デビュー直後から、新車販売台数ナンバー1に輝いたライズ
乗用車をベースに生まれたクロスオーバーSUVが、世界のトレンドとなっている。その発祥は、1990年代の日本だが、世界中で売れるようになるとボディは肥大化した。軽自動車を除けば、小型車枠に収まるクロスオーバーSUVは少数派となっている。
だが、軽自動車を作り慣れているダイハツは、魅力的なクロスオーバーSUVを誕生させた。往年の名SUVの名を冠したロッキーとトヨタで販売する兄弟車のライズだ。
両車は、ビーゴとラッシュの事実上の後継モデルである。ビーゴとラッシュは、できのいいクロスオーバーSUVだったが、押しの強さに欠けた。しかし、今度のロッキーとライズは違う。全長は4mを切っているし、全幅も1.7m以下とコンパクトだが、強い存在感を放っている。ボディサイズよりも大きく立派に見えるのはパキッとした直線基調で、台形フォルムとしているからだろう。大径タイヤの採用も立派に見せている。
ダイハツ ロッキーとトヨタ ライズは、フロントマスクやオーナメントを変え、差別化を図った。ライズはRAV4の弟分といった面構えだ。押しの強い凛々しい顔立ちとどっしりとした佇まいが多くの人に好まれているのだろう。どちらも出だしは好調で、多くのバックオーダーを抱えるほどの売れ行きを見せている。その売れ行きは、想像以上で新型ライズは2020年1月と2月の登録車新車販売台数でナンバー1になっているほどだ。
ほとんど不満な部分が無い?
新型ライズとロッキーは、コンパクトサイズだが、キャビンは思いのほか広い。大柄な人がフロントシートに座っても、難なく最適なドライビングポジションを取ることができる。アップライトパッケージで、見下ろし感覚だから視界がよく、運転しやすい。
ステアリングにテレスコピック機構がないのは残念だが、違和感なく座れる。ベダル配置も適切だ。ドアに付いているグリップも大きく、開け閉めしやすい。
インパネは水平基調で、ディスプレイオーディオのモニター画面を高い位置にセットするなど、開放感にあふれていた。インパネやドアトリムはプラスチック樹脂の打ちっ放しで、見た目の質感は今一歩だ。
ただし、インパネやシートに挿し色を加えて見栄えをよくしている。小物入れや収納ボックス、ドリンクホルダーなど、収納スペースが充実しているのも軽自動車を得意とするダイハツらしいところだ。
リアシートに座っても頭上と膝下には十分な空間があった。大柄な人だと背もたれと座面が短いと感じる。だが、膝もとには十分以上の余裕があり、頭上空間も窮屈ではない。
新型ライズとロッキーのラゲッジルームは、4人が座った状態でも広く感じた。たくさんの荷物を積め、使い勝手はいい。フロア下の収納スペースも重宝するだろう。2段のリクライニング機構を備えた6対4分割可倒式のリアシートを畳めば長尺物も無理なく積み込める。ただし、ちょっと傾斜が付くのが惜しい。
優れたCVTの恩恵でパワフル&スムースな走行性能
新型ライズとロッキーのパワーユニットは共通で、トールやルーミーなどに使われている1.0Lの直列3気筒DOHCターボを搭載。最高出力は72kW(98ps)/6000rpm、最大トルクは140N・m(14.3kg-m)/2400〜4000rpmだ。
トランスミッションもタントなどと同じスプリットギアを組み合わせた最新のD-CVTを採用した。
1.0Lエンジンと思って乗ると、パンチある走りに驚かされる。その高い実力の一端を担っているのが、ワイドレンジを可能にしたD-CVTだ。アクセルを踏んだ直後の瞬発力は今一歩だが、そこから先は不快なラバーバンドフィールは上手に抑え込んでいる。街中を走るシーンでは、CVTの弱点を感じさせない軽やかな走りを見せつけた。
ゴー&ストップのシーンで気になったのは、アイドリングストップからエンジン始動に移るときの作動音だ。モータージェネレーターを使った軽自動車のできのよさを知っていると、荒っぽく感じる。
新型ライズとロッキーの1.0Lターボエンジンは活気があり、運転するのが楽しかった。1.5Lの自然吸気エンジンと比べても元気がよく、FF(前輪駆動)車は1トンを切る車重だから加速したときも力強い。
ターボが本格的に稼働するのは、2000回転を超えたあたりからだ。高回転の伸びも鋭く、マニュアルシフトを使い、その気になれば5500回転まで難なく引っ張ることができた。
ダイハツ製CVT特有の不快な金属音が減り、静粛性が大きく向上していたことも嬉しい誤算だ。3気筒エンジン特有の不快な振動も上手に抑え込んでいる。高回転まで回したときは、3気筒らしいザラっとした音質が耳につくが、一般的な走りなら快適性は高い。
乗り心地は、やや硬め。長く付き合えるコンパクトSUVとしての価値あり!
サスペンションは、このクラスに多いストラットとトーションビームの組み合わせだ。ちょっと硬めの味付けで、スポーティと感じる。
SUVというと、ストロークの長い足を思い浮かべるが、ロッキーとライズは意識してロールを抑え込んでいた。速い速度でコーナーに飛び込んでもロールは少ないし、直進安定性も合格ラインに達している。操舵支援も自然だ。
ただし、電動パワーステアリングの操舵フィールは17インチタイヤを履くモデルでも少し頼りなく感じた。
新型ライズとロッキーは、小型車枠に収めているから取り回し性は優れている。17インチタイヤでも小回りが利く。エコタイヤを履いているが、路面によっては突き上げが大きいと感じる場面があった。これは、16インチタイヤ装着車にも言えることだ。ちょっと乗り心地は硬めと感じる。
重量バランスは4WDモデルのほうがよく、路面からの突き上げなどは小さく感じた。
ちなみに4WDは、電子制御のダイナミックトルクコントロール4WDだ。ダイハツは4WDに関して長い経験を持ち、メカへのこだわりも強い。
メーター内のモニター画面を見ると、後輪へのトルク伝達が早いことが分かった。4WDは実力派だし、最低地上高は185㎜を確保しているから雪道やオフロードでも安心して走破できるはずだ。
新型ライズとロッキーは、日常使いで高い機動力を発揮するトータル性能の高いクロスオーバーSUVで、長く付き合える。
<レポート:片岡英明>
トヨタ ライズ価格
・X 2WD(FF) 1,679,000円/4WD 1,918,800円
・X“S” 2WD(FF) 1,745,000円/4WD 1,984,800円
・G 2WD(FF) 1,895,000円/4WD 2,133,700円
・Z 2WD(FF) 2,060,000円/4WD 2,282,200円
ダイハツ ロッキー価格
・L 2WD 1,705,000円/4WD 1,944,800円
・X 2WD 1,848,000円/4WD 2,086,700円
・G 2WD 2,002,000円/4WD 2,224,200円
・Premium 2WD 2,200,000円/4WD 2,422,200円
ダイハツ ロッキー燃費、ボディサイズなどスペック
代表グレード:ダイハツ ロッキーG FF
ホイールベース 2525mm
最低地上高 185mm
車重:980kg
最小回転半径 5.0m
エンジン型式 1KR-VET型
エンジン 1.0L直3 DOHC 12バルブ ターボ
最大トルク:140N・m(14.3kgf・m)/2400-4000rpm
燃費(WLTCモード) 18.6㎞/L
燃費(JC08モード) 22.8㎞/L
トランスミッション CVT
タイヤサイズ 195/60R17
サスペンション形式(前:後) 前: マクファーソン・ストラット式 後:トーションビーム式
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