バッテリー容量55%アップし62kWhへ! 航続距離は570km(JC08)へと進化したリーフe+
日産が2代目リーフの発売を開始したのが、2017年10月。初代リーフのリチウムイオン電池容量は、24kWhから30kWhになり、そして2代目リーフでは40kWhとなった。この40kWhのバッテリーを搭載したことで、2代目リーフの航続距離は400㎞となる。
これで、航続距離の短さが指摘されていたリーフへの不安がかなり払拭された。ところが、この40kWhの2代目リーフがデビューした直後から、日産はより航続距離を伸ばしたハイパフォーマンスバージョンの登場を匂わせていたのだ。それが、今回登場した新型リーフe+(イープラス)ということになる。
新型日産リーフe+には、改良型のリチウムイオンバッテリーが搭載された。その容量は、なんと62kWh。40kWh搭載車に対して、1.5倍以上の容量だ。この大容量バッテリーにより、航続距離はJC08モードで570㎞、WLTCモードで458㎞となった。
レーザー溶接などにより小型化に成功したバッテリー
この62kWhバッテリー、従来のラミネート型であることに変更は無いが、まったく別物といえるくらい改良が加えられている。40kWh車のバッテリースペースとほぼ同等のスペースに入るように小型化されている。
従来のバッテリーは、ハーネスで接続。しかし、新62kWhバッテリーはハーネスを廃し基盤化。レーザー溶接で接合している。これにより、小型化できた上に、セル数を自由に設定できるようになった。こうした小型化により、バッテリーは容量を1.5倍以上にしながら、室内スペースはまったく影響を受けていない。
室内スペースの影響は無いが、多少大型化したバッテリー分のボディサイズで調整している。最低地上高は、40kWh車に対して-15mm、全高は+5mmとなった。
45%アップの218psへと大幅にパワフルになったリーフe+
そんな新型リーフe+の試乗は、千葉県の袖ヶ浦フォレストレースウェイで行われた。ピットロードに並べられた新型リーフe-+だが、40kWh車との違いは、フロントのリップスポイラー程度。充電ポートには「e+」ロゴが入る。リーフのトップグレードともいえるのだから、もう少し差別化があってもいいと思う。
新型リーフe+の操作系は、40kWh車と同じ。ピットロードから、コースに進入するためにアクセルを全開にしフル加速を試す。その瞬間、フロントタイヤはキュキュッと一瞬滑り出しトラクションコントロールが作動。瞬時に40kWh車よりパワフルなことが分かる。62kWh車の出力は、40kWh車に対して45%の160kW(218ps)、トルクは6%アップの340Nm。速いわけだ。車重が160kg増えているのだが、もはや重量増など関係ないといった印象だ。
爽快な加速感が、より長く続くようになった
しかも、この加速力は一段とリーフを魅力的にしている。40kWh車は、100㎞/h前後で加速の伸びが止まっていた。ところが、62kWh車は100㎞/h前後を超えても加速がそれほど鈍らず気持ちよく加速し続ける。最高速に近い140㎞/h付近まで息の長い加速が続いた。日産によると、40kWh車は最大加速Gが50㎞/hまで、62kWh車は70㎞/hまで最大加速Gが続くという。
この淀みない加速は、電動車の魅力をより際立たせている。サーキットでの試乗とは言え、カーブでの立ち上がりでアクセルを踏むと、瞬時に340Nmの最大トルクが立ち上がり、クルマをグイグイと前方に押し出す。アクセル操作に対するレスポンスの早さは、ガソリン車の比ではない。瞬時にクルマが反応するので、クルマとの一体感と操る楽しさは独特なものがある。
より低重心化され安定感が増した
カーブでもリーフe+の走りはさえていた。リーフはフロア下にバッテリーを設置するため、着座位置はやや高め。しかし、バッテリーという重量物が床下にあるので、重心が極めて低い。62kWh車は160kgも重いバッテリーを装備したこともあり、重心高はさらに-10mmも下がった。
重くなった分、車体剛性のアップやサスペンションの仕様が変更され最適化。その結果、車体のロール角は、0.4G旋回時に-5%となり、より安定した姿勢でカーブを曲がれるようになっている。
