ロードスター初の改良
ロータリーエンジンとともに世界をアッと驚かせた20世紀のマツダの偉業、それがロードスターだ。フルオープンのライトウエイト・スポーツカーが絶滅の危機に瀕していた世紀末、彗星の如く現れ、センセーションを巻き起こした。
以来、正常進化を続け、2015年春に4代目がデビューしている。そして翌2016年12月にはリトラクタブル・ファストバックと呼ぶ電動格納式ルーフを採用したロードスターRFを投入した。この4代目ロードスターは、ヨーロッパ車のように定期的に商品改良を行っている。2018年6月に、初めて大がかりな改良を行い、走りの実力を引き上げた。
外観デザインに変更は無し。オシャレなカラーの特別仕様車「Caramel Top」を設定
ロードスターRFのエクステリア変更はない。デザイナー出身の主査、中山雅氏がデザインに自信を持っているし、人気も高いからだ。だから、パワーユニットを中心に、メカニズムを進化させている。
ただし、フッァション性を高めるために、カラーコーディネーションを深化させた。特別仕様車「Caramel Top」では、ソフトトップに新色のブラウンを設定し、インテリアカラーにはエレガントなスポーツタンを追加している。
機能装備としては、ステアリングに奥行きを調節できるテレスコピック機構を追加した。後方に30㎜調整できるので、大柄な人でもベストポジションをとって運転することが可能だ。ドライビングポジションはピタリと決まり、ペダルも操作しやすかった。
大幅パワーアップしたロードスターRFの2.0Lエンジン
進化の度合いが大きいのは、ロードスターRFである。ソフトトップのロードスターと比べると、今までは少し薄味と感じる部分があった。とくに2.0LのPE-VRP型直列4気筒DOHCエンジンは、1.5LのP5-VPR型DOHCと比べると高回転の刺激性が薄いように感じる。
当然、開発陣も気になっていたのだろう。吸気系と排気系はもちろん、シリンダーヘッドやピストン、コンロッドなどの回転系パーツ、そしてマフラーまで、多くの個所に手を入れ、徹底してチューニングした。
最高出力は、従来の116kW(158ps)/6000rpmから135kW(184ps)/7000rpmに26psもパワーアップ。最大トルクも200Nm(20.4kg-m)/4600rpmから (205Nm(20.9kg-m)/4000rpmに増強されている。最高出力の発生回転数は、6000回転から7000回転に高められ、回転限界は6800回転から7500回転と、700回転も引き上げられた。
また、最大トルクの発生回転は600回転も引き下げられたから、実用域で扱いやすくなっているのだ。
旧型と比較すると、もはや圧倒的ともいえる高回転でのパンチ力
伊豆にある全長5kmのクローズドコースに、量産前の最終プロトタイプと従来型ロードスターRFを持ち込み、交互に走って両車の違いをチェックしてみた。
最初にステアリングを握ったのは、従来型ロードスターRFの6速AT車だ。従来型も元気な走りを見せたが、乗り換えるとすぐに大きな差があることに気がつく。
2000回転以下のゾーンでは、ほとんど違いを感じ取れない。が、そこから上はパンチがあり、トルクが気持ちよく盛り上がる。従来型の弱点だった3000回転あたりでのトルクの落ち込みがなくなり、なめらかな加速を披露した。
差をつけるのは、上り坂の走りだ。勾配がきついと、キックダウンさせても加速に物足りなさを感じる場面があった。が、新型は制御もよくなっているからストレスなく登っていく。しかも、フラットなトルク特性だから扱いやすい。
アクセルをゆっくりと開いても、ロードスターRFは軽やかに加速する。特筆したいのは、高回転域のパワー感と伸び感だ。今までは、5500回転あたりでトルクが萎え、パンチがなくなった。新型はATでも6500回転まで元気に回る。
トヨタ86よりパワーが無いが・・・
