軽自動車と高級車、駆け込み需要傾向が顕著になった
日本自動車販売協会連合会と全国軽自動車協会連合会の集計による9月の新車販売台数が発表された。登録車は34万7706台で前年に比べて2.8%の増加(乗用車だけでは30万280台で2.0%の増加)だった。前年比微増にとどまったので、消費税増税前の駆け込み需要は、あまりなかったといえるだろう。
ただ、軽自動車は20万503台で前年に比べて13.2%増加。こちらは、やや駆け込み需要があった印象だ。軽自動車は税金面での減税があまりなかったためか、やや駆け込み需要が起きている。
また、高額車が多くて増税の影響が大きい輸入車は、前年に比べ8.0%の増加している。高額車ということもあり、こちらも多少の駆け込み需要があったといえる。
N-WGNの不具合が、N-BOXの販売増につながった?
9月の銘柄別販売ランキングは別掲の通りで、相変わらず軽自動車がトップ10の上位を独占する形になっている。特にN-BOXの売れ行きはとどまるところを知らず、これで25か月連続の首位キープだ。
しかし、N-BOXも首位キープに必死の様相を呈している。8月の販売台数では、タントが大躍進。N-BOXに対して、その差を1500台弱にまで接近してきたからだ。そのため、N-BOXは9月の販売台数の内、自社登録(届出)を行ったようで、未使用車の流通量が少し増えている。
また、先にフルモデルチェンジしたN-WGNが、部品の不具合から生産が止まり、納車が順調に進んでいない。営業面では、N-WGNで受注した分をN-BOXに変更してもらうなどしたこともあり、N-BOXの販売はさらに好調となっているようだ。
ちなみにN-WGNのランキングは52位で、フルモデルチェンジ直後であるのに前年比が29.2%という考えられないほどの低さだ。
2位のタント、3位のデイズ系、4位のスペーシアまでは前月と同じ。このあたりの超ハイト系軽自動車は一種の定番商品になっている。デイズ系は、ハイト系のデイズとデイズルークスの合算なので、販売台数は多くなる。
前月6位だった登録車首位のシエンタが5位に上がり、ムーヴ系と入れ替わった。シエンタは、マイナーチェンジ効果が出ている。
トップ5すべてのモデルが、前年比を大幅に超える販売台数を記録。スペーシアは、2017年12月に登場したモデルながら、新型車の中で健闘している。ただ、スペーシアも、自社登録(届出)を行っており、未使用車の流通量が少し増えてきている。
■2019年9月新車販売台数
1)N-BOX系 28,484台(126.4%)
2)タント 21,858台(184.3%)
3)デイズ系 17,841台(118.4%)
4)スペーシア 15,754台(114.2%)
5)シエンタ 13,558台(185.4%)
熾烈を極めた2019年度上半期、5ナンバーミニバン販売台数ナンバー1争い
先月の5位から6位になったムーヴ系。6位に順位が落ちたとはいえ、前年比120%超という数字は立派なものだ。ムーヴ系を支えているのは、ハイト系ながら両側スライドドアをもつムーヴキャンバスだ。ハイト系のムーヴは、スーパーハイト系に押され、販売面ではジリ貧状態が続いている。
そして、7位にはノートが入った。ノートはモデル末期ながら、e-POWER人気もあり、前年比97%を維持しアクアを上回っている。相次ぐ不祥事でブランドが傷ついている中で、登録車としては、マイナーチェンジを行ったシエンタに続き2位という好成績を残している。
8位にプリウス系と続き、9位にカローラ系が入ってきた。フルモデルチェンジを受けた新型カローラ。ボディサイズは1クラス上となり、先代のカローラとは別のクルマになっている。高齢者のクルマから、若者向けのクルマへと大きくブランドイメージをチェンジした。こうした目新しさもあり、前月の20位から一気に上昇してトップ10に入ってきた。新型車効果もあり、まずまずの滑り出しといえるカローラ系。1年後にこの順位を維持できていれば、カローラの人気は本物といえるだろう。
10位にはミニバンのヴォクシーが入った。ここまでが1万台を超える売れ行きを記録した。ヴォクシーは、6~7月の繁忙期にセレナに負けたいたこともあり、イッキに販売台数をアップし9月はセレナを超えた。
これは、かなり意図的で、4~9月の5ナンバーサイズミニバン販売台数ナンバー1争いが見え隠れする。しかし、4~9月の5ナンバーミニバンナンバー1は、わずか300台程度の差でヴォクシーの追い上げは届かず、セレナがナンバー1になっている。ただ、ヴォクシーとノア、エスクァイアの3姉妹を同じクルマという視点で見ると、圧倒的にヴォクシー系3姉妹の勝利となる。
