新型スープラの継承すべきヘリテージは、直6とFRであること
2018年春のジュネーブショーでレーシングコンセプトがお目見えして以来、市販モデルのデビューが待ち遠しい「新型トヨタ スープラ」。そんな矢先、千葉県の袖ケ浦フォレストレースウェイで、プロトタイプに試乗する機会を得ることになった。
スープラといえば、1978年にセリカの上級グレードとして登場し、これまでグローバルで4世代のモデルを販売。新型で5代目となる。
トヨタが考える新型スープラの継承すべきヘリテージは2つあって、1つは「直6エンジン」。もう一つがフロントエンジン・リヤドライブの「FR(後輪駆動)レイアウト」であること。
走りにこだわったディメンションをもつ新型スープラ
トヨタのスポーツモデルといえば、2L水平対向エンジンを搭載したFRの86が人気を得ている。今回のスープラの開発にあたって意識してきたことは、86と同様に数値的な要素を追求するのではなく、乗り手が車両と一体となって運転する楽しさが得られるクルマづくりを重視。よくよく話を聞いてみると、どうやら、新型スープラのディメンションは相当にストイックなものに仕上げられているようだ。
スポーツカーにとって、基本の構えは運動性能に直結する。新型スープラの前後のタイヤの間隔は、86よりも100mmも短いという。さらに、左右のタイヤの間隔を示すトレッドは、ショートホイールベースのわりにワイドな構え。重心高は水平対向エンジンを低く配置した86よりも低いという。前後重量配分は50:50だ。
アルミとスチール材を効果的に組み合わせて造られたボディは、カーボンを多用したレクサス LFAよりも剛性は2.5倍も高いというから驚かされてしまう。
ショートホイールベースなのに、伸びやかに見える新型スープラ
新型スープラの開発は、トヨタ モーター ヨーロッパのマスタードライバーがとりまとめを行った。テストを行った舞台は、独・ニュルブルクリンクをはじめとするサーキットだけでなく、むしろ、世界の公道で徹底的に走り込みを行って熟成した。今回の試乗ではサーキットを走るということで、どんなポテンシャルを発揮してみせるのか楽しみだ。
新型スープラの試乗時、間は僅か20分間。マシンは赤と黒のラッピングシートでカモフラージュされていたが、サイドシルエットを見てみると、風をスルリと流すように傾斜したフロントウィンドウに、ルーフはダックテイル風のリヤスポイラーに向けてなだらかに流れ落ちるスポーツカーらしいデザインになっている。
フロントに向けてスラントしたロングノーズに、キャビンをバランス良く配置。ショートホイールベースのわりに全長は伸びやかに見えるが、前輪からフロントバンパーまでのオーバーハングは、今ドキのクルマとしては長めにとられている。
BMWの直6サウンドを奏でた新型スープラ
足下に装着されていたのは、フロントが255/35ZR19、リヤが275/35ZR19のハイグリップタイヤ。さっそくコースインをして、まずは加速してみることにした。
新型スープラは、日本仕様で右ハンドルのプロトタイプだったが、方向指示器のレバーはステアリングの左側に配置。2ペダル仕様で、ハンドルから手を離さずにパドルで変速操作を行うこともできる。
試しに、アクセルペダルを深く踏み込んでみる。すると、直6エンジンが野太く吠えたかと思うと、リヤタイヤがトラクションを逃がすまいと路面を掴みながら、車体を前へ前へとグイグイ押し出していく。
最大トルクをわずか1600回転〜4500回転あたりまで発揮してみせるエンジンは、加速時は瞬時にレスポンス良く反応するもので、その音色は紛れもなく、共同開発を行っているBMWのサウンドを奏でてみせる。
走行モードをSPORTに切り替えて、コーナー手前でブレーキを強めに踏み込むと、低いギアに落ちるのと同時に、クルマが自ずとエンジン回転を高めてブリッピング。最適なトラクションを得て走れることで、コーナーの立ち上がりで力をスムーズに繋いでいける。
少し曲がりにくい?
新型スープラには、アダプティブバリアブルサスペンションが装着されている。この機能は、走行状況に応じて、乗り心地重視かスポーツドライビング志向か、減衰特性を切り替えられるショックアブソーバーだ。
また、「アクティブデファレンシャル」は0-100%まで変動するもので、2WAYタイプのLSDのメリットが活かせるとのこと。開発陣は「ニュートラルな走り」を目指したそうだが、ドライバーの着座位置は後方寄り、旋回の中心はフロント寄りということもあるせいか、タイトなコーナーでハンドルを切り遅れてしまったり、減速から操舵までのリズムが整わないと、もうひと切りハンドルを大きく切り込まなければ曲がりにくいと感じる場面があったことも否めない。
まだ、熟成の余地あり!
今回はサーキット走行だったため、ハイスピードな速度域からブレーキを強めにかけて、ペダルの踏力の抜き際で車体の姿勢をコントロールするシーンでは、もう少し右足の足底のペダルに沿って、ブレーキがリニアにコントロールできた方がピュアスポーツカーらしく、リズミカルな走りが楽しめるのではないかと感じた。
ともあれ、今回の試乗コースでは熟成の余地があると感じたが、まだプロトタイプの段階であるし、公道に焦点を当てた開発となれば、ワインディングなどの一般道の速度域で走ってみなければ、彼らの本当の狙いが分からない部分もある。
歴代のスープラを振り返れば、グランドツーリングカーとして、ゆったり流せる要素もあってしかるべきだ。そうしたことを踏まえて、先ずはスポーツカーの基本的な要素を徹底的にこだわり抜いて設計された大人に相応しいスポーツカーがトヨタから生み出されようとしていることに拍手を送りたい。
そして、実際に販売されたあとは、各々のオーナーが好みのスタイルを追求したり、走らせるシーンに応じて、クルマと向き合うことができるとすれば、ファンが切望するスポーツカー文化を継承していくことに繋がるではないかと思う。世界の自動車界に及ぼす影響が大きいトヨタが送り出すモデルだけに、今後の展開に注目していきたい一台だ。
<レポート:藤島知子>
<参考>新型BMW Z4 M40iスペック
全長/全幅/全高/ ㎜ 4324 / 1864 / 1304
ホイールベース ㎜ 2470
トレッド ㎜ 1594 / 1589
エンジン 直6 3.0Lツインターボ
最大出力 250kW/340ps/5000~6500rpm
再大トルク 500Nm/1600~4500rpm
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