予防安全性能、走行性能は抜群! しかし、燃費が弱点だった5代目SK系フォレスター
初代インプレッサをベースに開発されたクロスオーバーSUVのフォレスターは、1997年2月に産声をあげた。車名の「フォレスター(FORESTER)」は、森を育む人の意味だ。初代フォレスターは、ひと目でSUVと分かる外観だが、スポーツ4WDを発展させた背の高いセダン的でもあったことから、オン・オフを問わず走りのポテンシャルは高かった。
2018年夏にデビューした5代目フォレスターは、シンメトリカルAWDに加え、2モード式のXモードを搭載し、悪路や雪道で非凡な走破性能を見せつけている。
搭載するのは、伝統の水平対向4気筒DOHCだ。スポーツグレードにターボで武装した直噴の1.8Lエンジンを、2.0Lエンジンにはモーターを組み合わせたマイルドハイブリッドのe-BOXER(イー・ボクサー)を設定した。
どのステージでも余裕ある走りを見せるが、多くの人が物足りなく感じたのは燃費性能である。そこで、ひと足早く海外市場に送り出された第6世代SL系となるフォレスターに期待がかかった。
ストロングハイブリッドで弱点を克服した6代目新型フォレスター
間もなく正式発表になる次期SL系、新型フォレスター日本仕様のハイライトは、クロストレックに初搭載した2モーターのシリーズ・パラレル式ストロングハイブリッドの投入だ。
トヨタから技術供与されたTHS-Ⅱと基本的なメカニズムを同じくする「S:HEV」は、2498ccのFB25型水平対向4気筒エンジンをミラーサイクル化している。これに発電と発進、駆動とブレーキエネルギー回生を行う2つのモーターを組み合わせた。
新型フォレスターのパワースペックはク、ロストレックと同じだ。最高出力118kW(160ps)/5600rpm、最大トルク209N・m(21.3kg-m/4000〜4400rpmである。走行用モーターは88kW(119.6ps)の出力、トルクも270N・m(27.5kg-m)と、パワフルだ。
スバルの縦置き方式に合わせて、トランスアクスルも専用設計である。トランスミッションは6速MTモード付きリニアトロニックだ。WLTCモード燃費の開発目標値は、クロストレックより少し悪い18.8km/L(18インチタイヤ装着車)だ。
先代よりパワフルな2.5Lストロングハイブリッド車
次期、新型フォレスターの最終プロトタイプを評価する舞台に選ばれたのは、テクニカルコースとして知られている袖ヶ浦フォレストレースウェイ。2.5Lストロングハイブリッドを搭載した新型フォレスターで走り出してみると、クロストレックより100kgほど重くなり、先代と比べると140kgも重くなっているから驚くような加速感ではない。
だが、アクセルを踏み込んでいくと厚みのあるトルクが瞬時に湧き上がる。500ccの排気量アップも功を奏し、ノーマルモードでも従来のマイルドハイブリッドよりはるかに力強い。
スポーツモードでは、サーキットでも気持ちよくスピードを乗せていく。応答レスポンスも鋭くなる。バッテリーに電池が残っているときにアクセルを穏やかに踏み込んだり少し戻せば、モーターだけでの走行も可能だ。EV走行できる時間も増えた。当然、驚くほど滑らかなパワーフィールだ。EVモードの守備範囲も広がっている。
クルージング時は、静粛性も高い。ハーマンカードンのサウンドシステムをオプション設定したのは静粛性に自信を持っていることの表れだろう。吸音材と遮音材を増やし、フロントガラスも厚みを増している。100km/h程度ならピラーやルーフ付近からの風切り音も気にならないなど、静粛性は大幅にアップした。エンジン音もビートの効いたフラット4の心地よいサウンドを残しながら、濁った音色や尖った音を上手に抑えている。
乗り心地が抜群によい!