■2019年9月新車販売台数
6)ムーヴ系 13,497台(121.0%)
7)ノート 13,183台( 97.0%)
8)プリウス系 11,158台(116.7%)
9)カローラ 11,046台(126.5%)
10)ヴォクシー 10,178台(141.6%)
モデルチェンジ直前のフィット&ヤリス
11位から20位までの車種では、コンパクトカーが目立つ。11位のアクア、13位のルーミー、17位のタンク、18位のマツダ3、19位のフィット20位のヴィッツという具合に6車種が入っている。
アクアやフィット、ヴィッツなどは販売ランキングの首位に立ったこともある車種だが、モデルサイクルの長期化で今はこの位置にある。どのモデルもフルモデルチェンジ直前。フィットは11月、ヴィッツはヤリスに車名変更され年内には発表される予定だ。2019年度後半は、フルモデルチェンジするフィットやヤリスがイッキに上位に入ってくるだろう。そこで、ノートがどこまで踏ん張れるかも注目だ。
ルーミーとタンクは姉妹車ではなくひとつの車種として考えたら、トップ5に入る台数である。
マツダ3はコンパクトというのはちょっと大きめなCセグメント車。やっと販売が軌道に乗ってきたようで、先月の25位から17位にランクを上げてきた。販売台数も3822台から7134台と大幅増だ。これで、遅れているスカイアクティブXエンジンが搭載されれば、さらに上位に入る可能性も高い。
コンパクトカー以外では、セレナがトップ10から陥落して12位、フリードが前月から2ランク落した14位と、ミニバン2モデルが入っている。また軽自動車のミラが15位、ワゴンRが16位である。
■2019年9月新車販売台数
11)アクア 9,737台( 97.2%)
12)セレナ 9,224台( 98.1%)
13)ルーミー 9,046台(125.0%)
14)フリード 8,108台(100.2%)
15)ミラ 8,647台( 85.7%)
16)ワゴンR 8,631台( 95.9%)
17)タンク 7,569台(115.1%)
18)マツダ3 7,533台(-------)
19)フィット 7,134台( 97.6%)
20)ヴィッツ 6,996台( 91.7%)
アルファード人気、高額車なのに衰えを知らず
21位から30位までのランクには、いろいろな車種が入っている。まず軽自動車は21位のハスラー、23位のアルト、26位のeKワゴン系と3車種が入った。
ミニバンも3車種で、24位のアルファード、25位のノア、28位のステップワゴンという具合だ。アルファードは姉妹車のヴェルファイアに対してダブルスコアに近いくらいの販売台数差を付けている。フロント回りのデザインの威圧感でアルファードが断然勝っているから、こうした売れ行きになるのも当然である。
25位のノアは5675台に止まり、1万台を超えたヴォクシーに大差を付けられているのも似たようなところがある。もちろん販売ネットワークの充実度で上回るネッツ店扱いのヴォクシーが上位に来るのは当然でもある。
28位に沈んでいるステップワゴン。コストパフォーマンスはクラストップといえるものの、上位に上がれないのは、やはりデザインということになりそうだ。
この他、SUVは22位のRAV4と27位のヴェゼルが入っている。RAV4は、相変わらず高い人気を維持。ライバルとなるエクストレイルやフォレスターに大きな差を付けた。
コンパクトSUVのヴェゼルは、モデル末期ということもあり、前年比97.8%と厳しい状況となっているものの、コンパクトSUVの中ではトップの販売台数だ。
また、デミオ改めマツダ2が29位。ソリオはコンスタントに売れ30位に入っている。
■2019年9月新車販売台数
21)ハスラー 6,907台( 99.5%)
22)RAV4 6,601台(-------)
23)アルト 6,539台( 94.2%)
24)アルファード 6,523台(114.6%)
25)ノア 5,912台(129.9%)
26)eKワゴン系 5,675台(113.0%)
27)ヴェゼル 5,628台( 97.8%)
28)ステップワゴン 5,621台(101.4%)
29)マツダ2 4,871台(-------)
30)ソリオ 4,457台(110.5%)
シャトル、売れないフィットを尻目に前年比2.4倍と絶好調!
