気持ちの良い走りとCO2減を両立するPHEV
世界初の量産EV(電気自動車)となるi-MiEVを送り出した三菱自動車は、電動車に熱心な取り組みを見せている。クロスオーバーSUVのアウトランダーには、時代に先駆けてPHEV(プラグインハイブリッド)を設定した。
エンジンにモーターを組み合わせたシリーズ式ハイブリッドシステムを採用し、負荷があまりかからない領域はモーターで走行する。そして電気が少なくなってくると発電を行い、高速走行はエンジンを主役として使い、豪快に走るのだ。
このハイブリッドシステムに充電ポートを追加し、電池容量を増やして家庭などで充電できるようにしたのがPHEVである。EVの快適性と内燃機関の利便性の良さを併せ持ち、航続距離も長い。駐車しているときに充電を行い、満充電なら40km前後はモーターによる走行が可能だ。
発電にエンジンの力を使う機会が大幅に減るから燃費は向上する。C2(二酸化炭素)排出量を減らせるから地球に優しいのだ。
モーターによる気持ちいい加速と驚異的に静かなEVの魅力に加え、長い航続距離による安心感が得られるのがPHEVなのである。アウトランダーはPHEVの販売比率が大幅に増えたから2020年10月にガソリン車をラインアップから外した。
大幅なデザイン変更となった外観デザイン
そして12月には、弟分のエクリプスクロスのマイナーチェンジを行い、このときに待望のPHEVを追加している。
エクリプスクロスは、クーペ風のスタイリッシュな4ドアボディをまとった個性派のクロスオーバーSUVだ。初めて化粧直しを行い、フロントマスクを変えるとともに、切れ長のLEDデイタイムランニングライトを採用。
三菱のデザインアイコンであるダイナミックシールドも、かなり洗練されてきて、迫力だけでなくスタイリッシュさも手に入れている。
リアも2分割リアウインドウを廃止して視界のいいハッチゲートに改めている。変更前のモデルとは、まったく異なる外観になった。
57.3kmをEV走行可能
パワーユニットは、1.5Lの直列4気筒DOHC直噴ターボに8速スポーツモード付きCVTの他、待ちに待ったPHEVが加わっている。これに伴い、ディーゼル車が廃止されている。エクリプスクロスPHEVのメカニズムは、最新のアウトランダーPHEVと同じものだ。
心臓は2.4Lの直列4気筒DOHCエンジンで、これに2つのモーターを組み合わせた。エンジンの最高出力は94kW(128ps)/4500rpm、最大トルク199N・m(20.3kg-m)/4500rpmと、それなりの動力性能にとどまる。
だが、これにフロントモーター60kW/137N・m(82ps/14.0kg-m)とリアモーター70kW/195N・m(95ps/19.9kg-mが加わるのだからパワフルだ。しかも、モーターはアクセルを踏み込んだ瞬間からパワーとトルクが一気に湧き上がる。
リチウムイオン電池は13.8kWhの容量で、EV航続距離はアウトランダーPHEVに迫る57.3km(WLTCモード)を達成した。ハイブリッド燃費は、16.4㎞/L(WLTCモード)と良好だ。
モーターならではの、驚くほど素早いレスポンス
駆動方式は、走行用モーターを前後輪に配し、進化版させた電子制御4WDのS-AWCを採用している。2つのモーターが4輪を駆動するから、自在に駆動力を配分することが可能になり、応答レスポンスも驚くほど素早い。
車両重量は、アウトランダーPHEVに限りなく近い1.9トンだが、重さを意識させないスポーティな乗り味だ。最初はEVスイッチを押し、モーターだけのモードで走ってみる。アクセルを踏み込むと、レスポンス鋭く瞬時にパワーとトルクが立ち上がり、クルマが身軽になったように加速していった。
しかも、驚くほど滑らかだし、静粛性も高い。1.5Lの直噴ターボには真似のできない上質なパワーフィールを手に入れ、車格が上がったように感じられる。
エンジンで発電し、モーターで走るシリーズ走行モードでも、基本はモーター走行だ。