新型フォレスターのサスペンションは、フロントがストラット、リアはダブルウイッシュボーンだ。先代と同じ形式だし、スバルグローバルプラットフォームも受け継いでいる。だが、クロストレックと同じようにインナーフレーム構造を採用し、構造用接着剤も8mから27mまで大幅に増やした。また。ダンパー、スプリング、ブッシュなどを専用にチューニングしている。走ってみると、その効果は大きかった。
AWD技術にもスバルのこだわりが見える。プロペラシャフトで後輪を駆動する、油圧多板クラッチ式、電子制御カップリング採用の機械式シンメトリカルAWDとした。モーターの追加により、雪道や悪路などの滑りやすい路面でコントロールしやすいのは、クロストレックで立証済みだ。もちろん、悪路や雪道で脱出性能を高めるXモードも搭載する。
プレミアムグレードが履くタイヤは、フォレスター初の19インチだ。試乗車は235/50R19のBS製トランザEL450を履いていた。コースに出ると、コーナーを2つ、3つ駆け抜けただけで2ピニオン式の電動パワーステアリングがいい仕事をしていることが分かる。スッキリした操舵フィールで、狙ったラインに無理なく乗せることができた。ホットな走りでコーナーに向かうと、ロールは許すもののコントローラブルだ。
ステアリングを切る早さと操舵量によって正確にクルマが向きを変えた。最初に走った路面は少し濡れていたが、リアにしっかりとトラクションがかかる。アクセル操作と舵のコントロールだけで気持ちよく向きが変わるし、姿勢を乱した時の修正もラクだ。ロールしても横方向の揺れをうまく抑え込んでいるし、舵の利きもいいから安心感がある。
新型フォレスターのボディはシャキッとしているし、サスペンションもしなやかに動く。また、乗り心地がいいことにも驚かされた。サーキット舗装だから路面はフラットだ。だが、それを差し引いても乗り心地は上質だと感じる。ピットレーンでの段差路面を走ったときも巧みに衝撃を吸収し、ガツンとくるショックがなかった。ブレーキの制動フィールは、回生ブレーキとの協調が難しいのか、コントロールに気難しさを感じる場面がある。これが惜しい。
スポーティな走りを求めるなら1.8Lターボ車もあり!
新型フォレスターには、先代SK系と同じようにダウンサイジングした1.8Lの水平対向4気筒DOHC直噴(DIT)ターボも用意されている。エンジンのスペックはレギュラーガソリンを指定して130kW/300N・m(177ps/30.6kg-m)と先代と同じだ。
アクセルを踏み込んで加速したときの迫力は今一歩だが、ある程度まで回転を上げ、ターボが稼働すると気持ちよく加速していく。ターボに尖ったところはないし、先代より車両重量も増えているのだが、運転するのが楽しい。
サーキットで軽やかな身のこなしを披露したのは、この「スポーツ」だ。ストロングハイブリッドより軽量だし、クルマのバランス感覚も優れている。気持ちいいハンドリングは一歩上の印象だ。
コーナーでは、狙ったラインにスッと寄せられるし、挙動が乱れたときの修正もたやすかった。確かにストロングハイブリッドは魅力的だが、販売価格はフォレスターとは思えないほど跳ね上がっている。走りの楽しさに目を向けるなら「スポーツ」という選択肢もありだろう。
隙の無い仕上がりとなり魅力的なSUVとなった新型フォレスター
6代目フォレスターは、スバルのAWDならではの安心感と洗練されたハンドリングに磨きがかけられ、課題だった燃費も大幅に向上した。
インテリアを含め、デザインは新しさを感じさせるし、質感も高められている。キャビンもラゲッジルームも広く快適だ。
運転支援のアイサイトの機能もアップした。また、歩行者用エアバッグも進化。Aピラーまで広くカバーするエアバッグとなり、サイクリストにも対応する。
ボディサイズのアップを最小に抑え、走りの実力を大幅にアップ。優れた低燃費性能も手に入れた新世代のフォレスターは、大いに魅力的なクロスオーバーSUVである。
<レポート:片岡英明>
スバル クロストレック VS トヨタ カローラクロス徹底比較
新型スバル フォレスター燃費、ボディサイズなどスペック(目標値)
代表グレード フォレスターPremium S:HEV
ボディサイズ:全長4655×全幅1830×全高1730mm
ホイールベース:2670mm
車両重量:1750~1780㎏
駆動方式:4WD
最小回転半径:5.4m
エンジン型式:FB25型 水平対向4気筒DOHC 16バルブ
排気量:2498㏄
エンジン最高出力:160PS(118kW)/5600rpm
エンジン最大トルク:209N・m(21.3kgf・m)/4000-4400rpm
モーター型式:MC2型
モーター最高出力:88PS(119.6W)
モーター最大トルク:270N・m(27.5kgf・m)
WLTCモード燃費:18.4㎞/L
動力用主電池種類: リチウムイオン電池
サスペンション前/後:ストラット/ダブルウィッシュボーンス
タイヤサイズ前後:235/50R19
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