EV化を急速に進めるボルボの第1弾モデルがC40リチャージ
スウェーデンの老舗自動車メーカーのボルボは、21世紀になって積極的に大きな変革に挑んでいる。
20世紀は一歩先を行く安全装備を武器に、ステーションワゴンの文化を牽引した。そして21世紀は、地球にやさしい自動車メーカーになろうと大きな方向転換を進めている。
とくに、北欧の国々は地球の環境悪化と温暖化に敏感だ。ボルボはCO2排出量の低減に強いこだわりを見せ、ライバルに先駆けて電動化に舵を切った。マイルドハイブリッド車とプラグインハイブリッド車を積極的に市場に投入し、この先は内燃機関からの脱却を図ろうとしている。そして2030年までにバッテリーEVメーカーになると宣言した。
その第1弾として送り出されたBEV(バッテリー電気自動車)専用モデルが、新型ボルボC40リチャージだ。
あっという間に完売した初期モデル
2020年にデザインと概要を発表し、1年ほどのリードタイムを経て、正式発売に移された。日本には2021年秋に上陸したが、最初の100台は頭金なし、諸費用や保険料など、すべて込みで月々11万円のサブスクリプションプランを打ち出し、話題をまいている。C40リチャージはオンラインだけの販売だが、すぐに500件を超える応募があり、抽選での販売となった。
話題はそれだけではない。2022年3月に、一部仕様と価格を変更している。これは半導体不足に基因するものだ。自慢のフルアクティブハイビーム付きピクセルLEDヘッドライトなどを一般的なLEDヘッドライトに変更し、販売価格を20万円引き下げた。
また、ツインモーター採用の4WDモデルに加え、フロントだけモーターを搭載したシングルモーター仕様のエントリーグレードを追加している。600万円を切る価格は魅力的だ。
国産EVを圧倒する408ps&660Nm!
新型C40リチャージを特徴づけているポイントの1つがエクステリアデザインである。プロトタイプとほとんど変わらないクーペ風のキュートなルックスで我々の前に姿を現した。
雰囲気は、クーペとSUVのクロスオーバーで、フロントマスクはグリルレスだ。リアスポーイラーは上下に2つ装備するが、これは高速道路で航続距離を延ばすのに効果が大きいという。
ボディサイズはトヨタbZ4X(スバル ソルテラ)やアリアに近い。だが、全長は4440㎜、ホイールベースは2700㎜と、短く抑えられている。全幅は1875㎜と、思いのほか広い。全高はXC40より65㎜低い1595㎜とした。
試乗したのは「ツイン」を名乗る4WDの初期導入モデルである。ネーミングから分かるように前後にモーターを配し、合計で300kW(408ps)を発生する。最大トルクは660N・m(67.3kg-m)だ。ちなみに23年モデルで導入される1モーターのFF(前輪駆動)車は最高出力231psで、試乗は今年の後半か!?
剛柔自在のキャラクターとは?
