メルセデス・ベンツSクラス S400d 4マチック試乗記・評価 約1,300万円だけど、お買い得? その理由は?
全車4マチックが導入された新型メルセデス・ベンツSクラス
メルセデス・ベンツのフラッグシップであり、いつの時代も世界中のVIPを魅了し続けてきたのが、フルサイズのプレミアムセダン、「Sクラス」である。
その最新モデルは、2020年9月に初めてデジタルワールドプレミアを行い、日本では2021年1月28日に販売を開始した。
先代が登場したのは、2013年だから8年ぶりのモデルチェンジだ。70年の歴史を誇るSクラスの最新モデルは、第7世代でタイプW223を名乗っている。
日本仕様として、まず導入されたのは、2機種のエンジンと2つのボディだ。パワーユニットは3.0Lの直列6気筒DOHCターボで、S400dはネーミングから分かるように直噴のディーゼルターボを搭載する。
S500は、ガソリンのターボにマイルドハイブリッドを組み合わせた。トランスミッションは電子制御9速ATだけの設定だ。
それぞれに、標準ボディとホイールベースを110㎜延ばしたロングボディが用意されている。
駆動方式は、後輪駆動のFRではなく、全車4輪駆動の4マチックだ。
700Nm! 超大トルクを発揮する3.0Lディーゼルターボ
ステアリングを握ったのは、2926ccの直列6気筒DOHCディーゼルターボを積む標準ボディのS400d 4マチックだった。S400は、4.0L相当の実力を持つエンジンを積むSクラスという意味だ。
S400dの最高出力は243kW(330ps)/3600〜4200rpm、最大トルクは700N・m(71.4kg-m)/1200~3200rpmを発生する。
ちなみにS500は最高出力、320kW(435ps)/6100rpm、最大トルク520N・m(53,0kg-m)/1800~5800rpmと、馬力では勝るものの最大18.4kg-mも低い。
格納式ドアハンドルを採用するなど、徹底して空気抵抗を低減
久しぶりにステアリングを握るメルセデス・ベンツSクラスのセダンは、堂々たる姿態だった。
標準ボディでも全長は5180㎜もあり、ホイールベースは3105㎜だ。試乗したのはAMGラインだったため、全長はさらに30㎜長くなっている。全幅は1920㎜と、かなり広い。
エクステリアは、先代の面影を残しているが、さらに伸びやかに、エレガントに生まれ変わった。フロントマスクは凛々しいデザインで、DLP(デジタル・ライト・プロセッシング)と呼ぶ技術を使って照射の精度を大幅に高めたLEDヘッドライトが目を引く。
リアは、少しトランクに厚みを持たせた。シンプルだが、切れ長のリアコンビネーションランプも美しい。
メルセデス・ベンツSクラスのボディは、フラッシュサーフェスを徹底している。ヨーロッパ仕様は、空気抵抗係数Cd=0.22を達成した。当然、空気抵抗が減れば燃費も向上する。
もうひとつ注目したいのは、初めて格納式のドアハンドルを採用したことだ。止まっているときはフラットだが、キーを持って近づくと、自動的にドアハンドルがせり上がってくる。
タッチスクリーンに機能を集約。徹底してスイッチ類を廃したインテリア
メルセデス・ベンツSクラスのインテリアは、とくにインパネはデザインだけでなく機能も大きく変わった。ドライバーの前にはタコメーターとスピードメーターを並べた立体的な3Dコックピットディスプレイ(オプション装備)があり、中央の有機ELディスプレイは12.8インチの大型スクリーンだ。
驚かされたのは、強い存在感を放っていたコマンドコントローラーやアナログ時計が取り去られたことである。
また、伝統的にドライバーの前にあったヘッドライトの操作スイッチがドアに移動していたのも驚きだ。
メルセデス・ベンツSクラスのキャビンは前席だけでなく後席も満足できる広さと快適性を備えている。
試乗車は、レザーエクスクルーシブバッケージだったこともあり、上質なナッパレザーシートを装備していた。
シートヒーター&ベンチレーターだけでなく、ステアリングヒーターやアームレストヒーターなど、至れり尽くせりだ。
ドライバーズシートは大きく、座り心地、フィット感ともに素晴らしい仕上がりである。後席も膝下には十分な余裕があり、ゆったりと寛ぐことができた。4人でのドライブなら、快適性はかなり高いだろう。
走り出すと大きなボディながら、小さく感じる運転のしやすさ
メルセデス・ベンツSクラスのボディは大柄だが、駐車場からクルマを出すまでの短い間でも、すぐに慣れてきた。
走らせてみると、それほど大きさを感じさせない。さすがに狭い路地でのすれ違いでは気を遣うが、コツをつかんでしまえば持て余すことはなかった。
サスペンションは、フロントが4リンク、リアはマルチリンクで、これにエアサスペンションと電子制御ダンパーを組み合わせている。
走り味は、先代より上質感を増し、洗練度の高い走りを披露した。電動パワーステアリングは、操舵の初期から狙ったラインに正確に乗せることが可能だ。軽く、なめらかな操舵フィールに加え、低速から高速域まで優しい乗り心地を実現している。
