電気自動車では、世界トップレベルの販売台数を誇るBYD
BYDは、1995年にバッテリーメーカーとして創業した。2003年に中国国営自動車メーカーを買収し、自動車事業に参入した新進気鋭の中国メーカーだ。
そんなBYDが、2023年1月31日、日本参入第1弾モデルとして、CセグメントのBEV(バッテリー電気自動車)であるATTO3を投入した。
続いて第2弾モデルとして、BセグメントのコンパクトBEVであるドルフィンの販売を開始した。BYDは2022年に電気自動車販売台数で、世界ナンバー1にもなっている。
今回BYDの主力ともいえるドルフィンに試乗し、BEVへの本気度をビリビリと痺れるほど感じた。価格も含め、日本勢危うし! と、本気で思えるほどの完成度だった。
ドルフィンは基準車とロングレンジの2グレードを用意
新型BYDドルフィンは、2グレード構成だ(航続距離はWLTCモード)。
モーター出力 | バッテリー容量 | 航続距離 | |
基準車 | 95ps&180Nm | 44.9kWh | 400km |
ロングレンジ | 204ps&310Nm | 58.56kWh | 476km |
上級グレードとなるロングレンジは、基準車に対してモーター出力がグッとパワーアップしている。リチウムイオン電池は、さらに大容量化され、航続距離を少し伸びている。
プラットフォーム(車台)は、EV用に開発されたe-Platform 3.0を採用している。BEVらしく、ボンネットは短くホイールベースが長いのが特徴。そのため、Bセグメントのコンパクトカーながら室内は広い。
新型ドルフィンの駆動用バッテリーは、リン酸鉄リチウムイオンを使用。ブレードバッテリーと呼ばれ、熱安定性が高いため安全性が高い。このブレードバッテリーが床下に設置されている。
ドルフィンのボディサイズはBセグメントとCセグメントの中間
新型ドルフィンの全長は、国産BセグメントとCセグメントの中間くらいの大きさだが、ホイールベースはCセグメントよりやや長い。ホイールベースは、室内スペースに直結する数値。つまり、室内スペースはCセグメント以上の広さをもつ。
室内スペースは広いが、最小回転半径は、Bセグメントのコンパクトカー並み。狭い道が多い日本の道路環境でも使いやすいサイズとなっている。
日本マーケットへの意欲を感じるドルフィンの全高
BYDの本気度を感じた部分が全高だ。日本都市部に多い立体駐車場の全高制限1,550mmに合わせて、全高を20mm低くした。こうした制限のある立体駐車場を使うユーザーを見限っている国産メーカーも多い。
輸入車メーカーであるBYDが、こうした日本国内特有の事情に合わせ全高を変更した点から、日本マーケットへの意欲を感じる。
さらに、新型ドルフィンは、日本に合わせ右ウインカーレバーとした。多くの輸入車は、左ハンドル用そのままなので、ウインカーレバーが国産車の逆となる左にある。こうした部分も、日本のユーザーが違和感なくドルフィンを乗れるようにするための配慮だ。
その他、日本マーケット向けに、日本語音声認識対応のインフォテインメントや誤発進抑制システム、CHAdeMO対応としている。この部分に関しては、日本で売る以上、最低限の変更といえる。
ドルフィンの魅力は予防安全装備や運転支援機能の標準装備
新型ドルフィンの予防安全装備と運転支援機能は充実している。自動ブレーキや車線逸脱防止機能などはもちろんのこと、フロントクロストラフィックブレーキ (FCTB)やリアクロストラフィックブレーキ(RCTB)なども標準装備化されている。予防安全装備は、乗る人すべてに平等でなくてはならない。このクラスでは、オプションまたは設定が無いことが多いので、高く評価できるポイントだ。
さらに、幼児置き去り検知システム(CPD)も標準装備だ。車内にあるセンサーが幼児を検知し、ドアロックし一定時間経過すると、ホーンで警報を発する。
このように、新型ドルフィンの予防安全装備や運転支援機能は、このクラスのモデルでトップクラスの実力を誇っている。どのグレードでも安心して乗れるところが美点だ。国内メーカーも予防安全装備や運転支援機能を車種やグレードにより差を付けずに、積極的に標準装備して欲しいものだ。
クラスを超えた上質さを持つインテリア
新型ドルフィンの外観デザインは、車名の通り海を自由に泳ぐイルカを表現したという。イルカといえば滑らかな曲線で描かれたシルエットをイメージするだろう。だが新型ドルフィンのボディサイドには、シャープなエッジの効いたキャラクターラインが入る。残念ながら、イルカをイメージすることはできなかった。
