初代アウトランダーPHEVは、まだ認知が得られていなかったこともあり、リセールバリューはやや低めに推移した。
しかし、2代目アウトランダーPHEVの中古車は、発売から3年以上経過した2025年1月でも新車価格に近い価格で売られており、リセールバリュー高値を維持している。今後も高リセールバリューが期待できそうだ。
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三菱アウトランダーPHEV(GN0W型)グレード別新車価格
| 5人乗り | 7人乗り |
M | 5,263,500円 | ― |
G | 5,879,500円 | 5,970,800円 |
P | 6,314,000円 | 6,405,300円 |
P Executive Package | 6,594,500円 | 6,685,800円 |
三菱アウトランダーPHEV(GN0W型)燃費、ボディサイズなどスペック
代表グレード | 三菱アウトランダーPHEV Pエグゼクティブパッケージ |
全長×全幅×全高 | 4,720×1,860×1,750mm |
ホイールベース | 2,705mm |
トレッド前 / 後 | 1,590/1,595mm |
最低地上高 | 200mm |
最小回転半径 | 5.5m |
タイヤサイズ | 255/45R20 |
車両重量 | 2,180kg |
乗車定員 | 5名 |
駆動方式 | 4WD |
モーター搭載数 | 2基(フロント1、リヤ1) |
モーター最高出力 | フロント:85kW、リヤ:100kW |
モーター最大トルク | フロント:255N・m、リヤ:195N・m |
バッテリー種類 | リチウムイオン電池 |
総電圧 | 350V |
総電力量 | 22.7kWh |
エンジン型式/タイプ | 4B12型/2.4L 4気筒 MIVEC ガソリンエンジン |
エンジン最高出力 | 98kW/5,000rpm |
エンジン最大トルク | 195N・m/4,300rpm |
ハイブリッド燃料消費率(WLTCモード) | 17.2km/L |
充電電力使用時走行距離 | 102km |
サスペンション形式(前:後) | マクファーソンストラット:マルチリンク |
タイヤサイズ | 255/45R20 |
<レポート:大岡智彦>
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