色々あるMモデルを整理する
先ず「M」モデルには「Mハイ・パフォーマンスモデル(サーキット走行を可能としたスペシャルモデル)」、と「Mパフォーマンスモデル(サーキットで培われた技術で一般道での走行性能を高めたモデル)」がある。
今回、試乗・評価したのは「M440i xDrive」は、「Mパフォーマンスモデル」で、BMWのグループ会社「BMW M GmbH」により、エンジンやサスペンションにレースで培った専用のチューニングを加えられた、高性能でありながら日常での快適性も重視した特別なモデルである。
少々分かりにくいのだが、簡単にまとめると以下の通りだ。
*「M」の次に1ケタの数字が続くのがMハイ・パフォーマンスモデル
*「M」の次に3ケタの数字が続くのがMパフォーマンスモデル
「M社」とはBMW M GmbH(ビーエムダブリュー・エム)のことで、BMWの高性能スポーツモデルの「M」モデルやレース車両、レース関連パーツの研究開発を行い、特別注文・限定モデルなどの企画やドライビングスクールを担当するグループ会社だ。前身はBMW Motor Sports社で、主にモータースポーツ関連の研究開発やレース車両等の生産を担っていた。
3眼カメラなどで、より高度な運転支援を可能とした4シリーズクーペ
新型BMW M440i xDriveには、ハンズ・オフ機能が搭載されている。「ハンズ・オフ機能付き渋滞運転支援機能」とは、高速道路などでの渋滞時に、ハンドルから手を離しても前走車に追従走行する機能で、ドライバーの精神的・肉体的ストレスを軽減して安全な走行を可能とする。
この機能を支えるのは、高性能3眼カメラ&レーダー、および高性能プロセッサー。カメラの数やレーダーなどの数が増えれば増えるほど、情報量が増え、より高度な運転支援が可能となる。3眼カメラが装備されているモデルは、まだ稀な状態。今後、更なる機能進化が期待できるシステムといえる。
この機能を使用する場合、ドライバーは常に前方を注意出来る状態で、周囲の交通状況や環境の状況に応じて直ちにハンドルを操作出来る状態が前提条件になる。
システム作動中は、メーターパネル内に装備されたカメラがドライバーの目線を捉えている。ドライバーの視線が前方から外れると警告を出し、それでも視線が外れているとクルマを停止させる機構が盛り込まれて安全性は確保されている。現時点ではレベル2の段階であり自動運転では無い事を忘れないで欲しい。
また、安全機能・運転支援システム「ドライビング・アシスト・プラス(最先端運転支援システム)」も標準装備されている。
このシステムは「アクティブ・クルーズ・コントロール(ストップ&ゴー機能付)」、「レーンチェンジ・ウォーニング(車線変更警告システム)」、「レーンデパーチャー・ウォーニング(車線逸脱警告システム)」。および衝突回避・被害軽減ブレーキやペダル踏み間違い急発進抑制機能などの安全機能・運転支援の精度と正確さもより高められている。
コネクティッドも進化し続けるBMW
駆け抜ける歓びをスローガンに、優れた走行性能を磨き続けるBMWだが、コネクティッド分野でも先行している。新型BMW M440i xDriveでは、BMWコネクテッド・ドライブ(クルマとITネットワークを繋げてドライバーに情報提供する)やBMWインテリジェント・パーソナル・アシスタント(AIを用いた音声機能や学習機能を持たせたクルマとの通信機能)は進化を続けている。
スマートフォンで事前に自宅などで検索した目的地のナビゲーションへの転送や、iPhoneをクルマのドアにかざすだけでドアロックや解除、エンジンの始動も可能にするなど利便性・操作性を大幅に向上させている。
近い将来の自動運転では、スマートフォンに入力されたスケジュールを基に、予定時間になったらクルマがガレージから出て待機し、乗り込めばその日の目的地間を自動でスケジュール通りに往復することも不可能ではない。自宅のカギや家電品などのON/OFF、公共交通機関、買い物などと合わせてスマートホンで全てを賄うことが出来て便利な世界が待っている。その半面、行動の全てをスマートフォンに知られていて、まるでスマートフォンに監視されているようで怖いのは私だけだろか。
見慣れてくれば、むしろ好印象な縦型キドニーグリル
BMW4シリーズクーペの縦型でより大型化したキドニーグリルには、賛否有る様だが、初対面では写真で見ていた程の違和感は無い。従来のスマートさから存在感のあるデザインへの移行は、最近の傾向から素直に受け入れられるレベルであった。