インテリアデザインは、なかなか個性的だ。ダッシュボードの波を連想させるデザインや、ドアノブはイルカのフィンをモチーフとしており、遊び心が散りばめられている。面白いデザインではあるが、やや好き嫌いがハッキリ出るかもしれない。シンプルで、落ち着いたデザインを好む層には、あまり向かないかもしれない。
驚いたのが、インテリアの質感だ。電動回転式の12.8インチタッチスクリーンを始め、素材の質感がクラスを超えた上質さを得ていた。コスト度外視か?と、思えるほどの高い質感だった。
だが、質感は高いものの、12.8インチタッチスクリーンや小型のTFT LCDマルチメーターは、やや見にくかった。スッキリと見せたいのは理解できるが、アイコンや文字が小さいので、瞬時に情報を理解するのが難しい。
ドルフィンの走りは数値以上のパワフルさ
試乗したのは、新型ドルフィンの基準車だ。出力は95ps&180Nm、航続距離は400km(WLTCモード)という仕様になっている。
試乗前、95ps&180Nmという数値を見たとき、ややアンダーパワーに感じ「元気よく走らないだろう」と想像していた。モーターは瞬時に最大トルクをアウトプットする特性があるとはいえ、180Nmの最大トルクに対し車重は1,520㎏と軽くはないからだ。
ところが、新型ドルフィンは想像以上に力強く走り出した。スペック以上の加速感に驚いた。街中では、スムースでキビキビ、不満を感じることは無い。
では、高速道路ではどうか? 合流もとくに不満は感じないほど、スルスルとスムースに速度を上げる。これで、本当に95ps&180Nmしかないのか? と、疑問に思うほど。
とはいえ、95ps&180Nmというスペックを感じさせるのは、速度が90km/h程度になったときだ。この速度域からの加速は、やはり鈍ってくる。ただ、100km/h程度のクルージングなら、十分な余裕を感じるので安心してよい。
ハンドリングも自然だ。BEVらしい低重心さを生かしたスポーティなタイプと予想したものの、意外に穏やかで違和感はなかった。
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驚愕のソフトな乗り心地
驚愕したのが乗り心地だ。フワンフワンした乗り味で、かなり快適。サスペンションのストロークをしっかりと使い、大小色々な凸凹の上を大きな衝撃も無くスルっと走り抜ける。
これほどの優れた乗り心地ながら、リヤサスペンションはトーションビーム式だ。トーションビーム式特有のゴツゴツとした乗り味をキレイに消している。
フワフワの乗り心地だと、高速カーブや急カーブなどでは、一般的に車体が大きく傾くことがある。しかし、新型ドルフィンでは、そうした傾向もなく無く安定感も高い。
BEVの低重心さを生かしながら、快適な乗り心地と高い操縦安定性を両立している。さらに直進安定性も良好だった。BEVなのでホイールベースがやや長めである点が作用している。
ちなみに、ハイパワー仕様のロングレンジのリヤサスペンションは、トーションビーム式からグレードアップしたマルチリンク式だ。より優れた乗り心地と操縦安定性が期待できる。
<レポート:大岡智彦>
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BYDドルフィン新車 価格
ドルフィン | 3,630,000円 |
ドルフィン ロングレンジ | 4,070,000円 |
BYDドルフィン電費、航続距離、ボディサイドなどスペック
代表グレード | ドルフィン |
全長×全幅×全高 | 4,290mm×1,770mm×1,550mm |
ホイールベース | 2,700mm |
トレッド(前/後) | 1,530mm |
車両重量 | 1,520kg |
フロントモーター型式 | TZ180XSF |
フロントモーター最高出力 | 70kW(95ps)/3,714-14,000rpm |
フロントモーター最大トルク | 180N・m(18.4kgm)/0-3,714rpm |
電費 | 約8.9kWh |
電力用主電池 | リン酸鉄リチウムイオンバッテリー |
駆動方式 | FF(前輪駆動) |
サスペンション | 前:ストラット、後:トーションビーム |
タイヤ 前後 | 205/55 R16 |
最小回転半径 | 5.2m |
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