バブル期の8シリーズを彷彿させる新型8シリーズ
BMWらしいカッコイイ・スタイルをもった8シリーズが復活した。
私のようにバブル期をを知っている世代には、8シリーズと言えば1990年に発売された850iのイメージが強い。当時、流行していたリトラクタブルを採用し、低く広がるボンネットと大きなドアのクーペスタイルは流麗であり、ボディサイズが大きいので少々威圧感もあった。
850iに搭載された5L(途中で5.6Lに拡大) V12気筒エンジンは、滑らかに溢れるようなエンジンパワーと、ガソリンが零れるようにアイドリングで止まっているだけで燃料計が動きだす魅力あるパワーユニットで、日常離れしたバブル期の象徴のような車だった。
そして、今回は6シリーズが進化し、8シリーズが復活した。ニュー8シリーズは、他のBMW同様に車体は一つだけではなく、2ドアクーペとスタイリッシュな4ドアクーペ、そしてカブリオレが用意された。
気品ある優雅なスタイル
試乗したモデルは2ドアのM850i xDriveクーペ。実車を見ると以前の8シリーズ同様に、今の時代の象徴とも言えるスタイルは優雅さを持ちつつ、カッコイイ。全幅は1.9m。大柄クーペの気品あるスタイルに憧れを感じる。
また、どの角度から見てもBMWであると誰にでも理解されるが、力強さを秘め、スポーティかつ高級感は他のシリーズに乗っているBMWオーナーの憧れになるに違いない。勿論、BMW好きでない人でも、スタイリッシュでありながら嫌みが無いスタイルは、「乗ってみたい」と思わせるだろう。
自社のモデルに対してはいつも辛口なBMWのカーデザイナーの永島譲二氏にプライベートでお会いした時、8シリーズのデザインに対しては好意的なコメントをされていた。それほど、8シリーズのデザインは完成度が高いのだろう。
スポーティでありながら、品の良さを感じるインテリア
2ドアの大きなドアを開けると、エクステリア同様に室内もスタイリッシュである。最高級のインテリアはスポーティだけなく、高級スーツや宝飾品のような品の良さが漂っている。
日本車の高級ブランドも頑張っているが、ニュー8シリーズには敵はない。その良さの理由は説明出来ないが、これが伝統かもしれない。まだ、一度も8シリーズに触れていない人は、運転しなくてもショールームで確認出来るので、ドアを開けてみて欲しい。
とにかく違和感がある左回転のタコメーター
ドライバーシートに座り、ステアリングの間から見えるインスツルメントのメーターは、一見すると従来のアナログメーターに見える。だが、12.3インチのデジタルディスプレイに置き換わり、フルデジタル化されている。
色々な情報や地図がドライバーの選択で表示出来て、針がさした部分の数字が自動的に拡大し見やすくなっている。他メーカーにも同様にデジタルディスプレイを採用される事が多くなったが、情報の表示の仕方、メーターの針の動きなどは、本当にアナログメーターが動いているかのように見えるのはBMWの拘りだろう。
ただ、一つだけ残念なのが、回転計の針は左回転となり、右端の5時の位置から0時に位置に向かって動くように変わった。おそらくセンターに情報を広く表示するために、エンジン回転の表示は右端の邪魔にならない位置に配置したのだろう。しかし、右回転の表示に慣れた私には試乗の最後まで違和感は取れなかった。
もっともエンジンのレヴリミットを確認しながら、パドルシフトを駆使して運転するような走りは、ジェントルマンのM850iには似合わないかもしれない。Dレンジに入れておけば、最適なギヤを車が選択してくれるので、タコメーターの必要性は無いのかもしれない。とはいえ、やっぱり左回転のタコメーターには釈然としない。
熟練ドライバーのような運転支援機能
新型8シリーズには、他の最新BMWモデルと同様に、完全な自動運転までは出来ないが最先端の安全性を高める運転支援システムを搭載。ドライバーの安心安全を助けてくれる。高速道路の手放し運転が可能となる「ハンズオフ」機能も装備された。
アクティブ・クルーズコントロールの制御は、更に洗練された。追従だけでなく、先行車が停止した時の滑らかな減速・停止は「お見事!」。熟練ドライバーの域である。
タッチパネル機能を備えたセンター中央の10.25インチのディスプレイは、ナビゲーションだけでなく、オフィスにいるかのようなコミュニケーション機能も強化された。
