カーボン製の骨格で徹底した軽量化が施されたBMW i3
BMW i3は、2013年にデビュー。2014年春に日本で発売し、センセーションを巻き起こしたのがBMW i3である。
i3は、超軽量&高強度を誇るカーボン・ファイバー強化樹脂(CFRP)製のパッセンジャー・セル(ライフ・モジュール)と、アルミ合金製のシャシー(ドライブ・モジュール)を組み合わせ、徹底した軽量化を図ったEV(電気自動車)だ。
また、ピュアEVに加え、エンジンを使って発電し、走れる距離を延ばすレンジエクステンダーも設定した。日本では、いざというときに安心感のあるレンジエクステンダーの人気が高い。
2017年秋のフランクフルトショーで、フェイスリフトを中心としたマイナーチェンジを行った新型i3がベールを脱いだ。そして2018年1月に日本に上陸し、発売された。
マイナーチェンジで、より精悍さが増したi3
BMW i3のエクステリアは、前後のバンパーのデザインを変え、LEDヘッドライトを標準装備とした。フロントバンパーは迫力を増し、丸型から横長になり、LED化したインジケーターもアクセントとなっている。
リアもマットクロームの加飾ラインを追加して、ワイド感を強調した。サイドビューでは、Aピラーからルーフエンドに向かって装着されたシルバーの加飾パネルが目を引く。
インテリアは、基本レイアウトに変更はない。だが、3つのデザイン・パッケージが用意された。エントリーグレードは、アラガツグレイのシートと天然素材のケナフ麻の繊維をインパネに採用した「i3アトリエ」だ。その上の「i3ロッジ」はソラリック・ブラウンのウール地にナチュラルレザーのシートとなる。トップグレードの「i3スイート」は、インパネとシートにナメシ加工したダンベルギア・ブラウンを用いるなど、ゴージャスだ。
航続距離は、レンジエクステンダー付きで、なんと511㎞!
i3のモーターとバッテリーを中心とするメカニズムは、2016年にアップデートを行った。このときにサムスンSDI製のリチウムイオンバッテリーを33kWhの大容量タイプとし、航続距離を390km(JC08モード)に延ばしている。
マイナーチェンジした最新のi3も、このバッテリーを受け継いだ。ちなみに9Lのプレミアムガソリンを積むレンジエクステンダーの航続距離は511kmだ。
ヨーロッパでは、高性能版のi3 Sが登場した。これは、日本には導入の予定がないという。
リーフやe-ゴルフよりパワフルなモーターを使うi3
試乗したのは、647ccの発電用エンジン(直列2気筒)を積むレンジエクステンダーで付i3だ。タイヤは、19インチではなく、オプション設定されている20インチのブリヂストン製エコピア(オロジック)を履いていた。
i3に搭載されるモーターは、日産リーフやフォルクスワーゲンe-ゴルフより高出力。125kW(170ps)/250Nm(25.5kg-m)を発生する。エクステンダー付きより、車重が130kg軽いピュアEVの0-100km/h加速は、7.3秒の俊足だ。
強力な回生ブレーキで、ワンペダルで発進から停止までが可能に!
i3は走らせるためには、まずステアリングの右上にあるプッシュスイッチで起動し、ダイヤル式シフトレバーを進行方向にひねってDレンジに入れれば準備OKである。
クリープ現象がないので、アクセルを踏まないと前に進まない。最初は戸惑うが、強力な回生ブレーキを含め、すぐに体は慣れてしまう。また、坂道発進ではヒルホールド機構が重宝した。
i3は回生ブレーキの味付けが個性的で、発進から停止まで、ほとんどブレーキを使わないワンペダルドライブを可能にしている。アクセルを緩めると瞬時に回生ブレーキが作動し、バッテリーに充電しながら減速を行う。
i3の魅力のひとつでもあるダイナミックな加速フィールは、最新モデルでも健在だ。モーターは瞬時にパワーとトルクが立ち上がるから鋭い加速を見せつける。
走行モードは、扱いやすいエコPROがお勧め
i3を起動するときは「コンフォート」モードにセットされるが、これは実質的なスポーツモードだ。スタート直後のダッシュなら、BMW M3と互角の加速を披露する。しかも、タイムラグのない一直線の加速だから猛々しい。
一般的な走りなら、「エコPRO」モードを使うことをおすすめする。それでも十分に速いし、唐突な飛び出し感もないから、街中を中心とした走りでは扱いやすい。
改良により、より洗練されたドライブフィールに。静粛性も高まった!
i3は、改良により制御が緻密になり、初期モデルよりドライバビリティがよくなっている。モーターならではの軽やかなトルクの盛り上がりが一段と洗練された印象だ。気持ちいい加速を存分に楽しめ、ワンペダルドライブの回生ブレーキも心なしかマイルドになった。
初めて運転した人でもコントロールしやすくなり、同乗者も違和感を抱かない。クルージング時の静粛性もよくなったように感じる。EVは高い静粛性が売りだが、行き届いた遮音対策と優れたエアロダイナミクスと相まって、キャビンは静かだ。同乗者との会話も弾む。
ハンドリング、乗り心地が大幅に向上し軽快さが際立つ!
