Sクラスに似たデザインテイストをもつ新型Cクラス
2014年に登場したW205系メルセデス・ベンツCクラスは日本でも好調な販売を記録し、10万台以上がユーザーの手に渡っている。
そして2021年6月、第5世代のW206系Cクラスが日本のファンの前に姿を現した。全長が80㎜延びたこともあり、エクステリアは先代より伸びやかなフォルムだ。上級のSクラスと似たデザインテイストにまとめられ、迫力を増している。AMGラインは、風格を感じさせるスターパターングリルを採用し、リアも押しの強いデザインとした。
インテリアもSクラスと似た雰囲気を醸し出している。ドライバーの前に12.3インチの大型ディスプレイを配し、センターコンソールには11.9インチのディスプレイをドライバー側に向けて配置した。
エアアウトレットやスイッチなどは新デザインになり、新世代のエレクトニックキーも採用する。スポーティ度を高めたAMGラインは、ナッパレザー調のARTICOダッシュボードに加え、シートとステアリングも専用だ。
先代より、より力強くなったマイルドハイブリッド
試乗会でステアリングを握ったのは、直列4気筒DOHC直噴ターボのガソリンエンジンに、マイルドハイブリッドシステムを組み合わせたC200アバンギャルドのAMGラインである。
インテグレーテッド・スターター・ジェネレーター( ISG)を採用したマイルドハイブリッドだが、先代はオルタネーターを駆動モーターとしてベルトを駆動するシステムだった。
新型Cクラスは、エンジンとトランスミッションの間にジェネレーターモーターを組み込んだ。先代より大きなパワーとトルクを出し、エンジンをアシストできるのが強みである。
新設計のM254型直噴ターボは1494ccの排気量で、最高出力150kW(204ps)/5800〜6100rpm、最大トルク300N・m(30.6kg-m)/1800〜4000rpmのスペックだ。これに、モーターの電動アシストが15kW/200N・m(20ps/20.4kg-m)加わる。
1.5Lとは思えない鋭い出発力
48Vの電装システムとリチウムイオン電池は、大きな効果を発揮した。ノーマルモードでも冴えた加速を披露する。モーターの後押しによってスタート直後から鋭い瞬発力と厚みのあるトルクを発生。そこから先のターボによるパンチ力も力強さを増していた。
エンジンの排気量は1.5Lだし、車両重量も1700kgと軽くはない。だが、軽やかな加速を見せ、実用域のトルク感も豊かだ。
また、高回転の伸び感も向上している。その気になれば6000回転まで無理なく回り、気持ちいい。
もちろん、遮音対策を徹底しているから静粛性も高いレベルにある。ただし、高回転域で発生するこもり音だけは気になった。クロスレシオの9速ATも滑らかな変速フィールだ。
低速では硬さを感じる乗り心地
サスペンションはフロントが4リンク、リアはマルチリンクで、Sクラスに導入された4輪操舵のリアアクスルステアリングをオプションで用意している60km/hを境に同位相と逆位相を切り換え、操舵する角度は最大2.5度だ。車線変更などを行ったときの走行安定性を高めただけでなく小回りも利くようになった。
ちなみに、試乗車はAMGラインだったのでタイヤがフロントは225/45R18、リアは245/40R18になり、スポーツサスペンションも装着されている。
そのため、さすがに低速では乗り心地に硬さを感じた。しなやかなフィーリングに変わるのは速度が50km/hを超えてからだ。
速度が上がると舐めるような接地フィールに
ハンドリングはメルセデス・ベンツ車とは思えないくらいスポーティな走り味である。ステアリングをちょっと切り込んだだけで、クルマが狙った方向に向きを変え、荒れた路面でも舐めるように優れた接地フィールを見せた。
リアアクスルステアリングの効果は絶大だ。タイトコーナーの進入でも軽やかな身のこなしを見せ、優れたライントレース能力を披露する。ファットなタイヤと相まってグリップ性能は高い。
ワインディングロードを意のままに走りたい人には、AMGラインがいいだろう。シャシー性能の高さに加え、サスペンションの動きもいいから一体感があり、連続するコーナーをリズミカルに走りきることができる。
ちょっと乗り心地は硬質だ。だが、スピードを上げていくとしなやかな動きに変わっていく。ブレーキはドリルドベンチレーテッドディスクと4ポットの対向キャリパーの組み合わせだから、止まる性能も一級の実力である。
スポーツカーもカモれる俊足を誇る2.0Lディーゼルエンジン
後日、日本に上陸したばかりのC200dアバンギャルドのステアリングを握る機会に恵まれた。搭載するのは1993ccのコモンレール式直列4気筒DOHC直噴ディーゼルターボだ。
最高出力は147kW(200ps)/4200rpm、最大トルクは440N・m(44.9kg-m)/1800〜2800rpmと公表されている。駆動用モーターの出力はM254型エンジンと同じ15kW/200N・m(20ps/20.4kg-m)だ。トランスミッションも9速ATの組み合わせになる。
ガソリンエンジンと変わらない滑らかなパワーフィールで、アイドリングの上の回転からトルクが素直に立ち上がる。実用域のトルクはガソリンエンジンの4.0Lクラス並みだから軽やかな加速を見せ、しかも力強い。モーターに加え、ターボも低回転から過給するから、その気になればスポーツカーをカモれるほどの俊足を披露した。
また、振動やノイズも上手に封じている。クルージング時の静粛性は高く、ディーゼルターボと聞かされていなければガソリンエンジン搭載車と思ってしまう人もいるはずだ。
タイヤは225/50R17サイズで、サスペンションも最適にチューニングした。走りは気ぜわしいところがなく、素直にクルマが向きを変える。ディーゼルターボの重さも上質な走りに一役買っているようで、乗り心地もいい。日本はディーゼル車の燃料となる軽油も安いので、長距離を走る人にはおすすめだ。
ちなみに、最新のCクラスはキャビンも不満のない広さを確保している。先代から25㎜長くなり、2865㎜となったホイールベースの延びた分は後席の居住スペースに当てられた。ヘッドクリアランスは13㎜、足元空間は21㎜増えているので快適に座れる。大きな進化を遂げ、走りにおいても快適性においても魅力を増したのが新型Cクラスだ。
<レポート:片岡英明>
メルセデス・ベンツCクラス価格
■セダン
・C 200 アバンギャルド(MP:202201) 6,540,000円
・C 200 アバンギャルド(MP:202202) 6,510,000円
・C 200 4MATIC(MP:202202) 6,810,000円
・C 220 d アバンギャルド(MP:202201) 6,820,000円
・C 220 d アバンギャルド(MP:202202) 6,790,000円
・C 350 e アバンギャルド 未定
■ステーションワゴン
・C 200 アバンギャルド(MP:202202) 6,770,000円
・C 220 d アバンギャルド(MP:202202) 7,050,000円
メルセデス・ベンツCクラス燃費、ボディサイズなどスペック
代表グレード:C200アバンギャルド
・ホイールベース 2865mm
・トレッド前/後 1590/1575mm
・車両車重 1690kg
・最小回転半径 5.3m
・駆動方式:後輪駆動
・エンジン最高出力 204PS(150kW)/5800-6100rpm
・エンジン最大トルク 300N・m(30.6kgf・m)/1800-4000rpm
・モーター最高出力 15kW
・モーター最大トルク 200N・m(20.4kgf・m)
・燃費 14.5km/L(WLTCモード)
・トランスミッション 9速AT
・タイヤサイズ前:後 225/45R18:245/40R18
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