新型コロナウイルスの影響は軽微? その訳とは?
自販連と全軽自協会の集計による3月の新車販売台数は合計で58万1438台となり、前年に比べて9.3%減少した。3月は1年のうちでも需要月だが、去年の10月に消費税が増税された後は新車販売の落ち込みが続いており、その流れから逃れることができなかった。
ただ、3月に販売された新車の多くは、1月から3月上旬にかけて契約されたものが多いと見られる。新型コロナウイルス問題が、より深刻化してきたのは3月後半からということもあり、その影響はまだ表面化していないともいえる。
実際、3月のマイナス幅は1月や2月に比べると、心持ち小さくなっているからだ。逆に言えば、3月中旬以降のディーラー来場者が激減したことの影響は、4月以降に深刻な販売台数の減少になって表れてくると見られる。
さらにいえば、自動車メーカー各社は、新型コロナウイルス感染者の発生や、世界的な需要減、部品調達の遅れなどから、一部工場のラインを停止している。これによる影響も当然出てくることになる。4月から5月の新車販売台数は、相当に深刻な落ち込みなることを覚悟する必要がある。
自動車メーカーにとって、国内の販売台数減だけなら、まだ影響はわずかだ。しかし、新型コロナウイルスは世界的な流行となっている。とくに、北米や中国といった2大マーケットでの長期に渡る販売台数減は、各社生死にかかわる大きな問題。早期にコロナウィルスの終焉を望みたい。
3月の新車販売のうち登録車は、37万4955台で前年比10.2%の減少、軽自動車は20万6483台で前年比7.6%の減少だった。軽自動車のほうがややマイナス幅はが小さいものの、どちらもマイナスであることは変わらない。
カローラブランド復活か? 総合3位 登録車1位に
2020年3月の銘柄別新車販売台数のランキングは、別掲の通りだが、今年3月の様相はこれまでとやや変わったものになった。トップ10のうち5車種を軽自動車が占めるような状況は変わらないものの、1月には1位~4位まで、2月に至っては1位から6位までを軽自動車が占めていたのに対し、今年は登録車のトヨタ カローラが奮闘し、3位に食い込んでいるからだ。
モデルチェンジを受けた最新のトヨタ カローラは評価が高く、昨年10月から12月までは登録車の販売ランキングで首位に立っていた。だが、今年1月はライズに次ぐ2位、2月にはライズとノートに次ぐ登録車3位だったことを考えると、本格的な復調といった感じである。
カローラは、過去に長期にわたって販売ランキングの首位を占めたモデル。しかし、その後はセダンマーケットの縮小に合わせ販売台数を大幅に落とし、存在感を失っていた。しかし、最新モデルでは、グローバルモデルとすることでボディサイズを大幅に拡大。メインを5ドアハッチバックとし、セダンとワゴンも用意し選択肢を増やした。こうしたモデルラインアップが功を奏し、ついにカローラブランド復活となった印象が強い。
ホンダN-BOX、圧倒的販売台数で1位堅持
カローラを上回る販売台数を記録したのは、首位のホンダN-BOXと2位のダイハツ タントだ。N-BOXは昨年11月にタントに1カ月だけ首位を奪われたものの、それ以外は連続して首位の座を占め続けており、断トツの売れ行きである。
これには、さまざまな要因が絡んでいるものの、N-BOXが安定した人気を得ているクルマでるのは間違いない。N-BOXは2020年度の年間新車販売台数でもトップの座を占めており、これも連続しての首位である。
2位のダイハツ タントも安定度が高い。月によってはスペーシアやデイズが上位に来ることもあったが、昨年の年間ではタントが2位であった。1月はスペーシアが2位に入って、タントは3位だったが、3月は2月に続いての2位の座を確保した。
トップ10に入った軽自動車はほかに、4位のスズキ スペーシア、6位のダイハツ ムーヴ、9位の日産デイズで5車種となった。2月には6車種が入っていたが、3月はホンダN-WGNがトップ10から外れ、やや登録車に押される状況になった。
デイズは、今までデイズとデイズルークス、それぞれの販売台数が合算されていた。しかし、デイズルークスがフルモデルチェンジし、車名を単一のルークスとした。そのため、3月よりデイズとルークスは別にカウントされるようになった。別々のカウントになったことで、デイズは戦力が別れる形になり、ランキングを落している。
ヤリス、フィット実力発揮。揃ってトップ10入り
軽自動車を押し退けてトップ10に入った登録車は、5位のフィットと7位のヤリスだ。ともに今年の2月から販売が本格化した新型車で、2月の時点ではフィットが13位、ヤリスは32位と低迷。
これは、2月上旬に発売で生産車両がやや追いついていなかったことなどが要因。3月には、本格的に生産台数が契約に追いつき、ともに1万台を超える販売台数を記録し、トップ10に入ってきた。
この2車種は今後、登録車の販売ランキングで首位争いをするとみられる人気モデルだ。軽自動車勢を抑え、ベスト3位内をも狙える可能性が高い。今後、注目のモデルといえる。
他に、今年1~2月に登録車の首位に立ったトヨタ ライズが8位に入り、日産ノートは10位となった。ノートは、完全にモデル末期状態。
しかも、ライバルのヤリスやフィットがフルモデルチェンジしたこともあり、今後、非常に厳しい戦いを強いられることになる。
■2020年3月の新車販売ランキング 1~10位
1)N-BOX 22,078台( 83.6%)
2)タント 17,370台( 93.8%)
3)カローラ 16,327台(154.8%)
4)スペーシア 16,077台( 85.3%)
5)フィット 14,845台(137.3%)
6)ムーヴ系 14,023台( 87.8%)
7)ヤリス 13,164台(20-02)
8)ライズ 12,009台(19-11)
9)デイズ 11,612台( 73.3%)
10)ノート 10,999台( 66.1%)
ハスラー、N-WGN大健闘! ワゴンR不調!
