5シリーズと区別が付かなくなった新型BMW 3シリーズ
BMW の屋台骨である7代目の3シリーズがデビューし、街中でも見かけるようになった。スタイルはBMW伝統のキドニー・グリルをより立体的に造形になり、精悍なヘッドライトと相まってスポーティ度は増した。
また、長所かもしれないが、全長は4,7mを超え、大きく一段と立派になった押し出しの強いスタイルは5シリーズとの区別が難しくなった。
軽く700万円オーバー? 新型BMW 330i Mスポーツを試す!
今回試乗したのは、新型BMW 3シリーズの中で上級グレードに位置する330i Mスポーツ。この330i Mスポーツは、明るいメタリックのブルーのボディカラーで、更にクールでカッコイイ。
エンジンは2.0L直列4気筒ツインターボ、最高出力184ps/5,000rpm、最大トルク300Nm/1,350-4,000rpmを発揮する。車両本体価格は632万円だが、オプションのレーザーライトなど欲しい装備した試乗車は700万円を軽くオーバーする。ターボ付きと言っても2.0L直4エンジンのセダンで、この価格は少々高価に感じてしまう。
進化が実感できる2.0L直4ターボエンジン
そんな、少々ネガティブなイメージを抱きながらステアリングを握った。乗り始めて10秒も経たないで、そんなネガティブな気持ちは吹き飛んでしまった。
アイドリングからスタート直後こそトルクは薄いが、それも一瞬で、直ぐに330iを名乗るのに相応しいぶ厚いトルクをアクセルペダルから伝わってくる。
更に強くアクセルペダルを踏み込むと、重厚なエンジンサウンドを伴いながら、レッドゾーンの6,000rpmまでストレス無く回る。気持ち良くエンジンが回るため、つい無駄にアクセルを踏み込んでしまった。
カタログのスペック通りに最高出力の5,000rpmでシフトアップした方が、燃費も良く、スピードのノリも良いかもしれないが、車好きならエンジン・サウンドに酔いながらレッドゾーンまで回してしまうだろう。
従来モデルのエンジンと比較すると、常用回転で50Nmのトルク増と最高出力6psは、スペックだけでなく実感が伝わる改良である。
定番である電子制御8速ATのDレンジを選んでおけば、アクセルペダルに意志を伝えるだけで充分以上に市街地、高速道路、山岳道路をスムーズかつ速く駆け抜ける。それでも飽き足らないなら、ステアリングのパドルシフトを使えば気持ち良さが更に高まる。
硬いサスペンションは、Mスポーツの伝統だから問題なし!?
330i Mスポーツのサスペンションは、Mスポーツのため引き締められ、19インチのタイヤを通して路面の凹凸が伝わってくる。だが、タイヤの接地面の当たりが柔らかいのでガマンを強いられる程ではない。Mスポーツを選ぶオーナーなら、逆にこの程度のサスペンションの固さを要求されるだろう。
その固さは、乗り心地面ではデメリットだが、ワインディングロードでの運転では楽しくなるメリットに変化する。ターンインで僅かにステアリングを切るだけで、前輪はコーナの狙ったラインを突き進みアンダーステアをあまり感じない。クリッピングポイントを抜け、ステアリングを戻しながらアクセルペダルを徐々に踏み込むと、荷重が後部に移動しリヤタイヤはしっかりと路面を掴み、増大したトルクが気持ち良い加速感を身体に感じさせながら加速していく。
下りのコーナーでもロールは抑えられていて、リヤタイヤの荷重が抜けるような状況でも挙動の乱れる事はなく、弱アンダーステアで安心してコーナリングを楽しめる。
また、ブレーキキャリパーがブルーに塗装されたブレーキのコントロール性と対フェード性も一般道では充分な性能で、安心して運転を楽しめる。車と一体感があるこの気持ち良さは、もはやスポーテイカーではなく、スポーツカーを運転している時の気持ち良さと同様である。運転が楽しいだけでなく、その速さは、数世代前のM3と同等以上かもしれない。
ボディサイズの拡大による運動性能のデメリット、2.0Lエンジンなのに車両価格が高いなど330iに対しての事前のネガティブなイメージはすっかり吹き飛んでしまった。
車中で「OK、BMW」と話すのは、少々気恥ずかしい? インテリジェント・パーソナル・アシスタントとは?
