日産アリアB6 VS マツダMX-30 EV MODEL徹底比較評価の目次
2タイプのEVが存在。違いは?
2022年は、非常に多くの国産・輸入新型EV(電気自動車)が投入された。まさに、EV大豊作ともいえる年となっている。
EVには、現在2パターンが存在する。まずは、EV専用に開発された車両。エンジンやミッションなどの搭載するい必要がないEVなので、従来の内燃機関車とは、まったく異なる先進的なデザインや技術が多く投入されている。
そして、もうひとつは、現在ある内燃機関車をベースとしてEV化したモデル。外観やインテリアデザインは、内燃機関車とほぼ同じ。ベースとなるプラットフォーム(車台)などを共通化できるので、コストを低く抑えることができるメリットがある。ただ、既存の内燃機関車と内外装はほぼ同じなので、新しさは感じない。
そこで、今回はEV専用車として登場した日産アリアと、マツダMX-30をベースにEV化したMX-30 EV MODELを徹底比較評価。それぞれの魅力的なポイントやNGポイントなどもレポートする。
日産アリアB6(FF)の特徴
EV(電気自動車)専用車の日産アリアは、当初の発売日よりやや遅れた2022年5月に発売が開始された。コロナ禍における半導体や部品不足の影響だ。
アリアはEV専用車ということもあり、エンジンを入れるスペースを確保する必要がないため、ボンネットは短め。その分、ホイールベースが長く設定されているため、全長4,595mmというコンパクトなサイズながら、広大な室内スペースを誇る点が大きな特徴。
アリアのグレードは、バッテリー容量×駆動方式で分類される。
【バッテリー容量】
B6(66kWh)
B9(91kWh)
【駆動方式】
FF(前輪駆動)
e-4ORCE(4WD/前後駆動)
2022年5月現在、通常販売されているのはB6(FF)のみで、航続距離は470km(FF、WLTCモード)だ。
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マツダMX-30 EV MODELの特徴
マツダMX-30 EV MODELは、2021年1月にデビューした。ガソリン車のMX-30をEV化したモデルである。内外装デザインや観音扉式のドアも、ガソリン車と同じだ。
搭載されたバッテリーの容量は35.5kWhと最近のEVとしては小さく、航続距離も256km(WLTCモード)とやや短い。どちらかというと、シティコミューター(街乗りが主な小型乗用車)的な使い方を想定している。
販売面で、EVはリセールバリューが低いことがデメリットとされてきた。そこで、マツダは残価設定を最大で55%保証とする、「3年型残価設定ローン」が用意するというチャレンジも行われている。
アリア優位だが・・・
1.航続距離比較
アリアの評価 4.0
MX-30 EV MODELの評価 3.0
各車の航続距離は以下の通りだ。(両車FF、WLTCモード)
・日産アリアB6 470km
・日産アリアB6 バッテリー容量 66kWh
・マツダCX-30 EV MODEL 256km
・マツダCX-30 EV MODEL バッテリー容量 35.5kWh
搭載するバッテリー容量差が2倍近いので、航続距離の差は当然という結果になった。
EVの航続距離を延ばすには、多くのバッテリーを搭載すればいいというわけではない。バッテリー容量を増やすと、車重がどんどん重くなり効率が悪くなる。短距離移動中心で、大容量バッテリーを搭載すると航続距離は長くなるものの、日常的な短距離移動だと、単に重りを積んで走るようなもので非効率。どこでバランスさせるかが重要となる。
電費 | 車重 | |
---|---|---|
アリア | 約7.1km/kWh | 1,920kg |
MX30EV | 約7.2km/kWh | 1,650kg |
アリアとMX30EVの電費はほぼ同等だ。ただし、大容量バッテリーを搭載するアリアの車重は270kgも重い。車重分を加味して比較すると、EVシステムはアリアが優秀といえるだろう。
EV車選びの際、よく航続距離ばかりを気にする人がいる。だが自身の使い方で「本当にアリアのような470kmもの航続距離が必要なのか? 」とじっくり検討する必要がある。
普段は1日30kmの程度の短い走行なら、航続距離が長いクルマは無駄に大きく重いバッテリーを搭載し、悪い電費で走っていることになるからだ。
しかも、バッテリー容量が多くなるほど車両価格は高価になる。EVを選ぶときに現実的な使い方を理解していないと、購入後の電力と購入時の資金を無駄にすることになるので注意したい。
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とにかく高いMX-30EV。高価だが努力したアリア
2.価格比較
アリアの評価 3.0
MX-30 EV MODELの評価 2.0
各車の価格は以下の通りだ。
アリアB6(FF) | 5,390,000円 |
MX-30 EV | 4,510,000円 |
MX-30 EV Basic Set | 4,587,000円 |
MX-30 EV Highest Set | 4,950,000円 |
バッテリーは、パーツの中でもコストが高く車両価格に大きな影響を与えている。バッテリー1kWh当たりの車両価格比較は、以下の結果になった。
・アリア 8.2万円/kWh
・MX-30EV 12.7~13.9万円/kWh
アリアが圧倒的に安価といえる結果となった。
ちなみに、新型EVであるスバル ソルテラは約8.3万円万円/kWhだ。1kWh当り8万円前後が相場のように見える。
続いてバッテリー以外の価格を比較する。
アリアはEV専用車なのに対して、MX-30EVはガソリン車と共用されている部分が非常に多い。その分コストダウンに繋がることを踏まえれば、MX-30EVの車両価格イメージは高めだ。
アリアには全席シートヒーターやナビなどが全車標準装備されており、装備面でもアリアの方が充実している。