11位から20位までの車種を見ると、ここにも軽自動車が5車種を占めているの点が注目される。
軽自動車は各社の超ハイト系モデルがトップ10の上位を占める。だが、それ以外の軽自動車は、さほどでもないという展開が続いていた。
ところが、3月は新型車効果のあるハスラーとN-WGNが、それぞれ1万台を超える販売台数を記録。ハスラーが12位、N-WGNが13位に入っている。
3月に販売台数が1万台を超えたのは、N-WGNまでだ。ハスラーは2月の時点で21位と、生産が追い付かない状態だたが、3月には生産が追いついて登録が進んだ。
N-WGNは、販売が本格化した2月も1万台を超える販売台数を確保して6位に入っていたが、3月はやや順位を下げる結果になった。
これ以外の軽自動車はアルトが14位、ミラが18位、ワゴンRが19位に入っている。不調なのがワゴンR。あのワゴンRが、前年比65.7%という数値となっている。スズキの営業力がハスラーに極端に傾いたことも考えられる。
軽自動車は、登録車に比べると未使用車(新古車)を作りやすいという事情もあり、毎年3月には極端な売れ行きを示す車種が登場したりしがちだが、今年の3月に限ってはあまり極端な結果にはならなかった。
プリウス、そろそろ飽きられてきた?
このランクの登録車は、まずシエンタが11位に入っている。昨年は8月と9月に登録車の販売ランキングで首位、また10月と11月も2位に入るような好調な売れ行きを見せていた。他の新型車の登場や、シエンタ自身もモデルの新鮮さが薄れてきたこともあり、販売台数は落ち着いてきた。15位のプリウスも似たような傾向があり、昨年は何度も登録車の月間首位を記録し、年間でも登録車首位の売れ行きを示したクルマだ。しかし、人気モデルだったことが、モデル後期に入り、やや飽きられてきた感がある。
このほか16位にルーミーが入り、17位はフリード、そして20位にセレナが入っている。セレナは2月には10位に入っていたから、かなり大きく順位を下げる結果になった。日産は国内向けの新型車の投入が少なく、セレナのラインナップの中では比較的新しいクルマながら、それでも発売されたのは2016年8月だから、モデルサイクルはすでに長期化している。これくらいの順位が当然なのかも知れない。
■2020年3月の新車販売ランキング 11~20位
11)シエンタ 10,456台( 96.8%)
12)ハスラー 10,372台(172.3%)
13)N-WGN 10,271台(164.7%)
14)アルト 9,718台(100.5%)
15)プリウス 9,717台( 62.5%)
16)ルーミー 9,700台(100.6%)
17)フリード 9,528台( 95.5%)
18)ミラ 9,222台( 75.6%)
19)ワゴンR 9,138台( 65.7%)
20)セレナ 9,130台( 73.5%)
多様な車種ラインアップをもつトヨタが他社を圧倒!