登坂路や追い越しなどで、アクセルを踏み込むとエンジンがかかるが、そのときでもエンジンの存在感はアウトランダーほど強くない。エンジンがかかっても静粛性は高いレベルにある。
エンジンが主役のパラレル走行モードでは、効率のよい回転域を使うため加速は滑らかだ。また、モーターが後押しする力強さは大きな魅力である。制御が緻密だからドライバーの意思に忠実に気持ちいい走りを楽しめた。
4つものドライブモードで、あらゆる路面に対応
ドライブモードは4つある。ほとんどのシーンで重宝するのが、さまざまな状況において適切な前後駆動力配分を行う「ノーマル」モードだ。アウトランダーPHEVと比べても軽快感があり、軽やかにクルマが向きを変えた。
ボディなどの剛性が高く、足の動きもいいから狙ったラインにたやすく乗せることができる。
試乗コースが箱根の山岳路だったこともあり、気に入ったのは「ターマック」モードだ。これは、乾燥舗装路に特化したモードで、ブレーキ制御を強めに作動させ、より一体感のある走りを引き出せる味付けとしている。
連続するコーナーをリズミカルに駆け抜けることができ、ドライバーの狙い通りのラインに乗せることもたやすい。それでいて出しゃばらないスッキリとした操舵フィーリングだから、ドライバーをいい気分にさせてくれる。
雪道などの滑りやすい路面で最適な制御を行い、安定性を高めるのは「スノー」モードだ。そして「グラベル」は悪路やスタック時に4WDの優れた脱出性を発揮するモードだが、懐が深く、コントロールできる領域が広いエクリプスクロスPHEVはオンロードの走りが似合う。
4WDを意識させることなく、気持ちいい走りを実現した。ちょっと引き締まっているが、乗り心地も合格点を与えられる。
エクリプスクロスPHEVは、アウトランダーから主役の座を奪うほど魅力的なクロスオーバーSUVだ。走りの質が高いだけでなく快適装備と予防安全装備なども充実している。eアシスト機能も向上した。装備はそれなりだが、Mグレードなら300万円台の予算で手に入れることが可能だ。
プレミアム感は一歩及ばないが、1.5Lのターボ搭載車はコストパフォーマンスに秀で、走りのスポーティ感もPHEVの上をいく。前輪駆動の2WDを選べるのも魅力だろう。アウトランダーだけでなく、RAV4 PHVにとっても手強いライバルの出現だ。
<レポート:片岡英明>
三菱エクリプスクロス価格
■PHEV
・G 4,152,500円
・P 4,477,000円
■ガソリン車
・M 2WD 2,531,100円/4WD 2,751,100円
・G 2WD 2,867,700円/4WD 3,087,700円
・G Plus Package 2WD 3,126,200円/4WD 3,346,200円
三菱エクリプスクロスPHEV燃費、航続距離などスペック
代表グレード エクリプスクロスPHEV Pグレード
全長 / 全幅 / 全高(mm) 4545/1805/1685
ホイールベース(mm) 2670
トレッド前 / 後(mm) 1540/1540
最低地上高(mm) 185
車両重量(kg) 1920
最小回転半径(m) 5.4
ハイブリッド燃料消費率 WLTCモード(km/L) 16.4
充電電力使用時走行距離(プラグインレンジ)(km) 57.3
エンジン 4B12 MIVEC DOHC 16バルブ 4気筒
総排気量(L) 2.359
最高出力(kW[PS]/rpm) 94[128]/4500
最大トルク(N・m[kgf・m]/rpm) 199[20.3]/4500
使用燃料 無鉛レギュラーガソリン
モーター
最高出力前 / 後(kW[PS]) 60[82]/70[95]
最大トルク前 / 後(N・m[kgf・m]) 137[14.0]/195[19.9]
駆動用バッテリー リチウムイオン電池
総電力量(kWh) 13.8
サスペンション形式前 / 後 マクファーソンストラット式/マルチリンク式
タイヤサイズ 225/55R18
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