日産車、雪上での実力を試す!
クルマに乗り慣れたベテランでも運転に気を遣うのが、ミューが低く、滑りやすい雪上路面だ。さらに、路面がツルツルになる氷上ともなれば、曲がることはもちろん、直線での加速や減速にも細心の注意を必要とする。20km/h程度の低速でも狙った位置にピタリと停止させるのは難しい。
2020年は暖冬だったが、北海道は本州と違って雪がある。そこで多くの日産のスポーツモデルとインテリジェントモビリティを北海道モータースポーツパーク札幌に持ち込み、その実力を試してみた。
意外なほど楽しいデイズ4WD
最初にステアリングを握ったのは、2019-2020日本カー・オブ・ザ・イヤーでスモールモビリティを受賞した軽ハイトワゴンの日産デイズだ。
試乗したのは、ビスカスカップリングを採用した4WDモデルだったが、驚くほど安定した走りを見せている。トラクション能力は高く、滑りやすい路面でも軽やかにスタートするし、加速しても挙動を乱すことなくスピードを上げていった。わだちのある路面に乗り入れてもコントロールしやすい。
パイロンスラロームでは狙ったラインに乗せやすく、姿勢の変わり方にも唐突なところがなかった。舵の利きがいいことに加え、コーナリング中はリアを上手に滑らせて向きを帰るから軽快感が強いのだ。
たとえ滑ったときでも、修正は難しくない。前後輪のバランス感覚は絶妙で、横滑り防止装置VDCの介入も自然で違和感がなかった。
また、急ブレーキを踏んだときも、姿勢変化を上手に抑え込み、空走感も少ないから安心感がある。路面や天候の変化に関わらず安心して雪道を走れるのがデイズ4WDのいいところだ。
いざという時に安心なノートのe-4WD
ノートのeパワーは4WDモデルに乗った。4WDシステムは、後輪用モーターを追加したe-4WDで、eパワーのバッテリーを使って駆動を行う。
4WDモードにすると、発進や登坂路など、前輪が空転してトラクションがかからない場面では、瞬時に後輪にも伝達トルクを送って滑らかな発進を実現する。用意されたステージは、勾配が15度もある登り坂だ。
FF(前輪駆動)で発進すると、前輪と後輪が空転して前に進まない。そこで4WDのスイッチを押し、アクセルを踏み込むとスルスルと登り始めた。それほど勾配がきつくなければ、坂の途中での再発進も可能だ。いざというときの安心感は絶大である。
また、ノートeパワーは、アクセル操作だけで速度を自在にコントロールできるワンペダルドライブもウリのひとつ。これは、滑りやすい路面でも大いに威力を発揮した。下り坂も運転はラクだ。Sモードをうまく使えば、安心感がグッと増す。
FFでも扱いやすく安定しているセレナeパワー
セレナもeパワーだったが、こちらの試乗車は前輪駆動の2WDモデルである。速い速度でコーナーに入ると、前輪はグリップレベルを超え、アンダーステアが顔を出す。
だが、電動駆動のeパワーはアクセルを閉じるとモーターによって回生を行うから、トラクションのかけ方がうまい。
VDCの介入も上手だ。前輪が滑ったかな、と感じた瞬間にグリップバランスを適正な方向に導いてくれた。背は高いが、滑りやすい路面でコーナリングしたときやブレーキング時でも不安感はない。前輪のグリップの回復能力は素早く、安定した姿勢を保ってコーナーを回ることができる。
緻密な制御で、驚くほど安定しているリーフ
EV(電気自動車)のリーフは、FF車だけの設定だ。だが、モーターのトルク制御がうまいし、回生も効果的だから滑りやすい路面でも扱いやすさが光る。また、大容量のバッテリーをフロア下に積んでいるから重心も低い。減速もモーターとブレーキを上手に使うから、破綻することが少ない。
走った印象は一般路のようにフツーで、コントロールできる領域は驚くほど広かった。タイヤの限界付近まで攻めてもトレース性は優秀である。滑ったときもアクセルワークとステアリング操作で危険を回避しやすかった。
多くの日産車のなかで、もっとも落ち着いた大人の走りを見せたのがリーフだ。トルクがドーンと出るからアンダーステアに悩まされるかと思ったが、制御は驚くほど緻密で安心感があった。パイロンスラロームでは狙ったラインに無理なく乗せることができる。
そこで、調子に乗ってVDCを切って走ってみた。が、リーフe+はパワフルだし、車重も1700kgに迫るから、タイヤが限界を超えて滑ってしまうとクルマを落ち着かせるのに苦労する。やはり安全のためにも、VDCはオンにして走行したいと実感した。
FRの操る楽しさを凝縮したスカイライン400RとフェアレディZ
スポーツモデルは、FR(後輪駆動)方式のV37型スカイライン400RとZ34型フェアレディZ、アテーサE-TSと呼ばれるトランスアクスル4WDのR35型GT-Rに試乗している。
雪道初試乗のV37型スカイライン400Rは、8の字旋回と定常円旋回を行った。VDCをオンにしたままでコーナリングしても適度にリアが流れ、その修正もたやすいなど、コントロールする楽しさに満ちている。ツインターボでパワフルだが、コントロールしやすく、操る楽しさをスポイルしていないのがいい。
これは、Z34型フェアレディZも同じだ。適度にリアのスライドを許し、気持ち良いパワースライドを楽しめた。VDCをオフにするとじゃじゃ馬だ。運転は楽しいが、ステアリング操作は忙しくなるし、アクセルワークにも気を遣う。とくにフェアレディZは6速MTだったため、忙しい。日産のスポーツモデルのVDCは過度に出しゃばらないので、オンにしても十分に走りを楽しむことが可能だ。
スムースで速いGT-R。意外とドリフトが簡単なキャラバン
R35型GT-Rは4WDだから、パワフルなエンジンを積んでいてもフェアレディZなどより無理なく振り回すことができる。VDCの作動も絶妙で、滑り出すと上手にパワーを抑え、安定方向に即座に引き戻してくれた。
2020年モデルは、ハンドリング性能に磨きがかけられ、気持ち良くクルマが向きを変える。トラクションのかかり方がいいし、挙動変化もスムースだ。そのため操っている楽しさはフェアレディZに及ばない、という贅沢な悩みがある。それほど豪快な走りを満喫できるのだ。
最後の1台は商用ワンボックスのキャラバンNV350である。こちらは、2WDと4WDをスイッチで切り替えるパートタイム4WDだ。2WDのときは後輪駆動だから、一人で乗るとリアが軽く、すぐにドリフトに持ち込める。コントロールする楽しさがあり、練習にも最適だった。
4WDをチョイスすると、安定志向になり、落ち着きが増す。アンダーステアは強くなるが、トラクション能力は高く、限界性能も思いのほか高かった。攻めても安心感があり、旋回中でも舵の入りがいいから狙ったライン乗せやすい。
日産車は滑りやすい路面でもコントロールできる領域が広いだけでなく、スポーティな走り味も忘れていない。どのクルマも運転して楽しい、これがうれしいところだ。
<レポート:片岡英明>
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