31位から40位までの車種もさまざまなものが入ったが、このランクで目立ったのはSUVだった。32位のC-HR、36位のハリアー、38位のフォレスター、39位のエクストレイルという具合で、月間3000台~4000台レベルを維持している。
ただし、大きく販売台数を落としているのがC-HR。前年比66.3%と大幅ダウンとなった。かなり特徴的なデザインで大人気となった。しかし、飽きられるのも早いのか、急激に販売台数落としている。そろそろマイナーチェンジの時期であることも、販売台数が落ち込んだ理由のひとつだろう。
その他は、ミニバンのエスクァイアが31位、軽自動車のキャストが33位、コンパクトカーはインプレッサが34位とパッソが40位、ステーションワゴンのシャトルが35位、高級車のクラウンが37位という具合でさまざまなタイプの車種がこのランクにある。
この中で、深刻な状況にあるのがクラウンだ。クラウンは、人気の無いセダンカテゴリーながら堅実な販売台数を記録していたが、今月も前年比62.8%と低調に終わった。デビューから約1年半が経過し、すでに息切れ状態。このままでは、マイナーチェンジまで非常に厳しい販売状況となる。やはり、高価な価格が、売れない理由のひとつといえそうだ。
中でも注目されるのはシャトル。コンパクトなステーションワゴンが欲しい人にとって、ほとんど唯一の車種になっていることに加え、マイナーチェンジの効果もあって前年が2倍を超える伸びになっている。
■2019年9月新車販売台数
31)エスクァイア 4,438台(130.2%)
32)C-HR 4,425台( 66.3%)
33)キャスト 4,279台(131.0%)
34)インプレッサ 4,144台(101.2%)
35)シャトル 4,072台(238.0%)
36)ハリアー 3,890台(107.0%)
37)クラウン 3,806台( 62.8%)
38)フォレスター 3,770台( 73.1%)
39)エクストレイル 3,699台( 73.3%)
40)パッソ 3,536台(105.9%)
地味に存在感をアピールするデリカD:5
比較的好調だったCX-5が前年比67.0%と不調だ。人気のSUVながら、エクストレイルやフォレスターも大きく販売台数を落としていることもあり、このクラスのSUVに陰りが見えはじめている。
それに対して好調なのが、クロカン4WD系のジムニーにランドクルーザー。やや特殊なクルマながら、3,000台超の販売台数は立派。SUV系が飽きられてきて、よりタフなクロカン4WD系に人気が移っているということも予想できる。
こうした流れを受けて、地味に好調なのがデリカD:5。ミニバンで唯一となるオフローダー系だ。コンセプトが明確なクルマが売れているようだ。
41)ヴェルファイア 3,478台(121.3%)
42)CX-5 3,361台( 67.0%)
43)ジムニー 3,102台(149.9%)
44)ランドクルーザーワゴン 3,012台(176.7%)
45)スイフト 2,945台( 93.5%)
46)トール 2,909台(108.0%)
47)ピクシス系 2,519台(112.0%)
48)クロスビー 2,321台( 86.0%)
49)リーフ 2,259台( 80.4%)
50)デリカD-5 2,227台(152.4%)
51)CX-8 2,199台( 88.8%)
52)N-WGN 2,121台( 29.2%)
53)ウェイク 2,085台( 87.9%)
<レポート:松下宏>
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