新型になり運転の楽しさは進化しているのは確認出来たが、それだけでなく最先端のシステムも導入している。3眼カメラを採用し、高性能プロセッサーとレーダーにより、高速道路でステアリングから手を離しての走行も可能な自動運転を見据えた運転支援システムを採用。
また、「OK,BMW」と呼びかければAIによりナビ操作などが可能になるインテリジェント・パーソナル・アシスタントを搭載。音声による操作はナビなどで可能だったが、その他の機能操作や曖昧な指示でも操作が出来るようになった。使えば使うほどにドライバーの好みを学習し、車両の操作や情報へのアクセスが容易となる。
しかし、私だけかもしれないが、「OK,BMW」と言うのは緊張し、少々恥ずかしい気分になる。ただ、この起動コマンドは変更可能。3シリーズに、好きな名前を付けてAIを起動させることもできる。
その他、新しい機能として直前に前進したルートを最大50mまで、同じルートをバックで正確に戻る事が出来るリバースアシストは便利である。例えば、駐車場で空いていると思って奥まで進んだものの、駐車スペースが無かった経験した人は多いだろう。これがあれば泣きながらバックしなくても、アクセルとブレーキ操作だけでハンドルは車に任せて涼しい顔で入口まで戻る事が出来る。少し試してみたがハンドルが勝手にクルクル回り、車の軌跡を正確に捉えていた。
逆に動くデジタルのタコメーターは、慣れが必要
新型BMW 3シリーズはボディサイズの拡大だけでなく、ホイールベースも従来モデルより40mm拡大した。後席の足下のゆとりが増している。
メーターは遂にというか、ようやくなのか12.3インチのフルデジタルメーターが採用された。必要に応じてナビゲーションマップの一部が表示可能となり視線の移動が減り、より安全に運転ができるようになった。
しかし、タコメーターの針が従来と逆回転の右下から上昇するタイプに変わり、その違和感は試乗の最後まで取れなかった。
期待を裏切らないスポーツセダンが新型BMW 3シリーズ
新型BMW 3シリーズは、従来のBMWの良さに磨きをかけ、更に現在使える最先端のシステムを贅沢に採用した次世代モデルである。価格は上昇しているが、向上した装備分を加味すれば、むしろ値下げともいえる。それだけ中身の濃いモデルであり、スポーツセダンが欲しい人の期待は裏切らない。
今後ディーゼルエンジン搭載の四輪駆動モデルやプラグインハイブリッドモデルの投入も控えている。運転が好きで、新しいモノが好きな人にはお勧めである。勿論、車の興味が無い人でも後悔しない懐の大きいセダンである。
BMW 3シリーズ価格
・BMW 320i SE 4,520,000円
・BMW 320i Standard 5,230,000円
・BMW 320i M Sport 5,830,000円
・BMW 330i M Sport 6,320,000円
BMW 3シリーズ、燃費、ボディサイズなどスペック
■代表グレード BMW 320i M Sport
・全長x全幅x全高(mm) 4,715×1,825×1,430
・ホイールベース(mm) 2,850
・トランク・ルーム容量(L) 480
・定員(名) 5
・エンジン型式 B48B20B
・種類 直列4気筒DOHCガソリンターボ
・総排気量(cc) 1,998
・最高出力(kW 〔ps〕 / rpm (EEC)) 135〔184〕/5,000
・最大トルク(Nm 〔kgm〕 / rpm (EEC)) 300〔30.6〕/1,350-4,000
・燃費消費率 JC08モード(km/L)15.2
・燃料消費率WLTCモード(km/L) 13.1
・トランスミッション 8速AT
・タイヤサイズ F:225/45R18 R:255/40R18
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