自慢のエアサスペンションはしなやかさに動き、コントローラブルだ。風が強く吹いても舵は落ち着いているし、動きもリニアでありながら、気忙しいところがない。
感激する加速フィール
メルセデス・ベンツSクラスは、コーナリングなどでの素直なハンドリングも魅力のひとつだ。
試乗したのがAMGラインだったため、スポーティな、軽やかな身のこなしを披露した。前後異サイズの20インチタイヤは強大なグリップ性能を見せつける。
ただし、荒れた路面ではちょっと硬質と感じるシーンがあった。乗り心地を気にする人は、標準の18インチタイヤかロングボディを選んだほうがいいだろう。
ターボを装着した直列6気筒DOHCディーゼルエンジンは、低回転域から過給効果を実感できる。アイドリングのちょっと上からモリモリと力強いパワーが湧き上がり、豊かなトルク特性もチャームポイントだ。
車重は2180kgもあるが、その気になれば豪快な加速を見せつける。アクセルを踏み込むと難なく法定速度に達し、追い越しも俊敏にこなす。もちろん、速い流れをリードすることもたやすい。3000回転あたりまでの加速フィールは感激モノだ。
もっともコスパ高いS400d
また、二重ガラスを採用するなど、遮音対策を徹底しているため、クルージング時はディーゼルエンジンだが、ガソリン車並みに静かだった。
100km/h巡航時の回転数は9速ギアで約1300回転と驚くほど静かだ。直列6気筒だから滑らかさも際立っている。
だが、アイドリング時は、ディーゼルエンジン特有のガラガラ音が聞こえるし、高速域ではノイズに加え、振動も出てくる。だが、加速したときに快音を放ち、気持ちいい。9速ATは、なめらかな変速フィールが印象的だ。
最新のメルセデス・ベンツSクラスは、常に自然体の走りを披露し、どの席に座っても疲れを感じさせなかった。
S400dの価格は、1293万円からのスタートとなる。だが、装備内容と走りの実力を考えると、かなり買い得だ。S500との価格差は82万円もあるから、差額を使って魅力的なオプションを加えれば、さらに魅力を増すだろう。S400dは、コストパフォーマンスがSクラスの中で飛び抜けて高い。
<レポート:片岡英明>
メルセデス・ベンツSクラス価格
S 400d 4マチック 12,930,000円
S 500 4マチック 13,750,000円
S 400d 4マチックロング 16,780,000円
S 500 4マチックロング 17,240,000円
メルセデス・ベンツSクラス、燃費、ボディサイズなどスペック
グレード:S 400d 4マチック(ディーゼルエンジン)
全長x全幅x全高(mm) 5,180〔5,210〕x1,920〔1,930〕x1,505 〔〕はAMGライン
ホイールベース(mm) 3,105
定員(名) 5
エンジン型式 OM656
エンジン DOHC直列6気筒ターボチャージャー付ディーゼルエンジン
総排気量(cc) 2,924
最高出力(kw[ps]/rep(EEC)) 243[330]/ 3,600~4,200
最大トルク(Nm[kgm]/rpm(EEC)) 700[71.4]/ 1,200~3,200
燃料消費率JC08モード/WTLCモード(国土交通省審査値)(km/ℓ)14.3/12.5
駆動方式 4輪駆動(4WD)
最小回転半径(m) 5.4
トランスミッション 電子制御9速AT
タイヤ F:255/50R18〔255/40R20〕 R:255/50R18〔285/35R20〕 〔〕AMGライン
グレード:S 500 4マチック ロング(ガソリンエンジン)
全長x全幅x全高(mm) 5,290〔5,320〕x1,920〔1,930〕x1,505 〔〕はAMGライン
ホイールベース(mm) 3,215
定員(名) 5
エンジン型式 M256
エンジン DOHC直列6気筒ターボチャージャー付ガソリンエンジン
総排気量(cc) 2,996
最高出力(kw[ps]/rep(EEC)) 320[435]/ 6,100
最大トルク(Nm[kgm]/rpm(EEC)) 520[53.0]/ 1,800~5,800
燃料消費率JC08モード/WTLCモード(国土交通省審査値)(km/ℓ)12.4/11.0
・ハイブリッドモジュール
電動機型式 EM0014
電動機種類 交流同期電動機
駆動用電動機の定格出力/最高馬力(kw) 10 / 16
トルク(Nm(kgf・m)) 250(25.5)
蓄電池種類 リチウムイオンバッテリー
駆動方式 4輪駆動(4WD)
最小回転半径(m) 5.5
トランスミッション 電子制御9速AT
タイヤ F:255/50R18〔255/40R20〕 R:255/50R18〔285/35R20〕 〔〕AMGライン
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