ハンドリングもよくなっている。i3はリア駆動で、重量物を後方に置いた。だから取り回し性に優れ、切れ味も鋭い。初期モデルは、電動パワーステアリングのフィーリングがBMWのレベルに達していなかった。
だが、最新のi3は、かなり改善され、インフォメーションも増えている。切り始めの違和感がなくなり、路面状況も分かりやすくなった。フットワークは軽やかだ。街中からワインディングロードまで、気持ちいい走りを楽しむことができる。
i3は剛性が高く、細いタイヤでもしたたかな接地フィールを見せるが、さらにコントロール性は向上し、安心感も増した。目地や段差で飛ばされ、接地フィールが希薄になるのが弱点だったが、足の動きがよくなり、踏ん張りが利くようになっている。荒れた路面を駆け抜けても追従性がよくなり、タイトコーナーでも狙ったラインに乗せやすい。とくにリアが少し軽いピュアEVは、一段と軽やかな身のこなしだ。
驚かされたのは、乗り心地である。今までは、あまり20インチタイヤをあまりうまく履きこなしていなかった。19インチタイヤでも、やや荒さを感じたものである。
最新モデルは、足の動きがよくなり、収束も速やかだ。段差や目地を乗り越えたときでもガツンとくるショックに悩まされないなど、快適性は大きく向上した。
実電費も良好。付帯サービスもより充実し、より身近で便利なEVに!
気になるのは、i3の電費だろう。1充電走行距離は、なんと初期モデルと比べると70%もアップしている。ピュアEVは、JC08モードで390kmの航続距離だが、これは最高の条件下での数値だ。
だが、箱根の往復では、エアコンを使っても200km以上の距離を、余裕でEV走行できた。レンジエクステンダーなら、350km前後まで航続距離を延ばせるから、ロングドライブをしても安心感がある。
ただし、登坂路が連続するステージでは負荷が大きく、発電が間に合わなくなるから、早めにエンジンをかけて、電気の消耗を防いだほうがいい。言うまでもなく、i3は200Vの普通充電だけでなくチャデモ方式の急速充電に対応し、45分で80%まで充電できる。現在は、このタイプの公共充電サービスを12カ月間無料で利用することが可能だ。
また、ナビゲーションシステムや各種の情報を表示するコントロールディスプレイも進化し、使い勝手がよくなった。そしてBMWコネクテッド・ドライブや3年間は主要項目のメンテナンスなどを無償提供するBMWサービス・インクルーシブも全車に標準装備だ。最新のi3は、洗練された乗り味を手に入れただけでなく、アフターケアの面でも充実したものになっている。魅力は、より大きく広がった。
BMW i3価格
・BMW i3 Atelier 5,380,000円
・BMW i3 Lodge 5,800,000円
・BMW i3 Suite 5,950,000円
・BMW i3 Atelierレンジ・エクステンダー装備車 5,870,000円
・BMW i3 Lodgeレンジ・エクステンダー装備車 6,290,000円
・BMW i3 Suiteレンジ・エクステンダー装備車 6,440,000円
BMWi3電費、ボディサイズなどのスペック
代表グレード | BMW i3 Suiteレンジエクステンダー装着車 |
---|---|
ボディサイズ[mm](全長×全幅×全高) | 4,020x1,775x1,550mm |
車両重量[kg] | 1,420kg |
総排気量[cc] | 647cc |
エンジン最高出力[ps(kw)/rpm] | 38(28)/5,000rpm |
エンジン最大トルク[kg-m(N・m)/rpm] | 5.7(56)/4,500rpm |
モーター最高出力[ps(kw)]/rpm | 170ps(125kw)/5,200 |
モーター最大トルク[kg-m(N・m)]/rpm | 25.5kg-m(250N・m)/100-4,800 |
駆動用バッテリー | リチウムイオン電池 |
バッテリー総電力量 | 33.2kWh |
航続可能距離 | 511㎞ |
0-100㎞/h加速 | 8.1秒 |
乗車定員 | 4名 |
価格 | 6,440,000円 |
レポート | 片岡英明 |
写真 | 編集部 |
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