しかし、BMWのシンボルでもあるキドニーグリルのより大型化(2つの楕円の完全な一体化?)で、BMW≒キドニーのイメージは薄くなっている。中央のBMWオーナメントが無ければ認識しにくい様に感じる。このデザインが市場に出回って、遭遇頻度が多くなれば見慣れて違和感は薄れ、次世代のBMWとして認識されるのであろう。
また、キドニーグリルを縦長に巨大化することで、ノーズからボンネットへの盛り上がりが大きくなり、国内ミニバンなどに見られる様に存在感と威圧感は強くなった。
サイドからリアにかけての造形は、フェンダー周りのプレスラインなど、小細工が無くてスッキリしている。リアもテールゲートに小さなリップのみでスマートさがあり好印象だ。
快適なフロントシートに比べ、もう少し工夫が欲しいリヤシート
新型BMW M440i xDriveのドライビングポジションや操作系は、従来の意図を継承していて違和感は無い。ドライバーシートはコンソールやドアパネルに包まれ、ややタイトな印象を受けるが身体のホールド性は良くリラックスできる。
おぉ、と思ったのが、フロントシートに座ると後方ピラーからシートベルトのステーが伸びて、シートベルトを差し出してくれる。ベルトをバックルに差してドアを閉じるとステーが元に戻りベルトを弛みなく調整くれる機能だ。(何か日本人的な配慮である)
ドアの大きい2ドアクーペでは、フロントの乗員がシートベルトを扱い易い様に、シートにベルトが掛かっていたりして、後席への乗り降り時に邪魔になっていた。これがすっかり解消されていて、後席への乗降性もそれほど困ることは無く、後席からベルトを親切に? 渡してあげることも不要だ。
リアシートの足元は狭くも広くもないのだが、クーペということもあり頭上のスペースがやや狭い。乗車中に圧迫感は無いのだが、左右に揺すられて頭が動くと髪の毛が天井に触る感触がある。
それが嫌で少し頭を下げるとか、シートの少し前方にお尻をずらして不自然な姿勢を強要されるのは残念である。
座面(お尻)を少し窪ませるとか、シートバックをもう少し寝かせれば頭上に余裕が出来てくると思う。また、リアシートのホールド性も乗車定員4名なので太もも部分と背中部分のシート端を少し盛り上げれば向上するのでは無いか?と安易に思ってしまう。
リア乗員の目線が下がると前方が見にくくなるとか、リアシートへの乗降性が悪くなるなどの理由があるのだろうが、長距離はやや厳しい印象で短距離用のシートとして考えれば十分だ。
反時計回りのタコメーターは、慣れ次第?
新型BMW M440i xDriveのメーターパネルは、3シリーズなどと同じくフル液晶化に伴ってスピードメーターとタコメーター(エンジン回転数)が中心に向かうデザインとなっている。
タコメーターが反時計回りに動いて、違和感があるとの声も聞かれた。しかし、ヘッドアップディスプレイ(ドライバー目線のフロントウィンドウ投影)に必要な情報(速度やナビの進行方向など)は提供されていて、クルマが動き出してしまえば殆どメーターパネルを見る事も無い。見慣れてしまえば、それほど気にならないだろう。
コンソールおよびシフトレバー周りのスイッチやiDriveの回転式コントローラーは従来から大きな変化は無く、ステアリングのスイッチも含めて運転時の操作性は良い。
唯一、昨今の紫外線の強さから偏光のドライビンググラスを日常的に愛用する身としては、ヘッドアップディスプレイの文字が見え難くなくなってしまう点が残念でならない。
手応えあるステアリングフィールと、安心感あるタイヤの接地感
新型BMW M440i xDriveには、直列6気筒の3.0LMツインターボエンジンが搭載されている。このエンジンは、小気味の良いアクセルレスポンスで、回転の上昇もスムーズだ。
また、太いエンジントルクも相まって、各ギアの守備範囲が広い。スイートスポットが大きい印象を受けた。ギアチェンジも非常にスムーズ。UP/DOWN共に変速ショックは感じられず、スポーツモードでは必要も無いのについついパドルシフトを使って変速を楽しんでしまう。
新型BMW M440i xDriveは、直進時の自己直進性も良く、路面が荒れやうねりで上下に動きがあっても直進性に影響は無い。ハンドルに手を添えているだけで真直ぐに走ってくれる点は非常に安心感がある。
操舵時には、ややフロントが切れ込む様な動きがあり、思ったラインよりクルマが少し内側に入ってしまう。ハンドルの切り角と動き、重さの一体感が弱く不安になってしまう部分を少し感じた。
しかし、クルマの姿勢は安定していて、何事も起こらずハイペースで安定したドライブを楽しめる。
スポーツモードでは、ハンドルの重さが増して剛性感が向上。動きとハンドル角も一体感があり、ハンドルの切り角が手応えとして感じられ好印象である。
