奇策? 同じセグメントに2車種目となるMX-30を投入!
マツダ車は、こだわりが強く個性的なモデルが多い。そんな中でも、かなりクセが凄いのが新型マツダMX-30だ。
マツダMX-30は、すでに欧州ではEV(電気自動車)がリリースされている。国内ではまだガソリン車だけだが、2021年1月に日本でも発売される予定だ。
この新型MX-30、ベースとなっているのは、すでに発売済みのCX-30。基本骨格などは、CX-30と共通。ところが、MX-30はベース車となるCX-30のイメージをまったく感じさせない異なるモデルとなっているのが特徴だ。両車共に、CセグメントSUVと呼ばれるカテゴリーに属する。
MX-30とCX-30が、まったく異なるモデルに見えるという点はさておき、そもそも同じセグメントに2車種を投入するという戦略自体が異例。トヨタでさえ、チャネルによる専売制を廃止。各ディーラー全車種扱いになり、姉妹車を減らすなど車種を整理し効率を上げ、より利益を出そうとしている。
ところが、販売台数や販売店数では圧倒的に少ないマツダが、トヨタとは真逆の戦略をとっていることになる。同じセグメントに2台の姉妹車、こうした戦略は、カニバリ(共食い)が発生し、効率が悪くなるとされてきた。まさに、マツダは奇策ともいえる戦略に出たのだ。
こだわり系ライフスタイルをもつ新規顧客がターゲット
とはいえ、マツダもカニバリが発生は織り込み済み。それでも、あえて挑戦する理由があった。それは、今までとは異なる新規顧客の獲得だ。現在のマツダ車は、優れたデザイン性や走行性能などで、多くのクルマ好きを中心に人気を得ているメーカーだ。こうした顧客はとても重要。
しかし、クルマ好きは数が少ない。マツダが自動車メーカーとして、更なる成長をするためには、クルマはそれほど好きではない、より一般的な顧客に売っていくしかない。ただ、一般的な顧客層に売っていくの至難の業。トヨタのように圧倒的な資金力でCMなどを絨毯爆撃ように広くうてるのなら勝機もある。しかし、マツダにトヨタほどの資金力は無い。
そこで、マツダが目に付けたのは、トレンドに左右されず自分なりの選択眼を持ち、こだわり系ライフスタイルをもつ顧客だ。感性に優れた顧客ともいえる。こうした顧客はニッチでもあるが、インフルエンサーにもなる。「マツダ車っていいらしいよ」という、口コミが広まれば大きな中長期的には大きなメリットになる。
こうしたこともあり、CX-30の月間販売目標が2,500台なのに対して、MX-30の月間販売目標は1,000台と控えめだ。
キャラが濃い! 好き嫌いが明確に出るデザイン
マツダMX-30は「わたしらしく生きる」をコンセプトに、クルマとともに自然体で自分らしい時間を過ごしていただくことを目指し、創造的な時間と空間を提案する、コンパクトSUVとして開発された。
MX-30にもマツダのデザインテーマである「魂動デザイン」が採用されている。ところが、姉妹車関係にあるCX-30とは、まったく異なるデザインとなった。CX-30は、やや睨みの効いたスッキリとしたデザイン精悍さがあり、万人受けしやすいデザインでもある。
ところが、MX-30はとにかく個性的。CX-30のようなピンと張った緊張感はなく、良い意味でかなりユルイデザインとなった。
マツダは親しみやすいデザインと言うが、むしろゆるキャラ的な愛嬌さえ感じる。MX-30は、2020-2021日本カー・オブ・ザ・イヤーのデザイン・カー・オブ・ザ・イヤーを受賞。しかし、選考委員の中でもかなり好き嫌いが明確に分かれる傾向があるほどキャラが濃い。そういう意味では、マツダの狙い通りともいえる。
肩の力が抜ける空間をもつMX-30
デザインだけでなく、MX-30には観音扉であるフリースタイルドアが採用されている。このドアも個性的ではあるものの、後席に座っていると、フロントドアを開けてからでないと降りられないなど、使い勝手は良いとはいえない。また、Cピラーの傾斜が強いこともあり、リヤシートに座ると頭のまわりがタイトに感じる。
リヤシートの空間や使い勝手面は少々微妙なのだが、それを補って余りあるのがフロントシートの空間だ。こちらも好みにより評価が異なるが、バキバキしたスポーツ系モデルのような緊張感は無い。