スタート(起動)は、テスラと同じようにキーレスで、スターターボタンもない。キーを携帯し、ブレーキペダルを踏むと起動する。
Dレンジに入れ、走り出すとモーターは驚くほど滑らかなフィーリングだ。ひと通りのチェックを終えた後、実力を引き出してみる。ステアリングを握った「ツイン」は、2トンを超える重量ボディを意識させない鋭い加速を披露した。
モーターは瞬発力が鋭く、瞬時にパワーとトルクが盛り上がる。だからフル加速するとシートに体を押し付けられるほどのGを感じ、加速も強烈だった。0〜100km/h加速は、4.7秒というかなりの瞬足である。
豪快な走りを披露する新型C40リチャージだが、尖った性格ではなくフレキシブルだ。剛柔併せ持つ万能選手で、アグレッシブに走れることに加え、ジェントルな走りも苦手としない。
急加速したときもキャビンは静かなままだ。ただし、モーター音よりも20インチタイヤから発せられるノイズや風切り音が気になった。それほど静かなのである。
慣れると便利だと感じたのがアクセルコントロールだけで多くのシーンをこなせるワンペダルモードだ。ブレーキペダルをほとんど使わず、滑らかに減速度をコントロールできた。
軽快ながら落ち着いた走りを披露
新型C40リチャージのサスペンションは、フロントにストラット、リヤにマルチリンクという組み合わせだ。
タイヤは電動化モデル用に開発したピレリPゼロ エレクトで、フロントが235/45R20、リアは255/40R20の前後異サイズとしている。
新型C40リチャージは、重いバッテリーを床下に積んでいることもあり、落ち着いた挙動を見せた。それでいて、ハンドリングは軽やかだ。気持ちよくクルマが向きを変える。狙ったラインに乗せやすく、ロールも上手に抑え込んでいた。
20インチのファットなタイヤを履いていることもあり、4輪が接地している安心感も強かった。ピレリ製の20インチタイヤは、路面によっては乗り心地が少し硬いと感じるシーンもある。試乗車は走り込みが足りていなかったから、もう少し距離を走り込めば乗り心地はよくなってくるはずだ。
日本勢にとって手強い存在になるC40リチャージ
新型C40リチャージのインテリアは、XC40に限りなく近い。インパネは水平基調のシンプルで機能的なデザインとしている。ドライバーの前にコンパクトなメータークラスターを置き、メーターにはナビゲーションの地図画面を映し出す。
これまではふんだんにレザーを使っていたが、新型C40リチャージは革を使わないレザーフリーデザインだ。本革ではないが、合皮のステアリングなどは手触りがよかった。また、グーグルと共同開発したインフォテイメントシステムも売りの1つだ。そのアップデートは、オンラインでできる。
キャビンは前席、後席ともに不満のない広さを確保した。ちょっとアップライトな姿勢で座るから、前方の見晴らしはいい。パワーシートだから微調整もラクだ。後席は足もと、頭上ともに十分な広さだった。
斜め後方の視界もそれほど悪くはない。ラゲッジルームも実用になる広さだ。5名乗車時は413Lだが、床下収納やフロントトランクも備えているから荷物は積みやすい。後席を畳むとラゲッジ容量は1205Lになる。ちなみにフロントボンネット内のトランク容量は31Lだ。
新型C40リチャージのバッテリー容量は78kWhで、一充電での航続距離はWLTCモードで485kmと発表されている。bZ4X、ソルテラ、アリアと同等以上のバッテリー容量を誇り、航続距離も互角だ。しかも動力性能は、ライバルを圧倒する。
新型C40リチャージはボルボが本気で送り出したBEVだ。戦略的な販売方法に加え、メカニズムやパッケージングなどのトータル性能も高い。日本勢にとっては、手強いBEVの出現と言えるだろう。
<レポート:片岡英明>
ボルボC40価格
【2022年モデル価格】
・C40 Recharge Twin(4WD、ピクセルLEDヘッドライト装着車) 7,190,000円
・C40 Recharge Twin(4WD、ピクセルLEDヘッドライト非装着車) 6,990,000円
【2023年モデル価格】
・C40 Recharge Plus Single Motor(FF) 5,990,000円
・C40 Recharge Ultimate Twin Motor(4WD) 6,990,000円
ボルボC40 Recharge Twin電費、充電時間、出力などスペック
代表グレード C40リチャージツイン
ボディサイズ 全長4,440mm×全幅1,875mm×全高1,595mm
ホイールベース 2,700mm
最低地上高 175mm
車両重量 2,160kg
最小回転半径 5.7m
定員 5名
駆動方式 4輪駆動(AWD)
蓄電池種類 リチウムイオン電池
総電力量、総電圧 78kWh、396V
充電時間 28分(10~80%、速充電所要時間は150kW直流充電器を使用)
モーター最大出力 300kw(408ps)/4,350-13,900rpm(システム合計)
モーター最大トルク 660N・m(67.3kg-m)/0-4,350rpm
一充電走行距離WTLCモード 485km
サスペンション マクファーソンストラット
タイヤサイズ 前:235/45R20、後:255/40R20
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