新型BMW M440i xDriveは、コーナリング中のロールは小さく抑えられ、xDrive、アダプティブ・Mサスペンション、Mスポーツ・ディファレンシャルなどの恩恵なのか、道路のうねりや凹凸に対してのサスペンションの追従性が良い。オンザレール感覚で進路を乱されることなくスッーと自然な感じで曲がってくれる。だが、荷重移動を伴った動きが希薄で感じにくくなっているようだ。
ハイスピードでコーナーに進入してもロールは小さく、乗員にも不安感を与えにくい。ドライバーも気持ちの良いスポーティーなコーナリングを楽しめる(リアの住人には身体を支えるものが無いので少し大変)。
思ったより回り込んだコーナーに遭遇しても、リアグリップもしっかりとした接地感が伝わり、安心してハンドルを切り込めて、何事も無かったかの様に通り過ぎてしまう操作性、安定性の良さが光る。
この安定感の高さは、4WDであるxDriveも大きく関係している。xDriveは、常に4輪の走行状況を検知してオーバーステアやアンダーステア等の不安定な挙動を事前に察知し、瞬時に前後アクスルへの駆動トルクを最適に可変配分するインテリジェント4WDシステム。M440i xDriveの500Nmという大トルクを効率よく前後に分配してくれるので、優れたトラクション性能を誇るだけでなく、ドライバーに安心感も与えている。
やや賑やかに感じるリヤシート
新型BMW M440i xDriveの乗心地は、ランフラットの影響か、タイヤ表面の硬さがあり、コツコツとした振動を感じ易く、小さく揺すられる感じも頻度が多い。
ハーシュネス(橋や舗装の継目段差)の様な単体突起での突き上げショックも少し硬さ感じるが、突き上げ量は小さくサスペンションのダンピング(減衰)も良く軽快で悪くない。
スポーツモードでも路面の小さい凸凹をなぞる感じで、やや上下の動きが多くなる。タイヤでのショックの吸収性が弱く、サスペンションも忠実に上下の動きを伝えてくる。もう少し動きを少なくしたフラット感が欲しい。
ノイズに関しては、パターンノイズほとんど聞き取れないが、ロードノイズのレベルがやや大きい。特に路面変化に敏感で音質と音量の変化があり、荒れた路面や舗装の継ぎ目でのショック音も大きい。
特にリアシートでは、トランクスルーと大きなトランクルームの為か、排気音とロードノイズなどが増幅されてうるさく感じてしまう。対してフロントシートはリアシートほどのうるささは耳につかず、逆に心地良いサウンドとなって排気音でも楽しませてくれる。
新型BMW M440i xDriveは、丁度良いサイズ感のボディに余裕のあるトルクフルなエンジン、最先端の運転支援システム搭載で、日常からワインディングまでの道のりを安全・快適に移動。ワインディングの走りも「M」の様に尖ったものでは無く、幾分オブラートに包まれた大人しい感じが心地良い一台である。
<レポート:河野達也>
BMW M440i xDrive装着タイヤ:
・Front:BRIDGESTON TURANZA T005☆ RFT
225/40R19 93Y (Made in Poland)
指定空気圧:270kPa(2名乗車)、300kPa(4名乗車)
・Rear:BRIDGESTON TURANZA T005☆ RFT
255/35R19 96Y (Made in Poland)
指定空気圧:270kPa(2名乗車)、340kPa(4名乗車)
BMW M440i xDrive Coupe価格
・10,25,000円
*参考:BMW 420i M Sport 6,320,000円/スタンダード 5,770,000円
BMW M440i xDrive Coupe燃費、ボディサイズなどスペック
・全長x全幅x全高(mm) 4,775×1,850×1,395
・ホイールベース(mm) 2,850
・トレッド前/後(mm) 1,585/1,590
・最小回転半径(m) 5.7
・トランク・ルーム容量(L) 440
・乗車定員(名) 4
・エンジン型式 3BA-12AR30
・種類 直列6気筒DOHCガソリンMツインターボエンジン
・総排気量(cc) 2,997
・最高出力(kW 〔ps〕 / rpm (EEC)) 285〔387〕/5,800
・最大トルク(Nm 〔kgm〕 / rpm (EEC)) 500〔51.0〕/1,800-5,000
・燃費消費率 JC08モード(km/L)12.4
・燃料消費率WLTCモード(km/L) 11.2
・トランスミッション 8速スポーツAT
・駆動方式 xDrive(4WD)
・サスペンション前/後 ストラット/マルチリンク
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