6速MT車は、さらに気持ちいい加速を見せ、高回転を使っての走りが楽しい。3000回転から少しの領域でトルクの谷がなくなり、パワーとトルクがスッと盛り上がる。高回転の伸びも違う。従来型も6000回転ちょっと上まではストレスなく回った。が、新型は7000回転まで無理なく実用になり、その気になればその上のゾーンも使える。
当然、加速も冴え、全開加速ではバックレストに体を押し付けられた。トヨタ86と比べるとパワーは足りない、という人もいるだろう。だが、車重は140kgも軽いから、パワーウエイトレシオはロードスターRFのほうがいいのだ。オープンであることを考えると、動力性能に不満はない。また、変速フィールも素晴らしいから、積極的にギアを変えてしまう。2速、3速の守備範囲が広がったこともあり、ワインディングロードの走りは楽しい。
ロードスターRFのエンジン音も変わった。音圧を高めるチューニングにより、重低音を強調した心地よいエンジンサウンドになっているのだ。高回転まで回したときの雑味のある音色が快音を放つようになった。ただし、「官能的」のレベルまでは今一歩だ。まだ、乾いた気持ちいい音色にはなっていない。
GT的なフットワークから、キレのあるスポーツカーのハンドリングになった
シャシー、そしてダブルウイッシュボーンとマルチリンクのサスペンションは従来型を受け継いだ。変わっていないというコメントだが、実際にステアリングを握ってみると、明らかに乗り味が違う。ハンドリングはより正確になり、足の動きもよくなっていると感じるのである。
これはマツダが唱える「躍度」というものなのだろうか!? 人馬一体、意のままの走りは、運転するのが楽しいのだ。電動パワーステアリングは精緻な動きに磨きがかけられ、今まで以上に狙ったラインに乗せやすくなった。GT的な味わいが薄まり、軽やかな身のこなしになったから好印象だ。
スポーツカーであっても予防安全装備は重要。歩行者検知式自動ブレーキの標準装備化は高評価
また、全機種「サポカーS・ワイド」対応としたこともニュースである。スポーツカーは緊急自動ブレーキを付けられない、と言い訳をするメーカーが多いなか、マツダの取り組み姿勢は高く評価できるものだ。
背が低いためクルーズコントロールは全車速追従式ではないが、大きな進歩である。6速AT車は誤発進抑制機能付きだ。走りを進化させただけでなく先進安全装備も充実させた。最新のロードスターは、販売価格が少し高くなったが、魅力は倍増している。
<レポート:片岡英明>
マツダ ロードスターRF価格
・S 6MT 3,369,600円/AT 3,396,600円
・VS 6MT 3,650,400円/AT 3,677,400円
・RS 6MT 3,812,400円
マツダ ロードスターRF燃費、ボディサイズ、スペックなど
■マツダ ロードスターRF RS 6MT
全長×全幅×全高 mm 3,915×1,735×1,245
室内寸法(長さ×幅×高さ) mm 940×1,425×1,040
ホイールベース mm 2,310
トレッド 前/後 mm 1,495/1,505
最低地上高 mm 145
車両重量 kg 1,100
ステアリング ラック&ピニオン式
サスペンション 前/後 ダブルウィッシュボーン式/マルチリンク式
ブレーキ 前/後 ベンチレーテッドディスク/ディスク
エンジン 型式 PE-VPR[RS]型 水冷直列4気筒DOHC16バルブ
総排気量L 1.997
ボア×ストローク mm 83.5×91.2
圧縮比 13.0
最高出力 kW〈PS〉/rpm 135〈184〉/7,000
最大トルク N・m〈kgf・m〉/rpm 205〈20.9〉/4,000
燃料供給装置 筒内直接噴射(DI)
使用燃料・タンク容量L 無鉛プレミアムガソリン 45
WLTCモード燃費 km/L 15.8
最小回転半径m 4.7
トランスミッションタイプ 6MT
価格 3,812,400円
レポート 片岡英明
写真 編集部
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