機能が多すぎて、理解がするのが困難なら、ボタンを押せば車に搭載している電話回線によりオペレーターが親切に使い方を教えてくれる。必要あれば目的地の設定だけでなく、宿も手配してくれる。オペレーターに相談しなくても、ネット回線を利用した音声入力も認識度が高まり、我々のような世代には目的地を車に向かって喋るのに緊張するが、「ググる」に慣れた若い世代には普通の事であり、必要な装備だろう。
存在感を上品に主張するV8ターボエンジン
ドアを閉めれば、そこは新型8シリーズ・ワールドである。見慣れたBMWの車内であるが何かが違い、気持ちにゆとりが出てくる。優しく身体全体を包み込むようなシートは高級な柔らかなレザーと相まって、長時間運転しても疲労は感じなく腰痛を持っている人にも良いだろう。
スタートスイッチを押すと4.4リッターV8エンジンは静かに目覚める。最近、エンジンの存在感がモーターのように希薄な車が増えているが、バイエルンのエンジン屋さんはそんな事はしない。
勿論、Mモデルのような音や強い鼓動などにより「エンジンだ!!」とまでいかないが、どの車速でも静かにエンジンが働いている事を伝え、更にエンジンを回していくとサウンドが高まり気分も高揚し、アクセルペダルを更に踏みたくなる。
そのパワーの出方もスムーズで最高出力530psを4輪に適切に伝え、ただスピードだけが、感覚を超えた速さで倍数のように増していく。あまりにスムースで安定しているで、スピードメーターを見ると想像を超えたスピードになっていることが多い。
まるで、ソファーの上でくつろいでいるような乗り心地
新型8シリーズの乗り心地は、走り出す前から良いのは想像していたが、私の想像を超える良さがあった。前:245/35R20 後:275/30R20と、幅が広く大きく重いタイヤを装着。しかし、荒れた路面に対しても不快な突き上げなどなく、少しスピードを出せば、しっかりとした接地感を感じながら滑らかさがある。まるで、ソファーでくつろいでいるかのような快適な乗り心地だった。車を止めて本当にランフラットタイヤを履いているか確かめてしまったくらいだ。
新型8シリーズのハンドリングは、2トンの車重を感じないまま、路面にレールが敷かれているかのようピッタリと安定して走る。ドライバーのストレスは、最小限。カーブが続く道でも、スムーズにM850iは駆け抜ける。
荒れた路面のコーナーでさえも、4論はしっかりと地球を掴み続ける。4WDであるが、その存在さえ気付かせないくらい自然だ。運転する楽しみを高いレベルで安全に提供され、もう駆動方式で善し悪しを言う時代ではないと気付かされた。
M850iは、ジェントルマンが乗る粋なクルマ
昭和時代の輸入車は遠い存在であり、富の象徴であった。平成になり輸入車はメルセデスも含め、車種を拡大しエントリーモデルを増やして日本車との価格差少なくしてきた。輸入車は、憧れから自分のモノとして乗れるようになってきた。
一方の日本車も1000万円を軽く超える車が増えて、輸入車と日本車との垣根がなくなった令和時代である。だが、そんな時代であるものの、M850iはM850iでしか出せない、独特の空気感があり、特別な車であると感じる。この車を運転するには、服装や振る舞いにも気を付けた粋なジェントルマンでないとダメなように感じる。憧れから自分のモノに、M850iはいつか自分がジェントルマンになったなら乗りたい車である。
<レポート:丸山和敏>
BMW 8シリーズ クーペ価格
・840d xDrive クーペ 12,600,000円
・840d xDrive クーペ M Sport 13,860,000円
・M850i xDrive クーペ 17,460,000円
BMW 8シリーズ クーペ燃費、ボディサイズなどスペック
全長x全幅x全高(mm) 4,855x1,900x1,345
ホイールベース(mm) 2,820
トレッド(前/後mm) 1,625/1,640
最小回転半径 (m) 5.2
トランク・ルーム容量(L) 420
定員(名) 4
車両重量 (kg) 1,990
エンジン型式 N63B44D V型8気筒DOHCガソリン
最高出力(kW 〔ps〕 / rpm (EEC)) 390〔530〕/5,500
最大トルク(Nm 〔kgm〕 / rpm (EEC)) 750〔76.5〕/1,800-4,600
燃費 JC08モード(km/L) 9.3
燃費 WLTCモード(km/L) 8.1
駆動方式 4輪駆動
サスペンション 前:ダブル・ウィッシュボーン 後:マルチリンク
トランスミッション 電子油圧制御式8速AT
タイヤ 前:245/35R20 後:275/30R20
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