20位以下の車種を見ると、全体にトヨタ車が目立つ。というか、ほかのメーカーが国内市場にたくさんの車種を投入できないのに対し、トヨタだけはたくさんの車種を投入しているためだ。今後、販売チャンネルの再編が進めば車種も整理されるのだろうが、現状では姉妹車がそれぞれに好調な売れ行きを見せるなどしてランクに入っている。
とくに、21位から30位までに入ったのは、21位のヴォクシー、22位のアクア、23位のタンク、24位のアルファード、27位のRAV4、29位のノアと6車種を数えるほどだ。ミニバンからコンパクト、SUVなどさまざまな車種があり、しかも低価格車から高額車までいろいろな車種が入っている。トヨタが国内に重厚なラインナップを備えているのを典型的に示す例である。
アクアは、前年比53.3%と大きく落としているが、これは同じクラスのヤリスが全チャネルで発売されたことによる影響。燃費や運動性能などは、当然、新型のヤリスが大きく上回るので、併売されれば大きく販売台数を落とすのは仕方のないところだ。ただ、ヤリスに対して性能的に劣るアクアを8,488台も売ったトヨタの営業力は凄い。
厳しい三菱&マツダ、スバル
このランクの軽自動車は、25位のルークスと26位のeKワゴン系の2車種だけだった。ルークスは販売が軌道に乗ってくればトップ10に入ることになるだろう。
また、eKワゴン系はいくつかのタイプをまとめているだけに、もう少し台数を伸ばしたいところだが、三菱は国内の販売網が弱っているので、これくらいが実力なのかも知れない。
そして、マツダCX-30がちょうど30位に入っている。マツダ車のトップがこの車種。ヤリスやフィットと同じクラスのマツダ2が31位に続いている。だが、本来なら量販車になるべき車種がこの台数、このランクでは厳しい。43位のマツダ3と合わせて、3車種とも発売から1年以内のクルマなのだから、一段の底上げを図りたいところだ。
他に、32位のインプレッサはスバル車のトップでこの位置。インプレッサは、モデルサイクルが長くなってきたので止むを得ない面もあるが、昨年にマイナーチェンジを受けた後だけに、もう少し伸ばしたいところ。同様に、 フォレスターも前年比68.9%と低迷。2018年に登場したモデルなので、もう少し販売を伸ばしたいところだ。
34位のロッキーはダイハツの登録車としてトップでこの位置だ。ロッキーは1月に31位で、2月も34位だったから、ちょうど良い位置といったところだ。
36位のヴェゼルは、前年比53.6%と低迷。新型フィットが登場したことにより、営業力がフィットに集中したとはいえ、本来この順位に甘んじてよいモデルではない。37位のステップワゴンも含め、ホンダの国内営業としては、もう少し平均して売れる仕組みが必要だろう。
同じクルマなのにヴェルファイア人気低迷、アルファード絶好調!
上級セダンとして孤軍奮闘しているのがクラウン。しかし、クラウンの販売台数は、3,720台で前年比 64.7%にまで落ちている。セダン離れは深刻な状態は、さらに加速している。
同様に、ハリアーも前年比 57.3%という数値となっている。ハリアーの販売台数減は、2020年夏前にもフルモデルチェンジ予定ということが要因だろう。
トヨタとして、頭が痛いのがヴェルファイアの人気離れだ。姉妹車のアルファードが7,885台を売り前年比103.8%と、不況の中でも絶好調。対するヴェルファイアの販売台数は、2,719台で前年比は 58.8%と絶不調。ヴェルファイア不調の理由は、デザインとされている。販売店の全店併売が進めば、いずれヴェルファイアは姿を消す可能性が高い。
■2020年3月の新車販売ランキング 21~55位
21)ヴォクシー 8,963台( 81.7%)
22)アクア 8,488台( 53.3%)
23)タンク 8,261台(117.0%)
24)アルファード 7,885台(103.8%)
25)ルークス 7,633台(20-03)
26) eKワゴン系 6,651台(102.7%)
27)RAV4 6,286台(-------)
28)ソリオ 5,702台(104.3%)
29)ノア 5,649台( 82.9%)
30)CX-30 5,647台(19-10)
31)マツダ2 5,616台(19-9)
32)インプレッサ 5,459台( 82.7%)
33)C-HR 5,172台( 57.8%)
34)ロッキー 5,011台(19-11)
35)エスクァイア 4,446台( 83.1%)
36)ヴェゼル 4,404台( 53.6%)
37)ステップワゴン 4,382台( 64.2%)
38)スイフト 4,334台( 96.8%)
39)CX-5 4,198台( 66.3%)
40)パッソ 4,007台( 69.7%)
41)トール 4,001台(101.1%)
42)クラウン 3,720台( 64.7%)
43)マツダ3 3,480台(19-5)
44)フォレスター 3,477台( 68.9%)
45)キャスト 2,910台( 57.8%)
46)ハリアー 2,908台( 57.3%)
47)ランドクルーザーワゴン 2,803台( 70.6%)
48)ヴェルファイア 2,719台( 58.8%)
49)エクストレイル 2,611台( 41.9%)
50)ヴィッツ 2,575台( 23.5%)
51)CX-8 2,302台( 52.4%)
52)クロスビー 2,107台( 68.2%)
53)ジムニー 2,081台( 52.4%)
54)デリカD:5 2,014台( 38.1%)
55)エブリイワゴン 2,003台( 88.2%)
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