MX-30のフロントシートは、開放感があり癒しの空間的なのだ。肩の力を抜いて、のんびりと走りたくなる。気持ちが少し穏やかになる感覚に包まれる。コンソールトレイには、クルマでは珍しいコルク材が用いられていて、こうした素材感も癒し効果があるのだろう。
フツーなパワーユニットだが、流して走ると気持ちよい
パワーユニットも、こうしたのんびりゆったりとした走りをアシストしている。搭載されたエンジンは、2.0L直4ガソリンエンジン。このエンジンに、小さなモーターを組み合わせた24Vのマイルドハイブリッドシステムが採用されている。このマイルドハイブリッドシステムは、e-SKYACTIV Gと呼ばれ、エンジン出力は156ps&199Nm、モーター出力は6.9ps&49Nmだ。
スペック的には、ごく普通なパワーユニット。とくに、目を見張るような技術が使われているわけでもない。ところが、ゆったりとスムースな運転をすると、気持ちよいエンジンであることあ分かる。緩やかにアクセルを踏むと、小さな力だが瞬時に立ち上がるモーターのトルクより、アクセルレスポンスがよさを感じる。これが気持ちよい。普通に流している時でも十分に感じ取れる気持ちよさだ。
基本的にマイルドハイブリッドなので、絶対的なパワーは標準的。アクセルを全開にして高回転域まで回すと、車内は少々賑やかになる。通常走行時では、静粛性も高く快適だ。アクセルを全開にして走るような走りは、MX-30には似合わない。
街中のカーブでも気持ちよさを感じる穏やかハンドリグ
MX-30の乗り心地は、なかなか快適だった。ある程度速度が上がるとフラット感が増し、スルスルと滑らかに走り抜ける。CX-30で感じたリヤサスペンションのゴツゴツ感もマイルドになっていた。まったりゆったり乗れる。
ハンドリグ面でもキャラが立っている。ステアリング操作に対するクルマの動きは穏やかだ。だが、マツダ車らしく芯があるというか、キッチリ感は失っていない。動きは穏やかだが、しっかり正確にクルマが曲がっていく。
ガンガン峠を走り抜けるのに向くテイストではないが、街中にあるちょっとしたカーブでも速度を問わず気持ちよい。ややクイック目のハンドリグをもつCX-30とは、しっかりとキャラ分けができている。
のりびり走れば気分転換できる癒し系
ただ、MX-30はパワーユニットが2.0Lマイルドハイブリッドしかないのが残念な点だ。EVがいずれ登場するとはいえ、もう少し選択肢があってもいい。ゆったりしたMX-30のキャラなら、1.8Lのディーゼルもマッチしそうだ。
今、コロナ禍で、何かとイライラしたりと、何かと精神的なダメージが多くなっている。それはそれで仕方のないことで、我慢が必要だ。
でも、我慢ばかりでは、いつか爆発するかもしれない。そんなとき、MX-30のように肩の力を抜いて、のんびり気持ちよく走れるクルマで、ちょっと気分転換。少し気持ちが癒される。マツダMX-30は、そんなクルマかも、と思えた試乗だった。
<レポート:大岡智彦>
マツダMX-30価格
・MX-30 FF 2,420,000円/4WD FF 2,656,500円
・MX-30 100周年特別記念車 FF 3,157,000円/4WD 3,393,500円
マツダMX-30燃費、ボディサイズなどスペック
全長×全幅×全高 4,395×1,795×1,550mm
ホイールベース 2,655mm
トレッド前:後 1,565mm
最低地上高 180mm
車両重量 1,460kg
エンジン 直列4気筒DOHC+マイルドハイブリッド
排気量 1,997cc
最高出力 156ps(115kW)/6000rpm
最大トルク 199Nm(20.3㎏f-m)/4000rpm
モーター型式 MJ型
最高出力:6.9ps(5.1kW)/1800rpm
最大トルク:49Nm(5.0㎏f-m)/100rpm
WLTCモード燃費 15.6㎞/L
最小回転半径 5.3m
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