ただ、実際に試乗してみると、それほど大きく変わった印象はない。低重心さがもたらすカーブでの安定感は抜群だ。
乗り心地重視の足回りは変わらず・・・
しかし、40kWh車、62kWh車共に乗り心地重視のサスペンションセッティングになっている。そのため、高い速度域のカーブでは低重心さがあまり生かされていない。とにかく、カーブではクルマが大ききく傾き、スポーティさは感じない。もう少し、ロールスピードとロール量を抑える方向のスポーティなセッティングにして、低重心さを生かしたキビキビ感を演出して欲しいくらいだ。
タイヤも同様。電費を重視したエコタイヤが装着されているため、気持ちよく走ろうとすると、途端にタイヤが悲鳴を上げる。ラフにアクセルを開けると、すぐにトラクションコントロールが作動。160kWのハイパワーに対して、タイヤのグリップが足りない。
もちろん、カーブでもタイヤのグリップの低さを露呈する。低重心でコーナーリングスピードはかなり高いはずなのに、タイヤがすぐにグリップを失うので速く走れない。サーキットのような場所では、ストレスが溜まる。
まぁ、電費を重視するのであれば仕方がない選択なのだろう。よりスポーティな走りを求めるのなら、40kWh車にも設定されているリーフニスモが投入されるのを待つしかない。むしろ、62kWh車のリーフ ニスモe+に対する期待は非常に高い。エコだけではない、走りが楽しめるEVとして振りっ切った仕様にしてほしいところだ。
バッテリーの温度上昇は?
リーフの62kWh車で気になっていたのが、バッテリー温度の上昇による出力制御だ。40kWh車は、とくに真夏のバッテリー温度上昇が話題になっていた。試乗したのは冬とはいえ、全開走行が続くサーキット。いつ、出力制限がかかるか不安だった。
しかし、そんな心配は無用だった。袖ヶ浦フォレストレースを3周毎にピットインをし、十数周走った結果、バッテリーの温度は温度計の70%くらいを示していた。真夏のような環境とは異なるものの、40kWh車よりは熱に強いバッテリーになっているようだ。
ただ、これは水冷式にするなどの対策をしたのではない。基本的には、空冷式のまま。では、なぜバッテリーの温度上昇を抑えることができたのか。日産のエンジニアによると、62kWh車のバッテリーは3並列(3×96セル)になり、40kWh車の2並列(2×96セル)に比べ余裕ができたことが要因だそうだ。この3並列化により、インバーターの性能を向上させ出力をアップさせている。
バッテリーの温度上昇については、走行環境が異なるので、夏場の一般公道でチェックしたいポイントでもある。
本格的EV時代が近付いた
非常にパワフルになったリーフe+。EVらしい爽快な走りを、より楽しめるようになった。航続距離は、JC08モードで570㎞となり、もはや不安はほとんど感じない。EVが当たり前の時代に、また1歩確実に近付いた。
<レポート:大岡智彦>
日産リーフ価格
■62kWh車
・リーフe+ G 4,729,320円
・リーフe+ X 4,162,320円
■40kWh車
・リーフX 3,661,200円
・リーフS 3,243,240円
日産リーフe+電費、航続距離、ボディサイズなどのスペック
ボディサイズ[mm](全長×全幅×全高) 4480x1790x1545mm
ホイールベース[mm] 2700mm
最低地上高[mm] 135mm
車両重量[kg] 1680kg
総電力量[kWh] 62kWh
最高出力[kw/rpm] 160kW(218PS)/4600~5800rpm
最大トルク[N・m/rpm] 340N・m/500~4000rpm
WLTCモード交流電力量消費率[Wh/km] 161Wh/km
WLTCモード充電走行距離 [km] 458km
JC08モード交流電力量消費率[Wh/km] 120Wh/km
JC08モード一充電走行距離 [km] 570km
定員[人] 5人
消費税込価格[円] 4,729,320円
発売日 2019年1月23日
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