価格差は、最上級グレード同士の比較で約45万円だ。装備分は価格差で補えるが、バッテリーなど航続距離を含んだコストパフォーマンスでは、アリアが優れる。
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両車値引きゼロベースだが、補助金のメリットが大きい
3.購入時の値引き術
アリアの評価 3.0
MX-30 EV MODELの評価 3.0
2022年5月現在、日産アリアはデビュー直後のため、多くのグレードは予約受付中だ。さすがにこの状況では、値引きの話をしても瞬時に断られることは確実といえる。アリアで値引きを引き出したいのであれば、1年くらい様子をみる必要がある。
値引きの代わりに、下取車の価格の買取価格アップを狙うと良い。事前に買取店などで査定してもらい、下取り車の価値をしっかりと知っておくことが大切だ。一般的に買取店の方が高価になるケースが多いが、あえてそれ以上の下取り価格にならないかディーラーで交渉してみよう。
マツダCX-30EVは、値引き額は少ない。生産台数が少ないことと、マツダディーラーが値引き抑制戦略を行っていることが要因だ。
ただ、日産アリアやリーフ、ホンダeなどと競合させると、多少の値引きには応じてくれる可能性があるが、何十万円という額には到達するのは難しいだろう。
アリアと同様、下取車の売却価格がどれだけアップするかが重要だ。
アリアとMX-30EVの値引きはなかなか厳しい状態にあるが、朗報もある。
EVは補助金が非常に高額になるのが特徴だ。次世代自動車振センターによると、アリアB6 プロパイロット2.0装着車なら、国の補助金が最大92万円になる。MX-30EVは、国が51.6万円だ。
さらに、地方自治体毎に独自の補助金があるケースも多い。東京都の場合は45万円もプラスされる。
補助金を使うと3~4年程度の保有義務などの縛りもあるが、これだけの補助金が出れば、アリアもMX-30EVもグッと購入しやすくなる。
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評価が分かれるMX-30EV。日産らしい先進性あるアリア
4.デザイン比較
アリアの評価 4.0
MX-30 EV MODELの評価 3.5
日本的なデザインテイストを取り入れたアリア
デザインでアリアとMX-30EVを比較すると、「無難なアリア 対 個性的なMX-30EV」といえる。
日産アリアのデザインは、日本の伝統美にインスパイアされている。フロントグリル部分であるシールドには、日本の伝統的幾何学模様「組子」を立体的に表現した。
ボディは日本的な「粋」、「整」、「間」などといったキーワードを使いデザインされ、全体的に柔らかな面とシャープなエッジで組み合わされている。
粋…ノーズやショルダーのハイライト
整…ノーズからリヤにつなぐラインの機能美
間…リヤコンビネーションランプ
移ろい…ダイナミックなボディ
フロントフェイスは薄型のLEDヘッドライトが上部にセットされた。Vモーショングリルとシーケンシャルポジションランプを一体化し、日産車らしさをアピールしている。
リヤの一文字型コンビネーションランプなど、最近のデザイントレンドも積極的に投入され、多くの人に好まれるデザインとしている。マーケットでは迫力ある顔が好まれるので、ボンネットの位置も高くし大きな顔とした。
インテリアデザインは、「間」をキーワードとした。
インパネは全体的にシンプルなデザインで、12.3インチモニターがふたつ並んでいる。ダッシュボートの物理的なスイッチを無くし、独自の世界観を生み出した。電源を入れるとアイコンが浮かび上がるなど、ユニークさが際立つ。だが振動するハプティクススイッチ式とはいえ、運転中などでのブラインドタッチはしにくい。タッチパネルも同様、指先を注視して前方から視線が外れるので、安全面では微妙だ。
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従来とは異なる解釈の「魂動デザイン」を採用
マツダMX-30 EV MODELは、「Human Modern」をデザインコンセプトとした。クルマに対する価値観の変化や、新しいライフスタイルに寄り添うことを目指し、親しみやすさや温かみを感じるデザインとしている。マツダのデザインテーマ「魂動デザイン」ではあるが、テイストは従来のマツダ車とはまったく異なる。
フロントフェイスは、シンプルだが彫りの深い、可愛らしさも併せ持つデザインだ。ボディサイドは一見すると平面に思えるが、よく見ると強いバレル型を描くほどの大胆なカーブで面構成されている。
滑らかに下方に向けドロップしていくCピラーは、とても個性的だ。同様にユニークな丸形の筒状テールランプへとつながり、まさに独特のリヤビューを生み出している。
ドアは観音扉となったが、使い勝手面では少々微妙だ。
こうした独創性あふれるデザインは、評価が分かれやすい。好きな人にとっては「まさに愛すべきデザイン」だが、嫌いな人からは「カッコ悪い」という評価になっている。
顧客を選ぶデザインとなったことで、MX-30はEVとガソリン車共に、販売台数はあまり伸びていない。だが、2020-2021日本カー・オブ・ザ・イヤーでは、デザイン・カー・オブ・ザ・イヤーを受賞し高く評価されている。
インテリアは、逆に多くの人が高い好感度を抱くデザインとなった。浮き上がったようなシフトパネルには、クルマでは類を見ないコルク材を使用しており、ユニークさが光る。自然素材であるコルク材は暖かみがあり、リラックス空間の演出に一役買っている。
尚、MX-30のガソリン車とEVでは、デザインの差別化はほとんどされていない。高価なMX-30EVには、もう少し上質感のある素材がふさわしい。
<レポート:大岡智彦>
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